東京地方裁判所判決 平成22年10月13日

       主   文

 1 被告らは,原告に対し,連帯して706万4401円及びうち642万4401円に対する平成19年5月18日から,うち64万円に対する平成16年10月26日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
 3 訴訟費用はこれを8分し,その7を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
   被告らは,原告に対し,連帯して5474万1005円及びうち4976万5005円に対する平成19年5月18日から,うち497万6000円に対する平成16年10月26日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (原告は,仮執行宣言を求め,被告Y1はその免脱を求めた。)
第2 前提事実
 1 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生(争いがない)
  (1) 日時   平成16年10月26日午前9時40分ころ
  (2) 場所   栃木県那須郡西那須野町西赤田238番地656先交差点(以下「本件交差点」という。)
  (3) 事故態様 被告Y2(以下「被告Y2」という。)が運転する普通貨物自動車(原告が同乗,以下「Y2車」という。)が西三島5丁目方面から北赤田方面に向かって走行し,本件交差点に進入したところ,交差道路を関谷方面(Y2車から見て左側)から三島5丁目方面(Y2車から見て右側)に向かって走行してきた被告Y1(以下「被告Y1」という。)の運転する普通乗用自動車(以下「Y1車」という。)と衝突した。
 2 原告の受傷及び後遺障害(甲7ないし11により明らか)
   原告は,本件事故により,右膝蓋骨骨折,左大腿骨転子下骨折,顔面多発骨折,頤部裂傷,口唇裂傷,外傷性脱臼などの傷害を負い,平成18年6月19日,症状固定となったが,左股関節の機能障害,右膝痛,歯牙障害等の後遺障害が生じた。
   上記後遺障害については,自賠責保険における後遺障害等級認定手続において,自動車損害賠償責任法施行令別表第2の後遺障害等級(以下「後遺障害等級」という。)併合9級(左股関節の機能障害〔運動可能域制限〕につき12級7号,左下肢の短縮障害につき非該当,右膝痛につき14級9級,右膝関節の機能障害につき非該当,歯牙障害につき10級4号,外貌醜状につき14級10号,嗅覚障害につき非該当)に該当するとの認定を受けた(なお,後遺障害の程度については,後記のとおり,当事者間に争いがある。)。
 3 既払金
  (1) 任意保険の保険金支払(大田原赤十字病院の治療費-乙1により明らか)
   ア 平成16年11月25日    12万4198円
   イ 平成16年12月16日    45万1730円
   ウ 平成17年 1月20日    45万7969円
   エ 平成17年 3月17日     3万8380円
   オ 平成17年 5月26日     1万3310円
   カ 平成17年12月 1日    16万6684円
   キ 平成17年12月21日     1万9690円
   ク 平成18年 1月30日    12万8510円
   ケ 平成18年 2月27日       6180円
   コ 平成18年 4月 6日     1万0470円
     合計            141万7121円
  (2) 自賠責保険金の支払(甲33,丙3により明らか)
   ア 平成19年5月 8日  616万円
   イ 平成19年5月17日  714万2879円
     合計         1330万2879円
   (なお,原告は,(1)治療費に関する既払金については,過失相殺されないのであれば元本から充当することを認めるが,過失相殺する場合には遅延損害金に充当すること,(2)自賠責保険の既払金については,遅延損害金から充当することを求めている。)
第3 争点に関する当事者の主張
 1 被告らの責任及び原告の過失
  (原告の主張)
  (1) 被告Y1の責任
    被告Y1は,Y1車の運行供用者(自賠法3条)であるところ,信号機が設置されていない交差点に進入する際には交差道路からの交通の有無などの安全を確認する義務があるにもかかわらずこれを怠り,左右の見通しが悪かったにもかかわらず減速せずに時速50キロメートルで走行した過失(民法709条)があって,被告Y2と共同不法行為となり,被告Y2と連帯して損害賠償責任を負う。
  (2) 被告Y2の責任
