東京地方裁判所判決 平成22年11月24日

症状固定時23歳の男性大学生が高次脳機能障害、右不全片麻痺、左眼光覚なし等(別表第1の1級1号)の後遺障害を負った場合において、傷害分480万円の慰謝料、本人分3000万円、父母各300万円の後遺障害分の慰謝料を認めた。        主   文  1 被告は,原告X1に対し,2億3288万2012円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  2 被告は,原告X2に対し,330万円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  3 被告は,原告X3に対し,330万円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。  5 訴訟費用は,   (1) 原告X1に生じた費用の10分の1及び被告に生じた費用の30分の1を原告X1の負担とし,   (2) 原告X2に生じた費用の4分の1及び被告に生じた費用の12分の1を原告X2の負担とし,   (3) 原告X3に生じた費用の4分の1及び被告に生じた費用の12分の1を原告X3の負担とし,   (4) 原告X1に生じた費用の10分の9,原告X2に生じた費用の4分の3,原告X3に生じた費用の4分の3及び被告に生じた費用の5分の4は被告の負担とする。  6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。        事実及び理由 第1 請求  1 被告は,原告X1に対し,2億5470万2989円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  2 被告は,原告X2に対し,440万円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  3 被告は,原告X3に対し,440万円及びこれに対する平成17年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要    本件は,D(以下「D」という。)の運転する大型貨物自動車(以下「被告車両」という。)と原告X1(以下「原告X1」という。)の運転する普通自動二輪車(以下「原告車両」という。)との間で発生した交通事故により,原告X1が人的損害を受けたとして,原告らがそれぞれ被告車両の保有者である被告に対し,自賠法3条に基づき,損害賠償金及びこれに対する事故日である平成17年7月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。  1 争いのない事実等(証拠等によって容易に認定できる事実を含む。)   (1) 当事者(甲29)     原告X1は,昭和58年○月○日生まれの男性である。     原告X2(昭和21年○月○○日生まれ。以下「原告X2」という。)は原告X1の父であり,原告X3(昭和23年○月○日生まれ。以下「原告X3」という。)は,原告X1の母である。   (2) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生(争いのない事実)    ア 発生日時 平成17年7月8日午後8時5分ころ    イ 発生場所 東京都練馬区関町北2丁目4番5号先路上    ウ 被告車両 大型貨物自動車(多摩○○か○○○○)    エ 同運転者 D    オ 同保有者 被告    カ 原告車両 普通自動二輪車(○多摩み○○○○)    キ 同運転者 原告X1    ク 事故態様 Dが被告車両を運転して青梅街道を西東京市方面から杉並区方面に向かって第2車線を進行中,上記発生場所の交差点(以下「本件交差点」という。)で対向右折車両が右折専用レーンからはみ出て停車していたため,同車両との衝突を避けるため,被告車両のハンドルを左に切った。そのころ,原告車両が転倒した。   (3) 傷害の内容及び治療経過    ア 傷害の内容(甲12ないし16)      原告X1は,本件事故により,頭部外傷,広汎脳挫傷,視神経損傷,頭蓋底骨折,眼窩底骨折,脾破裂,膵のう胞,外傷後水頭症,高次脳機能障害,視機能障害,顔面瘢痕等の傷害を負った。    