東京地方裁判所判決 平成15年5月12日

19歳の男性大学生の死亡事案において、3000万円の死亡慰謝料が認められました。

       主   文

   1 被告は,原告X1に対し,金3281万8851円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
   2 被告は,原告X2に対し,金3281万8851円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
   3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
   4 訴訟費用はこれを10分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
   5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
 1 被告は,原告X1に対し,金3577万1617円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告は,原告X2に対し,金3577万1617円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,後記1(1)の交通事故(以下「本件事故」という。)について,原告らが被告に対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条及び民法709条に基づき,損害賠償を請求した事案である。
 1 前提となる事実等(各項末の括弧内に証拠番号を掲記した事実のほかは,当事者間に争いがない。)
 (1)本件事故の発生
   ア 日  時  平成12年2月1日午前1時15分ころ
   イ 場  所  神奈川県藤沢市藤沢10番地先の国道467号線と藤沢市道(以下「本件市道」という。)とがY字型に交差する変形三叉路(以下「本件交差点」という。)付近
   ウ 関係車両  被告の運転する自家用普通乗用自動車(車台番号・ZFFXR○○B○○○○○○○○○。以下「被告車」という。)亡Aの運転する自家用軽二輪車(車両番号・○練馬め○○○○。以下「原告車」という。)
   エ 態  様  本件市道を走行してきた被告車が本件交差点を右折し,国道467号線を走行しようとしたところ,同国道を右方から走行してきた原告車と衝突した。
 (2)被告の責任原因
    被告は,本件事故当時,自己のために被告車を運行の用に供しており,また,進行方向不注視の過失により本件事故を惹起したから,自賠法3条及び民法709条に基づき,本件事故によって生じた損害を賠償すべき責任を負う。
 (3)亡Aの死亡
    亡Aは,本件事故後,藤沢脳神経外科病院(以下「本件病院」という。)に搬送され,治療を受けたが,平成12年2月5日午後1時8分,脳挫傷による脳ヘルニアを原因として死亡した(甲7)。
 (4)相続
    亡Aは,死亡当時,19歳の大学1年生であったものであるところ,原告X1(以下「原告X1」という。)が亡Aの実父であり,原告X2が亡Aの実母であり,ほかに相続人はいなかった。
 (5)損害の填補
    原告らは,平成12年3月28日,労災保険から一時金として472万3700円の支払を,また,平成13年9月28日,自賠責保険の政府保障事業から保障金として2535万4312円の支払を,それぞれ受けた(甲38ないし42)。
 2 争点
 (1)本件事故の態様等
   (原告らの主張)
    被告は,藤沢駅北口付近のスナック「B」で飲食した後,盗難車である被告車を運転して,同駅北口方面から本件市道を走行してきて,本件交差点に差し掛かったが,一時停止の標識を無視してそのまま国道467号線を左方に進行しようとしたところ,前記スナックに携帯電話を置き忘れてきたことを思い出し,右折禁止の標識があるにもかかわらず,一時停止も右方の確認もしないまま,ハンドルを右に急に切り,本件交差点を右折したところ,折から国道467号線を江の島方面から羽鳥方面に向かって走行してきた原告車に被告車の前部右側を衝突させ,その結果,亡Aを被告車及び路面に激突させ,よって,全身打撲及び脳挫傷の傷害を負わせた。
    なお,被告は,本件事故後,被告車を運転して現場から逃走し,前記スナックに立ち寄って,置き忘れた携帯電話を取った後,神奈川県相模原市<以下省略>所在の有限会社Cの月極駐車場で,証拠隠滅の目的で被告車に放火して焼毀した。
   (被告の主張)
    被告は,本件事故当時,被告車が盗難車であることは知らなかった。
    本件交差点の手前における交通規制は,右折禁止ではなく,時間帯指定付指定方向外進行禁止であり,本件事故当時は,右折可能であった。
    また,被告は,右折する前に,一時停止をして,右方を見たものの,原告車を視認するに至らなかった。
