千葉地方裁判所判決 平成17年7月20日

17歳の男子高校生が遷延性意識障害等(1級3号)の後遺障害を負った事案において、平均余命までの近親者、職業介護人の付添観護費用合計1億1678万円余を認めた。

       主   文

 1 被告は,原告X1に対し,金1億0463万2893円及びこれに対する平成12年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告は,原告X1に対し,金517万0636円を支払え。
 3 被告は,原告X2及び原告X3に対し,各金135万円及び各金員に対する平成12年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 5 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の,その余を原告らの負担とする。
 6 この判決の第1項ないし第3項は仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
 1 被告は,原告X1(以下「原告X1」という。)に対し,金4億7925万1098円及びこれに対する平成12年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 主文2項と同旨
 3 被告は,原告X2(以下「原告X2」という。)及び原告X3(以下「原告X3」という。)に対し,各金660万円及び上記各金員に対する平成12年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,下記1(1)記載の交通事故により重篤な状態に陥った原告X1とその父母である原告X2,原告X3が加害車の運転者である被告に対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条に基づき,損害賠償金残元本及びこれに対する上記事故日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに自賠法に基づき一部てん補された損害賠償金元本に対する上記事故日から上記てん補日までの民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金を請求している事案である。
 1 前提事実(当事者間に争いのない事実は証拠を掲記しない。)
  (1) 本件事故の発生
   ア 日時 平成12年8月18日午後4時51分ころ
   イ 場所 千葉県佐倉市山王2丁目41番1先路上(以下「本件事故現場」という。)
   ウ 原告車 足踏式二輪自転車
     同搭乗者 原告X1(昭和58年○月○日生まれ)
   エ 被告車 普通貨物自動車(千葉○○○さ○○○○)
     同運転者 被告
   オ 態様 原告X1が原告車に搭乗して上記日時に本件事故現場の信号機のある交差点(以下「本件交差点」という。)を進行中,交差点を渡りきらないうちに進路を変更したところ,後方から直進してきた被告運転の被告車に衝突された。
  (2) 被告の責任原因
    被告は,被告車を保有し,本件事故当時,これを自己のために運行の用に供していた者である。(甲16の(5))
  (3) 原告X1の受傷及び後遺障害
   ア 原告X1は,本件事故により急性硬膜下血腫,外傷性クモ膜下出血,脳挫傷等の傷害を受け,同日から次のとおり治療を受けた。(甲3の(1)ないし(3),4,16の(9),原告X3本人,弁論の全趣旨)
    (ア) 日本医科大学付属千葉北総病院(以下「千葉北総病院」という。)入院
      平成12年8月18日から平成15年1月22日まで(888日)
    (イ) 防衛医科大学校病院(以下「防衛医大病院」という。)入院
      平成15年1月22日から同年4月4日まで(73日)
    (ウ) 医療法人社団凛風会白銀クリニック(以下「白銀クリニック」という。)通院
      平成15年3月29日から平成15年10月27日まで
   イ 原告X1は,平成15年9月22日症状固定したが(満20歳時),同傷害のため右上下肢完全麻痺,左上下肢完全麻痺,遷延性意識障害,四肢拘縮の自賠法施行令2条別表記載の後遺障害等級1級3号に該当する後遺障害を残している(以下「本件後遺障害」という。)。(甲2,6)
  (4) 身分関係
    原告X2は原告X1の父であり,原告X3は原告X1の母である。
 2 本件の争点
  (1) 本件事故につき被告に過失がないか。
  (2) 原告らの損害額
  (3) (1)で被告に過失がある場合に過失相殺の可否
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点(1)について
  (1) 被告の主張
   ア 被告は,千葉県佐倉市大崎台(以下,千葉県佐倉市を省略する。)方面から大篠塚方面へ被告車で走行し,本件交差点に対面信号の黄色表示で進入したところ,被告の前方で同方向に原告車を走行させていた原告X1が,本件交差点の真ん中付近で,右後方を確認せず,いきなり原告車のハンドルを急転把し,被告車の目前に進行したため,被告はハンドルを右に切りながら急制動の措置をとったが,避けきれずに原告車と衝突した。
   イ 原告X1は,それ以前にふらつくこともなく,比較的速い速度でまっすぐ原告車を走行させており,後方を振り返ったりする動作もなかったので,被告は,常に前方を注視していたが,原告X1の無謀な行動を予見することができず,原告車の右折開始から衝突まで最長でも0.47秒であるから,衝突を回避することもできなかった。
   ウ 本件事故は専ら原告X1が後方車両の有無及び動静を注視して安全を確認することなく,無謀なハンドル急転把行為により進路変更したことを原因として発生したものであり,被告に原告X1の上記行動は予見不可能であり,衝突回避も不可能であるから,被告には過失がない。
   エ (争点(3))仮に被告において,本件事故について何らかの責任を負うことがあるとしても,原告X1に重大な過失があることが明らかである。
  (2) 原告らの主張
   ア 原告X1は,大崎台方面から大篠塚方面へ原告車で走行し,本件交差点を対面信号の青色表示で進入し,信号が交差点内で黄色,赤色と表示が変わったところ,山王1丁目方面へ行こうと交差点を渡りきらないうちに進路を山王1丁目方向へと変更した。なお,このとき山王1丁目方向の交差点の対面信号は青色表示であったと推認される。
