福岡地方裁判所判決 平成22年7月15日

状固定時19歳の高校生が高次脳機能障害(別表第1の2級1号)の後遺障害を負った場合において、傷害分450万円の慰謝料,本人分2500万円 父母各200万円 3人の兄弟各80万円の後遣障害慰謝料を認めた。

       主   文

 1 被告は,原告X1に対し,7083万1402円及び6433万1402円に対する平成20年8月20日から,うち650万円に対する平成15年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告は,原告X2及び原告X3に対し,各220万円及びこれに対する平成15年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告は,原告X4,原告X5及び原告X6に対し,各88万円及びこれに対する平成15年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 その余の原告らの請求を棄却する。
 5 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告X1の負担とし,その余は被告の負担とする。
 6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
 1 被告は,原告X1に対し,2億1708万0890円及びうち1億9311万0890円に対する平成20年8月20日から,うち2397万円に対する平成15年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告は,原告X2及び原告X3に対し,各330万円及びこれに対する平成15年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告は,原告X4,原告X5及び原告X6に対し,各165万円及びこれに対する平成15年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,原告X1(以下「原告X1」という。)が,自転車を運転中,被告運転の自動車との衝突事故により,負傷して高次脳機能障害等の後遺傷害が残ったとして,原告X1及び同人の両親及び兄弟である原告ら(原告X1を除く原告らを「原告近親者ら」という。)が,被告に対し,自賠法3条,民法709条に基づいて損害賠償を請求した事案である。
 1 争いのない事実等
  (1) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
   ア 日時   平成15年5月4日午前8時20分
   イ 場所   福岡県糟屋郡宇美町四王寺坂一丁目14番5号先路上T字型交差点(以下「本件交差点」という。)
   ウ 被害車両 足踏式自転車
           運転者・原告X1
           (以下「原告自転車」という。)
   エ 加害車両 普通乗用自動車(筑豊○○○た○○○○)
           運転者・被告
           (以下「被告車両」という。)
   オ 事故態様 被告車両が,本件交差点を直進する際,右方道路から左折進入してきた原告自転車に衝突した。
  (2) 被告の責任原因
    被告は,本件事故発生当時,自己のために被告車両を運行の用に供しており,被告車両を運転するにあたって,右方安全確認等を怠った過失があるので,自賠法3条及び民法709条に基づき本件事故により原告らに発生した損害を賠償すべき責任を負う。
  (3) 原告X1の負傷及び治療
    原告X1は,本件事故により,頭蓋骨骨折,脳挫傷,急性硬膜外・下血腫,外傷性クモ膜下出血,急性脳腫脹の傷害を負い(甲2,3),以下のとおり治療を受けた(これ以外の治療については争いがある。)。
   ア 医療法人徳州会福岡徳州会病院(脳外科。以下「徳州会病院」という。)
     入院139日間
    (ア) 平成15年5月4日から同年7月18日まで入院(76日間)
    (イ) 同年12月19日から平成16年2月19日まで入院(63日間)
   イ 医療法人社団三光会誠愛リハビリテーション病院(神経内科。以下「誠愛病院」という。) 入院167日間,通院393日間
    (ア) 平成15年7月18日から同年12月19日まで入院(155日間)
    (イ) 平成16年2月19日から同年3月1日まで入院(12日間)
    (ウ) 平成16年3月2日から平成17年3月29日まで通院
      (実通院日数137日間)
  (4) 原告X1の症状固定及び後遺傷害
    原告X1は,平成17年3月29日,症状固定の診断を受けた(甲5)。
    原告X1は,自賠責保険(共済)高次脳機能障害専門部会の審議により,自賠責後遺障害別等級表別表第1第2級1号(神経系統の機能又は精神に著し障害を残し,随時介護を要するもの)に該当するとの認定を受けた(甲6)。
 2 争点及び争点についての当事者の主張
  (1) 本件事故の態様及び過失相殺
  (被告の主張)
    実況見分調書(乙2)や原告自転車と被告車両の衝突部位等によれば,原告自転車が,かなりの高速度で飛び出すような形で本件交差点に進入したことは明らかであり,被告車両は,当時時速15キロメートルで走行していたのであるから,原告X1が減速した上で本件交差点に進入していれば,本件事故は容易に回避できていた。
    一方,被告車両は,前方に路上駐車車両があったために,これを避けるためにやむを得ず道路の右側を通行していたものであり,また,T字形交差点の形状等に照らして,原告自転車が徐行して進行してくることを期待する状況にあった。
    したがって,原告X1の過失は大きく,原告X1の過失は6割と認めるのが相当である。
  (原告らの主張)
    被告は,右側道路の見通しは悪く,本件交差点手前から右側通行をすることを極めて危険であって,センターラインオーバーに同視されるべきものである。また,被告車両の速度,本件交差点に気付いていたかや運転状況等に関する被告の供述は信用できない。
    被告は,相当な速度で十分に安全確認をすることなく,右側を走行して本件交差点に進入したために本件事故を発生させたのであり,重大な過失が認められるから,過失相殺は認められるべきではない。
  (2) 原告X1の損害額
  (原告らの主張)
   ア 治療費
    (ア) 徳州会病院,誠愛病院 533万7011円
    (イ) ツジメディカル神経リハビリトレーニングセンター(以下「ツジメディカル」という。甲11の2) 72万8000円
