大阪地方裁判所判決 平成23年10月5日

       主   文

 1 被告は,原告X1に対し,2億6152万0920円及びうち1500万円に対しては平成19年10月29日から,うち2億4652万0920円に対しては平成20年8月13日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告は,原告X2に対し,220万円及びうち200万円に対しては平成18年8月9日から,うち20万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告は,原告X3に対し,220万円及びうち200万円に対しては平成18年8月9日から,うち20万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 被告は,原告X4に対し,110万円及びうち100万円に対しては平成18年8月9日から,うち10万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 6 訴訟費用は,これを10分し,その6を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
 7 この判決の第1ないし第4項は,仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
 1 被告は,原告X1に対し,6億7935万1772円及びうち6億1835万1772円に対しては平成18年8月9日から,うち6100万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告は,原告X2に対し,770万円及びうち700万円に対しては平成18年8月9日から,うち70万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告は,原告X3に対し,770万円及びうち700万円に対しては平成18年8月9日から,うち70万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 被告は,原告X4に対し,550万円及びうち500万円に対しては平成18年8月9日から,うち50万円に対しては平成19年10月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 本件は,交差点において,原告X1(以下「原告X1」という。)が後部座席に乗車するタクシーと,被告が運転する普通乗用自動車が衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)により,重度の後遺障害を負った原告X1並びにその両親及び姉が民法709条又は自動車損害賠償保障法3条に基づき,それぞれ被告に対し,損害賠償(遅延損害金の起算日は,弁護士費用相当額については訴状送達の日の翌日,それ以外の損害については本件事故日)を求めた事案である。
 2 前提事実
  (1) 本件事故の発生
   ア 日時 平成18年8月9日午後8時55分ころ
   イ 場所 兵庫県伊丹市野間3丁目7番9号
   ウ 関係車両
    (ア) 普通乗用自動車(タクシー,原告X1が客として後部座席に乗車)
    (イ) 被告が運転する普通乗用自動車
   エ 態様及び経緯
     信号機の設置されている上記場所の交差点において,東から西に直進しようとした上記タクシーの右側面に,北から南へ直進しようとした被告運転車両が衝突した。信号表示は,上記タクシー側が青色であり,被告運転車両側が赤色であった。
   (甲A1,2,乙1)
  (2) 当事者等
   ア 原告X1は,昭和52年○月○○日生(本件事故当時28歳)の男性であり,本件事故当時,B株式会社に勤務する会社員であった。
   イ 原告X2(以下「原告X2」という。)は原告X1の父,原告X3(以下「原告X3」という。)は原告X1の母,原告X4(以下「原告X4」という。)は原告X1の姉(以下,原告X2,原告X3及び原告X4を併せて「原告X2ら」ともいう。),C(以下「C」という。)は原告X1の弟である。
     原告X2及び原告X4は,平成19年6月28日に審判により原告X1の成年後見人に選任され,同審判が同年7月31日に確定した(大津家庭裁判所彦根支部平成19年(家)第177号)。
   ウ 原告X1は,本件事故の約2か月前である平成18年6月18日にD(以下「D」という。)と結婚したが,原告X1の介護方法等を巡って原告X1の親族とDとの間で関係が悪化したこと,Dが急性ストレス障害及び不安障害を発症したことなどから,婚姻を継続し難い重大な事由があるとして,Dが離婚請求訴訟を提起し,平成20年10月1日にこれを認容する判決が言い渡され,同判決は同月17日に確定した(神戸家庭裁判所尼崎支部平成20年(家ホ)第42号)。
   (甲A9~12,15,89の1・2,116,118,弁論の全趣旨〔以下,枝番のあるものについて,特記しないときは枝番をすべて含む。〕)
  (3) 責任原因
    本件事故は,対面信号の赤色表示に従わずに交差点に進入した被告の一方的過失により生じたものであり,被告は,原告X1に対し,民法709条に基づく損害賠償責任を負う。(争いなし)
  (4) 原告X1の傷害及び治療経過等
    原告X1は,本件事故により,頭蓋骨・顔面骨骨折,急性硬膜外血腫,重症脳損傷,外傷性くも膜下出血等の傷害を負い,次のとおり合計1057日間入院した。平成21年7月1日以降は,滋賀県東近江市所在の自宅(以下「原告X2宅」という。)で,原告X2及び原告X3と同居し,同原告らの介護を受けながら生活している。
   ア 関西労災病院(兵庫県尼崎市稲葉荘3丁目1番69号所在)
     平成18年8月9日から平成19年6月13日まで(309日)
   イ 独立行政法人自動車事故対策機構の中部療護センター(以下「中部療護センター」という。)(岐阜県美濃加茂市古井町下古井630所在)
     同日から平成21年6月11日まで(730日)
   ウ ヴォーリズ記念病院(滋賀県近江八幡市北之庄町492所在)
     同日から同月30日まで(20日)
   (甲A4,5,7,8,136,140,弁論の全趣旨)
  (5) 原告X1の後遺障害
    原告X1は,中部療護センターにおいて,本件事故による症状が平成20年1月31日(当時30歳)に固定したと診断されたが,遷延性意識障害,四肢・体幹運動障害の後遺障害が残存し,気管切開下状態が続いている。
    自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の後遺障害認定手続においては,上記後遺障害につき自動車損害賠償保障法施行令別表第一(以下「自賠等級」という。)第1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」に該当するものと判断された。
    労働者災害補償保険法に基づく後遺障害認定手続においては,同法施行規則別表第一第1級3号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」に該当するものと判断され,障害者自立支援法に基づく障害程度区分認定手続では,平成21年3月17日に最も重い区分6と認定された。
   (甲A17~26,77,121,131,弁論の全趣旨)
  (6) 既払金等
    原告X1は,本件事故に関し,別紙1既払金等一覧表のとおり,自賠責保険金,労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)給付(休業補償給付,障害補償年金,介護補償給付)及び障害基礎厚生年金を受領したほか,被告側保険会社から支払を受けた。なお,他に労災保険及び被告側保険会社から治療費,診断書料及び物的損害に対する損害賠償金等が支払われているが,本件では,これらは損害として請求されていない。
   (甲A76,78,110,111,121,122,209,220,223,244~246,253,254,弁論の全趣旨)
