名古屋地方裁判所判決 平成20年12月10日

       主   文

 1 被告らは,原告X1に対し,連帯して280万2862円及びこれに対する平成14年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告らは,原告株式会社X3に対し,連帯して308万8597円及びこれに対する平成14年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 原告X1及び原告株式会社X3のその余の請求を棄却する。
 4 原告X2の請求を棄却する。
 5 訴訟費用は,原告X1及び原告株式会社X3に生じた費用の10分の1,被告らに生じた費用の50分の1を被告らに負担させ,原告X1及び原告株式会社X3に生じた費用の10分の9及び被告らに生じた費用の50分の48を原告X1及び原告株式会社X3に負担させ,原告X2に生じた費用及び被告らに生じた費用の50分の1を原告X2の負担とする。
 6 この判決は,原告X1及び原告株式会社X3勝訴部分に限り,仮に執行することができる。

       事   実

第1 請求
 1 被告らは,原告X1(以下「X1」という。)に対し,連帯して9094万0775円及びこれに対する平成14年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告らは,原告X2(以下「X2」という。)に対し,連帯して250万円及びこれに対する平成14年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告らは,原告株式会社X3(以下「原告会社」という。)に対し,連帯して3670万1023円及びこれに対する平成14年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 訴訟費用は被告らの負担とする。
 5 仮執行宣言
第2 事案の概要
  本件は,交通事故により負傷した原告X1と,原告X1が負傷したことによって妻の原告A(以下「A」という。原告Aの死亡によって原告X1及び原告X2が相続)及び原告X1が代表者をしている原告会社も損害を受けたと主張して,被告Y1及び被告Y2に対し,民法709条に基づき損害賠償を請求した事案である。
 1 争いない事実等(以下,証拠を挙げていない事実は争いない。)
  (1) 原告ら
    原告X1は,Aと婚姻し,平成4年原告X2をもうけた。Aは平成15年2月9日死亡した。Aの相続人は原告X1及び原告X2である(相続分各2分の1)。
    原告会社は,航空測量を目的とする会社である(以上原告本人,原告会社が航空測量を目的とする会社である点は被告Y1との間で争いがない。)。
  (2) 本件事故
   ア 日時  平成14年9月10日午後5時20分
   イ 場所  名古屋市熱田区旗屋1丁目10番43号先路線上
   ウ Y1車 被告Y1運転の普通乗用自動車
   エ Y2車 被告Y2運転の普通乗用自動車
   オ 原告車 原告X1運転の普通乗用自動車
   カ 態様  信号待ちのために原告X1運転の原告車を含めて7台ほど停車したところ,被告Y1運転の車が急ハンドルにより道路右側にそらしたところ,折から道路右折専用車線を後方から進行してきた被告Y2車と接触し,被告Y2車が停車車両前から4台目付近に停止していた原告車に右後方から追突した(甲1,2,21)。
  (3) 責任
    被告Y1は,前方を注視することなく,Y1車をY2車に衝突させ,本件事故が引き起こされた(被告Y1との間で争いがない。)
  (4) Aは,本件事故当時,卵巣ガンの末期症状で入院中であった(被告Y1との間で争いがない。)。
  (5) 原告X1の入通院
    原告X1は,以下のとおり入通院した。
   ア 中部労災病院
     平成14年9月10日から同年12月2日まで入院
     平成15年3月5日から同年6月20日まで通院
   イ 医療法人珪山会鵜飼リハビリテーション病院(以下「鵜飼病院」という。)
     平成14年12月2日から平成15年4月1日まで入院
   ウ はやせ希望クリニック
     平成15年3月31日から平成16年3月1日まで通院