イ 治療経過(争いのない事実)     (ア) 入院      a 武蔵野赤十字病院        平成17年7月8日から平成18年10月12日まで(462日)      b 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院        平成18年10月12日から平成19年1月19日まで(100日)      c 武蔵野陽和会病院        平成19年1月19日から同年2月10日まで(23日)     (イ) 通院(武蔵野赤十字病院)      a 脳神経外科        平成19年1月30日から同年4月27日まで(実日数88日)      b 耳鼻咽喉科        平成19年5月11日      c 眼科        平成19年1月30日から同年6月11日(実日数3日)      d 精神科        平成18年8月8日から平成19年5月14日まで(実日数6日)      e 形成外科        平成19年2月5日から同年6月11日まで(実日数2日)    ウ 症状固定日(甲12ないし16)      原告X1の症状は,脳神経外科については平成19年4月27日に,精神科については同年5月14日に,形成外科については同年6月11日に,耳鼻咽喉科・眼科については同年7月3日にそれぞれ固定した。   (4) 後遺障害及び自賠責保険における等級認定の結果(甲12ないし16,19,24)     本件事故により,原告X1には,高次脳機能障害,右不全片麻痺,左眼光覚なし,脾臓摘出,右前額部の5センチメートル以上の線状痕等の後遺障害が残った。     自賠責保険における等級認定において,原告X1の後遺障害は,自賠法施行令別表第1後遺障害等級表1級1号にいう「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」に該当すると認定された。   (5) 損害のてん補(争いのない事実,甲18,23)     原告X1は,自賠責保険金として,平成20年2月27日に3000万円,同年9月2日に1000万円の支払を受けた。     また,原告X1は,被告の加入していた任意保険会社から合計1112万4948円の支払を受けた。  2 争点   (1) 本件事故態様及び被告の責任    (原告ら)     Dが前記第2の1(2)クのとおりハンドルを左に切り,被告車両を第1車線に進入させたため,被告車両とほぼ同じ速度で第1車線を並走していた原告車両が被告車両との接触を避けようとして転倒した。     被告は,被告車両の保有者であるから,自賠法3条に基づく損害賠償責任を負う。    (被告)     原告は,制限速度の時速60キロメートルを大きく上回る速度で原告車両を走行させていた上,原告車両が転倒したのは被告車両より50メートル以上後方であるから,Dの運転行為と本件事故発生との間に因果関係はない。   (2) 原告X1の損害    (原告X1)    ア 治療費 737万4840円    イ 交通費 22万7570円    ウ 入院雑費 87万4500円      1日1500円,入院日数583日。    エ 付添看護費 378万9500円      1日6500円,入院日数583日。    オ 症状固定までの自宅介護費用 60万8000円      1日8000円,76日(平成19年2月10日から同年4月27日まで)    カ 将来の介護費 1億0721万5684円      原告X1は,本件事故による高次脳機能障害のために生涯にわたって常時介護の必要がある。原告X1は,症状固定時23歳であり,平均余命は54年間(ライプニッツ係数18.565)であるが,そのうち,原告X1の母である原告X3が67歳になるまでの8年間(ライプニッツ係数6.4632)は,同人及び原告X2による介護が期待できるが,その後の46年間は職業介護人による介護が必要である。      将来の介護費は,両親によるものは1日8000円,職業介護人によるものは1日2万円が相当であるから,将来介護費は1億0721万5684円となる。      (計算式)      8,000×365×6.4632+20,000×365×(18.565-6.4632)=107,215,684    キ 逸失利益 1億2024万2638円      原告X1は,本件事故当時,E大学政経学部の第3学年に在籍していた21歳の大学生であり,大学を卒業した後は警察官として勤務することを志望していたが,本件事故による高次脳機能障害により労働能力を100パーセント喪失した。      原告の逸失利益は,平成19年度賃金センサス男性大卒全年齢平均680万7600円に労働能力喪失率100パーセント,症状固定時23歳から67歳までの44年間のライプニッツ係数17.663を乗じた1億2024万2638円である。      (計算式)      6,807,600×1.0×17.663=120,242,638    ク 入通院慰謝料 480万円    ケ 後遺障害慰謝料 3200万円    コ 確定遅延損害金 554万5205円      前記第2の1(5)のとおり,原告X1は,自賠責保険金を合計4000万円受領しているが,うち3000万円につき,本件事故日から支払日である平成20年2月27日までの965日間に対する遅延損害金396万5753円が,うち1000万円につき,本件事故日から支払日である平成20年9月2日までの1153日間に対する遅延損害金157万9452円が発生している。      (計算式)      30,000,000×0.05×965÷365=3,965,753      10,000,000×0.05×1,153÷365=1,579,452    サ 弁護士費用 2315万円    (被告)     治療費及び交通費は認める。その余は否認する。   (3) 原告X2の損害    (原告X2)    ア 固有の慰謝料 400万円    イ 弁護士費用 40万円    (被告)     否認する。   (4) 原告X3の損害    (原告X3)    ア 固有の慰謝料 400万円    イ 弁護士費用 40万円    (被告)     否認する。 第3 当裁判所の判断  1 争点(1)(事故態様及び被告の責任)について   (1) 証拠(乙1,3,4,6,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。    ア 本件交差点は,杉並区方面(東)と西東京市方面(西)との結ぶ青梅街道と新青梅街道方面(北)と吉祥寺方面(南)とを結ぶ道路が交わる信号機による交通整理の行われている十字路交差点である。青梅街道の制限速度は時速60キロメートルである。東行車線,西行車線とも本件交差点の手前では片側3車線となっており,第1車線は直進及び左折車線,第2車線は直進車線,第3車線は右折車線となっているが,本件交差点を越えると片側2車線になっている。そして,上記第3車線の右折車線は,本件交差点中央付近まで右折待機レーンが延びている。また,本件交差点付近は照明のため夜間でも明るく,青梅街道を走行する車両の見とおしを妨げるような物はない。なお,本件事故当時,路面は湿潤状態であった。    イ Dは,被告車両を運転し,青梅街道東行車線の第2車線を時速55キロメートルで走行させていた。別紙図面1の①地点(以下,別紙図面1の各地点について,「①地点」などという。)に至った時,対向車線右折待機レーンの停止線から1.3メートルはみ出た状態で白っぽいベンツが停止しているのが見えたため,②地点でアクセルから足を離して減速し,③地点において左サイドミラーで車両の有無を確認したが,車両を認めなかったため,④地点でウインカーを出さないままハンドルを左に切って上記ベンツとの衝突を回避するため進路を変更した。⑤地点の手前で加速させるためにアクセルに足をかけるとともに,同地点でハンドルを右に切ったが,同地点で被告車両の左側が第1車線内に進入し,同車両の中央が第1車線と第2車線の区分線上にまで達していた。⑥地点でDは原告車両が滑走する音を聞いたため,⑦地点でバックミラーを見ると原告車両が歩道側から中央線側に向けて右側を下にして斜めに滑走しているのが見えたが,原告X1の姿は見えなかった。⑦地点でDは被告車両の走行方法が原因で原告車両が転倒したのではないかと考え,⑧地点で被告車両を停車させた。    ウ 原告車両の転倒により,別紙図面2の[A]地点(以下,別紙図面2の各地点について,「[A]地点」などという。)を始端とする長さ10.4メートルの擦過痕,[B]地点を始端とする長さ5.7メートルの擦過痕,[C]地点を始端とする長さ3.1メートルの擦過痕がそれぞれ断続的に生じており,[C]地点を始端とする擦過痕は歩道側から中央線側に向かっている。また,原告X1は[A]地点から約14メートル先の[ア]地点((ア)地点と同一地点)に転倒し,原告車両は[ア]地点((ア)地点)から33.7メートル先の(イ)地点で停止していた(別紙図面3。なお,別紙図面3は別紙図面1と2を合わせたものである。)。   (2) 本件事故発生時の原告車両の速度と走行位置に争いがあるので,この点について検討する。    ア 原告車両の速度について     (ア) まず,原告X1が転倒していた位置から原告車両の速度を算定する。       前記(1)ウによれば,原告X1の滑走距離[A]地点から同[ア]地点までの約14メートルである。また,証拠(甲27)によれば,服を着た人間が滑走する場合の摩擦係数は0.65~0.8であり,この値は路面が乾燥していても湿潤していてもほとんど変わらないとされていることが認められる。