第3 争点及び当事者の主張
 1 原告X1の損害(争点1)
   原告ら及び被告の主張の詳細は,別紙2主張対比表のとおりである。(以下では,原告らの主張の要点を本文に,被告の認否の要点を【 】内に記載する。)
  (1) 治療費 0円(労災保険により支払済みであり,請求していない。)【認否しない】
  (2) 転院先探しのための代理診療費用 8万7730円
   【後記(5)の入院付添い関連費用が全額否定されることを条件に全額認める。】
  (3) 入院雑費 81万1500円
    症状固定日までの入院期間541日につき日額1500円として合計81万1500円の入院雑費を要した。【認める。】
  (4) 症状固定までの入院付添費 1054万9500円
    症状固定日までの入院期間541日につき,1人日額6500円,3人分の付添看護を要し,合計1054万9500円の入院付添費を要した。【Dが付添看護をしており,その費用はDに支払済みである。原告X2らの付添看護費は,半月に1回として39回,1回当たり3000円,合計11万7000円の限度で認める。】
  (5) 入院付添い関連費用
   ア 入院付添いのための交通費等 172万3220円
    【22万6200円の限度で認める。】
   イ 入院付添いのためのホテル宿泊費の立替分 33万3300円
    【否認する。】
   ウ アパート賃借費用 69万2700円【否認する。】
  (6) 休業損害 420万5394円【認める。】
  (7) 入院慰謝料 595万円【395万円の限度で認める。】
  (8) 眼鏡代 8万4000円【認める。】
  (9) 結婚式費用 172万5973円【否認する。】
  (10) Dとの離婚等請求事件の弁護士費用等 65万1000円
    【否認する。】
  (11) Dへの離婚慰謝料 320万円【否認する。】
  (12) 後遺障害慰謝料 3500万円【2800万円の限度で認める。】
  (13) 後遺障害逸失利益 8388万2535円
    【8279万9662円の限度で認める。】
  (14) 将来の治療費 517万8528円【否認する。】
  (15) 将来の雑費 1968万9195円
    日額3000円として症状固定時点の平均余命である47年分である。
    【否認する。生活費又は将来介護費に含まれる。】
  (16) 将来看護費
   ア 平成20年2月1日(症状固定日の翌日)から平成21年6月30日(退院)まで 663万円
     1日につき1人6500円,2人の付添看護を要したとして,17か月分である。
    【17か月間につき半月に1回の合計34回(対応するライプニッツ係数32.791),1回当たり6000円として,合計19万6746円の限度で認める。】
   イ 平成21年7月1日(自宅介護開始)から平均余命まで 2億4862万3400円
     1日につき1人2万円,2人の付添看護を要するとして,症状固定後1年目(自宅介護開始)から47年目(平均余命)までである。
    【1日につき1人8000円として,合計4972万4680円の限度で認める。】
  (17) 症状固定後の入院付添い関連費用
   ア アパート賃借料 102万円【否認する。】
   イ 入院付添いのための交通費等 17万円
    【15万2923円の限度で認める。】
  (18) 自動車購入費用 1521万0546円
   【8万1000円の限度で認める。】
  (19) 家屋改造費用 6410万1335円
   【1451万7888円の限度で認める。】
  (20) 介護器具代 3777万5734円
   【222万3064円の限度で認める。】
 2 既払金の充当及び弁護士費用(争点2)
 (原告らの主張)
  (1) 原告X1は,前提事実(6)のとおり自賠責保険金,労災保険給付及び障害基礎厚生年金を受領したところ,これらは,それぞれ受領日までの遅延損害金にまず充当され,残額が元本に充当されるべきである。
  (2) 上記計算により,平成23年4月30日までの既払金を充当すれば(別紙3),残額は6億1835万1772円(うち元本は5億4729万5590円,未払遅延損害金は7105万6182円)となる。
  (3) 弁護士費用は,6100万円が相当である。
  (4) よって,原告X1の損害額は,6億7935万1772円(うち遅延損害金は7105万6182円)となる。
 (被告の主張)
  (1) 社会保険給付は,元本に充当されるべきである(最高裁判所平成22年9月13日判決,同平成22年10月15日判決参照)。
  (2) 弁護士費用は,争う。
 3 近親者固有の損害(争点3)
 (原告らの主張)
  (1) 固有の慰謝料
   ア 原告X2及び原告X3 各700万円
   イ 原告X4 500万円
  (2) 弁護士費用
   ア 原告X2及び原告X3 各70万円
   イ 原告X4 50万円
 (被告の主張)
   否認ないし争う。姉である原告X4は,民法711条所定の者に当たらない。
第4 当裁判所の判断
 1 原告X1の損害を算定する際の前提となる事実ないし判断について
  (1) 原告X1の状況について
   ア 症状固定日の時点
     原告X1は,症状固定日である平成20年1月31日の時点で,①遷延性意識障害,②四肢・体幹運動障害が残存し,③経鼻的経管栄養管理状態,④気管切開下状態にあった(甲A17)。
     上記①遷延性意識障害については,「極簡単なあいさつ程度の言語であれば理解可能なるも,発語なく言語による意思疎通を図ることは極めて困難である」,上記②四肢・体幹運動障害については,「自発運動は極めて制限されており,自力での寝返り,移動,食事摂取,排泄は不可能につき介助がなければ常時臥床状態にあり」という状況であった(甲A17)。
   イ 症状固定日から現在までの状況
     証拠(甲A97,137,138,221,227,乙14の1・91頁,286~295頁,乙15の1・11頁,36頁),括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
    ① 意識障害について
      原告X1の意識障害については,一定の改善がみられ,中部療護センターの診療録(乙14の2・53頁,20頁)には,「筆談にて会話可能,8割程度,正確な返答で記入する」,「知脳テストをおこなうと約8割正確している」などの記載があるが,「反応にムラがあり,正確な返答が得られない」などの記載もある。
      発語はわずかにできるようになりつつあるが(乙20・59頁,60頁),意思表示は,主に筆談,携帯用会話補助装置「トーキングエイド・ライト」(50音等が並んだ文字盤を押してメッセージを作成し,喋らせる装置。以下「トーキングエイド」という。)や,首又は右手の上下によって行っている。家族や日常的に接する者との間では,上記の手段により簡単なコミュニケーションがとれるが,意思疎通に必要な動作は極めて遅く,また主に受動的なものであり,集中できる数分を過ぎると反応が乏しくなる。それ以外の者との間では,自分から意思表示をすることはなく,話しかけられても反応が乏しい。
    ② 四肢・体幹運動障害について
      体幹の筋力は十分といえず,数分以上の座位保持は困難な状況である。四肢が拘縮しており,自力で動くことはできない。自分で寝返りをうつことができないので,1日7回前後(うち深夜の時間帯は1,2回),体位変換を行う必要がある。原告X1は,筋緊張が亢進しやすく,1日2,3回,1回10分程度の全身マッサージが必要である。
      右上肢のみ合目的動作可能であり,中部療護センターの診療録には,「電動車椅子に乗車。右手でコントロールレバーを把持し車椅子を動かす。直進,後進,右折,左折など可能であるがぶつかったりするので,監視と声かけが必要」,「車イス乗車にてテレビまえまで移動介助するが自己にて右手でタイヤをまわし移動する」などの記載があるが(乙14の2・69頁,276頁,14頁),同センターの診療録に「麻痺の程度 右上肢 中等度 自発運動可能なるも実用性なし」,「車椅子自走可能だが,まっすぐこげず,実用的でない」との記載もあり(乙10・27頁,乙14の1・88頁),E医師は「おおむね意図して操舵することはできない状態である」旨述べている(甲A227)。