   エ 掖済会病院
     平成15年9月18日から平成16年3月1日まで通院
   オ 名古屋第一赤十字病院
     平成14年12月18日から平成15年1月15日まで通院(乙21)
  (6) 原告X1は,損害保険料率算出機構から後遺障害等級14級の認定を受けている。
  (7) 既払い
    原告X1は,1051万9679円の支払を受けている(乙41ないし47〈枝番を含む〉)。また,自賠責保険から150万円の支払を受けている。
    原告X1に対し,健康保険傷病手当金合計330万1662円(平成15年8月4日から平成17年2月3日までの合計484万1100円から返納金153万9438円を控除した残金),障害基礎厚生年金合計895万1784円が支払われている(平成17年4月から平成21年4月まで,支払確定分を含む。)。
 2 争点
  (1) 被告らの責任の有無
  (2) 原告X1の症状固定日及び後遺障害の程度
   (原告らの主張)
    原告X1の症状固定日は,平成16年3月1日である。
    また,原告X1には,頭痛,光に対する過敏,耳鳴り,聴覚の過敏,頸部運動障害,左上下肢のしびれ,痛み,激しい腰痛の後遺障害が残っている。
    そして,①頚椎の著しい運動障害につき6級5号,②上肢の鈍麻・疼痛につき12級12号,③下肢の脱力・疼痛について12級12号,④眼精疲労による疼痛・頭痛につき14級10号に該当し,後遺障害等級は併合5級に相当する。損害保険料率算出機構の後遺障害等級の認定はあまりに低いものである。
   (被告Y1及び被告Y2の主張)
    原告X1の症状は,平成15年9月末には固定している。
    また,後遺障害等級は,損害保険料率算出機構により14級10号に認定されている。
    さらに,原告X1は,健常人と同様に歩行したり,荷物を運んだりしている姿が撮影されており,原告らの主張するような後遺障害の存在は疑わしい。
  (3) 原告らの損害額
   (原告らの主張)
   ア 原告X1について
     入院中の外泊は,原告X2の監護のためであり,個室も神経過敏の症状のため必要であった。
     原告X2の監護については保険会社との合意(甲42)があり,これによるべきものである。
     自宅改造は原告の上下肢の疼痛が激しく,手すりなどが必要であった。
     人間の個人差をもって素因減額とするような特別事情にすべきではないし,本件事故前にはやせ希望クリニックでの受診があるにしても,しびれの症状は本件事故前すでに消滅していたものである。
   イ Aについて
     本件事故当時,Aは末期ガンで入院中であり,原告X2の世話をする者もなく,家族の将来の生活も不安定になった結果,Aは著しい不安に陥れられ,精神的打撃を受けた。
   ウ 原告会社
     原告会社は,原告X1のみの活動によって運営されており,本件事故により休止に近い状態になり,倒産の危機にさらされ,現在事実上倒産状態である。
   (被告らの主張)
   ア 原告X1について
     中部労災病院,鵜飼病院への入院の必要性はない。入院は家庭の必要性によるものであり,入院が必要としてもせいぜい2か月である。また,個室も必要ない。
     自宅の改造は平成14年12月ころなされており,そのころ原告X1は入院しており,自宅の改造は妻Aのためになされたものである。
     原告X1の後遺障害は神経症状であり,労働能力喪失期間は3年とすべきである。
     また,原告X1には,本件事故前からC3/4,C4/5,C5/6の椎間板狭小化がみられており,平成14年5月27日には,はやせ希望クリニックで左上肢のしびれ感で受診している。このように原告X1は上肢に神経症状を出しやすい体質を有し,これが治療の長期化,後遺障害の発生に大きく寄与しており,3割の素因減額がなされるべきである。
   イ Aの慰謝料について
     Aがガンに罹患していたことは本件事故とは無関係である。そして,原告X1の傷害・障害の程度からすれば,Aが本件事故により生命侵害にも比肩すべき精神的苦痛を受けたとは言い得ない。
   ウ 原告会社について