    被告Y2は,Y2車の運行供用者(自賠法3条)であるところ,一時停止規制のある交差点を進入する際には一時停止をせず,右方道路の安全確認を怠った過失があって,被告Y1と共同不法行為となるから,被告Y1と連帯して損害賠償責任を負う。
  (3) 原告の過失
    被告Y2は,日本の交通法規を知らなかったからではなく,交差点や一時停止の標識をよく見ていなかったために一時停止違反をしたにすぎないから,被告Y2が一時停止違反をしたことについて,原告に責任はない。
    原告はシートを倒していないから,原告の座り方に問題はなく,原告が傷害を負ったことに何ら責任はない。
  (被告Y1の主張)
  (1) 被告Y1の責任
    信号機が設置されていない交差点に進入する際には交差道路からの交通の有無などの安全を確認する義務があることは認めるが,その余は否認する。
    本件事故は,専らY2車の一時停止違反が原因であり,被告Y1に過失ははない。
  (2) 被告Y2の責任
    被告Y2の責任は認める。
  (3) 原告の過失
    被告Y2は,来日後間がなく,2か月前に運転免許を取得したばかりであり,日本の交通法規を十分理解していたとはいえないから,原告は,Y2車の同乗者として,同車が交通法規を遵守しているかを注意すべき義務があったというべきで,これを怠った過失がある。
    原告は,シートベルトをしていたがシートを倒して寝ていたため,衝突の衝撃でシートベルトの下をくぐり抜けてしまい,顔面を強打して鼻骨を骨折し,下肢に重篤な傷害を負ったものであり,原告が傷害を負ったことについては,原告にも過失がある。
  (被告Y2の主張)
  (1) 被告Y1の責任
    知らない。
  (2) 被告Y2の責任
    認める。
  (3) 原告の過失
    過失相殺に関する被告Y1の主張は援用しない。
 2 原告の損害
  (原告の主張)
  (1) 治療費                   143万1601円
  (2) 入院雑費                   14万8500円
    原告は,本件事故により平成16年10月26日から平成17年1月13日まで,同年11月9日から同月19日まで,平成18年1月5日から同月12日まで,合計99日間入院したから,入院雑費は14万8500円(1日当たり1500円)である。
  (3) 装具費                       3525円
    原告は,歯科器具(2205円)及び杖(1320円)を購入した。
  (4) 付添看護費                  64万3500円
    原告の入院先である大田原赤十字病院は完全介護体制でなく,原告は日本語が通じなかったことから,最初の入院には原告の友人らが原告に付き添い,2度目の入院には原告の妻が原告に付き添ったので,付添看護費として上記金額(1日6500円として99日分)を請求する。
  (5) 通院交通費                  10万2060円
    原告は,通院のための交通費として上記金額を負担した。
  (6) 大学授業料                  83万4000円
    原告は,本件事故により,平成17年4月1日から平成18年3月31日まで大学を休学せざるを得ず,平成16年度秋学期の授業料等83万4000円を無駄にした。
  (7) 文書料(事故証明,診断書)           4万7850円
  (8) 休業損害                  686万8829円
    原告は,本件事故当時,大学に通学しながら,A株式会社及びB株式会社にアルバイトとして勤務し,平成16年8月の給与が42万6325円,同年9月の給与が25万9425円であり,日額が1万1429円であるところ,休業日数は601日であるから,休業損害は上記金額となる。
  (9) 逸失利益                 3765万2461円
    原告には,左股関節の機能障害につき後遺障害等級12級,右膝痛及び機能障害につき12級,歯牙障害につき10級,外貌醜状につき14級,嗅覚障害につき14級の後遺障害等級併合9級の後遺障害があるから労働能力喪失率は35パーセントであるところ,原告は大学に復学して卒業見込みであり,卒業後は大学院に進学することを希望し,日本で就職する予定であるから基礎収入は680万7600円とするのが相当であり,喪失期間は32年間(ライプニッツ係数15.8027)であるから,後遺障害逸失利益は3765万2461円となる。
  (10) 入通院慰謝料                   260万円
    原告は,上記入院加療により精神的苦痛を受けたから,入通院慰謝料として上記金額を請求する。
  (11) 後遺障害慰謝料                  700万円