    ③ 栄養管理状態について
      朝,夕は,経口により胃管を挿入され,ラコール(栄養剤)と白湯の注入を受けている。
      昼は,リハビリ及び楽しみのため,右手でスプーンを使用して全粥,ペースト食,ゼリー等を摂取している。中部療護センターの診療録(乙14の2・276頁)には,「嚥下ゼリー2カップ おもゆペースト1カップ摂取,その後 家族持参のコーヒーゼリーを1カップ摂取 動作が止まることなく30分程度で摂取,嚥下良好」などの記載がある。このように意識レベルの改善に伴い,嚥下ができるようになったが,常に誤嚥の可能性があるため,看視を要し,誤嚥があれば,気管切開部から吸引をする必要がある。
    ④ 気管切開下状態について
      気管切開下状態が続いており,1日に7回前後(深夜の時間帯は1,2回),痰を吸引する必要がある。平成22年4月29日に肺炎を起こしており,吸引回数を減らすと,肺炎を併発する危険が高くなる。他に,1日2回気管カニューレの内筒洗浄を行い,気管挿入部に肉芽ができやすいため,1日1回リンデロン軟膏を塗布する必要がある。
    ⑤ 排泄について
      おむつを使用し,排尿は1日5,6回程度,排便はラキソベロン(便秘治療薬)を投与してコントロールし,4日に1回程度行うが(乙14の2・298~546頁),調子の悪いときは摘便を行うこともある(乙21の1・5頁)。おむつは,体位変換と同じタイミングで点検し,必要があれば交換する。
    ⑥ その他
      衣服の着脱,身体の清拭,整容,口腔ケア,入浴(週3回,2人で行う。),ベッドと車椅子等との間の移乗(2人で行う。)等は,いずれも全介助を要する。平成22年3月4日の時点でADL(日常生活動作)は0点(全介助を要する)とされている(乙20・53頁)。
      自律神経障害のため,体温調節機能の障害がみられ,体温が38℃を超えると危険な状態が予想され,体温管理は生命維持に不可欠である。
   ウ 前項の認定に関し,原告らは,体位変換を昼間は2時間に1回,夜間は3時間に1回必要とし,痰の吸引を1日15回程度必要とする旨主張し,これに沿うヴォーリズ記念病院における主治医であるE医師(以下「E医師」という。)の意見書(甲A221,227)を提出する。
     しかしながら,E医師は,自動体位変換マットの仕様で介護の負担が軽減されることは認めている。痰の吸引については,痰の粘性や量が多いということから,その頻度を下げてはいけないと判断したものであるが,現状で1日15回程度吸引していることが前提となっている。しかし,同医師が上記頻度を特定した根拠は明らかではない。関西労災病院の診療録には「6回/日以上の頻回の吸引 始期18年8月9日~終期19年6月13日」との記載があり(乙9の1・652頁),中部療護センターの診療録には「1日6回弱の吸引が必要」(乙14の1・306頁)との記載があり,同診療録中の「検温表・フローシート」及び「ケア表」に記録された入院期間中の日々の吸引や体位変換の頻度は原告X1主張のものよりかなり少なく(乙14の2・297頁~546頁),ヴォーリズ記念病院の診療録には「吸引4~5回/日(夜間1~2回)」(乙15の1・11頁),「睡眠中は痰少ない(中略),気切より自己排痰されることもあり」(乙15の1・34頁)などの記載があり,訪問看護□□の訪問看護報告書にも「白黄色粘調痰 吸引する(5回/1日)」との記載がある(乙21の1・1頁)。これらによれば,E医師の上記意見及び原告らの上記主張は,そのまま採用することができない。
  (2) 原告X1の介護体制について
    証拠(甲A158,213),括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
   ア 原告X1は,ヴォーリズ記念病院から退院した平成21年7月1日以降は,概ね原告X2宅で生活しているが,同病院で月1回気管カニューレの交換及び診察を受け,週1回リハビリ(理学療法,作業療法,言語聴覚療法)を受けている。同病院には自動車で通っている。
   イ 原告X2宅では,主に家族(原告X2宅に住む原告X2,原告X3及びC並びに原告X2宅の近くに住み,夫及び子のいる原告X4)による介護を受けているが,以下のような介護サービスも利用している。
    (ア) 週に3回(月,水,金),午前11時から12時まで,自宅に看護師1名と介護士1名に来てもらい,入浴介助,気管切開口管理,痰の吸引,健康状態の確認等を受けている。
      看護師については,訪問看護□□と訪問看護契約を締結しているが(甲A141,142),現状では,医療保険により看護料の自己負担はなく,交通費1回525円(月額6825円)のみ自己負担となっている(甲A203)。介護士については,東近江市の障害福祉サービスによるものであり,現状では,月額上限1500円の自己負担により1か月20時間までの介護を受けることができ,自己負担額は月額1500円である(甲A146,204,205の1~4)。
    (イ) 週に1回(土),午後1時から4時まで,自宅に介護士1名に来てもらい,介護を受けている。△△によるものであり,現状では,自己負担額は1時間690円(1回2070円)である(甲A150,151)。
   ウ 労災保険から,月額10万4960円の介護補償給付の支払を受けている(前提事実(6))。また,東近江市から,月額2万6440円の特別障害者手当の支給を受けている(甲A247)。
  (3) 本件事故と相当因果関係のある介護関係費,介護器具代等について
    一般的に,介護設備,介護器具,介護プラン等には多様なものがあり,これらを多く利用するほど手厚い介護が可能となるといえる。被害者の生活の快適度が増す場合や,被害者の症状の悪化防止又は改善に寄与する可能性があるという場合に,家族がこれらをできる限り利用したいと考えることは当然といえる。
    しかし,損害賠償制度の基本理念である公平の観念に照らして,上記介護の費用をすべて加害者に賠償させることはできない。例えば,
   ア 家族が有効であると考えて利用しているが,医学的観点からの有効性,必要性が必ずしも一般に承認されていない場合に,その費用を加害者に負担させるのは相当でない。
   イ 同程度の要介護者が,通常一般に受けられる介護の水準からかけ離れた高い水準の介護については,その費用を全面的に加害者に負担させるのが相当であるとはいえない。
     一般の介護では,公的扶助の他は,その家庭の現実の経済事情が許す範囲内で介護をせざるを得ないが,不法行為により要介護状態に至った場合には,必要といえる介護等の費用は被害者の経済事情とは関係なく加害者が負担しなければならない。しかし,そうであるとしても,通常一般の水準からかけ離れた高い水準の介護体制や設備のための費用であったり,他の比較的安価な介護体制や設備でも代替できたりするものについては,全面的に加害者に負担させることは相当でない。
   ウ 被害者の症状に対処するために必須の費用と,必須ではないが被害者や家族の生活を豊かにするために必要となる費用があるといえるところ,後者のうち一定部分については,本来,後遺障害逸失利益から支出されるべき生活費に含まれているといえる。また,被害者が日常的に使用し,使用する予定の介護用品についても,生活費というには高額に過ぎ,別途の損害項目として認めるべきものもあり得るが,原則としては,同様に後遺障害逸失利益から支出されるべき生活費に含まれているとすべきである。
 2 争点1(原告X1の損害)について
  (1) 治療費 0円
    原告らは,治療費につき労災保険等から支払済みであることを認めているため,損害額として計上しない。
  (2) 転院先探しのための代理診療費用 8万7730円
