東京地方裁判所判決 平成15年4月14日

被害者が右股関節脱臼骨折等で転医後に154日入院した事案について、入院治療費の7割について事故と相当因果関係があると認められました。        主   文       1 原告の請求を棄却する。       2 訴訟費用は原告の負担とする。        事実及び理由 第1 請求    被告は,原告に対し,金1147万0170円及びこれに対する平成7年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要    本件は,後記1(1)の交通事故(以下「本件事故」という。)について,原告が被告に対し,自動車損害賠償保障法3条及び民法709条に基づき,損害賠償を請求した事案である。  1 前提となる事実(各項末に証拠番号を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)  (1)本件事故の発生    ア 日  時  平成7年12月30日午後2時40分ころ    イ 場  所  茨城県鹿島郡神栖町大字筒井1620番地の1先の通称「水郷道路」(以下「本件道路」という。)    ウ 関係車両  被告の運転する普通乗用自動車(車両番号・千葉○○は○○○○。以下「被告車」という。)原告の運転する普通貨物自動車(車両番号・習志野○○と○○○○。以下「原告車」という。)    エ 事故態様  被告車が本件道路外の駐車場から右折して本件道路に進入した後,本件道路を走行していた原告車が急制動の措置を講じるとともに,左側に進路を変更したが,本件道路の左側の歩道に乗り上げた末,樹木に衝突した。    オ 結  果  原告は,右股関節脱臼骨折,右脛骨顆部粉砕骨折及び肺挫傷の傷害を負った。                                  (乙3)  (2)被告の運行供用者性     被告は,本件事故当時,自己のために被告車を運行の用に供していた。  (3)原告の入通院の経過    ア 入院    (ア)平成7年12月30日から平成8年4月29日まで(122日間)医療法人社団A病院(以下「A病院」という。)    (イ)平成8年4月30日から同年9月30日まで(154日間)及び平成9年3月25日から同月31日まで(7日間)       B病院(以下「B病院」という。)    イ 通院    (ア)平成8年10月1日から平成9年3月25日まで及び同年4月1日から同月28日まで(実日数96日間)       B病院    (イ)平成9年6月18日       A病院                                (甲5,7)  (4)原告の後遺障害     原告は,平成9年6月18日,症状が固定し,平成10年12月18日ころ,C株式会社から,後遺障害等級併合11級に該当するとの通知を受けた。                                  (甲8)  (5)損害の填補     原告は,自動車損害賠償責任保険からは451万円の支払を,労働者災害補償保険からは療養補償763万7863円のほか,休業補償482万7205円,障害補償214万0952円の合計1460万6020円の支払を,それぞれ受けた。  2 争点  (1)本件事故の具体的態様,被告の過失の有無及び過失割合    (被告の主張)     本件事故は,原告が居眠りをしていたか,又はそれに近い状況にあったため,前方注視を怠り,漫然時速100キロメートルの速度で,本件道路の第2走行車線を走行していたため,前を走行していた軽ワゴン車に気付かず,至近距離に接近して初めてこれを発見し,このままでは間もなく追突する状況にあったことから,急遽左にハンドルを切ると同時に制動措置を講じたが,原告車は,スピンして制御不能の状態に陥り,左側の歩道に乗り上げた後,樹木に衝突してようやく停止したというものである。被告車は,右折を完了し,原告車の遥か前方の第1走行車線を走行していた。     このような本件事故の具体的態様に照らすと,被告には過失はないというべきである。    (原告の主張)     本件事故は,原告車が,片側2車線の幹線道路というべき本件道路を潮来町方面から波崎町方面に向かって時速約75キロメートルの速度で走行していたところ,被告が被告車を運転して,原告車の進行方向に向かって右側の駐車場から一時停止又は徐行することなく突然本件道路に進入し,中央線をまたぎ原告車の直前で右折したため,原告は,被告車との衝突を回避すべく急制動の措置を講じるとともに,ハンドルを左に切ったが,原告車は,本件道路の左側の歩道に乗り上げた末,樹木に衝突したというものである。前記駐車場からは本件道路の見通しは極めてよく,被告が前方注視を怠らなかったならば,原告車の存在に気付くことができ,本件事故の発生を防ぎ得たであろうということができる。また,被告車が右折を完了したか否かについては,客観的な証拠がない。     このような本件事故の具体的態様等に照らすと,原告の過失割合は10パーセントにとどまるというべきである。  (2)本件事故と相当因果関係のある入院期間    (被告の主張)     原告の入院は,A病院で十分なものであり,B病院への入院は,抜釘術を受けるために必要な期間(平成9年3月25日から同月31日まで)以外は,本件事故との相当因果関係は認め難い。すなわち,原告は,過去の病歴からも入院の親和性があるほか,肝障害による私病が大きく影響し,また,独身であるため,日常生活に苦痛を感じていたことから,便乗入院を続けたものであり,通院によりリハビリを行えば足りたというべきである。    (原告の主張)     確かに,本件事故直後のA病院の診断では,加療4か月とされているが,これは,右脛骨顆部についてみると,単なる骨折を前提としたものであり,同じ医師による後の診断では,前記部位について粉砕骨折と改められ,そのためか,症状固定日が平成9年6月18日とされている。     また,原告に私病があったことは事実であるが,それによって治療期間が影響を受けたということはできない。     さらに,リハビリは,病院の経済的利益に必ずしも合致しないのであり,患者本人が希望したからといって,医学的に必要がないのに入院が認められるということはない。     以上からすれば,B病院における入院も,本件事故と相当因果関係があるものというべきである。  (3)後遺障害による労働能力への影響    (原告の主張)     本件事故によって,原告には,骨盤骨に著しい奇形を残すとともに,局部に頑固な神経症状を残す後遺障害が存在することになったところ,前者は後遺障害等級12級5号に,後者は後遺障害等級12級12号に,それぞれ該当し,両者を併せて併合11級と認定された。したがって,原告は,労働能力を20パーセント喪失した。    (被告の主張)     まず,腸骨からの採取により骨盤骨に著しい変形を残したとして12級5号に該当するとされた点については,移植骨採取は直径1ないし3センチメートル程度の穴をくり抜いて取るだけのものであるから,実質的機能障害は発生しない。     次に,右膝関節痛について局部に頑固な神経症状を残したとして12級12号に該当するとされた点については,数十年前の右下肢の痛みは確認されるものの,膝部の疼痛等神経症状があるとのカルテの記載はほとんどなく,可動域も十分であって,症状はあっても極めて軽度なものであって,将来にわたって持続するとは考えられない。  (4)損害額    (原告の主張)    ア 治療費                   739万1703円    (ア)A病院                 388万3972円    (イ)B病院                 350万7731円    イ 入院雑費                   36万7900円    ウ 付添看護費                  34万5000円      原告の実姉であるDは,平成8年1月3日から同月24日までの間,原告に付き添い,看護をしたところ,その日当としては1日当たり9000円が相当であり,また,宿泊費として14万7000円を支払った。    エ 休業損害                  525万2550円      原告の平成7年の年収は395万3110円であるから,1日当たりの収入は,下記の算式①のとおり,1万0830円となる。そして,休業期間は,本件事故の日である平成7年12月30日からB病院への最後の通院日である平成9年4月28日までの485日間である。したがって,休業損害は,下記の算式②のとおり,525万2550円となる。                  記        ① 395万3110÷365         =1万0830(小数第1位四捨五入)        ② 1万0830×485=525万2550    オ 逸失利益                  924万1976円      原告は,症状固定時,49歳であったから,就労可能年齢である67歳まで18年間に対応するライプニッツ係数は,11.6895である。したがって,逸失利益は,平成7年の年収を基礎とし,労働能力喪失率を20パーセントとすると,下記の算式のとおり,924万1976円となる。                  記        395万3110×0.2×11.6895       =924万1976(小数第1位四捨五入)    カ 入通院慰謝料                297万5000円    キ 後遺障害慰謝料               390万0000円    ク 弁護士費用                 294万7413円    ケ 小計                   3242万1542円    コ 過失相殺をした後の残額          2917万9388円      前記(1)のとおり,原告の過失割合は10パーセントであるから,被告の負担すべき損害額は,下記の算式のとおり,2917万9388円となる。                  