    原告の後遺障害の程度は後遺障害等級9級であるから,後遺障害慰謝料は上記金額が相当である。
  (12) 弁護士費用                497万6000円
    上記(1)ないし(11)の損害は合計5733万2326円となるところ,治療費の内141万7121円の支払を受けているから,これを損害金元本から控除し,さらに,原告は,平成19年5月8日に616万円,同年5月17日に714万2879円,それぞれ自賠責保険金の支払を受けたから,それまでに発生した遅延損害金に充当すると,残元本は4976万5005円となるので,原告は,弁護士費用として497万6000円を請求する。
    したがって,原告は,被告らに対し,連帯(自賠法3条,民法719条)して,損害金5474万1005円,うち4976万5005円に対する平成19年5月18日(自賠責保険金の最終支払日の翌日)から,うち497万6000円に対する平成16年10月26日(本件事故の日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
  (被告Y1の認否)
  (1) 治療費
    知らない。
  (2) 入院雑費
    知らない。
  (3) 装具費
    知らない。
  (4) 親族付添費
    否認する。
    原告が日本語に通じていなかったとしても当然に親族の付添いが必要になるものではない。
    また,入院先の病院は完全介護が確立しており入院治療費には介護費用が含まれていること,原告の受傷の程度や病院からの指示もないことからすると,親族等の付添いは必要ない。
  (5) 通院交通費
    知らない。
  (6) 大学授業料
    知らない。
  (7) 文書料(事故証明,診断書)
    知らない。
  (8) 休業損害
    否認する。
    原告は大学生であり,原告の主張する収入は平成16年8月及び9月のアルバイト収入であるから,大学の授業が始まる同年10月以降において上記のアルバイト収入が得られる蓋然性は低い。
  (9) 逸失利益
    否認する。
    原告の後遺障害の程度は知らない。
    なお,歯牙傷害(後遺障害等級10級4号)及び外貌醜状(同14級10号)は稼働能力に影響を及ぼさないし,左股関節の機能障害(同12級7号)及び右膝痛(同14級9号)は肉体労働等に限定された職種のみで逸失利益を生じるにすぎないから,原告に逸失利益はないし,仮に逸失利益があるとしても,労働能力喪失率は35パーセントという高額になるはずはなく,また,原告が賃金センサスと同様の水準の収入を得られる蓋然性もない。
  (10) 入通院慰謝料
    否認する。
  (11) 後遺障害慰謝料
    否認する。
  (12) 弁護士費用
    自賠責保険金の支払は認め,その余は否認する。
  (被告Y2の認否)
   不知ないし争う。
第4 争点に対する判断
 1 被告らの責任及び原告の過失
  (1) 被告らの責任について
    証拠(甲1,甲2の1ないし8,甲25,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①本件交差点は,西三島5丁目方面と北赤田方面を結ぶ道路(以下「Y2側道路」という。)と三島5丁目方面と関谷方面とを結ぶ道路(以下「Y1側道路」という。)との交差点であること,②Y2側道路の幅員は路側帯を除いて6メートルあり,本件交差点の入口に一時停止の規制がおかれており,他方,Y1側道路は,両側に各1.7メートルの幅員の歩道が設置された幅員7メートルの道路であり,いずれの道路も最高速度が時速50キロメートルであること,③本件交差点のY1側道路の関谷方面側入口には横断歩道及び押しボタン式の歩行者用信号機が設置されていること,④被告Y2は,原告を助手席に乗せ,Y2車(被告Y2の所有)を運転し,時速50キロメートル程度でY2側道路を西三島5丁目方面から北赤田方面に向かって走行し,一時停止を怠って本件交差点に進入したこと,⑤被告Y1は,Y1車(被告Y1の所有)を運転し,時速50キロメートル程度でY1側道路を関谷方面から三島5丁目方面に向かって走行し,衝突地点(本件交差点内)の45メートル程度手前で,本件交差点が視界に入ったが,交差道路に一時停止規制があったことから,交差道路からの車両があっても当然停止してくれるものと思い,そのまま走行して,衝突地点の11メートル程度手前に至ったところで交差道路の右側からY2車が本件交差点に進入してくるのを発見し,急ブレーキをかけたこと,⑥結局,Y2車とY1車とは衝突を避けられず,本件交差点内で出合い頭に,Y2車の左前側面(助手席側)とY1車の前面とが衝突したことが認められる。