    証拠(甲A81)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は,平成19年2月ころ以降,関西労災病院から転院を求められたこと,原告らは,転院先を探して,兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンターリハビリテーション西播磨病院(平成19年2月27日),ボバース記念病院(同年3月3日),兵庫県立総合リハビリテーションセンターリハビリテーション中央病院(同月8日)及び中部療護センター(同年4月19日)で代理診療を受け,診察料及び親族の付添交通費として合計8万7730円を要したことが認められ,これは本件事故による損害と認められる。
  (3) 入院雑費 81万1500円
    本件事故の日から症状固定日までの入院541日間につき1日1500円として計算した額であり,当事者間に争いがない。
  (4) 症状固定までの入院付添費 270万5000円
   ア 証拠(甲A31~33,82)及び弁論の全趣旨によれば,症状固定日までの541日の入院の間,妻のD,原告X2ら及びCのうちいずれか又は複数名が毎日付添いを行い,意識の回復を促すために声かけやマッサージ等をして五感を刺激したり,自力ではナースコールができない原告X1のために異常事態に備えたりしていたことが認められる。関西労災病院は兵庫県尼崎市に所在し,原告らの自宅のある東近江市からは遠方であるので,原告X2らは近くのホテル(東横イン等)に宿泊して付添いをした。また,中部療護センターは岐阜県美濃加茂市に所在し,これも遠方であるので,原告X2は近くのアパート(岐阜県美濃加茂市(以下略)所在の◇◇101号室)を月額家賃等6万円で賃借して付添いをした(甲A13,37,39)。原告X1の症状に照らせば,上記付添いは,必要性,相当性が認められる。被告又は被告側保険会社からDに一定額が支払われたことが認められるものの,これはD自身の休業損害や慰謝料等も含めて支払われたものと認められる(甲A16,弁論の全趣旨)。さらに,Dは,当初は毎日付き添っていたことが認められるが,本件事故の2か月弱後である平成18年10月6日に急性ストレス障害,不安障害との診断を受けたこと(甲A15)及び原告X2らが行っていた付添介護の内容(甲A31~33)に照らせば,本件での症状固定日までの入院付添費は,原則として交通費を含め,前記541日を通じて日額5000円として,合計270万5000円を相当と認める。
   イ 原告らは,1日につき1人6500円として3人分の付添看護費を認め,かつ,交通費も別途認めるべきである旨主張するが,各病院では,必要な限度の看護は基本的に看護師等により行われていたものと認められ,原告X2らが行っていた上記介護内容に照らせば,入院付添費は前記の額が相当であり,原告らの上記主張は採用することができない。
   ウ 被告は,原告X1にはDが付添いをしており,入院付添費はDに支払済みであるから,原告X2らの入院付添費は半月に1回,1日3000円の限度で認められるべきである旨主張するが,上記の認定額は,Dも付添いをしていたことやDに支払済みの金額も考慮した額であることは前記のとおりである。
  (5) 入院付添い関連費用
   ア 入院付添いのための交通費等 20万円
     前記の入院付添費は,原則として交通費も考慮して算定したものであること,後記のとおりホテル宿泊費やアパート賃借費用が認められ,その目的に照らしてホテルやアパートは病院に近接したものを利用すべきであることなどから,原告ら主張の交通費の全額を損害として認めることはできない。
     もっとも,滋賀県東近江市所在の原告X2宅と,兵庫県尼崎市所在のホテル又は岐阜県美濃加茂市所在のアパートとの間の往復には相当額の交通費を要し(電車賃は,前者につき往復3240円程度,後者につき往復4360円を要する。甲A84),その額に照らして,これらが入院付添費に含まれているとするのは原告らに酷といえること,入院541日の間には付添人の交代が必要であると解されることなどに照らし,20万円の限度で交通費を認めることとする。
   イ 入院付添いのためのホテル宿泊費の立替分 33万3300円
     前記のとおり原告X2らの入院付添いの必要性が認められるところ,滋賀県東近江市所在の原告X2宅と兵庫県尼崎市所在の関西労災病院とを毎日往復することは,肉体的,精神的負担が大きく,困難であるといえるから,原告X2らが要したホテル宿泊費の立替分33万3300円は本件事故による損害と認めるのが相当である。
   ウ アパート賃借費用 69万2700円
     前記のとおり原告X2らの入院付添いの必要性が認められるところ,滋賀県東近江市所在の原告X2宅と岐阜県美濃加茂市所在の中部療護センターとを毎日往復することは,肉体的,精神的負担が大きく,困難であるといえること,症状固定までの同センターへの入院日数(232日間)に照らし,原告X1の主張に係るアパート賃借費用がホテル代と比べて高額とはいえないことなどから,原告X2らが要したアパート賃借費用69万2700円(当初費用と平成19年6月(18日分)から平成20年1月分の家賃・甲A13,85)は,本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
  (6) 休業損害 420万5394円
    争いがない。
  (7) 入院慰謝料 395万円
    症状固定までの入院期間(541日),原告X1が負った傷害の程度等に照らし,入院慰謝料は395万円が相当であると認める。
    原告X1は,本件事故により原告X1がDと離婚するに至ったことを増額事由とすべきである旨主張するが,その事情に関しては後遺障害慰謝料において考慮することとする。
  (8) 眼鏡代 8万4000円
    争いがない。
  (9) 結婚式費用 0円
    原告X1とDの結婚式は,本件事故の約2か月前に行われており(甲A88),その費用が遡って本件事故による損害となるとは解されない。
  (10) Dとの離婚等請求事件の弁護士費用等 0円
    原告X1とDの離婚については,本件事故により原告X1が遷延性意識障害となったことが原因ではあるが,他にも,原告X1の介護方法等を巡ってDと原告X2らとの考え方の違いが明らかになり,関係が悪化したことなどの様々な原因があるといえる。さらに,裁判による離婚を余儀なくされたのは,離婚手続をするのに原告X1の意思を確認できる状況になく,成年後見人を当事者とする訴訟による他なかったことにあると認められる。裁判で被告とされた成年後見人らは婚姻を継続し難い重大な事由があることは認め,離婚後の慰謝料の支払等についても,判決前に予め合意していたのであって(甲A93,116),この訴訟での応訴に弁護士を委任することが特段必要であったとも認められない。離婚請求訴訟の弁護士費用は,本件事故と相当因果関係があるとはいえない。
  (11) Dへの離婚慰謝料 0円
    本件事故により原告X1が遷延性意識障害となり,離婚に至ったことから,直ちにDの原告X1に対する慰謝料請求権が発生するものとは解されず,上記慰謝料が支払われたことについては,他の様々な原因が寄与しているものと解されるから,上記慰謝料については,本件事故と相当因果関係があるとはいえない。
  (12) 後遺障害慰謝料 3000万円
    原告X1が,本件事故により重度の後遺障害(自賠等級1級1号)を負い,生涯にわたり全面的な介護を要する状態となったこと,当時28歳の会社員であったこと,本件事故の約2か月前にDと結婚したばかりであったこと,上記後遺障害を負ったことなどによりDと離婚するに至ったこと,本件事故は,対面信号の赤色表示に従わずに時速約40kmで交差点に進入した被告の重大な過失によるものであること,後記のとおり,原告X2らに固有の慰謝料が認められること,Dにも別途慰謝料を含む和解金が支払われたこと(当庁平成19年(ワ)第14673号〔記録上明らかである。〕)。などの事情を総合し,後遺障害慰謝料は3000万円を相当と認める。
  (13) 後遺障害逸失利益 8280万0653円