     本件事故当時,原告会社には原告X1以外にも従業員2名と,1名の監査役(A)がいたのであり,本件事故後も事業は継続されていた。したがって,被告X1に会社の機関としての代替性がなく,原告X1と原告会社とが一体をなす関係にあったとまでは認められず,原告会社の損害は本件事故と相当因果関係のある損害とはいえない。仮に一体性が認められるのならば,原告X1に対する既払いにつき,原告会社に対する関係でも損益相殺されるべきである。さらに,原告会社は本件事故の直前期である第12期に80万4539円の損を出しており,資産状況からすれば,本件事故がなかったとしても,原告会社が利益を上げられたとは考えられない。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(被告らの責任の有無)について
   本件事故は,信号待ちのために原告X1運転の原告車を含めて7台ほど停車したところ,被告Y1運転の車が,追突を避けるため急ハンドルにより道路右側にそらしたところ,折から道路右折専用車線を後方から進行してきた被告Y2車と接触し,被告Y2車が停車車両前から4台目付近に停止していた原告車に右後方から追突したものであり,被告Y1は,前方を注視することなく,Y1車をY2車に衝突させた過失があり,本件事故による損害を賠償すべき義務がある。また,被告Y2も,速度違反をしており(この点争いがない。),Y1車に衝突されて原告車に衝突した過失があり,本件事故による損害を賠償する義務がある。
   したがって,被告らは,共同不法行為者として連帯して損害賠償責任がある。
 2 争点(2)(原告X1の症状固定日及び後遺障害の程度)について
  (1) 後掲各証拠及び原告X1本人尋問の結果によれば,以下の事実が認められる。
   ア 中部労災病院(乙23の1ないし9)
     平成14年9月10日から同年12月2日まで入院
     平成15年3月5日から同年6月20日まで通院
     原告X1は,同病院で,平成14年12月2日,脳振盪症,頚部挫傷,腰部・顔面打撲,歯牙インレー脱離の診断を受けており(甲3),同日付けの診断書(甲4,5)で,既往症なし,X線異常なし,MRI C3/4,C4/5,C5/6の椎間板軽度突出があるとされている。
     回答書(乙1の2)で,他覚所見として左三角筋,左大腿四頭筋の軽度筋力低下,頭部CTスキャン:頭蓋内出血を認めず 頚椎MRI:頚髄の損傷なし,C3/4,C4/5,C5/6の軽度椎間板突出 両側C5/6椎間孔狭小化 頚椎アラインメント異常なしとされ,症状固定時期は受傷後1年と思われると回答している。
   イ 鵜飼病院(乙20)
     平成14年12月2日から平成15年4月1日まで入院
     診療録の平成14年12月2日他覚所見と自覚所見の矛盾がある旨記載されている(乙20・13頁)。
     平成14年12月3日のOT報告書(乙20・53頁)で,「機能面において上肢筋力ROM巧緻動作全く問題みられません。Sensoryについては頚部~手指にかけてしびれがあり,指先に表在感覚鈍麻が認められますが,視覚的フィードバックにより代償することが可能であり,日常生活には問題ありません。」として日常生活動作訓練が終了している。
     原告X1は,12月7日から8日まで,13日から15日まで,20日から23日まで,31日から平成15年1月3日まで,10日から13日まで,17日から19日まで,24日から26日まで,31日から2月3日まで,5日から6日まで,7日から12日まで,14日から16日まで,21日から23日まで,27日から3月2日まで,7日から9日まで,14日から16日まで,20日から24日まで,27日から30日まで外泊している。
     平成14年12月18日付けの診断書(甲9)では,病名が頭頚部外傷,平成14年12月2日入院時より眼に光が入ると眩しくて開眼出来ない為眼科受診必要と思われる旨記載されている。
     平成15年3月14日MRI所見C3/4/5頚椎症変化が強いとされたが,脊髄に変化はなく圧迫もない(乙20・25頁)。
   ウ はやせ希望クリニック(甲23ないし25,乙19の1ないし4)
     平成15年3月31日から平成16年3月1日まで通院(今回の請求分に入っていないが,その後も通院している。)