    以上の事実によれば,被告Y2はY2車の,被告Y1はY1車のそれぞれ所有者(運行供用者)であるところ,被告Y2には,本件交差点に進入するに当たって,一時停止を怠った過失があるというべきであるし,他方,被告Y1にも,交差道路側に一時停止規制があったことから,交差道路からの車両の有無及びその動静に対する注意を十分払っていなかった過失があり,被告Y2及び被告Y1は,互いに本件事故を惹起させた者として,連帯して原告に生じた損害を賠償する責任(共同不法行為)を負うというべきである。
  (2) 原告の過失について
    証拠(甲1,甲2の1ないし8,甲25,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,被告Y2の友人であり,本件事故当時,被告車の助手席に同乗していたが,運転に関しては,被告Y2に対して何ら指図をしていたわけではなかったこと,②被告Y2は,来日して10か月程度であるが,日本における運転免許を有していたこと,③原告は,被告Y2車に乗車中,シートベルトをしていたが,シートを倒して居眠りをしていたこと(原告は,シートを倒していなかったと主張するが,捜査段階における原告の供述調書において原告自身が認めていることである。なお,原告は,捜査段階における通訳人の能力や,原告が口に怪我をしていてうまく発音ができなかったことを主張するが,上記の話の内容から考えて,通訳人が原告の話を誤解して誤訳をするようなこととも考えられず,原告の主張は採用できない。),④本件事故は,本件交差点内で出合い頭にY2車の左前側面(助手席側)とY1車の前面とが衝突したもので,その結果,Y2車は,原告が乗車していた助手席側のドア付近が激しく損傷したこと,⑤原告の怪我の内容は,左大腿骨転子骨折,右膝蓋骨骨折,鼻骨骨折等であることが認められる。
    以上の事実によれば,原告は,被告Y2の友人であり,運転に関して被告Y2に対し何ら指図をしていたわけではなかったから,被告Y2の過失を原告側の過失として考慮することはできない。また,被告Y2は,来日してそれほど時間が経っていたわけではないが,日本における運転免許を有していたことからすれば,原告が被告Y2の運転について注意を払うべき立場にあったということはできず,原告が,被告Y2の運転に関心を払っていなかったことが原告の過失と評価することはできない。
    なお,原告は,シートを倒して居眠りをしており,そのような姿勢をとっていた場合,シートベルトをしていたとしても事故に遭うとシートベルトの下をくぐり抜けたりして衝突の衝撃を吸収することが困難になることがあることを指摘する。しかし,本件事故の態様は,前記(1)に認定したとおり,Y2車の左前側面とY1車の前面とが衝突したものであって,原告の受けた衝撃の方向が真横からであり,しかも,Y2車は,原告が乗車していた助手席側のドア付近が激しく損傷していることからすると,Y1車の衝突による強い衝撃が,直接,原告の身体に加わったことにより,原告にかなりの傷害が生じたと考えられるから,原告がシートを倒したことによって原告の傷害の内容や程度が拡大したということができるかは疑問であって,他に,原告がシートを倒していたことによって原告の傷害の内容や程度が拡大したと認めるに足りる証拠はない。
    したがって,原告に過失相殺を認めることはできない。
 2 原告の損害
  (1) 治療費                   143万1601円
    証拠(甲12の1ないし10,甲13の1ないし3,甲39,40,乙1,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故により,自己負担分1万4480円及び被告側保険会社が直接病院に支払った141万7121円の合計143万1601円の治療費を要したことが認められる。
  (2) 入院雑費                   14万8500円
    証拠(甲2の7,甲3ないし9,22ないし25,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故により,平成16年10月26日から平成17年1月13日まで,平成17年11月9日から19日まで,及び平成18年1月5日から12日までの合計99日間入院していることが認められるところ,入院雑費は1日当たり1500円が相当であるから,原告の入院雑費は合計14万8500円と認められる。
  (3) 装具費                       3525円
    証拠(甲14,15,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,歯科器具(2205円)及び杖(1320円)を購入していることが認められるが,前記のとおり,原告は,本件事故により,右膝蓋骨骨折,左大腿骨転子下骨折を負い,歯牙を損傷しているから,原告の負担した装具費合計3525円は本件事故と相当因果関係のある損害と認めることができる。