    さらに,原告車の速度については,路面に擦過痕が印象された時点で時速約35ないし37キロメートルであるとの鑑定結果があるが,亡Aが被告車に気付き,急制動の措置を講じた末,転倒したのであるから,走行中はもう少し速度が高かったと思われるし,他方,被告車の速度も,亡Aが急制動の措置を講じたのと同時くらいに,被告も急制動の措置を講じているから,完全に停止していないにしても,時速20ないし30キロメートルも出てはいない。
    なお,被告は,本件事故後,神奈川県綾瀬市内の在日米軍厚木基地横の空地に被告車を乗り捨てており,同県相模原市までの移動や放火とは無関係である。
 (2)損害額
   (原告らの主張)
   ア 亡Aの損害額
   (ア)治療費                   3万7275円
   (イ)入院雑費                  1万8351円
   (ウ)入院慰謝料               100万0000円
      亡Aは,本件事故により,平成12年2月1日から同月5日までの間,瀕死の重態で生死の境を彷徨った挙句,帰らぬ人となったものであり,その入院期間中の精神的苦痛は到底金額に換算することはできないものがある。また,原告らは,同月1日午前2時ころ,電話で,亡Aが本件事故に遭って重態に陥っていることを知り,直ちに東京都内の自宅からタクシーで神奈川県藤沢市内にある本件病院に駆けつけ,同月5日に亡Aが亡くなるまでの間,仮眠室もない本件病院に泊り込んで必死の看病をした。他方,被告は,この間,本件事故現場から逃走したまま身を隠し続け,何ら被害者に対する誠意ある対応をしなかった。このような事情を考慮すれば,入院慰謝料は,100万円を下らない。
   (エ)逸失利益               5168万1220円
      亡Aは,本件事故当時,19歳の大学1年生であったから,基礎となる収入は,平成11年賃金センサスの大卒男性労働者の全年齢平均賃金である677万4400円を用いるべきである。また,亡Aは,大学を卒業する予定の平成15年4月から67歳に達する平成59年4月までの間,就労可能であったというべきであるから,中間利息の控除としては,平成12年から平成59年までの47年間に対応するライプニッツ係数17.9810から,平成12年から平成15年までの3年間に対応するライプニッツ係数2.7232を控除するのが相当である。したがって,逸失利益は,生活費控除率を50パーセントとすると,下記の算式のとおり,5168万1220円となる。
                 記
         677万4400×(1-0.5)
            ×(17.9810-2.7232)
        =5168万1220(小数点以下切捨て)
   (オ)死亡慰謝料              3000万0000円
      亡Aは,希望に満ち溢れて真面目な大学生活を送っていたところ,暴力団に所属し,犯罪行為を繰り返している被告の粗暴な運転により,生命を奪われたばかりか,被告は,本件事故後,逃走を図り,証拠隠滅のため被告車に放火までした上,本件事故後約2か月を経過して漸く逮捕された。それにもかかわらず,被告は,一向に反省の意を表することもなく,原告らに対し,一言の謝罪の言葉もなく,一銭の被害弁償もしていない。
      原告らは,大切に育ててきた息子を被告のような人間に無惨にも命を奪われ,想像を絶する苦しみを経験させられ,その苦しみは現在に至るも深く強く続いている。
      また,被告は,本件事故に関する刑事被告事件において,停止している被告車に原告車が衝突してきたのであって,本件事故の原因は亡Aにあるだとか,亡Aの死亡原因は,原告らがエホバの証人の信者であることから輸血を拒否したことにあるだとか全くの虚偽の供述をして,自らの刑事責任を逃れようとする言動に終始していた。このような反省の態度を全く示さない被告の不誠実な言動により,原告らは更に精神的苦痛を被ったので,慰謝料の増額事由に当たるものとして斟酌されるべきである。
      したがって,亡A及び原告らの苦しみ・悲しみを金銭に換算することは不可能であるが,強いてこれを換算するのであれば,3000万円を遙かに上回ることは明白である。
   (カ)原告車                  24万3250円
      本件事故により,原告車は全損になったものであるところ,その時価は,24万3250円を下らない。
   (キ)レッカー搬送費               2万9400円
   (ク)小計                 8300万9496円
      前記(ア)ないし(キ)を合計すると,8300万9496円となる。
   イ 原告ら固有の損害額
   (ア)葬儀関係費               547万3280円