原告車両の転倒時の速度V(m/s)は,V=√(2μgs)(μ:摩擦係数,g:9.8m/sの2乗,s:距離)の公式で求めることができるから(乙5),原告車両の転倒時の速度は秒速13.36ないし14.82メートル(小数点以下第3位四捨五入),すなわち,時速48.1ないし53.4キロメートル(小数点以下第2位四捨五入)となる。       (計算式)       √(2×(0.65~0.8)×9.8×14)=13.36~14.82(m/s)     (イ) 次に,原告車両の停止位置から原告車両の速度を算定する。       前記(1)ウによれば,原告車両の滑走距離は約47.7メートルである。また,証拠(甲27)によれば,湿潤した舗装路面でバイクが転倒して滑走する場合の摩擦係数は0.3~0.4であることが認められる。上記公式によって原告車両の転倒時の速度を求めると,秒速16.75ないし19.34メートル(小数点以下第3位四捨五入),すなわち,時速60.3メートルないし69.6メートル(小数点以下第2位四捨五入)となる。       (計算式)       √(2×(0.3~0.4)×9.8×47.7)=16.75~19.34       ところで,[B]地点を始端とする擦過痕は,横断歩道を示す白色ペイント上に印象されていることから(乙1の16・20・21頁),原告車両は同白色ペイント上,すなわち,湿潤した舗装路面よりも更に摩擦係数の低い場所を滑走したと認められる。したがって,これによって原告車両の滑走距離が伸びたと考えられ,上記の計算式によって算出した速度より実際の原告車両の転倒時の速度は遅かったということができる。     (ウ) 前記(ア),(イ)の点を総合考慮すると,原告車両の転倒時の速度は被告車両のそれとほぼ同じであったと認められる。       これに対し,被告は,原告車両の転倒時の速度は時速80ないし89キロメートルとするF作成の意見書(乙5)を提出する。しかし,原告車両の速度を算定するに当たって用いている摩擦係数は,スクータの速度が時速10キロメートルのときのアスファルト路面での摩擦係数0.64~0.66を参考に0.54~0.66としているのであって,その採用している摩擦係数それ自体に問題があるというべきであるから,上記意見書を採用することはできない。    イ 原告車両の走行位置について     (ア) 前記ア(ウ)のとおり,原告車両と被告車両の速度はほぼ同じであったと認められるところ,本件事故までにDは原告車両に全く気付いていないこと(証人Dの証言),原告車両が転倒した後に左サイドミラーでこれを発見していること(前記(1)イ),D自身も原告車両がDの死角部分を走行していたことを否定していないこと(証人Dの証言)などに照らすと,原告車両は被告車両と並走してDの死角部分を走行していたと認められる。       そして,このことはDが目撃した原告車両の滑走状況とも一致する。[A]地点から⑦地点までは図面上では約27.5センチメートルであり,双方の図面の縮尺が200分の1であることから,実際の距離は約55メートルである。この間,前記(1)イのとおり,一旦減速してから加速しているので,平均して時速52.5キロメートルで走行していると仮定すると,秒速14.5メートル(小数点以下第2位四捨五入)である。したがって,[A]地点から⑦地点までは約3.79秒(=55÷14.5。小数点以下第3位四捨五入)を要する。一方,原告車両が[A]地点で転倒して(イ)地点で停止するまでに要する時間T(秒)は,T=√(2s÷μg)(意味は前記と同様)の公式によって求めることができ(乙5),これによると6.24秒(小数点以下第3位四捨五入)となる。       (計算式)       √(2×47.7÷(0.25×9.8))=6.24       原告車両が転倒した[A]地点から3.79秒の間に滑走する距離は等加速度運動であるから(乙5),その間の滑走距離は29.0メートル(小数点以下第2位四捨五入)である(もっとも,前記ア(イ)のとおり,原告車両が摩擦係数の低い白色ペイント上を滑走しているので,その間の滑走距離が29.0メートルよりやや長い可能性がある。)。       (計算式)       47.7÷6.24×3.79=29.0       [A]地点から29.0メートル先の地点は[C]地点の少し先であるから(縮尺200分の1の図面上では[A]地点から14.5センチメートル先の場所),前記(1)イで認定したとおり,Dが⑦地点でバックミラーを見ると原告車両が歩道側から中央線側に向けて右側を下にして斜めに滑走しているのが見えたこと,[C]地点を始端とする擦過痕が歩道側から中央線側に向かっていることと符合する。   (3) 以上によれば,本件事故態様は,被告車両が時速約55キロメートルで青梅街道東行車線の第2車線を走行し,対向車線右折待機レーンの停止線からはみ出た状態で停止している車両を避けようとして,原告車両に気付かないまま,ウインカーを出さずに左にハンドルを切り,被告車両の左半分程度を第1車線内に進入させたため,第1車線を被告車両とほぼ同速度で並走していた原告車両が被告車両との衝突を避けようとして転倒したというものであると認められる。したがって,Dの運転行為と原告車両の転倒との間に因果関係があることは明らかであり,被告は自賠法3条に基づく損害賠償責任を負う。     このような事故態様に照らせば,原告車両と被告車両は接触してはいないものの,原告が,被告車両の進路変更を予測することは困難であるし,進路変更してきた被告車両との接触を避けようとして転倒したことはやむを得ないといえるから,本件事故の発生につき,原告に過失があったと認めることはできない。     なお,被告は,原告車両が灯火していればこれにDが気付かないはずがないから,原告車両は無灯火であったと主張するが,本件事故が発生した当時は,既に自動二輪車はエンジンを始動させれば,ライトが自動的に点灯する仕組みになっていた上(運転者がその意思でライトを消すことは不可能である。),原告車両の灯火機能は正常であったから(乙1の43頁),原告車両が無灯火であったとは考えられない。結局,Dが気付かないはずがないと主張する原告車両に全く気付いていないのであるから,Dの注意義務違反が重大であったことを基礎付けるだけであって,被告の主張は採用できない。  2 争点(2)(原告X1の損害)   (1) 治療費 737万4840円(請求額同額)     当事者間に争いがない。   (2) 交通費 22万7570円(請求額同額)     当事者間に争いがない。   (3) 入院雑費 87万4500円(請求額同額)     入院雑費は1日当たり1500円が相当であると認められる。前記第2の1(3)イ(ア)によれば,入院日数は合計583日であるから(重複分2日を除く。),本件事故との間に相当因果関係のある入院雑費は87万4500円であると認められる。   (4) 付添看護費 378万9500円(請求額同額)     証拠(甲35,原告X2本人)によれば,原告X1の入院期間中,原告X2又は同X3が原告X1に付き添ったと認められ,原告X1の傷害の内容に照らすと,付添看護費は1日当たり6500円が相当であると認められる。また,上記のとおり,入院日数は583日であるから,本件事故との間に相当因果関係のある付添看護費は378万9500円と認められる。   (5) 症状固定までの自宅介護費用 60万8000円(請求額同額)     原告X1の傷害の内容に照らすと,自宅介護費用は1日当たり8000円が相当である。また,武蔵野陽和会病院を退院した日の翌日である平成19年2月11日から脳神経外科の関係の症状が固定した同年4月27日までは76日であるから,本件事故との間に相当因果関係のある自宅介護費用は60万8000円であると認められる。   (6) 将来の介護費 8954万7640円(請求額1億0721万5684円)     前記第2の1(4)の事実に加え,証拠(甲17,19,35,原告X2本人)によれば,本件事故により,原告X1には,高次脳機能障害,右不全片麻痺,左眼光覚なし,脾臓摘出,右前額部の5センチメートル以上の線状痕等の後遺障害が残り,原告X1は,高次脳機能障害のため,記銘・記憶力,認知力,言語力といった意思疎通能力,理解力,判断力といった問題解決能力等が著しく低下し,食事,更衣,排尿,排便,入浴等の日常生活動作に全面的に介助が必要な状態であり,生涯にわたって常時介護の必要があることが認められる。     原告X1は,症状固定時23歳であり,平均余命は少なくとも54年間(ライプニッツ係数18.5651)と認められるが,そのうち,原告X1の母である原告X3が67歳になるまでの8年間(ライプニッツ係数6.4632)は,同人及び原告X2による介護が期待できるが,その後の46年間は職業介護人による介護が必要であると認められる。     将来の介護費は,両親である原告X2及び同X3によるものは1日8000円,職業介護人によるものは1日1万6000円が相当であるから,将来の介護費は8954万7640円と認められる。     (計算式)     8,000×365×6.4632+16,000×365×(18.5651-6.4632)=89,547,640   (7) 逸失利益 1億2024万1277円(請求額1億2024万2638円)     証拠(甲25)によれば,原告X1は,本件事故当時,E大学政経学部に在籍していたと認められ,原告X1の症状が固定した平成19年の賃金センサス男性大卒全年齢平均は680万7600円と認められる。