     一方,被告は原告X1と同様,大崎台方面から大篠塚方面へ被告車を走行させて本件交差点に差し掛かり,対面信号が赤色表示であったにもかかわらず,本件交差点に進入して原告X1と衝突した。
   イ 被告には,本件交差点に対面信号の赤色表示で進入して,原告車の動静を注視しなかったため,原告車が交差点で進路変更したことの発見が遅れた重大な過失がある。
   ウ (争点(3))原告X1には過失相殺の対象とされるような過失はない。
 2 争点(2)について
  (1) 原告らの主張
   (原告X1の損害)
   ア 原告X1が負担した治療費等
    (ア) 医師交通費・検査費 2万3800円
    (イ) 訪問看護費 7600円
   イ 入院雑費 144万0000円
     入院期間中(960日)の雑費は,1日当たり1500円が相当であり,144万円を要した。
   ウ 交通費・宿泊費 43万3205円
    (ア) 千葉北総病院入院付添人交通費 26万6400円
    (イ) 防衛医大病院付添人交通費 10万9480円
    (ウ) 防衛医大病院付添人宿泊費 2万5825円
    (エ) 一時帰宅レンタカー代 3万1500円
   エ 医師への謝礼 41万0000円
     千葉北総病院医師へ29万円,防衛医大病院医師へ10万円,白銀クリニック医師へ2万円をそれぞれ謝礼として支払った。
   オ 症状固定前の付添費 1026万0000円
    (ア) 原告X1の960日の入院期間中,原告X2と原告X3が毎日交替で付き添っていたが,原告X1の重篤な容態からすれば,その付添費は,1日当たり8000円が相当であり,合計768万円となる。
    (イ) 防衛医大病院を退院した日から平成15年9月22日までの172日間,原告X1の重篤な症状から24時間付添が必要であったので,原告X2と原告X3が毎日交替で介護した。その付添費は,1日当たり1万5000円が相当であり,合計258万円となる。
   カ 症状固定後の介護料 1億6144万2055円
    (ア) 症状固定時から平成28年9月22日まで
      原告X1は,日常生活のすべてにわたり介護を必要とし,原告X2と原告X3が交替で24時間介護を行い,夜間においても2時間おきに吸痰等の措置が必要であるなどその介護は過酷を極めている。
      平成28年9月22日(原告X2と原告X3が67歳になる年)までは,同原告らによる介護が可能であるが,その年齢や過酷な介護状況からすると,同原告らのみで介護を行うことは困難であり,職業付添人の介護を1日3時間程度受けることが必要である。その費用相当額は近親者が1日当たり1万円,職業付添人が1日当たり1万2000円であり,合計7542万9805円となる。
      被告X1の症状固定から上記日時までの期間は13年間であり,そのライプニッツ係数は9.3935である。
     (計算式)
      2万2000円×365日×9.3935=7542万9805円
    (イ) 平成28年9月23日以降平成73年(原告X1の平均余命終期)まで
      職業付添人による介護が必要であり,その費用が1時間当たり4020円として,1日につき24時間必要であるが,このうち,2万5000円を相当因果関係ある損害とする。
      原告X1の平均余命は58.64年で,58年のライプニッツ係数は18.8195である。次式により計算すると,合計が8601万2250円となる。
     (計算式)
      2万5000円×365日×(18.8195-9.3935)=8601万2250円
   キ 症状固定後の医療関係費 2181万7822円
    (ア) 原告X1は,平成15年9月22日に症状が固定しているが,生命を維持するため医師の訪問診療を受ける必要があり,概ね1週間に1回の割合で訪問診療を受けている。その費用のうち原告X1の負担分は,年間では39万1320円となる。
      原告X1の余命期間を同様にして,次式により計算すると合計が736万4446円となる。
     (計算式)
      39万1320円×18.8195=736万4446円
    (イ) 原告X1は,同様に看護師の訪問看護を受ける必要があるところ,概ね1週間に5回の割合で訪問看護を受けている。その費用のうち,の(ママ)負担分は,年間では76万8000円となる。
     (計算式)
      76万8000円×18.8195=1445万3376円
   ク 家屋改造費 1517万5793円
     原告X1の本件後遺障害により,バリアフリー化等,原告X1の生活に適した構造に原告らの自宅を改造せざるを得ず,工事の費用として1517万5793円を要する。
   ケ 光熱費増額分 180万6672円
     原告X1の自宅での介護における介護器具等の使用により,光熱費の支出が増加するが,その金額は,1か月当たり8000円,年額9万6000円となる。
     (計算式)
      9万6000円×18.8195=180万6672円
   コ 介護器具代金 2659万7739円
     別紙介護器具一覧表(以下「一覧表」という。)記載のとおりの品名及び代金の各介護器具を,原告X1の平均余命までの間,同表記載の各耐用年数に従って,必要な買換えを行うことによる購入費は以下のとおりである。
    (ア) 一覧表記載の番号1 21万3756円
    (イ) 一覧表記載の番号2 208万4335円
    (ウ) 一覧表記載の番号3 1737万1168円
    (エ) 一覧表記載の番号4 36万5442円
    (オ) 一覧表記載の番号5 531万8124円
    (カ) 一覧表記載の番号6 3万0394円
    (キ) 一覧表記載の番号7 1万7870円
    (ク) 一覧表記載の番号8 119万6650円
   サ 将来雑費 7527万8000円
     紙おむつ,ガーゼ,カテーテル等の介護雑費の合計金額は,1年あたり400万円を下らないが,症状固定時から原告X1の平均余命まで必要である。
    (計算式)
     400万円×18.8195=7527万8000円
   シ 特別仕様自動車の購入費 479万1765円