記        3242万1542×(1-0.1)       =2917万9388(小数第1位四捨五入)    サ 損害の填補をした後の残額         1147万0170円      前記1(5)の1460万6020円のうち,休業特別支給金及び障害特別支給金は,いずれも,労働福祉事業の一環として,被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために支給されるものであり,保険給付と異なり損害賠償として性質を有しないので,被災労働者が受領した金額をその損害額から控除することはできない。そこで,前記1(5)の1460万6020円から,休業特別支給金120万6802円及び障害特別支給金20万円を控除すると,1319万9218円となる。したがって,前記コの残額からこれと451万円を控除すると,1147万0170円となる。    (被告の主張)     仮に被告が原告に対し損害賠償責任を負うとしても,前記(2)のとおり,B病院への入院に関する損害の一部は本件事故と相当因果関係がないし,また,前記(3)のとおり,後遺障害に関する請求は失当であるから,前記1(5)の支払によって,原告の損害額は填補済みである。 第3 当裁判所の判断  1 争点(1)について  (1)前記第2の1(1)の事実のほか,証拠(甲1ないし3,14ないし16,18,乙3,9の1ないし3,10の1・2,11の1ないし3,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故に至る経緯は,次のとおりであると認められる。    ア 本件道路は,潮来町方面と波崎町方面とを結ぶ直線道路であり,片側2車線の車道及びその両端に接する歩道(車道とは縁石によって区別されている。)から構成されている。潮来町方面から波崎町方面に向かう車道(以下「下り線」という。)も,波崎町方面から潮来町方面に向かう車道(以下「上り線」という。)も,いずれも各車線(以下,歩道寄りの車線を「第1車線」といい,中央線寄りの車線を「第2車線」という。)の幅員は約3.2メートルであり,上り線と下り線の間には,いわゆるゼブラゾーン(幅員約1メートル)が設けられている。上り線も下り線も,いずれもアスファルトで舗装されており,平坦である。本件事故現場において潮来町方面から波崎町方面に向かっては,前方の見通しはよく,右側の歩道に隣接して「丸昇ドライブイン」という名称のゲームセンターに併設された駐車場(以下「本件駐車場」という。)があり,左側の歩道に隣接して松林がある。そして,最高速度時速60キロメートルの交通規制がある。    イ 原告は,E株式会社(以下「E」という。)に勤務しており,茨城県鹿島郡(以下略)にあるF株式会社鹿島支店において配電盤の解体搬入据付作業を行うため,原告車に同僚のGを助手席に同乗させて原告車を運転し,本件事故当日の正午ころ,千葉県柏市にある営業所を出発した。    ウ 被告は,茨城県鹿島郡神栖町に買物に行くために,被告車の助手席に実兄のHを同乗させて被告車を運転し,自宅を出発し,約30分間走行した後,「丸昇ドライブイン」に寄り,本件駐車場に被告車を駐車した上で,実兄とともにゲームセンターで遊んだ。    エ 原告車は,本件事故当時,本件道路の下り線のうち第2車線を走行していた。      他方,被告は,電気店に向かうため,本件駐車場を出て,右折して下り線を走行しようと考え,歩道と上り線の境界付近で被告車を停止させ,右方を見たところ,上り線を走行してくる車両はいなかったので,今度は,左方を見て,下り線の車両の走行状況を確認した。被告は,原告車が走行してくるのを発見したが,十分距離が離れているものと考え,本件道路に被告車を進入させ,右折して下り線を走行した。      原告は,被告車が本件駐車場から出てくるところをはっきり見た記憶はなく,被告車が本件道路の中央のゼブラゾーン付近から下り線に進入してきたのに気付いて,急制動の措置を講じるとともに,ハンドルを左に切って,被告車との衝突を避けようとしたが,スリップして,第1車線を斜めに横切った後,そのまま歩道に乗り上げた末,樹木に衝突してようやく停止した。      なお,原告車に同乗していたGは眠っていたため,原告が急制動の措置を講じたころ,目を覚ましたのであり,被告車の動静を見ていなかった。  (2)ア ところで,労災補償の給付請求書(甲15,乙3)には,本件事故の態様として,「前方の車を追い越す為,右車線から左車線に追い越した時,前方に車があり車間距離がなかったのでハンドルを左に慌てて切って松林に突込んで負傷する」との記載があり,末尾には原告名下の署名及び「X1」の丸い印影が存在する。これは,被告の主張に沿うものである。      