   (イ)遺体搬送費                 9万0910円
   (ウ)小計                  556万4190円
      前記(ア)及び(イ)を合計すると,556万4190円となる。
   ウ 原告らの損害額合計           8857万3686円
     前記ア(ク)及びイ(ウ)を合計すると,8857万3686円となる。
   エ 法定充当による損害の填補後の残額    6554万3235円
     原告らは,前記第2の1(5)のとおり,損害の填補を受けたものであるところ,まず,本件事故の日から労災保険金を受領した日までの間(57日間)の遅延損害金は,下記の算式①のとおり,68万9713円であるから,472万3700円をこれに充当し,残額を元本に充当すると,残元本は,下記の算式②のとおり,8453万9699円となる。
     次に,労災保険金を受領した日の翌日から政府保障金を受領した日までの間(1年と184日間)の遅延損害金は,下記の算式③のとおり,635万7848円であるから,2535万4312円をこれに充当し,残額を元本に充当すると,残元本は,下記の算式④のとおり,6554万3235円となる。
                 記
      ① 8857万3686×0.05÷366×57
       =68万9713(小数点以下切捨て)
      ② 8857万3686-(472万3700-68万9713)
       =8453万9699
      ③ 8453万9699×0.05×1
        +8453万9699×0.05÷365×184
       =635万7848(小数点以下切捨て)
      ④ 8453万9699-(2535万4312-635万7848)
       =6554万3235
   オ 原告ら各自の損害額           3277万1617円
     亡Aの損害額については,前記第2の1(4)によれば,原告らは,各自2分の1の割合に相当する損害賠償請求権を相続し,また,原告ら固有の損害については,原告らは,いずれも2分の1の割合で支出した。
     したがって,原告ら各自の損害額は,3277万1617円(円未満切捨て)となる。
   カ 原告ら各自の弁護士費用          300万0000円
     本件事案の内容,原告らの被告に対する請求額からすると,弁護士費用は,原告ら各自につき300万円が相当である。
  (被告の主張)
   ア 亡Aの損害額
   (オ)死亡慰謝料について
      停止している被告車に原告車が衝突してきたと被告が供述したのは,自身の記憶に基づくものである。また,エホバの証人の信者の話は,本件事故についての警察官による取調べの際,聞かされたものであり,作り話ではない。
   オ 弁護士費用
     否認する。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)について
 (1)証拠(甲6,8ないし19,33,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故に至るまでの経緯等として次の事実が認められる(これに反する被告本人の供述は,目撃者の供述等その他の証拠に照らし,にわかに措信し難い。)。
   ア 本件交差点は,別紙交通事故現場見取図のとおり(なお,以下,場所の特定に用いる符号は,この図面に表示されたものを指す。),南南東の江の島方面から北北西の羽鳥方面に通じる国道467号線と南南西の藤沢駅北口方面から通じる本件市道とがY字型に交差する変形三叉路であり,信号機による交通整理は行われていない。国道467号線及び本件市道は,いずれもアスファルトで舗装され,平坦である。
   イ 国道467号線は,江の島方面から本件交差点までの区間は,歩車道の区別がなく,幅員が約10.0メートルであり,黄色の中央線がある。最高速度時速40キロメートル,終日駐車禁止及び追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止の交通規制がある。
   ウ 本件市道は,歩車道の区別がなく,幅員が約5.0メートルであり,中央線はない。最高速度時速30キロメートル,終日駐車禁止,一時停止及び終日右折禁止の交通規制がある。一時停止については,□地点に「止まれ」の標識が設置されるとともに,路面に「止まれ」の文字及びその先に白い停止線が標示されている。また,右折禁止についても,□地点に左折の矢印の標識が設置されている。
   エ 国道467号線は,江の島方面から本件交差点までの区間は,両側に蛍光灯の防犯灯が設置され,また,本件市道も,蛍光灯の防犯灯が設置され,夜間はこれらが点灯されただけであると,薄暗いが,本件交差点は,水銀灯が設置されており,夜間は点灯されると明るい。