    基礎収入を495万4800円(平成20年賃金センサス高専・短大卒・全年齢・男性労働者平均賃金,甲A94),労働能力喪失率を100%,労働能力喪失期間を67歳まで37年(症状固定時30歳,対応するライプニッツ係数16.7112)とすれば,後遺障害逸失利益は,8280万0653円となる。
  (14) 将来の治療費 0円
    前記のとおり,原告X1は,筋緊張や関節拘縮に対応するため1日2,3回のマッサージを受ける必要があるが,介護者によるマッサージでは足りず,アロマテラピーマッサージ(1回6000円)を受けるべき必要性が医学的観点から一般的に承認されているとは認めるに足りず,これを本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。
  (15) 将来の雑費 0円
    証拠(甲A211,213)及び原告X1の前記症状等に照らせば,原告X1の介護のため,アルコール綿,手袋,人工鼻(サーモベント),ガーゼ等を購入する必要があることが認められるが,これらの費用は,逸失利益の中から支出されるべき生活費に含まれているものと解され,本件では,別途の損害としては認められない。
  (16) 将来看護費
   ア 平成20年2月1日(症状固定日の翌日)から平成21年6月30日(退院)まで 309万6000円
     中部療護センター及びヴォーリズ記念病院における症状固定後の入院付添費については,前記第4の2(4)アと同様に,原則として交通費を含め,この時期はDは付添いをしていないことも考慮し,上記516日間を通じて日額6000円として,合計309万6000円を相当と認める。
   イ 平成21年7月1日(自宅介護開始)から平均余命まで 1億2430万9510円
    (ア) 前記のとおり,原告X1の介護としては,①それぞれ1日7回前後(うち深夜の時間帯は1,2回程度)の痰の吸引,体位変換及びおむつ点検ないし交換,②朝,夕の経口による胃管の挿入並びにラコール及び白湯の注入,昼のペースト食等の摂取の介助,看視,③1日2,3回,1回10分程度の全身マッサージ,④1日2回の気管カニューレの内筒洗浄,1日1回の気管挿入部へのリンデロン軟膏塗布,⑤衣服の着脱,身体の清拭,整容,口腔ケア,入浴(週3回),ベッドと車椅子等との間の移乗等の介助,体温管理,⑥ヴォーリズ記念病院での月1回の診察と週1回のリハビリへの付添いなどの物理的な介助のほか,痰の吸引の必要性その他の異常の有無等を終始看視する必要があり,リハビリの補助や声かけ等の精神面のケアも必要であるといえる。これらの介護のうち,ベッドと車椅子等との移乗及び入浴については2人を要するが,それ以外については1人で行うことが可能であると認められる。
      なお,E医師は,昼間は2人以上の介護者が常時必要である旨の意見を述べるが(甲A227),同意見が前提としている痰の吸引や体位変換の頻度は前記の認定と異なるものであるし,同意見においても,2人の介護者を要するのはベッドと車椅子等との移乗及び入浴であり,他の機会に具体的に2人の介護者を必要とするとはされておらず,技術を習得し,福祉機器を活用すれば,1人の介護者で足りるとするF医師の意見(乙16)に照らしても,昼間2人以上の介護者が常時必要であるとはいえない。
    (イ) 上記(ア)のような介護につき,平成21年7月1日から現在まで,家族(原告X2,原告X3,原告X4及びC)が交代で担当するとともに,前記の公的な介護サービスを利用して行っているから,今後も同様に,家族による介護を基本としつつ,一部公的な介護サービスを利用する体制で介護が行われるものと認められる。もっとも,原告X2及び原告X3の年齢(平成19年3月5日時点で原告X2は60歳,原告X3は56歳,乙14の1・66頁)や,原告X4には夫と子がいることにかんがみれば,原告X2及び原告X3が高齢になった後は,職業介護人による介護が必要となり,その依存割合は高くなるものと解される。
    (ウ) 以上の事情のほか,原告X1の介護に対応するために原告X2宅を改築したこと,後記のとおり様々な介護器具等の利用が予定され,その損害賠償が認められていること,引き続き医療保険,労災保険及び障害者自立支援法に基づく公的な介護サービス等を相当程度利用することができ,労災保険からの介護補償給付や東近江市からの特別障害者手当を受給することができると見込まれること(今後40年以上の間には,制度の改変や自己負担割合の変更があり得るものの,相当程度の水準の保険制度及び公的な介護サービスは維持されるものと期待できる。),家族による自宅介護が困難な状況に至った場合は施設介護を選択する余地もあるといえること(乙22,24)などを総合考慮すれば,介護費用の日額は,症状固定時点での平均余命期間を通じ,家族及び職業介護人による介護を合わせて,平均して日額2万円とするのが相当である。
      そうすると,症状固定時点(平成20年1月31日,30歳)での平均余命を原告らの主張どおり47年間(対応するライプニッツ係数17.9810)とし,症状固定時点から自宅介護開始時(平成21年7月1日,原告X131歳)までを1年(対応するライプニッツ係数0.9523)とみて,症状固定時点での現価計算を行えば,将来の介護費用は,1億2430万9510円となる。
    (計算式)20,000×365×(17.9810-0.9523)=124,309,510
  (17) 症状固定後の入院付添い関連費用
   ア アパート賃借費用 102万円
     中部療護センターでの入院付添いのためのアパート賃借費用のうち,症状固定後の期間に係る102万円(家賃等6万円×平成20年2月から平成21年6月までの17か月分)は,前記第4の2(5)ウと同様に,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる(甲A13)。
   イ 入院付添いのための交通費等 17万円
     前記第4の2(5)アと同様に,滋賀県東近江市所在の原告X2宅と岐阜県美濃加茂市所在のアパートとの間の往復には,4360円程度の電車代を要すること,症状固定後の中部療護センターでの入院497日間については付添人の交代が必要であると解されることなどに照らし,入院交通費17万円を要したとの原告らの主張は相当と認められる。
  (18) 自動車購入費用 354万6000円
   ア 前記のとおり,原告X1は,ヴォーリズ記念病院で月1回受診し,週1回リハビリを受けているところ,そのための交通手段として車椅子のまま乗車できる自動車を購入する必要があると認められる(乙14の1・36頁)。証拠(甲A98,99,乙26,31)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は,トヨタヴェルファイア・サイドリフトアップシート車を購入し,上記通院等に使用していること,上記車両の本体価格は484万円であること,この費用は,介護タクシーを利用し続けるよりは安価といえることが認められる。
     被告は,トヨタヴェルファイアの通常車両416万9000円との差額のみを損害と認めるべきである旨主張するが,原告X1が重度の後遺障害を負っていなければこの大きさの車両を必要としたとは解されないから,損害を上記差額に限定するのは相当ではない。また,被告は,車椅子は別途損害として認められているから,車椅子が付属している車両は不要である旨主張するが,屋外用と屋内用の車椅子が必要であり,車両に付属している車椅子を屋外用として使用している旨の原告らの説明に照らし,被告の上記主張は採用しない。
     しかし,以上の事情のほか,上記車両により家族も便益を受けているといえることも総合考慮して,本体価格484万円の概ね3割相当の150万円を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
   イ 原告らは,上記自動車の耐用年数を7年である旨主張するが,一般に,自動車は,週に1回程度の利用頻度であれば,10年程度は使用することができるものと解される。