     中部労災病院からの平成15年4月16日の診察情報提供書では「おそらく心身症」と記載されている(乙19の2・7頁)。
     平成16年3月16日付け診断書(甲15)には,傷病名頚部挫傷,腰部挫傷,外傷性廃用症候群と記載され,症状固定日平成16年3月1日と記載されている。
     同クリニックは,平成16年7月31日付け身体障害者診断書・意見書(甲18)を記載し,障害名肢体不自由,身体障害者福祉法別表に掲げる障害の5級相当の意見を提出している。原告X1は,平成16年8月13日交付の身体障害者手帳で,5級の認定を受けている(乙17)。
   エ 掖済会病院(乙18・94頁以下)
     平成15年9月18日から平成16年3月1日まで通院
     平成16年3月4日付け自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書で(乙18・23頁),症状固定日として「平成16年3月1日」,傷病名として,「頚部挫傷,腰部挫傷,外傷性廃用症候群,脳振盪」,自覚症状として,「項痛,上肢のしびれ,下肢の疼痛,頭痛,耳鳴り,眼痛,下方視での読書が持続できない,腰部と左股関節に突き刺す痛みの為同じ姿勢が維持できない。眼球全体が痛く目を開けているのが辛いと記載され,他覚所見として,MRI第5/6頚椎間椎間板の狭小化あり,第5腰椎仙骨間の椎間板の後方膨隆あり」と記載されている。また,頚部の可動域につき,「前屈45度,後屈10度,右屈0度,左屈10度,右回旋20度,左回旋10度」と記載されている。
     平成16年12月21日付け診断書(甲20)で,病名うつ状態で通院中との診断書を出している。
   オ 名古屋第一赤十字病院(乙21)
     平成14年12月18日から平成15年1月15日まで通院
   カ 原告X1に関し,損害保険料率算出機構での後遺障害等級の事前認定では,後遺障害14級の認定となっている。異議申立てをしたたものの,平成16年12月29日付けで,後遺障害等級認定票で,14級が維持されている(乙17)。その理由は,腰痛につき14級とされ,項部痛,上肢のしびれ,頭痛,耳鳴り,眼痛につき14級とするものの,昭和58年に14級に認定されており,非該当とされ,その他の症状については外傷性の異常所見等が認められず,後遺障害に該当しての等級扱いしないとされた(乙17,18)。
   キ 平成17年7月12日,B保険相互会社は,脊柱に著しい奇形または著しい運動障害を永久に残すものに該当するとして,原告X1に対し障害給付金を支払っている(甲22)。
   ク 原告X1は,平成19年3月28日,藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院(以下「藤田保健衛生大学病院」という。)で,ニューロ電気刺激装置植え込み術を受けた(甲33の1・2)。
   ケ はやせ希望クリニックは,平成19年4月19日付けで,原告X1が,平成19年3月28日ニューロ電気刺激装置植え込み術を施行され,体幹の機能障害により歩行も困難であるとし,身体障害者福祉法別表の3級相当と意見(甲30)を出している。平成19年5月15日再交付された身体障害者手帳で,外傷,疾病による歩行困難な体幹機能障害により,3級となっている(甲34)。
   コ 藤田保健衛生大学病院医師の平成19年8月28日付け診断書で,病名は外傷性頚椎症と診断し,C3/4~C5/6にかけて頚椎配列は直線化し配列不良を認める,各レベルに軽度の椎間板膨隆と椎体辺縁部の骨棘を疑わせる変形を認める,以上の所見は交通事故と関係する可能性が高いと記載している(甲35の3)。
   サ 原告X1の原状(乙16-平成15年10月当時,24,26,27-平成20年2月当時,28-平成20年8月当時)
     原告X1は,平成15年10月当時,車を運転し,また,コルセットをせずに外出をしていた。歩行中後ろを振り返ったりしている。歩行中サングラスは使用していないが,車の運転の際に,サングラスを着用している(乙16)