     本件市道を藤沢駅北口方面から本件交差点に向かって走行する車両の運転者としては,道路の両側に2階建ての建物がほぼ敷地一杯に建っているため,停止線の付近にまで達しないと,国道467号線を江の島方面から本件交差点に向かって走行してくる車両の有無及びその動静を視認することはできない。その上,国道467号線がやや蛇行しているため,停止線付近からの見通しも必ずしも良好とはいえない。
   オ 被告は,平成12年1月31日の夕方から,知人の通夜に出席し,一旦自宅に戻った後,午後11時ころ,神奈川県座間市相模が丘にある,自己の経営するパブ「D」に赴いた。同店にいる間,知合いの中古車業者であるEという男から電話があり,フェラーリの仲介の依頼を受け,同店で待っていると,被告車が到着した。被告は,同年2月1日午前零時ころ,被告車を運転して知人のいる同県藤沢市内に向かったが,知人は不在だったため,スナック「B」に赴いた。そして,被告は,同日午前1時ころ,同県座間市相模が丘にある,自己の経営するキャバクラ「F」に行くため,被告車を運転して本件市道を藤沢駅北口方面から本件交差点に向かって走行した。
   カ 亡Aは,神奈川県藤沢市内にある日本大学生物資源科学部に通学するため,同市内のアパートを借りて,単身生活をしていた者であり,コンビニエンスストア「G藤沢朝日店」でアルバイトをしていた。本件事故当時は,同店から前記アパートに帰宅するため,原告車を運転して国道467号線を江の島方面から本件交差点に向かって走行していた。
   キ 被告は,当初,本件交差点を左折し,国道467号線を羽鳥方面に向かおうと考えていた。しかし,途中でスナック「B」に携帯電話を置き忘れたことを思い出し,携帯電話について,一度は手元になくとも構わないと考えたものの,キャバクラ「F」に勤務する女性の送迎や,被告車の仲介を依頼してきたEとの連絡のために必要であると思い直した。もっとも,被告は,なお本件交差点を左折しようと考えていたが,被告車が本件交差点の停止線をやや越えた辺りで,国道467号線の羽鳥方面を見ると,同方面に向かって走行する車両を認めたため,左折したのでは時間がかかってしまうと思い,〈2〉地点付近において,咄嗟にハンドルを右に目一杯切るとともに,急加速しながら右折をした。被告車は,減速こそしていたものの,停止線の手前においても,右折直前の地点においても,停止することはなく,また,方向指示器による合図もしていなかった。そのころ,原告車は,〈ア〉地点付近を走行していた。
     被告は,間もなく原告車を発見し,ブレーキを踏んだが,間に合わず,〈×〉地点において,被告車に気付き,これとの衝突を回避しようと急制動の措置を講じた結果,車体が右に傾き,ついには右側面を路面に接地したまま約3.3メートル滑走してきた原告車と,被告車の右前部付近とが衝突した。衝突の衝撃によって,亡Aは,〈ウ〉地点付近にまで弾き飛ばされ,原告車は,〈イ〉地点付近に倒れて停止した。
   ク 被告は,救護措置等を採ることなく,直ちに〈3〉地点付近から国道467号線を江の島方面に向かって,被告車を運転して急加速しながら逃走した。被告は,当初の目的どおり,スナック「B」に戻って携帯電話を取ると,直ちに出発し,自宅の方面に向かって被告車を走行させた。そして,途中で,被告車の仲介を依頼してきたEに対し,公衆電話から連絡をして,被告車で本件事故を起こし,そのまま逃げている状況にあるため,すぐにでも被告車を引取りに来て,見付からない場所に隠しておいてくれるよう依頼した。被告は,神奈川県綾瀬市にある米軍厚木基地の脇に被告車を置いて,タクシーに乗り換えた。
   ケ 被告車は,平成12年2月1日午前3時ころ,有限会社Cが管理する,神奈川県相模原市(略)の鉄骨2階建ての立体駐車場の1階部分で,放火され,焼損したが,その後,被告は,Eから,電話で,被告車を引取りに行ったら,修理することができる状態ではなかったから,そのまま処分したと聞いた。
     なお,被告車は,同年1月27日,東京都町田市のH方駐車場から盗まれたものであり,ナンバープレートは偽造されたものが装着されていた。また,被告は,本件事故当時,セルシオなどの高級国産車やフェラーリなどの高級輸入車などの盗難車を売り捌いていた。
 (2)前記(1)に認定した事実によれば,本件事故は,一時停止及び右折禁止の交通規制に違反し,かつ,右方の安全確認を怠った被告の一方的かつ重大な過失によって発生したものであるというべきである。
 2 争点(2)について
 (1)亡Aの損害額
   ア 治療費                    3万7275円
     証拠(甲32)によれば,亡Aは,平成12年2月1日から同月5日までの間,本件病院で治療を受け,その費用として3万7275円を要したことが認められる。