しかしながら,証拠(甲15,16,原告本人)によれば,Eの東関東事業部柏営業所所長であったIは,平成7年12月31日及び平成8年1月初めころ,A病院を訪ね,入院中の原告から,本件事故について事情を聴取したこと,その際,原告は,進行方向右側から本件道路に突然進入してきた自動車との衝突を回避しようとして,ハンドルを左に切ったことなどを話したこと,もっとも,その時点では,本件道路に進入してきたのが被告車であったとは知り得なかったこと,A病院からは,治療費等についてどのような保険を利用するのか早く決めてほしいと言われたこと,そこで,Iは,本件事故が作業現場に向かう途中で起きたものであることから,労災補償の申請をすることにし,本社の労務部長及び東関東事業部の事業部長と相談したところ,加害者を特定することができなかったため,結局,自損事故として申請することにし,労務部長が,原告に代わって,前記記載をし,原告の氏名を記入するとともに,原告から預かっていた三文判を押印したこと,ところで,原告は,IやEの関係者からは,前記記載の内容については,特に説明を受けることはなかったこと,原告がEの担当者から前記記載の内容について説明を受けたのは,平成9年5月以降のことであり,原告は,前記担当者に対し,事実とは違うと抗議をしたが,結局,前記記載を訂正するには至らなかったこと,以上の事実が認められる。そうだとすれば,前記記載が原告の記憶に従ったものではないというべきであるから,これをもって,前記(1)の認定を覆すには至らない。    イ また,自賠責保険に対する事故発生状況報告書(乙9の1)によれば,原告自らが,本件事故が発生した状況について,「原告車が第2車線を直進中,反対車線を走行していた被告車が突然,中央分離帯の切れ目からUターンをし,一時停止もなしに原告車の直前に飛び出した。」と記載したことが認められる。      しかしながら,原告は,その後,まもなく,前記記載は記憶違いであることに気付き,前記(1)において認定したとおりの内容に訂正しており(甲18,乙9の2・3,原告本人),前記報告書の記載をもって,前記(1)の認定を覆すには至らないというべきである。  (3)被告は,原告が急制動の措置を講じるとともに,ハンドルを左に切ったのは,原告車の前方に黒い軽ワゴン車が走行していたところ,原告車がこれに追突しそうになったためであると主張し,被告作成の陳述書(乙10の1)を提出するとともに,自らこれに沿う供述をする。     しかしながら,被告の主張する軽ワゴン車は,メーカーや車両番号,運転者などが全く特定されていないのであり,その存在について客観的な証拠はないこと,他方,原告は,原告車の前方には走行する車両はなかったと一貫して供述していること(甲14,18,原告本人),仮に前車への衝突を回避するためであれば,必ずしもハンドルを左に切る必然性はないと考えられることなどを併せ考慮すると,結局,被告の前記主張の立証は不十分であるといわざるを得ない。かえって,証拠(乙10の1,11の1ないし3,被告本人)によれば,被告は,下り線を進行してしばらくした後,後方からブレーキ音が聞こえたので,バックミラーで後方を見たところ,原告車がスリップして,樹木に衝突するのが見えたことから,被告車を下り線の路肩に駐車させた上で,実兄とともに本件事故現場に歩いて戻ったこと,本件事故現場では既に他の者が電話で救急車を呼んでいたため,被告としては特段すべきことはなかったが,原告が救急車で搬送されるのを見届けたほか,後から到着した警察官に対し,氏名及び住所を伝えたこと,そして,本件事故によって生じた原告の損害について,被告車に付保された任意保険を利用することを許容していることが認められるところ,被告が本件事故について無過失であれば,このような行動に出ることは通常考えられないということすらできる。したがって,被告の主張は採用することができない。  (4)以上の事実からすると,被告車は,本件駐車場から本件道路に進入するため右折しようとしていたのであるから,被告としては,右手の方向から被告車の方に進行してくる車両の有無及びその動静を注視することは勿論,左手の方向から被告車の方に進行してくる車両の有無及びその動静をも注視した上で,これらの車両の進行を妨害することのないようにすべき注意義務があったものであるところ,被告は,一応左手の方向を見て原告車を認識したものの,余裕をもって右折することができるものと軽信し,安易に本件道路に進入して右折した結果,原告車の安全な進行を妨げた過失があるといわなければならない。     ただ,原告車のスリップ痕が約20メートルにも及んでいる(甲2)上,原告車が樹木に衝突してようやく停止していること,原告自身が原告車の速度が時速約75キロメートルであったと供述しているものの,感覚に基づくものにすぎないこと(甲14,原告本人)からすると,原告車が,制限速度を時速30キロメートル以上はともかくとして,時速15キロメートルを超える速度を出していたことはほぼ明らかであること,原告がもう少し早く本件道路の右方から進入してくる被告車を発見していれば,本件事故は避けられた可能性を否定することができないことといった点を指摘することができ,原告にも一定の落度があったものといわざるを得ない。     以上の事情を総合的に考慮すると,原告の過失割合は30パーセントと見るのが相当である。  