     原告X1は,通院等のため特別仕様車を利用する必要があるところ,通常使用車との差額は128万5000円を要し,6年ごとにこれを更新する必要がある。平均余命までに10回購入することになる。
   ス 休業損害 570万5120円
     原告X1は,本件事故当時満17歳の高校生であり,平成13年3月31日には高校を卒業して同年4月1日から症状固定日まで905日間の就労が可能であった。その間の原告X1の基礎収入としては平成13年賃金センサス第1巻第1表による産業計・企業規模計・学歴計18歳から19歳の男子労働者の平均賃金年額230万1100円(日額6304円)とすべきである。
    (計算式)
     6304円×905日=570万5120円
   セ 逸失利益 1億0175万6277円
     原告X1は,満67歳までの47年の間就労が可能であったが,本件後遺障害により労働能力を100パーセント喪失した。平成13年賃金センサス第1巻第1表による産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者の全年齢平均賃金年額565万9100円を基礎収入とすべきであり,47年のライプニッツ係数は17.9810である。
    (計算式)
     565万9100円×17.9810=1億0175万6277円
   ソ 慰謝料
    (ア) 傷害分 500万0000円
    (イ) 本件後遺障害分 3500万0000円
   タ 弁護土(ママ)費用 4350万0000円
   (原告X2及び原告X3の損害)
   ア 慰謝料 各600万0000円
   イ 弁護士費用 各60万0000円
  (2) 被告の主張
   (原告X1の損害について)
    原告らの主張はいずれも否認ないし争う。
   ア 同アないしエについては,客観的資料がない。
   イ 同オ(ア)については,付添を指示する医師による診断書等の証拠はなく,入院先の病院は完全看護体制であり,担当医師が示唆したのは,積極的な「声かけ」など近親者の情愛としての行為の側面が強い。防衛医大病院での措置もリハビリ中心であることからすると,原告の症状(いわゆる植物状態)を考慮しても,全期間一律に認めるとすれば,1日6500円から7000円程度が相当である。
     同オ(イ)については,防衛医大病院を退院した日が上記(ア)と二重に計上されている。従来の裁判例に照らすと,適切な近親者付添費は1日6500円から7000円と思料される。
   ウ 同カ(ア)については,近親者の付添費を職業付添人の費用と同時に求める場合,いかに被介護者の症状が重度であっても,日額4500円程度とされる例が多い。職業的付添人2名分として日額1万8300円とした裁判例がある。
     同カ(イ)の生存可能期間については,原告X1の症状を具体的に見る限り,体温調節の不能,免疫力の低下などによって,容易に風邪をひいたり,日常生活動作における通常の刺激によっても,容易に感染症を引き起こしたりする危険にさらされているとのことであるから,平均余命までの将来介護料を計上するのは相当とは考えられず,少なくとも平均余命の3分の2程度には限定せざるを得ない。(以下平均余命に関しては,同様に考えるべきである。)
   エ 同キについては,医療行為の内容及び年額に関する具体的立証が必要である。
   オ 同コ,サについては,一見して明らかに過大な請求であり,支出の医学的必要性及び金額についての立証が必要である。
   カ 同セについては,10パーセントから30パーセントの生活費控除を行うべきである。すなわち,原告X1のように症状が重篤であり,意識もなく自動運動もできない状態が死亡時まで続く蓋然性が高く,常時付添看護を受け,栄養も経管により摂取するなど,全生活にわたって介護を受け,これ以外に必要とされる生活費があまり想定できない場合は,その費用について,別途将来の積極損害として賠償を受ける以上は,損害の二重評価を避けるために,生存中といえども生活費控除を受けることに合理性がある。
   (原告X2及び原告X3の損害について)
    原告らの主張については争う。請求慰謝料額は,種々の裁判例及び実務上の基準に照らし,明らかに過大である。
第4 当裁判所の判断
 1 争点(1)について
  (1) 本件事故現場の状況及び本件事故態様等について
    証拠(甲16の(7),(8),(9),(13),17の(7),18の(4),(6),(7),(28),(32)ないし(35),乙1)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
   ア 本件事故現場は,大崎台方面(北方向)から大篠塚方面(南方向)に通ずる市道(以下「A道路」という。)と太田方面(東方向)から山王1丁目方面(西方向)に通ずる市道(以下「B道路」という。)とが交差する信号機による交通整理の行われている本件交差点のほぼ中央付近のやや南東側よりの路上である。
     A道路は,歩車道の区別がある車道幅員約11.0メートルでセンターラインにより2車線に区分されたアスファルト舗装の直線道路であり(両端に各約0.8メートルの路側帯),前方及び左右の見通しは良く,速度規制はされていなかった。なお,A道路は,本件交差点手前で直進及び左折の車線(幅員約3.2メートル)と右折の車線(幅員約3.0メートル)に分かれ,約100分の3の上り勾配になっていた。
     B道路は,センターラインにより2車線に区分されている歩車道の区別のある道路で,本件交差点手前で直進及び左折の車線と右折の車線に分かれ,車道幅員が東側で約10.2メートル,西側で10.1メートルとなっていた。
     本件事故当時は,晴天であり,A道路及びB道路とも路面は乾燥し,交通量は少なかった。
     本件交差点内の自転車横断帯は,北側(A道路)と西側(B道路)のそれぞれ横断歩道横の本件交差点内側に設けられている。