  (4) 付添看護費                        0円
    証拠(甲2の7,甲3ないし9,甲22ないし25,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,入院中,日本語に通じていなかったため,原告の友人が頻繁に原告に付添い,原告と病院のスタッフとの間の意思疎通のために通訳を行っていたこと,原告の友人が通訳を行うことは,病院側からも希望していたこと,2度目の入院(平成17年11月9日から19日まで)の際には原告の妻が付き添っていることが認められるところ,前記のとおり,原告の傷害は,右膝蓋骨骨折,左大腿骨転子下骨折,顔面多発骨折等で重傷であるとしても,生命にかかわるものではなく,病院による看護のみで対応できないようなものとまでは言い難いし,実際,入院先の医師が原告側に対して看護のための付添いを要請していた形跡もない(なお,原告は,本人尋問において,入院当初意識がなかったと供述しているが,そうであれば,病院としても通常よりも手厚い看護を行っていたはずであり,医師の指示があった形跡もないことからすると,やはり,病院による看護の他に原告の友人による付添看護が必要であったとまでは認め難い。)。
    したがって,仮に,原告が供述するように,原告の友人において原告の着替えを手伝うなど,原告の面倒をみていた場面があったとしても,それは,あくまで,原告の友人が,原告が日本語に通じなかったため,原告のそばにいて通訳を行っていたことから,便宜的に,好意として行っていたのであって,原告の看護のために付添いをしていたわけではないのであって,原告において,治療費のほかに付添看護費を請求できるものではないし,そもそも,付き添ったのは原告の友人であって原告と経済的な一体性のある親族ではないから,仮に原告の友人が原告に付き添ったとしても,付添看護費という財産的損害が原告に発生しているということもできず,日本語ができなかったために,入院中に不自由が生じ,友人にも迷惑をかけたことは(友人に後で御礼をしなければならないことも含む。),入通院慰謝料において考慮されるにとどまるというべきである。
    また,その後,2度目の入院の際には原告の妻が原告に付き添っているが,本件事故から相当期間が経過しており,付添いを要するような状況にあったといえないことは明らかである。
  (5) 通院交通費                  10万2060円
    証拠(甲3ないし5,25,34ないし38,42,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告の実通院日数は44日(黒磯市内の自宅から29日,一時転居していた東京都内から15日)であること,1回の交通費は,黒磯市内の自宅から病院まで公共交通機関を利用した場合は往復760円,東京都練馬区内の自宅から病院まで公共交通機関を利用した場合は少なくとも往復5980円,それぞれかかることが認められるから,原告の主張どおり,少なくとも通院交通費として10万2060円を要したことが認められる。
  (6) 大学授業料                  83万4000円
    証拠(甲2の7,甲3ないし11,17,18,22ないし25,42,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,平成16年秋学期(9月下旬から2月上旬まで)の授業料83万4000円を通学する大学に支払ったところ,原告は,本件事故により,右膝蓋骨骨折,左大腿骨転子下骨折,顔面多発骨折,頤部裂傷,口唇裂傷,外傷性脱臼などの傷害を負い,平成18年6月19日,症状固定となったが,比較的重い後遺障害(併合9級)が残っていること,そのため,原告は,平成16年10月26日から平成17年1月13日まで,平成17年11月9日から19日まで,及び平成18年1月5日から12日までの合計99日間入院し,平成18年11月6日まで通院(実通院日数は44日)していたことが認められるから,平成16年秋学期を欠席したことはやむを得ないというべきであり,原告が支払った上記大学授業料は本件事故と相当因果関係のある損害と認めることができる。
  (7) 文書料                     4万7850円
    証拠(甲19の1ないし6,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,交通事故証明書及び診断書の取得のため,原告の主張どおり,少なくとも4万7850円を負担したことが認められる。