     また,原告X1は,平成20年2月当時,杖や手すりに頼ることなく正常に歩行しているところを撮影されている。そのほか,左手で,購入した物が入ったナイロン袋やミカン箱を持っている。体を静止して,本を立ち読みしている。外出の際,サングラスをかけていない。車の運転を普通に行っている。階段を手すりを使わずに昇り下りしている。左手を真っ直ぐに伸ばしている。
  (2) 症状固定日
    前記自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書では,症状固定日を平成16年3月1日としており,原告X1は本件事故後入通院して治療を受けており,鵜飼病院での入院中外泊が多いこと,前記サに照らすと,各病院の所見は実際の症状よりも大きく記載されている可能性が高いものの,治療が継続していることを否定すべき事情とはいえない。したがって,症状固定日は平成16年3月1日と認めるのが相当である。
  (3) 後遺障害の程度
    原告らは,原告X1の①頚椎の著しい運動障害につき6級5号,②上肢の鈍麻・疼痛につき12級12号,③下肢の脱力・疼痛について12級12号,④眼精疲労による疼痛・頭痛につき14級・10号に該当する旨主張する。
    そして,原告X1については,腰痛,項部痛,上肢のしびれ,頭痛,耳鳴り,眼痛が認められる。しかし,原告の症状については,前記サの現状を考慮すると,その程度は,各診断書等の所見に現れた状態よりも相当程度低いものと考えるのが相当である。
    ①頚椎の著しい運動障害については,その程度につき疑問が残り,第5/6頚椎間椎間板の狭小化が見られるものの,従前にも狭小化は見られたものであり,外傷性か否か判然とせず,これをもって後遺障害と認めることはできない。すなわち,本件事故前の甲26,27(平成14年5月27日撮影のX線写真)と甲28,29(本件事故後の平成17年10月19日付けX線写真)と比べて,C5/6の椎間板腔狭小化が進行し,C3/4の前方の骨棘形成,C4/5の椎間板腔も狭くなっているようであるが,頚椎の椎間板損傷を認めるに足る証拠はなく,前記変化は自然経過による変化と認めるのが相当である(丙2)。証人Cの供述書,あるいは藤田保健衛生大学病院は,所見は交通事故と関係する可能性が高いと記載している(甲35の3)ものの,採用できない。
    また,②上肢について,前記のとおり頚椎に所見が認められるが,同様に他覚的所見とは認めがたい。
    ③下肢の部分の主張につき,第5腰椎仙骨間の椎間板の後方膨隆が認められるが,外傷性か否か判然とせず,他覚的所見とはいえない。
    ④については,平成15年当時も,平成20年にも,原告X1はサングラスをせずに外出しており,眼球全体が痛く目を開けているのが辛いといった状態にあるかは疑問が残り,これを前提とする後遺障害の主張はその前提を欠き,採用できない。
    そうすると,腰痛,項部痛,上肢のしびれ,頭痛,耳鳴り,眼痛の症状につき,後遺障害等級としては他覚的所見が認められず,14級にとどまるものと認めるのが相当である。なお,腰痛以外は,後遺障害の事前認定で昭和58年に14級に認定されていることを理由に非該当としているが,昭和58年当時の症状が本件事故の平成14年まで残っているとは認められず,前記症状全部につき14級と認める。
    なお,はやせ希望クリニックの身体障害者診断書・意見書(甲18,30)は,原告X1の愁訴を下に作成されており,前記サの事情に照らすと,その愁訴自体に大きな疑問が付き,これを採用することはできない。
 3 争点(3)(原告らの損害額)について
  (1) 原告X1
   ア 後遺障害逸失利益(請求6173万2575円)
                          280万3125円
     証拠(甲41,59〈枝番を含む〉,65,乙10,11,13,14,)によれば,原告X1は,原告会社の役員報酬として,平成13年分390万円を得,平成14年分同額,平成15年分291万5000円,平成16年以降0円を得ており,また,Aも原告会社の役員報酬として,平成13年分153万6000円を得ていることが認められる。