   イ 入院雑費                   1万8351円
     証拠(甲22の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,亡Aのために,平成12年2月1日,I上板橋店で,バスタオル2枚,大人用のおむつなど5点を,代金4260円で購入したこと,翌2日,藤沢Jで,肌着1点を,代金5775円で,K藤が谷店で,大人用のおむつカバーなど3点を,代金8316円で,それぞれ購入したことが認められ,これらは,本件事故と相当因果関係のある入院雑費であると認められる。
   ウ 入院慰謝料                       0円
     前記第2の1(3)のとおり,亡Aは,本件病院に入院してから4日後に死亡しているから,その間に被った精神的苦痛に対する慰謝料は,結局のところ,死亡慰謝料に含めて算定することが相当である。
   エ 逸失利益                5153万2294円
     亡Aは,本件事故当時,19歳の大学1年生であった(前記第2の1(4))から,基礎となる収入は,平成12年賃金センサス第1巻・第1表の企業規模計・産業計の大卒男性労働者の全年齢平均賃金である671万2600円を採用するのが相当である。そして,就労可能期間は,大学を卒業する22歳から67歳までとみるべきであり,その間の中間利息は,年5パーセントのライプニッツ係数によって控除するのが相当である。
     したがって,逸失利益は,生活費控除率を50パーセントとすると,下記の算式のとおり,5153万2294円となる。
                 記
       671万2600×(1-0.5)×(18.0771〔19歳から67歳までの48年間に対応するライプニッツ係数〕-2.7232〔19歳から22歳までの3年間に対応するライプニッツ係数〕)=5153万2294(小数点以下切捨て)
   オ 死亡慰謝料               3000万0000円
     前記1において認定した本件事故の態様に加えて,証拠(甲1ないし4,34,35,原告X1本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,亡Aは,本件事故により脳挫傷を被り,意識が一度も回復しないまま亡くなったものであること,初めて親元を離れて大学生活を送っていた矢先のことであり,社会人生活は勿論のこと,大学生活すら全うすることができなかった無念さ・悔しさは,察するに余りあること,原告らは,被告から,本件訴訟に至るまで,本件事故に関し謝罪の言葉を受けなかったこと,被告は,本件事故当時,暴力団Lに所属する幹部組員であり,前科13犯の犯歴を有するほか,高級乗用車の連続窃盗事件に関与していたこと,本件事故後,逃亡を続けていたが,平成12年3月17日,警察に出頭し,本件事故の刑事事件の被疑者として逮捕されたが,完全黙秘をしていて,本件事故を惹起したこと自体,否認していたこと,刑事裁判において,原告車が時速約70ないし80キロメートルの速度で,しかも,右側部分にはみ出して追越しをしようとして衝突してきたとか,原告らがエホバの証人の信者であったため,輸血を拒否したことが原因で,亡Aは死亡したなどと主張していたこと,後者の点は,身柄拘束中,警察官から,一般論として,エホバの証人の信者が輸血を拒否することがあることを聞いたことによるものであるかもしれないのであり,原告らがエホバの証人の信者であるかどうかを確認もせずに述べたものであること,被告自身は,原告らに対し,現在に至るまで,被害弁償を全くしていないこと,以上の事実が認められる。
     これらの事実等本件に顕れた一切の事情を勘案すると,亡Aの死亡慰謝料は,3000万円が相当であると認められる。
   カ 原告車                   10万0000円
     証拠(甲16,23,36,37,原告X1本人)及び弁論の全趣旨によれば,亡Aは,ガレージウイズから,平成10年春ころ,原告車を,登録諸費用を含め23万6250円で買い受けたこと,大学生になってからは,ほぼ毎日,原告車を運転していたこと,原告車は,本件事故によって,前部が大破したこと,原告車を修理した場合,部品代や工賃などで50万円以上を要すること,本件事故当時における原告車の走行距離が6644.2キロメートルであったこと,以上の事実が認められる。
     以上の事実を考慮すると,本件事故当時における原告車の時価は,10万円であったものとみるのが相当である。
   キ レッカー搬送費                2万9400円
     証拠(甲24の1・2)によれば,原告車のレッカー搬送費として2万9400円を要したことが認められる。
   ク 小計                  8171万7320円