  (8) 休業損害                  195万5000円
   ア 基礎収入
     証拠(甲20の1及び2,甲21,25ないし27,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,本件事故当時,大学に通学しながら,平成16年6月下旬からA株式会社においてアルバイトとして稼働し,さらに,同年8月及び9月にはB株式会社にもアルバイトとして稼働していたこと,②原告は,A株式会社からは,平成16年6月下旬から10月下旬までの間に合計88万4263円,B株式会社からは,同年8月及び9月において合計11万6750円の合計100万1013円の賃金収入を得ていることが認められるが,他方,B株式会社でアルバイトしていた期間(8月及び9月)は大学の夏休み期間であり,A株式会社でも大学の夏休み期間(8月及び9月)の賃金は,深夜手当が極めて多いため21万円から35万円程度と極めて高額になっており,7月及び10月の賃金は14万円前後しかないことが認められる。
     そうすると,原告のアルバイト収入は月額14万円程度であり,夏休み期間にはそれに加えて40万円程度(8月及び9月におけるA株式会社の賃金のうち月額14万円を超える部分及び並びにB株式会社の賃金)の収入が得られていたと考えられるから,原告の収入は月額17万円と認めるのが相当である。
   イ 休業期間
     本件事故(平成16年10月26日)から症状固定(平成18年6月19日)までの約20か月であるところ,入院期間である約3か月については全休となると考えられる。
     その余の期間(約17か月)について検討すると,原告の負った傷害は,左大腿骨転子下骨折,右膝蓋骨骨折,顔面多発骨折等の重傷であり,原告の後遺障害も,左股関節の機能障害,右膝痛,歯牙障害等の比較的重い後遺障害(併合9級)であるが,他方,労働能力に対する影響は,後記のとおり,限定的であること,通院期間は約14か月と長期間に及ぶが,実通院日数は43日とそれほど多くなく,しかも,そのうち23日は歯科治療のためだけに通院していること,傷害は徐々に回復すること,その他,本件口頭弁論に表れた一切の事情を考慮すれば,上記期間における休業割合は全体を通じて50パーセントと認めるのが相当である。
   ウ したがって,休業損害は195万5000円となる。
     計算式:17万円×3か月+17万円×17か月×0.5=51万円+144万5000円
  (9) 後遺障害逸失利益              508万8469円
   ア 基礎収入
     証拠(甲16ないし18,25,27,29,31,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,1971年○月○○日生まれで,症状固定時(平成18年6月19日),35歳であったこと,②原告は,中国から日本に留学し,本件事故当時,大学生であったこと,③原告は,その後,大学を卒業し,現在,経済学専攻の大学院に在学中であり,将来は,日本で就職することを希望しているが,原告の在留資格は留学であり,日本で就労する資格を有しているわけではないこと,④中国の日系企業における現地社員の給与動向は,大学院卒以上の初任給の平均は年額77万円程度であり,管理職(支店長クラス)の給与の平均は年額384万円程度であることが認められる。
     上記のとおり,原告の年齢(特に,原告の年齢からすると,大学ないし大学院新卒者としては年齢が高齢であり,大学卒業者ないし大学院卒業者として就職する見込みについては不確定な要素が大きい。),原告の在留資格などを考慮すると,原告が,将来,日本において就職をするであろう蓋然性が高いということはできないが,日本の大学に在学していることからすると中国の日系企業における現地社員の給与を参考に基礎収入を算定するのが合理的であるところ,上記のとおり,中国の日系企業における現地社員の初任給及び管理職の給与の動向,その他本件弁論に表れた一切の事情を考慮すると,原告の生涯を通じての平均的な基礎収入は,年額230万円程度(大学院卒以上の初任給と管理職の給与との平均値)とするのが相当である。
   イ 労働能力喪失率
     前記前提事実のとおり,原告の後遺障害の内容は,左股関節の機能障害(運動可能域制限,後遺障害等級12級7号,なお,左下肢の短縮障害は非該当),右膝痛(同14級9号,機能障害は非該当),歯牙障害(同10級4号),外貌醜状(同14級10号)及び嗅覚障害(非該当)の後遺障害(併合9級)である。