   ウ 症状固定時点からの平均余命47年間について,10年ごとに4回買い替えるとすれば,自動車購入費用は354万6000円と認められる。
    (計算式)1,500,000×(1+0.6139+0.3768+0.2313+0.1420)=3,546,000
  (19) 家屋改造費用 1270万7888円
    原告らは,原告X1の介護のために原告X2宅の増改築をし,6410万1335円を支払ったことが認められる(甲A100~102,159~180,214~217,222,224)。
    そこで検討するに,上記改築は,従前の建物の北側部分を解体した上で相当床面積を広げて基礎から建て直すというものであり,その工事の中には,以下のとおり,本件事故と相当因果関係の認められないものがかなりの程度含まれているといえる。
   ア ①家屋改造工事費用4887万0420円の主張のうち,原告X1の居住スペースを1階に集中して設けたこと,バリアフリー化したこと,車椅子やストレッチャーで出入りできるように扉を改造したこと,浴室を介護に対応するように改造したことなどは,必要性,相当性が認められる。しかし,原告X1の居住スペースは1階に集中して設けられているため,2階部分の改築やホームエレベーターの設置は本件事故との相当因果関係が認められないこと,オムツを使用している現状に照らしてトイレの改造も原告X1の症状に対応するために必要であるとはいえないこと,標準仕様を越える屋根瓦,外壁,内装,窓・雨戸の仕様変更や,高気密・高断熱仕様,全館空調・換気システムは,本件事故との相当因果関係が認められないこと,その他原告X1の介護のために必要な改造部分についても,家族が便益を受ける面があることなどの事情がある。
     原告らは,2階に原告X1が毎日リハビリを行うためのリハビリ室,看護師・介護士の休憩室及び日常の消耗品の倉庫を設ける必要がある旨主張する。しかし,原告X1の現在の症状や,通常一般の自宅における介護設備の水準に照らし,寝室のある1階から2階のリハビリ室に上がってリハビリを行うことに必要性,相当性があるとは解されない。また,看護師・介護士の専用の休憩室を設けることは,通常一般の介護設備の水準を超えたものというべきである。倉庫を2階に設けることについても,必要性が明らかとはいえない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
   イ ②外構工事費用787万6680円については,北側道路から車両が出入りしやすいように車庫を設置したこと,車庫から玄関までのスロープを設けたことなどは,原告X1の症状に対応するために必要性,相当性が認められる。しかし,南側通路の工事,裏庭の工事,ブロックの改修及び門柱工事等については,本件事故と相当因果関係のあるものとは認められないこと,その他原告X1の介護のために必要性が認められる部分についても家族が便益を受ける面があることなどの事情がある。
   ウ ③水回り・エアコン等設置費用245万0129円については,体温管理が重要である原告X1のために浴室にエアコンを設置したことなどについては必要性,相当性が認められる。しかし,標準仕様を越えるシステムキッチン等の仕様変更については本件事故との相当因果関係が認められないこと,エコキュートは原告X1の症状に対応するために不可欠とはいえないこと,浴室以外のエアコンは一般の住宅の居室に設置されているものといえるので,本件事故との相当因果関係が認められないこと,その他原告X1の介護のために必要性が認められる部分についても家族が便益を受ける面があることなどの事情がある。
   エ ④地鎮祭等の費用24万9826円,⑤門柱・石畳等費用305万4000円,⑥袖石据え付け・葉刈り・石積み修復費用71万3525円,⑦食器棚20万6800円は,いずれも原告X1の症状に対応するために必要な改修等とは解されず,本件事故との相当因果関係が認められない。⑧東近江ケーブルネット関係費用7万9955円は,後遺障害逸失利益から支出されるべき生活費に含まれるというべきであり,別途の損害としては認められない。
   オ ⑨改装中の仮住まいお礼60万円(5万円×12か月)については,工事期間中にCが親戚の家で寝泊まりさせてもらったことへのお礼として支払われたものであるところ(甲A176,179),その趣旨やこれまで認定したところに照らし,12か月の全期間については本件事故との相当因果関係が認められず,5割相当の30万円の限度で本件事故による損害と認められる。
   カ 以上によれば,①家屋改造工事費用,②外構工事費用,③水回り・エアコン等設置費用,⑨改装中の仮住まいお礼のうち,一定割合に限り本件事故と相当因果関係があるといえる。
     被告の提出する建築士の意見書(乙28,29)による1451万7888円は,上記必要性が認められる費用が概ね含まれていると認められる。ただし,後記のとおり浴槽(浴槽昇降タイプ)の必要性を認める以上,天井走行リフトの設置は不要であるのでその費用220万円(乙28)と消費税相当額11万円を差し引く。また,上記判示のとおり,浴室用エアコン1台分の費用及び設置費用として,甲A166号証の1,179号証に照らして20万円を加算するのを相当と認める。さらに,改装中の仮住まいのお礼のうち30万円を加算するのが相当である。
     よって,家屋改造費用としては,1270万7888円(1451万7888円-231万円+20万円+30万円)の限度で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
  (20) 介護器具代
   ア 介護浴槽とストレッチャー 472万8000円
     原告らは,浴槽(浴槽昇降タイプ)及び電動ストレッチャーを合計584万8500円で購入したことが認められる(甲A183,185の2~4,199)。
     しかし,被告が一般的な介護用浴槽は130ないし150万円で購入できると主張していること,原告らが提出するカタログ(甲A183の2の2)にも,原告らが購入した浴槽は,デイサービス,病棟用のものである旨が記載されており,自宅に設置する一般的な介護用浴槽の水準を超えるものであると解されること,浴槽については家族も便益を受ける面があることなどの事情があり,これらを総合して,200万円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
     なお,被告は,天井走行リフトを用いて入浴すべきであり,そうすれば通常の大型浴槽で十分である旨主張するが,原告X1の体幹の筋力が十分とはいえない症状に照らして,リフトでは危険な面もあり,原告らの選択には相当性がある。
     耐用年数については,原告らの主張する10年を採用し,平均余命47年間について4回買い替えるとすれば,介護浴槽・ストレッチャーの購入費用は472万8000円と認められる。
    (計算式)2,000,000×(1+0.6139+0.3768+0.2313+0.1420)=4,728,000
   イ 在宅療養ベッド 153万9848円
     原告らは,ベッド56万5110円,マットレス2個15万3090円,マットレスカバー6枚計11万9070円及び防水シーツ10枚計3万7800円を購入したこと,労災保険からベッドにつき12万6896円,マットレスにつき3万1080円の給付を受けたことが認められる(甲A104,183の1,184,185,199,229,230,239)。
     上記のうち,ベッド及びマットレスについては,本件事故と相当因果関係のある損害と認められるが,マットレスカバー及び防水シーツについては,後遺障害逸失利益から支出されるべき生活費に含まれるというべきであり,別途の損害としては認められない。
     耐用年数について,原告らはベッドが5年,マットレスが1年である旨主張するが,これを裏付ける証拠はなく,一般に,ベッドは10年程度使用でき,マットレスも2個を交互に使用すれば,それぞれ10年程度使用できるものと解されるから,ベッド及びとマットレス2個を平均余命47年につき10年ごとに4回買い替える必要があるものとする。