   イ 被告は,仕事を終えて帰宅するため被告車を運転し,A道路を大崎台方面から大篠塚方面に向かって時速約60キロメートルで進行し,本件交差点から約90メートル以上手前の地点で,対面信号が青色を表示しているのを認めるとともに,約66.0メートル前方の道路左端から約0.8メートル内側を同一方向に進行している原告X1搭乗の原告車を認めたが,そのまま進行した。そして,被告は,被告車を約64.4メートル進行した地点において,約28.9メートル前方の本件交差点内をそのまま直進している原告車を認めるとともに,対面信号が青色表示から黄色表示に変わったのを認めたが,停止せずにそのままの速度で進行し,交差するB道路右方からの発進車両の有無を確認し,さらにB道路左方を確認しようとしたところ,本件事故現場の約14.3メートル手前の地点において,約10.5メートル前方で山王1丁目方面に急に進路を変更した原告車を発見し,衝突を避けるべく,急制動をするとともにハンドルを右に転把したが,間に合わず,本件交差点中央付近からみてやや東南よりの地点で被告車左前部を原告車右側面に衝突させ,原告X1及び原告車をはね飛ばし,約20.5メートル進行してA道路の対向車線内に停止した。なお,被告は,最初に原告X1搭乗の原告車を認めてから衝突するまで,原告X1が後方を振り返ったりする動作を見ていないし,警告のためのクラクションを鳴らしていない。
   ウ 原告X1は,郵便局のアルバイトを終えて帰宅するため原告車に搭乗し,A道路の道路左端から約0.8メートル車道側を大崎台方面から大篠塚方面に向かって進行し,そのまま本件交差点を直進したが,本件交差点を渡り切らないうちに,後方を振り向くなどして右後方の安全を確認しないまま,原告車のハンドルを急転把し,山王1丁目方向に進路を変えて進行したため,被告車の左前部から原告車の右側面に衝突された。その衝撃により,原告X1は,はね飛ばされて衝突地点から約27.5メートル先のA道路の対向車線内の路上に転倒し,原告車は,約21.1メートル先の同路上に転倒した。
   エ 上記衝突の時点では,本件交差点の信号は各方向とも全部赤色表示であった。
   オ 本件事故現場の路上には,衝突地点から被告車の停止地点までの間に被告車によって印象されたと考えられる前輪のスリップ痕二条(長さ約18.5メートル,4.5メートル)が残された。路面摩擦係数を0.6から0.8として,被告車の制動初速度算出を算定すると時速53ないし61キロメートルである。
  (2) 信号機の表示に関する原告らの主張について
    原告らは,被告が本件交差点に対面信号が赤色表示であったにもかかわらず進入したと主張する。
   ア 信号サイクル調査報告書(甲16の(13))によれば,本件交差点の信号機のサイクルは,A道路の歩行者用信号は点滅4秒で赤色の表示に変わるが,赤色に変わった2秒後に,車両用信号が黄色となりこれが3秒間続いた後,赤色に変わって本件交差点の信号が全部赤色になり,その状態が2秒間続いた後,B道路の信号(車両用及び歩行者用)が青に変わるサイクルになっていることが認められる。
   イ 目撃者C(以下「C」という。)の捜査機関に対する供述調書4通においては,Cの運転する普通貨物自動車(以下「C車」という。)が被告車の前方約20から30メートルをほぼ同一速度で同一方向に進行していたところ,Cは本件交差点手前で対面信号が黄色表示に変わることを認めたものの,そのままC車を進行させて本件交差点を通過したこと,Cがルームミラーで被告車を見ると被告車も停止することなく本件交差点に進入したが,そのときの対面信号の表示は既に赤色であったとして被告車の動静を目撃したことを供述しているところである。
     しかし,C車が本件交差点の対面信号が黄色に変わったことを認めた地点について,本件事故直後の平成12年11月8日付司法警察員に対する供述調書(甲16の(3))では,停止線の手前10メートルの地点で黄色に変わったとし,平成13年9月21日付検察官に対する供述調書(甲17の(4))では,感覚では停止線まで10メートルより遠い距離で黄色に変わったと思うとし,平成15年12月5日付司法警察員に対する供述調書(甲18の(16))では,対面信号機の約63メートル手前で黄色に変わったとし,平成16年1月30日付検察官に対する供述調書(甲18の(32))では,対面信号機の手前約63メートルで黄色に変わり,本件交差点を通過し終える地点で少し上目使いに見て対面信号が黄色から赤色になることを認めたとするそれぞれの供述記載がされているのであって,その供述記載内容は微妙に変化し,特にC車が本件交差点内で表示が赤色へ変わっていたことを確かめたと述べたのが,事故後3年を経過し捜査機関による本件事故の再捜査がされてから初めてであるなど,その一貫性を欠いていることに合理的理由が窺えない。このことからすると,他の客観的な裏付けのないまま上記C供述に全面的に依拠するには躊躇せざるを得ない。
     他方,被告は,捜査段階の当初から,本件交差点の対面信号が黄色に変わったがそのまま被告車を本件交差点に進入したことを述べている。平成16年1月30日付検察官に対する供述調書(甲18の(34))では,信号を確認した正確な地点については自信が無く,先行車の運転者の説明を元にすれば対面信号が黄色に変わった時点での被告車の走行地点は交差点手前約50メートルになり,被告の記憶が違っているのかもしれないとの供述記載がされているが,これは被告の体験的事実に基づく供述というよりは,上記C供述をもとに検察官からの取り調べを受けた結果,全体としてあいまいな評価的内容の供述になったといわざるを得ず,それ以前の捜査機関に対する供述調書4通(甲16の(5),(6),17の(1),18の(19))において,その対面信号が黄色に変わったことを認めた地点について,特に本件交差点の停止線手前からの具体的距離が明示されていないが,他の地点からの比較でいうとおおよそ20メートル程度の地点であると理解できるような具体的供述となっていることと対比しても,上記検察官に対する供述調書はそのまま採用しがたいところである。
     さらに,目撃者E(以下「E」という。)の捜査機関に対する供述調書3通(甲16の(2),17の(3),18の(15))においては,Eの運転する普通乗用自動車(以下「E車」という。)が,A道路の対向車線を本件交差点に向かって時速30キロメートルで走行していたところ,Eは対面する歩行者用信号機が赤または青色点滅であることを見たため,E車をアクセルを離し減速して約22.6メートル進行したところ,交差点前方の対向車線上に被告車を見たが,その位置は不明であり(当初の段階で本件交差点の内側の地点であったと供述したが,その後変更している),さらにE車を約9.7メートル進行した直後に本件事故を目撃したことの供述記載がされている。