2 争点(2)について    証拠(甲15,19ないし21)によれば,A病院においては,平成8年2月14日から,理学療法を開始し,同年4月1日から,4分の1部分荷重を開始したこと,A病院の担当のJ医師は,日常生活を送るに当たり,2分の1免荷歩行の状態であれば,生活が安定するという考えがあったことから,免荷期間を待つことは当然であると考えたこと,そこで,同医師は,原告がB病院に転院するに当たって,更に入院による理学療法を継続する必要があるとして,同年6月までは部分荷重による理学療法を施すよう指示したこと,以上の事実が認められるから,B病院への入院の必要性自体は否定することができない。    もっとも,証拠(甲21,乙5)によれば,B病院においては,原告は,早い時期よりゴール(退院を意味するものと解される。)と言われていたが,原告本人の希望が強く,入院を延期し,リハビリを続けていたこと,入院時は4分の1部分荷重であったが,平成8年6月初旬には3分の1ないし2分の1部分荷重となり,同月末ころには松葉杖1本で歩行し,全荷重となったこと,原告は,同月13日は午後3時40分に外出し,午後6時30分に帰院したこと,同月16日は午前7時に外出し,午後8時50分に帰院したこと,同月22日は午後5時に外出し,午後8時50分に帰院したこと,同月23日は午後1時30分に外出し,午後8時15分に帰院したこと,同月29日は午後1時に外出し,午後8時30分に帰院したこと,同年7月6日は午後1時に外出し,午後8時30分に帰院したこと,同月13日午後1時55分から翌14日午後8時まで外泊したこと,同月15日,もうしばらく入院を希望したこと,同月17日は午後4時10分に外出し,午後5時40分に帰院したこと,同月20日は午後1時30分に外出し,午後8時45分に帰院したこと,同月21日は午後1時30分に外出し,午後8時10分に帰院したこと,同月27日は午後1時40分に外出し,午後5時25分に帰院したこと,同月28日は午前8時40分に外出し,午後8時45分に帰院したこと,以上の事実が認められる。前記認定事実によれば,B病院への入院の必要性・相当性は,遅くとも平成8年6月30日までの間に限られ,同年7月1日以降は通院による理学療法で足りたものというべきである。  3 争点(3)について    証拠(甲8,15,乙2)によれば,原告は,右脛骨顆部粉砕骨折について,腸骨翼から移植骨を採取され,欠損部に補填されたが,この点が,「骨盤骨に著しい奇形を残すもの」として12級5号に該当すると判断されたこと,また,右膝関節痛については,レントゲン写真から,右膝関節面の内顆・外顆の癒合に不整が認められることから,「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級12号に該当すると判断されたことが認められる。    そこで,各後遺障害の労働能力への影響を具体的に検討すると,まず,腸骨からの採取による奇形については,後遺障害慰謝料の点で斟酌することは当然のこととしても,全証拠を精査しても,これが原告の労働能力を喪失させるに至っているものであることを認めるに足りる証拠はない9,    他方,右膝関節痛については,証拠(甲14,原告本人)によれば,原告は,ゆっくりとしか歩けず,500メートル前後歩くと右膝の内側に痛みが走り,立っていることもままならないこと,したがって,仕事に復帰したものの,階段の上り下りや長く歩くときは,膝に痛みが来ないようにサポーターをきつく巻くようにしていること,本件事故に遭う前に従事していた重量物の運搬・据付作業には従事することができず,業務管理の仕事に限定されるため,給与も一定程度減少していること,以上の事実が認められる。    以上の事情を考慮すると,後遺障害による労働能力喪失率は,14パーセントと見るのが相当である。  4 争点(4)について  (1)治療費                    633万9383円     証拠(甲9,10)によれば,A病院における治療費は388万3972円であり,B病院における治療費は350万7731円であることが認められる。このうち,B病院については,前記3に説示したとおり,平成8年7月1日から同年9月30日までの間の入院については,その必要性・相当性を欠いてはいたものの,通院による理学療法を受ける必要があったことは認められるから,本件事故と相当因果関係のある冶療費としては,前記金額の7割と見るのが相当であり,下記の算式のとおり,245万5411円となる。     したがって,本件事故と相当因果関係のある治療費は,合計で633万9383円となる。                  記        350万7731×0.7       =245万5411(小数点以下切捨て)  (2)入院雑費                    24万8300円     入院雑費は,1日当たり1300円が相当であるところ,前記第2の1(3)のとおり,A病院における入院期間が122日間であり,また,前記2のとおり,必要性・相当性の認められるB病院における入院期間が69日間であるから,下記の算式のとおり,24万8300円を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。                  