     労災保険給付については,今後も具体的に上記額と同様の給付を受けられる保証があるとはいえないから,1回目の購入についてのみ控除することとする。
     以上によれば,在宅療養ベッドの購入費用は,153万9848円と認められる。
    (計算式)(565,110+153,090)×(1+0.6139+0.3768+0.2313+0.1420)-126,896-31,080=1,539,848
   ウ ベッドサイドテーブル 8万0374円
     原告らは,ベッドサイドテーブル5万2920円(乙27の写真No.39,40)及び万能テーブル5万4810円(同写真No.5,6)を購入したことが認められる(甲A105,183の1)。
     ベッドサイドテーブルについては必要性が認められるが,これに加えて万能テーブルを購入する必要性は認められない。原告らは,リハビリのために万能テーブルを必要とする旨主張するが,リハビリのためにベッドサイドテーブルとは別のテーブルを購入することは,通常一般の介護設備の水準を超えるものと解される。
     原告らは,ベッドサイドテーブルの耐用年数を5年である旨主張するが,これを裏付ける証拠はなく,一般にテーブルは,それほど損耗するものではなく,20年程度使用できるものと解されるから,平均余命47年につき20年ごとに2回買替えを要するものとする。
     以上によれば,ベッドサイドテーブルの購入費用は,8万0374円と認められる。
    (計算式)52,920×(1+0.3768+0.1420)=80,374
   エ 吸引器・吸入器等 58万6203円
     証拠(甲A106,188,189の2,190の1・4)によれば,原告X2は,①吸入器(ネブライザー)3万6000円,②電気式痰吸引器5万6400円及び③吸引器(ミニックDC 3WAY1400WDX)6万6360円を購入したことが認められ,これらはいずれも必要性,相当性が認められる。
     被告は,上記②と③は重複している旨主張するが,上記②は家庭用電源のみが使用可能であって携帯できないこと,1台が故障した事態に備えて予備が必要といえることから,いずれも必要性が認められる。
     東近江市から,上記①につき3万2400円,上記②につき5万0760円の公的助成があったことが認められるが(甲A145の1・2),今後も具体的に上記額と同様の給付を受ける保証があるとはいえないから,1回目の購入についてのみ控除することとする。
     証拠(甲A197)及び弁論の全趣旨により,耐用年数を5年と認める。したがって,平均余命47年につき5年ごとに9回の買替えを要するものと認められ,吸引器・吸入器の購入費用は,58万6203円と認められる。
    (計算式)(36,000+56,400+66,360)×(1+0.7835+0.6139+0.4810+0.3768+0.2953+0.2313+0.1812+0.1420+0.1112)-32,400-50,760=586,203
   オ 空気殺菌脱臭装置 0円
     原告らは,空気殺菌脱臭装置71万4000円並びにこれに付属する防塵フィルター1年に2個計2万1000円,紫外線ランプ4万3050円,上記装置保守契約年間料金4万7250円が必要である旨主張するが,これは通常一般の自宅における介護設備の水準を超えるものと解され,本件事故と相当因果関係のある損害とはいえない。
     また,人工鼻(サーモベント),セーフティグローブ及び足踏汚物缶は,後遺障害逸失利益から支出されるべき生活費に含まれるといえるから,別途の損害としては認められない。
   カ 車椅子 174万1861円
     証拠(甲A115,228)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1の車椅子を54万1590円で購入したこと,1回目の購入については労災保険から全額給付を受けたことが認められる。労災保険給付については,1回目の購入についてのみ控除することは前記同様である。
     耐用年数については,原告らの主張する5年を採用し,平均余命47年間について9回買替えを要するとすれば,車椅子の購入費用は174万1861円と認められる。
    (計算式)541,590×(1+0.7835+0.6139+0.4810+0.3768+0.2953+0.2313+0.1812+0.1420+0.1112)-541,590=1,741,861
   キ 在宅リハビリ用台 0円
     原告らは,在宅リハビリ用台166万9500円を必要とする旨主張するが,これを用いないリハビリも可能であり(乙14の2・275頁),上記価格からみても,これは通常一般の自宅における介護設備の水準を超えるものと解され,本件事故と相当因果関係のある損害とはいえない。
   ク バイタルボックス等生体管理装置類 59万8281円
     原告らは,バイタルボックス(心拍数,血中酸素濃度,血圧を測定して記録する装置であり,心拍の波形も出るもの)39万9000円並びにそれに付属するプローブ6万6150円及びプリンタ5万2500円等が必要である旨主張する。しかし,心拍数及び血中酸素濃度はパルスオキシメーターにより,血圧は血圧計により測定可能であるといえる。これらを自動で測定して記録するバイタルボックスは,通常一般の自宅における介護設備の水準を超えるものであり,本件事故と相当因果関係のある損害とはいえない。
     他方,パルスオキシメーター16万8000円(甲A186)は,必要性,相当性が認められ,その耐用年数は6年であると認められる(甲A197)。したがって,平均余命47年間について6年ごとに7回買替えを要するとすれば,パルスオキシメーターの購入費用は59万8281円と認められる。
    (計算式)168,000×(1+0.7462+0.5568+0.4155+0.3100+0.2313+0.1726+0.1288)=598,281
   ケ 指のリハビリ等の道具等 10万2065円
     原告らは,ハンドクッション,「まもっ手」,Uコップ,セラバンド手指トレーナーセット及びビデオ「ガブッとモグモグゴックン体操」が必要である旨主張するが,これらは,後遺障害逸失利益から支出されるべき生活費に含まれているというべきであり,被告が認める1回購入分(ハンドクッション4点5090円とセラバンド7508円)以外は,別途の損害としては認められない。
     他方,イルリガード台(点滴スタンド)1万1340円及びトーキングエイド9880円(甲A184,185の1,199)は,必要性,相当性が認められる。耐用年数について,原告らはいずれも1年と主張するが,これを裏付ける証拠はなく,いずれも5年程度使用できるものと解されるから,平均余命47年につき5年ごとに9回買替えを要するものとする。したがって,点滴スタンド及びトーキングエイドの購入費用は8万9467円と認められる。
    (計算式)(11,340+9,880)×(1+0.7835+0.6139+0.4810+0.3768+0.2953+0.2313+0.1812+0.1420+0.1112)=89,467
  (21) 以上の(1)ないし(20)のとおり認められる原告X1の損害の合計額は,2億8009万6307円である。
 3 争点2(既払金の充当及び弁護士費用)について
  (1) 既払金の充当方法
   ア 労災保険法及び厚生年金保険法に基づく給付又は年金について
     労災保険法及び厚生年金保険法に基づく各種給付又は年金は,それぞれの制度の趣旨目的に従い,特定の損害について必要額を填補するために支給されるものであるから,填補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当であり,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,これらが支給され,又は支給されることが確定することにより,その填補の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが,公平の見地からみて相当である(最高裁判所平成22年9月13日第1小法廷判決・裁判所時報1515号6頁参照)。