   ウ これらの点に本件から認められる本件交差点の状況や距離関係,C車と被告車がいずれも時速約60キロメートル(秒速約16.67メートル)の速度で進行していたこと,両車の車間距離(20ないし30メートル,時間差にすると1.2秒ないし1.8秒)等を総合して検討すると,対面信号の表示が黄色に変わった後に,被告が本件交差点に進入したことは確実に認められるが,黄色に表示が変わった時点の被告車の位置を正確に特定し,かつ被告が本件交差点に進入した際に認識した対面信号の表示の色を確定するのは困難であるといわざるを得ない。
     もっとも,本件交差点の信号機はA道路の対面信号が黄色表示3秒,全部の信号が赤色表示2秒であるから,C供述及びE供述のいずれからも,本件事故は本件交差点の信号が全部赤の状態で起こったものであると認めることができ,これを左右するに足りる証拠は本件ではない。
  (3) 被告に予見・回避可能性がないとの被告の主張について
    被告は,原告X1がふらつくこともなく,比較的速い速度でまっすぐ原告車を走行させており,後方を振り返ったりする動作もなかったので,原告X1の無謀な行動を予見することができず,また,右折開始から衝突までの時間は最長でも0.47秒であって,衝突回避も不可能であると主張する。
    しかし,上記認定したように,本件交差点の信号表示や原告X1が原告車を走行させていたとの認識も被告にあったのであるから,被告は十分安全に配慮した走行を求められていながらこれを欠いていたというべきであり,この点の被告の主張は採用しない。
  (4) 上記(1)で認定した事実によれば,被告は,被告車を運転し,本件事故現場のA道路を進行し,早い時点に道路左端から約0.8メートル車道側を同一方向に進行している原告X1搭乗の原告車を認めたのであるから,その横を通過しようとする際には,前方を注視し,自己の前車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて,できる限り安全な速度と方法で進行すべき注意義務があるにもかかわらず,特に原告車の動静に注意を払わなかったばかりか,さらに,本件交差点手前で対面信号が黄色を表示したにもかかわらず,減速することなく時速約60キロメートルのままで進行するとともに,交差するB道路からの左右の発進車両の有無に注意を奪われ,原告車の動静に注意を払うことなく進行した過失があるというべきである。
    他方,原告X1は,本件交差点を進行するに当たり,交差点における自転車の通行方法に関する法規に従い,同一の進路を後方から進行してくる車両の有無及び速度等を確認して進路変更をすべき注意義務があるにもかかわらず,自転車横断帯を進行することなく,さらに交差点を渡りきらないうちに右後方に対する安全確認を怠るとともに急に進路を変更した過失があったというべきである。
  (5) 以上のとおり,本件事故の発生につき,被告に過失が認められるから,被告が無過失であるとする被告の主張は理由がない。
 2 原告X1の受傷の部位及び程度,後遺障害の程度等について
    証拠(甲2,3の(1)ないし(3),4ないし6,15,16の(9),18の(23),19,原告X3本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
  (1) 原告X1は,本件事故により急性硬膜下血腫,外傷性クモ膜下出血,脳挫傷等の傷害を受け,本件事故直後,救急車で千葉北総病院に搬入され,開頭血腫除去術を受けた。その後,原告X1は,感染症にかかって高熱を出したり,水頭症になるなど容態が安定せず,5回に及ぶ開頭手術や3回に及ぶ脳室シャント手術を受けたが,意識障害が遷延し,寝たきり状態(いわゆる植物状態)であった。
    さらに,平成15年1月22日,原告X1は,防衛医大病院に転院し,一時,肺炎になり危険な状態になったが,危機を脱して,在宅介護に向けたリハビリテーション(以下「リハビリ」という。)受けた。原告X1の遷延性意識障害,四肢麻痺等の症状は変化がなかったが,胃に穴を開け直接栄養を補給するための胃の手術もし,同年4月4日,同病院を退院した。
  (2) 原告X1は,その後,白銀クリニックの医師による訪問治療を受けて在宅での介護を受けていたが,症状に特に改善がないまま,平成15年9月22日,同医師により,四肢完全麻痺,遷延性意識障害,四肢拘縮の後遺障害を残して症状が固定した旨の診断を受け,自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の事前認定手続において,自動車保険料率算定会により,同年12月10日,頭部外傷により現在,遷延性意識障害にて寝たきりの状態(いわゆる植物状態)にあることが認められ,神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するものとして自賠法施行令2条別表記載の後遺障害等級1級3号に該当する旨の判定を受けた。
  (3) 原告X1は,現在,身長約174センチメートル,体重約60キログラムの体格であり,遷延性意識障害のために意思疎通ができず,痛み等に対してわずかに筋収縮があり開眼を認める程度でしかなく,また,四肢麻痺のために完全寝たきり状態で,自力で嚥下すらできないから,生存のためには,胃管からの経管栄養摂取による食事や水分等の輸液の管理を始め,洗髪,排泄,清拭,体位交換,痰の吸引等,24時間の常時介護や適切な全身管理が欠かせない状態である。
 3 本件事故による損害額
  (1) 原告X1が負担した治療費等 3万1400円
    証拠(甲7,15,33,34,49)及び弁論の全趣旨によれば,平成15年4月7日から同年9月22日までの間,原告X1を白銀クリニックの医師が往診し,その際に交通費及び検査の費用として2万3800円を要したこと,厚生園訪問看護ステーション(以下「厚生園」という。)の看護師が原告X1を訪問して看護をし,その際に交通費として7600円を要したことが認められる。
  (2) 入院雑費 144万0000円
    上記2の事実と弁論の全趣旨によれば,入院雑費として1日当たり1500円で合計144万円を要したことが認められる。
  (3) 交通費・宿泊費 43万3205円