     前記アないしキを合計すると,8171万7320円となる。
 (2)原告ら固有の損害額
   ア 葬儀関係費                150万0000円
     証拠(甲26の1・2,27,28の1・2,29ないし31)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,Q有限会社Mに依頼して,平成12年2月8日に通夜を,翌9日に葬儀・告別式を,いずれもR会館で執り行い,R会館に対しては,会館使用料として5万2500円を支払うとともに,同月17日ころ,葬儀費用として91万0980円を支払ったこと,同月23日,○○寺○○別院に対し,在家免物冥加料として3万3000円を支払ったこと,同年3月14日,株式会社Nに対し,仏壇・仏具代として36万8000円を支払ったこと,同年5月9日,宗教法人信行寺ねりま浄瑠苑に対し,永代供養料として220万8800円を支払ったこと,そして,同年12月18日ころ,合資会社Oに対し,墓石代として190万円を支払ったことが認められるところ,これらの費用のうち,本件事故と相当因果関係のある葬儀関係費は,150万円であると認められる。
   イ 遺体搬送費                  9万0910円
     証拠(甲25の1ないし4)によれば,原告らは,平成12年2月5日,首都高速道路等の有料道路を利用して,寝台車で亡Aの遺体を搬送したこと,有限会社Pに対し,寝台車等の料金として8万9510円を支出し,また,有料道路の通行料として合計1400円を支出したことが認められる。本件事故が原告らの自宅から遠く離れた場所で発生し,現場近くの本件病院で亡Aの死亡が確認されていることを考慮するならば,葬儀関係費とは別に,これらの全額が本件事故と相当因果関係のある損害というべきである。
   ウ 小計                   159万0910円
     前記ア及びイを合計すると,159万0910円となる。
 (3)原告らの損害額合計            8330万8230円
    前記(1)ク及び(2)ウを合計すると,8330万8230円となる。
 (4)法定充当による損害の填補後の残額      5980万5195円
    原告らは,前記第2の1(5)のとおり,損害の填補を受けたものであるところ,まず,本件事故の日から労災保険金を受領した日までの間の遅延損害金は,下記の算式①のとおり,64万8711円であるから,労災保険金472万3700円をこれに充当し,その残額を元本に充当すると,残元本は,下記の算式②のとおり,7923万3241円となる。
    次に,労災保険金を受領した日の翌日から政府保障金を受領した日までの間の遅延損害金は,下記の算式③のとおり,595万8773円であるから,政府保障金2535万4312円をこれに充当し,その残額を元本に充当すると,残元本は,下記の算式④のとおり,5983万7702円となる。
                  記
   ① 8330万8230×0.05÷366×57
    =64万8711(小数点以下切捨て)
   ② 8330万8230-(472万3700-64万8711)
    =7923万3241
   ③ 7923万3241×0.05×1
     +7923万3241×0.05÷365×184
    =595万8773(小数点以下切捨て)
   ④ 7923万3241-(2535万4312-595万8773)
    =5983万7702
 (5)原告ら各自の損害額            2991万8851円
    亡Aの損害については,前記第2の1(4)によれば,原告らは,各自2分の1の割合に相当する損害賠償請求権を相続し,また,原告ら固有の損害については,原告らは,いずれも2分の1の割合で支出した(弁論の全趣旨)。
    したがって,原告ら各自の損害額は,2991万8851円となる。
 (6)弁護士費用                 290万0000円
    本件訴訟の経緯,認容額等の諸事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,原告各自につき290万円であると認められる。
 3 結論
   以上の次第で,原告らの被告に対する本訴請求は,原告各自につき3281万8851円及びこれに対する本件事故の日の後である平成13年9月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容することとし,その余の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第27部
        裁判官  森     剛

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