     これに対し,原告は,右膝痛(機能障害を含む。)について12級,嗅覚障害について14級を主張するが,これを裏付けるに足りる的確な証拠はなく,採用できない。また,被告Y1は,左股関節の機能障害及び右膝痛は肉体労働等に限定された職種のみで逸失利益を生じると主張するが,事務職にあっても稼働に相当程度の制約を与えることは明らかであり,採用の限りではない。
     上記後遺障害のうち,歯牙障害(10級)及び外貌醜状(14級)は労働能力に影響を与えるものではなく(原告は,歯牙障害のために歯を食いしばれないとするが,原告が経済学を専攻する大学院に進学していることからすると,将来は事務職に就くと考えられ,労働能力に影響を与えるとはいえないし,また,発音が難しくなったとも主張するが,発音の困難については後遺障害診断書〔甲6ないし9〕にも指摘がなく,労働能力に影響を与えるような支障が生じているとは認められない。),その余の後遺障害を前提とすれば,原告の後遺障害の程度は併合12級となり,原告の労働能力喪失率は14パーセントと認めるのが相当である。
   ウ 稼働期間
     原告は,症状固定時(平成18年6月19日),35歳であるから,稼働期間は67歳までの32年間(ライプニッツ係数15.8027)が相当である(なお,原告は,前記のとおり,本件事故当時も大学に通学しながら稼働し,学業を終えて就職したことを前提とする上記の基礎収入とそれほど遜色のない収入を得ているから,原告が大学院を卒業する前後で基礎収入を区別する必要はない。)。
   エ したがって,逸失利益は508万8469円となる。
     計算式:230万円×0.14×15.8027
  (10) 入通院慰謝料                   240万円
    証拠(甲2の7,甲3ないし9,22ないし25,42,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故により,前記のとおり,合計99日間入院(大田原赤十字病院整形外科及び形成外科)したほか,平成17年1月21日から平成18年6月19日(症状固定時)まで通院(大田原赤十字病院整形外科,形成外科及び歯科口腔外科,重複を除いて実通院日数は43日,なお,その後,平成18年11月6日に通院している。)していたこと,原告は,日本語ができなかったため,入院中に不自由があって,友人にも迷惑をかけたことが認められ,その他本件口頭弁論に表れた一切の事情を考慮すれば,原告の傷害慰謝料は240万円が相当である。
  (11) 後遺障害慰謝料                  690万円
    前記のとおり,原告の後遺障害の程度は後遺障害等級併合9級であるところ,その他,本件口頭弁論に表れた一切の事情を考慮すれば,原告の後遺障害慰謝料は690万円が相当である。
  (12) 弁護士費用を除いた損害額の合計     1891万1005円
  (13) 自賠責保険金等充当後の残額
    以上の検討によれば,弁護士費用を除いた損害は,1891万1005円となるところ,既払いの治療費141万7121円(乙1)を控除すると,その残額は1749万3884円となる。
    原告は平成19年5月8日に自賠責保険金616万円の支払を受けたところ(甲33),本件事故の日(平成16年10月26日)からそれまでに生じた遅延損害金(2年と195日)は221万6690円であるから,上記自賠責保険金を遅延損害金から充当すると損害金残額は1355万0574円となる。さらに,原告は平成19年5月17日に自賠責保険金714万2879円の支払を受けたところ(甲33),平成19年5月9日からそれまでに生じた遅延損害金(9日)は1万6706円であるから,上記自賠責保険金を遅延損害金から充当すると損害金残額は642万4401円となる。
  (14) 弁護士費用を含めた損害賠償額
    上記(13)のとおり,弁護士費用を除いた損害金は642万4401円であるところ,その他,本件口頭弁論に表れた一切の事情を考慮すれば,弁護士費用は64万円が相当である。
    したがって,弁護士費用を含めた損害金は706万4401円となるから,原告の請求は,被告らに対して,連帯して,損害金合計706万4401円及びうち642万4401円に対する平成19年5月18日から,うち64万円に対する平成16年10月26日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があることになる(なお,被告Y1は,仮執行宣言の免脱を求めているが,事案の性質上,仮執行宣言の免脱を認めるのは相当でない。)。
 3 よって,主文のとおり判決する。
              東京地方裁判所民事第27部
                  裁判官  飯畑勝之

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