また,原告X1の後遺障害の内容,程度に照らすと,労働能力喪失率100パーセントであり,労働能力喪失期間は症状固定時23歳から67歳までの44年間(ライプニッツ係数17.6628)と認められる。     したがって,原告X1の逸失利益は1億2024万1277円である(円未満切捨て)。     (計算式)     6,807,600×1.0×17.6628=120,241,277   (8) 入通院慰謝料 480万円(請求額同額)     本件事故による原告X1の傷害の内容,入院期間,通院期間に加え,傷害が重篤であり,脾臓摘出手術,両側外減圧,右前頭葉・左側頭葉内減圧術,気管切開術,頭蓋形成術,骨弁除去術,脳室腹腔シャント術といった手術を受けたと認められること(甲3ないし5,7,35)などに照らすと,入通院慰謝料は480万円が相当であると認められる。   (9) 後遺障害慰謝料 3000万円(請求額3200万円)     本件事故による後遺障害の内容,程度に加え,原告X1が本件事故当時21歳であり,将来の夢を断たれた上,一生涯にわたって重い障害を抱えたまま生活することによる精神的負担等を考慮すると,後遺障害慰謝料は3000万円が相当であると認められる。   (10) 確定遅延損害金 554万3633円(請求額554万5205円)     前記第2の1(5)のとおり,原告X1は,自賠責保険金を合計4000万円受領しているところ,うち3000万円につき,本件事故日から支払日である平成20年2月27日までの965日間に対する遅延損害金396万5753円(円未満切捨て)が,うち1000万円につき,本件事故日から支払日である平成20年9月2日までの1153日間に対する遅延損害金157万8531円(円未満切捨て)が発生していると認められる。     (計算式)     30,000,000×0.05×(907÷365+58÷366)=3,965,102     10,000,000×0.05×(907÷365+246÷366)=1,578,531   (11) 小計 2億6300万6960円     前記(1)ないし(10)を合計すると,2億6300万6960円(元金2億5746万3327円・確定遅延損害金554万3663円)となる。   (12) 既払金控除後の残額     前記(11)の2億6300万6960円から前記第2の1(5)の既払金合計5112万4948円を控除すると,残元金は2億1188万2012円となる。   (13) 弁護士費用 2100万円(請求額2315万円)     本件事故との間に相当因果関係のある損害は2100万円であると認められる。   (14) 合計 2億3288万3584円     前記(12)と(13)を合計すると2億3288万2012円となる。  3 争点(2)(原告X2の損害)について   (1) 固有の慰謝料 300万円(請求額400万円)     本件事故による原告X1の後遺障害の内容,程度,それに伴う原告X2の介護の内容,負担,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,固有の慰謝料は300万円が相当であると認められる。   (2) 弁護士費用 30万円(請求額40万円)     本件事故との間に相当因果関係のある弁護士費用は30万円であると認められる。   (3) 合計 330万円  4 争点(3)(原告X3の損害)について   (1) 固有の慰謝料 300万円(請求額400万円)     本件事故による原告X1の後遺障害の内容,程度,それに伴う原告X3の介護の内容,負担,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,固有の慰謝料は300万円が相当であると認められる。   (2) 弁護士費用 30万円(請求額40万円)     本件事故との間に相当因果関係のある弁護士費用は30万円であると認められる。   (3) 合計 330万円 第3 結論    以上の次第で,原告らの請求は主文第1ないし第3項掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条1項を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。      東京地方裁判所民事第27部             裁判官 小野瀬 昭

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