     したがって,原則として,損益相殺的な調整は,①労災休業補償給付については,負傷又は疾病により労働することができないために受けることができない賃金を填補されるために支給されるから,休業損害の元本との間で,②労災障害補償年金及び③障害基礎厚生年金は,後遺障害が残った場合に労働能力を喪失し,又はこれが制限されることによる逸失利益を填補するために支給されるから,後遺障害逸失利益の元本との間で,④労災介護補償給付は,一定程度以上の障害により介護を要する状態にあり,介護を受けている場合に介護費用を填補するために支給されるから,介護費用の元本との間で,それぞれ行うべきである。
     また,休業損害と後遺障害逸失利益は,損害費目として症状固定前後で区別されているにすぎず,同質性を有するものといえるから,上記損益相殺的な調整を行う上では,区別するのが相当とはいえない。
     以上によれば,前記特段の事情が認められない本件においては,損益相殺的な調整は,①労災休業補償給付,②労災障害補償年金及び③障害基礎厚生年金については,休業損害及び後遺障害逸失利益の元本との間で,④労災介護補償給付については,介護費用の元本との間で,それぞれ行うべきである。
   イ 被告側保険会社からの支払金について
     被告側保険会社からの支払金については,原告ら及び被告との間で,本件事故後に逐次現実化している損害について必要額を填補するという合意の下に支払われたものと認められるから(甲A55~65,乙2~6),損害の元本に充当すべきである。
   ウ 自賠責保険金について
     自賠責保険金については,遅延損害金にまず充当し,その後に元本に充当すべきである(最高裁判所平成16年12月20日第2小法廷判決・裁判集民事215号987頁参照)。
  (2) 既払金等の充当
   ア 労災休業補償給付,労災障害補償年金及び労災介護補償給付について
     別紙1のとおり,原告X1が支払を受けた労災休業補償給付は合計244万5320円,労災介護補償給付は合計251万5590円であり,支払を受け,又は支給決定を受けた労災障害補償年金は合計717万0690円である(支払を受けた給付のみならず,支給決定を受けた給付も控除するのが相当である)。前記のとおり,労災休業補償給付及び労災障害補償年金は休業損害及び後遺障害逸失利益の元本から,労災介護補償給付は介護費用の元本から,それぞれ控除されるべきであるが,本件では,計算上,全体の元本から控除するのと同じ結果となる。
     したがって,前記損害合計2億8009万6307円から,上記労災保険給付又は年金合計1213万1600円を控除すると,残額は2億6796万4707円である。
   イ 障害基礎厚生年金について
     別紙1のとおり,原告X1が支払を受け,又は支給決定を受けた障害基礎厚生年金は合計678万5490円である(支払を受けた給付のみならず,支給決定を受けた給付も控除するのが相当である)。前記のとおり,これは休業損害及び後遺障害逸失利益から控除されるべきであるが,本件では,計算上,全体から控除するのと同じ結果となる。
     したがって,前記2億6796万4707円から,上記678万5490円を控除すると,残額は2億6117万9217円となる。
   ウ 被告側保険会社からの支払金について
     被告側保険会社は,別紙1のとおり支払をした。このうち,番号4及び10ないし20の入院付添いのための宿泊代については,前記第4の2(5)イと同様に,必要性が認められるところ,本件ではそもそも損害として請求されていない。
     また,番号3,6ないし9のD側に対する支払金は,Dに生じた損害を支払ったものであると解されるから,本件で認められた損害から控除することはできない。
     番号1,2の賠償金先払及び番号5の原告X1休業損害の合計86万7740円については,本件で認められた損害の元本から控除すべきであり,前記2億6117万9217円から上記額を控除すると,残額は2億6031万1477円となる。
   エ 自賠責保険金について
     自賠責保険金は,別紙1のとおり,平成20年8月12日に支払われているところ,上記2億6031万1477円に対する同日までの遅延損害金は,2620万9443円である。原告らは,自賠責保険金4000万円をまず上記遅延損害金に充当し,残額を上記元本に充当することを選択しているから,これに従えば,損害元本の残額は2億4652万0920円となる。
     なお,原告らは,上記残元本に対する遅延損害金の起算日を本件事故日とするが,本件事故から自賠責保険金受領日までの遅延損害金は,上記のとおり充当済みであるから,遅延損害金の起算日は,上記受領日の翌日である平成20年8月13日となる。
  (3) 弁護士費用
    上記認容額,本件事案の内容その他諸般の事情を考慮すれば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は1500万円が相当と認められる。
    なお,弁護士費用に対する遅延損害金の起算日は,原告らの主張する本件訴状送達の日の翌日である平成19年10月29日とする。
  (4) 以上によれば,被告が原告X1に対して負担すべき本件事故による損害額は,上記(2)の充当後の残額2億4652万0920円及び弁護士費用1500万円の合計2億6152万0920円となる。
 4 争点3(近親者固有の損害)について
  (1) 固有の慰謝料
   ア 原告X2及び原告X3 各200万円
     原告X2及び原告X3は,本件事故により息子である原告X1が重度の後遺障害を負ったために生命侵害の場合にも比肩し得べき精神的苦痛を受けたことが認められ,今後も原告X1と同居し,その介護に当たらなければならない精神的負担も考慮すれば,その慰謝料は各200万円が相当である。
   イ 原告X4 100万円
     原告X4は,本件事故により弟である原告X1が重度の後遺障害を負ったために生命侵害の場合にも比肩し得べき精神的苦痛を受け,今後原告X1の成年後見人として,原告X2宅近くの自宅から原告X2宅に通い,その介護に当たらなければならない精神的負担も著しいといえることなどから,原告X1との間に民法711条所定の者と実質的に同視できる身分関係が存在するというべきであり,その慰謝料は100万円が相当である。
  (2) 弁護士費用
   ア 原告X2及び原告X3 各20万円
     上記認容額その他諸般の事情を考慮すれば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は各20万円が相当と認められる。
   イ 原告X4 10万円
     上記認容額その他諸般の事情を考慮すれば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は10万円が相当と認められる。
  (3) 以上によれば,被告が原告X2,原告X3及び原告X4に対して民法709条に基づき負担すべき損害賠償債務の額は,上記(1)及び(2)の合計額であって,原告X2及び原告X3につき各220万円,原告X4につき110万円となる。遅延損害金の起算日は,慰謝料については本件事故日である平成18年8月9日,弁護士費用については原告らの主張する本件訴状送達の日の翌日である平成19年10月29日とする。
 5 結論
   以上の次第で,原告らの請求は,主文第1項ないし第4項記載の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
    大阪地方裁判所第15民事部
        裁判長裁判官  稻葉重子
           裁判官  宮崎朋紀
           裁判官  川崎志織

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