     原告らは,Aの報酬分も原告X1の基礎収入に加算しているが,原告X1とAは別人格で,別々に報酬を得ており,別個のものであって,加算することは相当ではない。そして,原告X1が原告会社の代表者であり,事務員が2名いるものの,航空測量の技術者は原告X11名であり(弁論の全趣旨),その報酬金額も併せ考えると,390万円全部を労働の対価として基礎収入とするのが相当である。なお,原告X1は症状固定時41歳であり,その後遺障害は14級であるが,現在も通院しており,労働能力喪失期間としては,67歳まで認めるのが相当である。
     そうすると,逸失利益は以下の計算式により,280万3125円となる。
     390万円×0.05×14.375(26年のライプニッツ係数)
     (原告らの請求 〈390万円{原告X1の役員報酬}+153万6000円{Aの役員報酬,実質原告X1の収入}〉×0.79×14.375)
   イ 後遺障害慰謝料(請求1500万円)        100万円
     原告X1は後遺障害14級の後遺症を残し,その他本件で現れた諸事情を考慮すると,後遺障害慰謝料は100万円が相当である。
   ウ 治療費(請求・認容額1万1096円)
     証拠(甲37・21・22・31・32頁)によれば,原告X1は,治療費として1万1096円を支払っている。
   エ 治療関係費(請求263万8541円)   694万0579円
     原告らは,治療関係費(治療費も含まれている。)として保険会社からの支払分を請求している。しかし,その後も支払があり,後記既払い金に含まれているため,治療費211万3835円,入院料358万8654円,看護料123万8090円,合計694万0579円をここに計上する。
     また,鵜飼病院で,原告X1は外泊が多く,社会的入院であるとの意見(乙25)もあるが,それによって直ちに入院の必要性が否定されるものではない。また,原告X1は当時神経過敏を訴えており,個室を使用したとしても直ちに不必要とはいえない。
   オ 書類作成費用(請求・認容額6万7930円)
     証拠(甲37・33ないし50頁)によれば,書類作成費用として6万7930円を要したことが認められる。
   カ 入院雑費(請求30万6000円)      22万4400円
     原告X1は,合計204日間入院しており,入院雑費は,原告X1に外泊が多かったことも考慮すると,1日当たり1100円が相当であり,そうすると,入院雑費合計22万4400円となる。
   キ 交通費(請求・認容額2万6160円)
     病院への通院の際の,病院駐車場料金(1万4500円,甲37・2ないし13頁)及び自宅へのタクシー代(1万1660円,甲37・17頁)を要し,本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
   ク 固定具等(請求・認容額2万5896円)
     証拠(甲37・28・29頁)によれば,固定具等として,ポリネックカラー,セラバンド,サングラス,ガードル,滅菌ガーゼなど合計2万5896円を要したことが認められる。
   ケ 休業損害(請求802万7408円)    163万4999円
     原告X1は,本件事故により入通院し,平成14年9月10日から平成16年3月1日までの539日間仕事ができなかったことが認められる。
     ところで,原告は,原告会社の役員報酬として,平成13年分390万円を得,平成14年分同額,平成15年分291万5000円,平成16年0円であり,休業損害としては,平成15年の現実の減額分の98万5000円と平成16年の3月1日までの分64万9999円(390万円÷366×61日)の合計163万4999円となる。
     (原告らの請求 543万6000円〈原告X1の役員報酬及びAの役員報酬〉÷365×539日)
   コ 傷害慰謝料(請求372万円)           281万円
     原告X1は,本件事故による傷害により合計204日間入院し,症状固定の平成16年3月1日まで9か月間通院しており,本件で現れたその他の事情を考慮すると,傷害慰謝料は281万円と認める。
   サ 父母の日当など(請求121万9760円)  53万8000円