記        1300×(122+69)=24万8300  (3)付添看護費                   29万0000円     交通事故によって受傷し,入院した被害者に対する親族の付添看護については,医師の指示がなくとも,被害者の病状等の事情に照らし,親族が付き添い,看護をすることが社会通念上相当であると認められるときは,これに要した費用は,当該交通事故と相当因果関係のある損害というべきである。     証拠(甲6,14,15,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,入院直後から,肺挫傷のため,酸素の投与を受けたこと,平成8年1月9日,全身麻酔の下,約5時間30分にも及ぶ手術を受けたこと,同月11日,集中治療室から一般病室に転室したこと,前記手術後も,創部ドレーンからの排液が多く,C反応性蛋白も高値を示したため,抗生剤の投与を受けたこと,前記手術から1週間で酸素の投与が中止され,前記手術から2週間でC反応性蛋白の数値も鎮静化したため,抗生剤の投与を経口に変更したこと,他方,原告は独身であり,実姉であるDが,住所地の新潟市からA病院の所在する茨城県鹿島郡鹿島町(現在の鹿嶋市)まで来て,同月3日から同月24日までの間,××ホテルに宿泊し,宿泊代14万7000円を支払ったこと,A病院に入院していた原告に付き添い,看護をしたことが認められる。     前記認定事実によれば,実姉が入院中の原告に付き添い,看護をしたことは,社会通念上相当であったと認められるところ,これに要した費用は,前記宿泊代に加えて,1日当たり6500円として14万3000円を付添費として本件事故と相当因果関係のある損害ということができるから,合計で29万円となる。  (4)休業損害                   526万3593円     証拠(甲5,7,11,14)及び弁論の全趣旨によれば,原告の平成7年の年収は,395万3110円であったこと,原告は,B病院を退院した後も,同病院への通院を続け,通院しなかった日も,医師の指示に従って自宅でリハビリに励み,勤務先であるEを欠勤したこと,それ故,休業期間は,平成7年12月30日からB病院への最終通院日である平成9年4月28日までの486日間であったことが認められる。したがって,休業損害は,下記の算式のとおり,526万3593円となる。                  記        395万3110÷365×486       =526万3593(小数点以下切捨て)  (5)逸失利益                   646万9383円     原告は,症状固定時,49歳であった(甲15)から,就労可能年数は,67歳までの18年間と見るのが相当であり,これに対応するライプニッツ係数は11.6895である。したがって,逸失利益は,平成7年の年収を基礎とし,労働能力喪失率を14パーセントとすると,下記の算式のとおり,824万5135円となる。                  記        395万3110×0.14×11.6895       =646万9383(小数点以下切捨て)  (6)入通院慰謝料                 270万0000円     前記第2の1(3)の原告の入通院の経過,受傷の部位・程度,本件事故の態様等の事情を総合的に考慮すると,入通院慰謝料は,270万円とするのが相当である。  (7)後遺障害慰謝料                390万0000円     原告の受傷の部位・程度,後遺障害の内容,本件事故の態様等の事情を総合的に考慮すると,後遺障害慰謝料は,390万円とするのが相当である。  (8)小計                    2521万0659円     以上(1)ないし(7)を合計すると,2521万0659円となる。  (9)過失相殺をした後の残額           1764万7461円     前記1において認定説示した過失割合によれば,被告の負担すべき損害は,下記の算式のとおり,1764万7461円である。                   記        2521万0659×(1-0.3)       =1764万7461(小数点以下切捨て)  (10)損害の填補     原告が支払を受けた労災給付のうち,休業特別支給金が120万6680円であり,障害特別支給金が20万円である(乙1)ところ,これらは,損害の填補の対象とはならないと解されるから,その余の1319万9218円に自賠責保険金451万円を加えた1770万9218円が損害の填補に充てられるべき金額となる。     そうすると,これは,前記(9)の金額を上回っているから,原告の損害は,既に填補されたことになる。  5 結論    以上の次第で,原告の被告に対する本訴請求は,理由がないから,これを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。     東京地方裁判所民事第27部         裁判官

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