    上記2の事実と証拠(甲8,15,35)及び弁論の全趣旨によれば,前記入院期間中,原告X2や原告X3の付添看護の交通費(ガソリン代・電車代・高速道路料金)として千葉北総病院分26万6400円,防衛医大病院分10万9480円,同宿泊費として防衛医大病院分2万5825円を要したこと,原告X1が,平成15年3月21日及び22日,医師の指示により在宅介護の可否を検討するため一時帰宅し,その際,往復にレンタカーを使用し,3万1500円を要したことが認められる。
  (4) 医師への謝礼 22万0000円
    弁論の全趣旨によれば,原告X1は,千葉北総病院,防衛医大病院に入院中,医師らに謝礼をし,往診した白銀クリニック医師に謝礼をしたことが認められる。
    原告X1の前記症状に照らし,このうち,被告が負担すべき損害額は,千葉北総病院,防衛医大病院に各10万円と,白銀クリニックに2万円の合計22万円を認めるのが相当である。
  (5) 症状固定前の付添費(介護費) 843万0000円
   ア 上記2の事実と証拠(甲15,原告X3本人)及び弁論の全趣旨によれば,各病院は一応完全看護体制ではあるが,実際には原告X1の重篤な容態やリハビリを要する事情などからすれば家族の補助が必要であること,960日の入院期間中,原告X2と原告X3が毎日交替で付き添いをしていたことが認められる。
     そして,その付添費用は,1日当たり7000円が相当であり,960日について算定すると合計672万円となる。
   イ 上記2の事実と証拠(甲15,原告X3本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は防衛医大病院を退院した日から自宅で療養をしたが,その症状が重篤であり24時間の付添介護が必要であったこと,平成15年9月22日(症状固定日)までの171日間,原告X2と原告X3とが協力して24時間の介護に当たった(原告X3が主たる介護を行い原告X2がその補助的介護を行う役割)ことが認められる。
     その付添費は,1日当たり1万円が相当であり,合計171万円となる。
  (6) 将来の付添看護費 1億1678万6860円
   ア 上記認定したとおり,原告X1は,余命期間について日常生活のすべてにわたり終生介護を必要とする状態にあり,上記2の事実と証拠(甲9,19,原告X3本人)及び弁論の全趣旨によれば,症状固定した後,原告X1は,原告X3が主たる介護を行い原告X2がその補助的介護を行う役割で協力して24時間の介護に当たるとともに,職業付添人の介護を1日3時間程度受けていたこと,夜間においても2時間おきに吸痰等の措置が必要であるなどその介護は過酷であることから,今後ともその職業付添人の上記介護が必要であり,原告X3が67歳になる年である平成28年9月22日までは,その状態の介護が継続すること,それ以降は,職業付添人による介護(2名の交代制による介護)が必要であることが認められる。
     そして,本件事故と相当因果関係がある介護料は,1日につき,平成28年9月22日までは,近親者が1万円と職業付添人が6000円の合計1万6000円,それ以降の原告X1の推定余命期間内は職業付添人が1万8000円であると認めるのが相当である。
   イ なお,証拠(甲19,49)によれば,原告X1は,平成15年10月28日から,自動車事故対策機構付属千葉療護センター(以下「療護センター」という。)へ入所し,同所において介護を受けていることが認められるが,他方で,入所可能期間が2年から5年程度であることも認められ,このことから上記介護の措置は,将来にわたって確実に現在と同様に継続される保証も必ずしも存しないと考えられ,上記入所を考慮して損害賠償額を算定することは相当ではない。
   ウ 原告X1の推定余命期間について
     被告は,原告X1が免疫力低下等により容易に感染症を引き起こす危険にさらされていることなどからすると,推定余命年数を,少なくとも平均余命の3分の2程度であるとすべきと主張する。
     しかし,前記のとおり,原告X1は,いわゆる植物状態にあるが,平成15年10月までの自宅療養においても,特にけいれんも見られず,そのような状態の患者としては,安定しており,生命の危険を推認させる事情は認められなかったし,証拠(甲15,19,49)によれば,原告X1は,原告X3ら介護者による手厚い介護を受け,定期的に医師の訪問診療を受けて異常があれば医療機関の適切な処置を受ける体制が整っていた上に,現在では,療護センターにおいて,看護を受けて安定した状態を保っていること,今後も,療護センターに在所中かどうかを問わず,安定した状態を維持される環境にあるものと推測しうるところである。
     そうすると,これまでの原告X1の上記状況を見る限り,症状固定時の原告X1の平均余命については,平成14年簡易生命表20歳男子の該当数値である58.87と推定するのが相当である(以下,原告ら主張のとおり58年として使用する。)
     上記被告の主張は採用できない。
   エ そうすると,上記付添看護費の合計額は,次の計算式のとおり,1億1678万6860円となる。
   (計算式)
     1万6000円×365日×9.3935=5485万8040円
     1万8000円×365日×(18.8195-9.3935)=6192万8820円
  (7) 症状固定後の医療関係費 9万6610円
    証拠(甲15,33,34,47,49)によれば,原告X1は,平成15年9月22日に症状が固定しているが,その後も,療護センター入所時までの間,白銀クリニックの医師の訪問診療を概ね1週間に1回の割合,厚生園の看護師の訪問看護を概ね1週間に5回の割合で受けており,原告X1の症状からするといずれも生命を維持するため必要な治療であったものと認められること,その費用のうち原告X1の負担分は,年間では医師につき39万1332円,看護師につき76万8000円となることが認められる。
    したがって,少なくとも,上記期間1か月の医療関係費も,原告X1の症状からすると,本件事故との因果関係を認めるのが相当である。
    しかし,本件では,療護センターを退所した場合は,上記と同様に訪問診療を受ける可能性は窺えるものの,退所の時期を始め,将来的にどの程度の治療内容及び費用となるかについては必ずしも明らかでなく,具体的に医療関係費として認めるに足りない。
   (計算式)
    (39万1320円+76万8000円)÷12=9万6610円
  (8) 家屋改造費 910万5475円