     原告X1が入院し,また,症状固定日までは仕事ができず,原告X2の監護に人手が必要であったこと,しかし,原告X2は平成4年生まれで,本件事故当時10歳で,小学生であり,学校へ行っている間は手がかからず,必要なのは夜間や休日にすぎないことを考えると,その金額は近親者につき交通費込みで泊まりで4000円,通いで2000円とするのが相当である。
     そうすると,通算で近親者は泊まりで延べ119日,通いで延べ31日となり(甲52,丙3),その金額は合計53万8000円となる。
   シ 家政婦日当(請求・認容額294万3550円)
     また,原告X2のため家政婦を必要とし,家政婦代として平日1時間当たり1200円,休日1時間当たり1500円が相当であり,交通費は500円の限度で認めるとして(甲42),そうすると,家政婦代としては合計294万3550円となる(甲37・60ないし70頁,43,高速料金1万6900円加算〈甲37・14ないし16頁〉。)。
   ス 自宅改造費(請求26万0400円)     17万4930円
     原告X1は,平成14年11,12月,自宅を改造している(甲37・18ないし20頁)。その内容は,浴槽手すりなど4万5780円,階段手すりなど3万9690円,トイレウォシュレット3万9690円,同4万1790円,専用の布団9万3450円である。改造の時期は,原告X1が未だ入院中であるが,原告X1の症状からみて必要であり,退院後に利用することも可能であるから相当因果関係のある損害といえる。
     しかし,原告X1は,平成20年手すりなしで階段を昇り降りしており,本件事故当時も同様であった可能性が高く,手すり部分につき本件事故との間に相当因果関係を認めることは難しく,他にこれを認めるに足る証拠はない。
     したがって,前記自宅改造費は,浴槽,階段の各手すりなどの部分を除いた17万4930円の限度で本件事故と相当因果関係を認める。
   セ 金利(請求・認容額6万円)
     原告X1は,平成15年8月6日事業資金200万円を借入しており,利息6万円を支払っており,金利分6万円も相当因果関係のある損害と認められる。
   ソ 素因減額
     被告らは素因減額を主張する。そして,原告X1は本件事故前からC3/4,C4/5,C5/6の椎間板狭小化がみられており(甲26,27),平成14年5月27日には,はやせ希望クリニックで左上肢のしびれ感のため受診していることが認められる(丙2)。しかし,平成14年当時,原告X1は40歳であり,椎間板狭小化がみられたとしても,これまでの経年変化あるいは生来である可能性があり,また,前記しびれ感は同年8月に消失しており(丙2),また,後遺障害が14級にとどまることも考慮すると,これをもって素因として本件事故での損害額を減額するのは公平とはいえない。したがって,素因減額の主張は採用できない。
   タ 既払い
    (1) 原告X1は,合計1051万9679円の支払を受けている。また,自賠責保険から150万円の支払を受けている。
      さらに,原告X1に対し,健康保険傷病手当金合計330万1662円(平成15年8月4日から平成17年2月3日までの合計484万1100円から返納金153万9438円を控除した残金),障害基礎厚生年金合計895万1784円が支払われている(平成17年4月から平成21年4月まで,支払確定分を含む。)。
    (2) ところで,前記健康保険傷病手当金及び障害基礎厚生年金分は逸失利益及び休業損害の支払に当てられ,前記ア(逸失利益)及びケ(休業損害)からこれを控除すると,残額はゼロとなる。
      そして,その余の損害額の合計額1482万2541円から1201万9679円(1051万9679円+150万円)を控除すると,残額は280万2862円となる
  (2) A
    Aは,本件事故当時,末期ガンで入院中(一時帰宅あり)であり,その後,平成15年2月9日死亡したものであるが,原告X1に将来どの程度の後遺障害が生じるのかは不明であり,また,原告X1の後遺症は前記認定のような状態にとどまり,さらに,原告X1が入院中家族のために外泊していることを考え合わせると,Aに本件事故による原告X1の傷害・障害等のため慰謝料まで認めるような事情があったとは認められず,他にこれを認めるに足る証拠はない。
    よって,Aの慰謝料が発生したことを前提とする原告X1及び原告X2の請求部分は理由がない。