   ア 上記認定の事実によると,原告X1が終生,自宅で生活するためには,家屋の改造が必要であることが認められる。
   イ 証拠(甲10,15,27,28,原告X3本人)によれば,原告X1の介護環境を整えて,介護する方もしやすく,介護される方も良好な状態とするために,段差や階段をバリアフリーにし,一階の和室を原告X1の介護用の洋室に,トイレ,洗面所及び浴室を改良し,昇降機やリハビリのためのサンルームや温度調節のためのエアコンを設置し,セキュリティを強化するなどの増改築工事をすることが予定され,その費用として1517万5793円かかることが認められる。他方,家屋改造は家屋の改良にもなり,上記家屋改造の予定の中には他の家族の生活利便性が向上するものも含まれているから,本件事故との相当因果関係を全部認めるのは相当ではない。
   ウ これらのうち,被告が負担すべき損害額としては,その6割とするのが相当であり,910万5475円となる。(円未満切捨て,以下同様とする。)
  (9) 光熱費増額分 180万6672円
    証拠(甲11,15)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1の自宅での介護における介護器具等の使用や洗濯等により,光熱費の支出が増加すること,原告X1の症状からするとその増加は必要なものであり,その金額は,少なくとも1か月当たり8000円で年額9万6000円となることが認められ,本件事故と相当因果関係ある損害である。
    原告X1の症状固定時から平均余命期間について,ライプニッツ方式により中間利息を控除して算定すると,次式のとおり,180万6672円となる。
    (計算式)
     9万6000円×18.8195=180万6672円
  (10) 介護器具代金 2659万7739円
    上記認定のとおり,原告X1が余命期間について日常生活のすべてにわたり終生介護を必要とする状態にあることから,証拠(甲12,45)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は一覧表記載の介護器具用品を使用する必要があり,その耐用年数及び金額は同表各欄記載のとおりであること,今後も,原告X1の平均余命までの間,各耐用年数ごとに,買換えをする必要があることが認められる。
    原告X1の余命期間について,ライプニッツ方式により,中間利息を控除して算定すると次式のとおりとなる。
   ア 一覧表記載の番号1 21万3756円
     2万1000円×(1+0.907+0.8227+0.7462+0.6768+0.6139+0.5568+0.505+0.4581+0.4155+0.3768+0.3418+0.31+0.2812+0.255+0.2313+0.2098+0.1903+0.1726+0.1566+0.142+0.1288+0.1168+0.1059+0.0961+0.0872+0.079+0.0717+0.065+0.059)=21万3756円
   イ 一覧表記載の番号2 208万4335円
     29万9900円×(1+0.8638+0.7462+0.6446+0.5568+0.481+0.4155+0.3589+0.31+0.2678+0.2313+0.1998+0.1726+0.1491+0.1288+0.1112+0.0961+0.083+0.0717+0.0619)=208万4335円
   ウ 一覧表記載の番号3 1737万1168円
     397万3550円×(1+0.7835+0.6139+0.481+0.3768+0.2953+0.2313+0.1812+0.142+0.1112+0.0872+0.0683)=1737万1168円
   エ 一覧表記載の番号4 36万5442円
     9万8000円×(1+0.7462+0.5568+0.4155+0.31+0.2313+0.1726+0.1288+0.0961+0.0717)=36万5442円
   オ 一覧表記載の番号5 531万8124円
     179万8000円×(1+0.6768+0.4581+0.31+0.2098+0.142+0.0961+0.065)=531万8124円
   カ 一覧表記載の番号6 3万0394円
     1万2400円×(1+0.6139+0.3768+0.2313+0.142+0.0872)=3万0394円
   キ 一覧表記載の番号7 1万7870円
     9800円×(1+0.481+0.2313+0.1112)=1万7870円
   ク 一覧表記載の番号8 119万6650円
     70万0000円×(1+0.4362+0.1903+0.083)=119万6650円
  (11) 将来雑費 940万9750円
    自宅療養中の雑費の支出は基本的には逸失利益の中から支出されるものであるが,原告X1の症状からすれば,紙おむつ,ガーゼ,カテーテル等通常不要と考えられる物品であっても,日常生活をする上で必要と認められる。
    原告らは,甲13(原告ら代理人作成の報告書)を提出して,将来雑費が年間400万円を下らないと主張するが,その物品の中には,衣服やタオル等の生活に通常必要とされる物品も含まれているので,そのままの金額を認めることはできないが,その記載されている費目に照らすと,うち年間50万円の範囲で損害と認めるのが相当である。
    原告X1の症状固定時から平均余命期間について,ライプニッツ方式により中間利息を控除して算定すると,次式のとおり,940万9750円となる。
    (計算式)
     50万円×18.8195=940万9750円
  (12) 特別仕様自動車の購入費 200万0000円
    原告X1は,前記認定したとおり,療護センター入所前,白銀クリニックの医師の訪問医療を受けており,退所後も同様に訪問医療を受ける可能性が高いことが認められる。これによると,原告X1の通院のために自動車を購入する必要性は少なく,特別に外出する場合には,タクシー等を利用する方法もあり得るのであって,原告X1の特別仕様車の自動車購入費をそのまま認めることはできない。
    そこで,上記タクシー利用等の代金として,将来分込みで200万円の限度で本件事故と相当因果関係ある損害と認める。
  (13) 休業損害 570万5120円