  (3) 原告会社
   ア 逸失利益(請求3346万6914円)          0円
     原告らは,原告X1が67歳まで79パーセントの労働能力を喪失することを前提として原告会社の逸失利益を算定しているが,企業体である会社が26年間に渡り,なにも手を打たないまま損害を被っているとは考えにくく,また,退院後症状固定までにかなりの期間があったものであり,他に技術者を採用するなどの損害防止策を講ずる時間は十分あり,逸失利益と本件事故との間に相当因果関係を認めることは難しく,他にこれを認めるに足る証拠はない。
     (原告らの請求 294万7004円〈平成12年8月1日から平成13年7月31日までの営業利益〉×0.79×14.375)
   イ 休業損害(請求264万5512円)        250万円
     原告会社は,技術者は原告X11名,従業員は2名であり,航空測量は技術者がいなければできず,原告会社の営業も成り立たないところ,原告会社は,平成11年ないし13年にかけての第10ないし12期の売り上げ高は2000万円前後あったものの(甲40の1ないし3),平成14年9月10日から平成15年9月10日までの売り上げは576万2935円,平成14年9月10日から平成16年3月1日までの売り上げ高は1073万1700円となり(甲45),売り上げが落ち込んでおり,これらの事情を総合すると,本件事故による原告X1の傷害と原告会社との損害との間には相当因果関係が推認される。
     ところで,原告らは,平成14年9月10日から平成16年3月1日までの売上高から固定費を控除した金額をもって,原告会社の休業損害として主張しているが,原告会社の事故前と事故後の差額が損害となるものであり,原告らの前記主張は採用できない。
     そして,前記のとおり原告会社の売り上げの減少があり,本件事故によるものであること,しかし,被告会社は本件事故前の12期は赤字であったこと,民事訴訟法248条により口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を総合すると,原告会社の休業損害は250万円と認めるのが相当である。
     原告会社は本件事故直前の12期は赤字であったが(甲40の3),営業活動をしており,原告X1ら及び従業員に報酬等を支払っていたものであるから,単に赤字であるからといって直ちに損害が発生しないということはできない。また,原告X1と原告会社とは別人格であり,原告X1への支払分を原告会社の損害の支払に当てることはできない。
   ウ 資料の再現費(請求・認容額9万4500円)
     原告会社の資料再現のために9万4500円を要したことが認められる(甲49)。
   エ 解析図化機のオーバーホール(請求・認容額42万円)
     解析図化機を利用しなかったため,そのオーバーホールに42万円を要することが認められる(甲50)。
   オ 中古車の登録費用(請求・認容額7万4097円)
     本件事故により原告車は大破し(甲21),原告会社は新たに中古車を購入し,登録料など諸費用が7万4097円を要している(甲51)。
   カ 以上合計
     308万8597円
 4 結論
   よって,原告X1及び原告会社の本件請求は,主文の限度で理由があるが,原告X2の請求は理由がない。なお,仮執行免脱宣言の申立は,相当でないので却下する。
       名古屋地方裁判所民事第3部
            裁判官 徳永幸藏

(10)装具・器具等購入費
必要があれば装具・器具購入費は認められます。義歯、義眼、義手、義足、その他相当期間で交換の必要があるものは将来の費用も原則として全額が損害として認められます。これらの他に、眼鏡、コンタクトレンズ、車いす、盲導犬費用、電動ベッド、介護支援ベッド、エアマットリース代、コルセット、サポーター、折り畳み式スロープ、歩行訓練器、歯・口腔清浄用具、吸引機、障害者用はし、脊髄刺激装置などの購入費が損害として認めております。
(以上、赤い本2013年版上巻39頁による)

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