    証拠(甲15)によれば,原告X1は,昭和58年○月○日生まれの健康な男子で,本件事故当時,満17歳の私立D高校3年在学中であり,平成13年3月31日には高校を卒業して同年4月1日から症状固定日まで905日間の就労が可能であったと認められる。
    したがって,その間の休業損害としては,基礎収入を平成13年賃金センサス第1巻第1表による産業計・企業規模計・学歴計18歳から19歳の男子労働者の平均賃金年額230万1100円(日額6304円)として算定すると570万5120円になる。
    (計算式)
     6304円×905日=570万5120円
  (14) 逸失利益 1億0175万6277円
   ア 原告X1は上記のとおり,高校を卒業して,本件事故に遇わなければ,満20歳から満67歳まで47年間にわたり稼働可能であったが,本件後遺障害により,労働能力を100パーセント喪失したものというべきである。
     原告X1の逸失利益の算定に当たっては,平成13年賃金センサス第1巻第1表による産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者の全年齢平均賃金年額565万9100円を基礎とすべきであり,47年間のライプニッツ係数は17.9810である。
   イ 生活費の控除について
     被告は,原告X1の症状からして,生存に必要な費用は介護費等で計上されているから相当割合で生活費を控除すべきであると主張する。
     しかし,原告X1は,生きて生活する以上,衣食住等の生活費がかかるのは当然であり,介護費以外に現に生活費がかかっていることが認められるから(弁論の全趣旨),生活費の控除は相当でない。
     被告の上記主張は採用できない。
   ウ 以上により,本件事故当時の現価を算出すると,次の計算式のとおり,1億0175万6277円となる。
    (計算式)
     565万9100円×17.9810=1億0175万6277円
  (15) 慰謝料
   ア 原告X1 3200万0000円
     原告X1は,本件事故による前記受傷,入院及び後遺障害により多大な精神的苦痛を被ったものと認められるところ,本件事故の態様,前記受傷の部位及び程度,入院期間及び後遺障害の程度等を考慮すると,原告X1の入院慰謝料は400万円,後遺障害慰謝料は2800万円が相当と認められる。
   イ 原告X2及び原告X3 各300万0000円
     原告X1の後遺障害の程度等によれば,原告X2及び原告X3は,原告X1の父母として,原告X1の死亡に比肩すべき精神的苦痛を受けたものと認められ,これに対する慰謝料は,各300万円が相当と認められる。
  (16) まとめ
    以上によれば,原告らの損害は,次のとおりである。
   ア 原告X1 3億1581万9108円
   イ 原告X2及び原告X3 各300万0000円
 4 過失相殺
  (1) 前記1で認定したところの本件事故現場の状況及び本件事故の態様等に照らすと,被告と原告X1の過失割合は,被告が4割,原告X1が6割と認めるのが相当である。
  (2) 上記(1)の過失割合に従い,原告X1の損害額から6割を減額すると(原告X2と原告X3については,原告X1の過失を被害者側の過失として斟酌する。)残額は次のとおりとなる。
   ア 原告X1の損害 1億2632万7643円
   イ 原告X2及び原告X3の損害 各120万0000円
 5 賠償額
  (1) 原告X1
   ア 損害のてん補 3119万4750円
     原告X1は,本件事故による損害につき,平成15年12月11日,自賠責保険から3119万4750円の支払を受けた。(争いがない)
   イ 弁護士費用
     本件事案の内容,上記損害額その他一切の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては950万円が相当である。
   ウ 以上のとおり,被告の原告X1に対する損害賠償額は1億0463万2893円であり,被告は,上記金員とこれに対する平成12年8月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきである。
   エ 確定遅延損害金 517万0636円
     上記アで認定したとおり,3119万4750円は自賠責保険により本件事故による損害賠償金の元本債務に相当する損害としててん補されたものであるところ,3119万4750円の支払債務に対する損害発生日である本件事故の日から支払日である平成15年12月11日までの損害金517万0636円は既に発生しているものと認められる。
     したがって,原告X1のこの遅延損害金請求は理由がある。
  (2) 原告X2及び原告X3
   ア 弁護士費用
     本件事案の内容,上記損害額その他一切の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては各15万円が相当である。
   イ 以上のとおり,被告の原告X2と原告X3に対する損害賠償額は各135万円であり,被告は,上記金員とこれに対する平成12年8月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきである。
 6 民訴法157条の主張について
   原告らは,第8回口頭弁論期日において提出された被告作成の陳述書(乙2)は,時機に遅れて提出されたものであるから,民事訴訟法157条により却下されるべきであると主張する。
   しかし,上記陳述書は,第7回口頭弁論期日の原告X3本人尋問における本件事故後の被告との対応に関する供述内容に対して,被告が平成17年3月18日付で被告の記憶内容を作成したものであるから上記期日における提出はやむを得ないというべきところ,これの提出により,被告の主張が変更され,あるいは,従前の主張や証拠の内容と大きく異なる事実が判明したなどの事情はなく,原告の訴訟活動に特段の具体的不利益を与えたものとはいえない。したがって,上記陳述書の提出が時機に遅れ,訴訟の完結を遅延させたとは認められず,原告らの上記主張は採用できない。
第5 結論
   よって,原告らの本訴請求は,いずれも主文の限度で理由がある。
    千葉地方裁判所民事第5部
           裁判官  安藤裕子

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