    (ウ) 祐田歯科(甲25の1,2) 6万2520円
   イ 入院関係費用
    (ア) 入院付添費 306万円
      (1日8000円+夜間付添2000円)×306日間
       入院中は,午前8時から午後8時まで原告X3(以下「原告X3」という。)が,午後8時から翌日午前8時までは原告X2(以下「原告X2」という。)が付き添った。
    (イ) 入院中交通費 9万1800円
       1キロメートルあたり15円×20キロメートル×306日間
    (ウ) 入院中駐車場代 5万4400円
       400円×136日間
    (エ) 入院雑費 45万9000円
       1日1500円×306日
   ウ 通院関係費用
    (ア) 通院付添費 54万8000円
       4000円×137日間
    (イ) 通院交通費
     ① 徳州会病院,誠愛病院関係 4万1100円
       1キロメートルあたり15円×20キロメートル×137日間
     ② ツジメディカル関係
       高速代を除く通院交通費 28万0800円
        1キロメートルあたり15円×260キロメートル×72日間
       高速代(甲21,22) 26万8730円
   エ 文書料 3万円
   オ 車椅子等装具購入費 42万6448円
   カ 家屋改造費(甲29) 479万3922円
   キ 症状固定までの自宅付添費 393万円
      原告X2及び原告X3は,原告X1の退院(平成16年3月1日)から症状固定(平成17年3月29日)までの393日間,自宅で付添介護を行ったが,入院付添時の介護に,入浴,排泄及び食事等の日常生活全ての介護が加わったため,入院付添時より軽減することはなく,日額1万円(日中8000円,夜間2000円)が相当である。
   ク 将来の介護費用 9540万1912円
     原告X1については,随時介護のほか,就寝中以外はほぼ常時の監視,声かけなどの介護が必要であり,平均余命の60年間のうち,原告X3及び原告X2が67歳になるまでの20年間(ライプニッツ係数12.4622)は近親者介護として1日8000円,その後の40年(ライプニッツ係数18.9293-12.4622=6.4671)は職業付添人の介護1日2万5000円が認められるべきである。
   ケ 逸失利益 1億0332万9350円
     原告X1は,本件事故の後遺障害により,労働能力喪失率を100パーセント喪失しており,基礎収入を大卒平均賃金672万9800円とし,労働能力喪失期間45年間(23歳から67歳)のライプニッツ係数(18.0772-2.7232=15.354)で計算すると,逸失利益は1億0332万9350円となる。
   コ 傷害慰謝料 500万円
     原告X1は,意識もなく生死が危ぶまれる状況が長期間継続するなどの事情に鑑みれば,入通院慰謝料は500万円を下らない。
   サ 後遺障害慰謝料 3000万円
     原告X1は,本件後遺障害により,高校・大学での勉学や就労の機会を奪われ,肉体的にも精神的にも本件事故前の自己の人生との断絶を余儀なくされたものであり,その精神的損害を慰謝するための金額は3000万円を下らない。
     小計 2億5384万2993円
   シ 損害の填補
     原告X1は,平成18年2月14日,自賠責保険から3000万円,同日までに自治労共済から582万5272円,平成20年8月19日,9056万3204円の支払を受けた。
     したがって,上記小計から582万5272円を控除した残額2億4801万7721円に対する本件事故日から平成18年2月14日までの遅延損害金は3451万8630円となり,同日段階での損害額合計は2億8253万6351円であるところ,これから3000万円を控除すると,2億5253万6351円となる。
     そして,これについての平成20年8月19日まで遅延損害金は3113万7743円となり,同日段階での損害額合計は2億8367万4094円となり,9056万3204円を控除すると,1億9311万0890円となる。
   ス 弁護士費用 2397万円
     本件訴訟提起時の事情等を考慮すると,弁護士費用は上記金額を下回ることはない。
     合計 2億1708万0890円
     なお,遅延損害金は,うち1億9311万0890円については平成20年8月20日から,うち2397万円については本件事故日からそれぞれ年5分の割合による金員を請求する。
  (被告の主張)
   ア 治療費について
     原告らの主張(ア)は認める。同(イ)及び(ウ)は治療の必要が明らかでなく,本件事故による損害とは認められない。
   イ 入院関係費用について
    (ア) 入院付添費は単価及び日数を争う。
      近親者による入院付添費は1日6500円である。
      必要があった付添費は事故日から3か月までの実日数である。
    (イ) 入院中交通費の単価及び距離は認めるが,日数を争う。
      必要があった付添日数は自己(ママ)から3か月までの実日数である。
    (ウ) 入院中駐車場代は不知。
    (エ) 入院雑費は認める。
   ウ 通院関係費用について
    (ア) 通院付添費の日数は認めるが,単価は争う。通院付添費は1日3300円が相当である。
    (イ) 通院交通費のうち①は認める。②は治療の必要性が明らかでないので認められない。
   エ 文書料について
     不知。
   オ 車椅子等装具購入費について
     原告らの主張のうち,34万4426円は認めるが,これを超える部分は争う。
   カ 家屋改造費について
     家屋改造の必要はなく,争う。
   キ 症状固定までの自宅付添費について
     介護の必要性及び単価を争う。
     仮に,介護が必要であったとしても,自宅での介護の随時で足りるから,1日4000円とするのが妥当であり,原告らが通院付添費も請求している日については,通院付添費を含めて1日4000円を上限とすべきである。
   ク 将来の介護費用について
     随時介護で平均余命,両親と職業付添人による介護の期間,これに対応するライプニッツ係数は認めるが,随時介護で足り,単価は争う。
     将来の介護費用は,近親者が1日4000円,職業付添人が1日8000円である。
   ケ 逸失利益
     原告らの主張は争う。基礎収入は,男性労働者高卒平均である490万3400円とすべきである。
   コ 傷害慰謝料
     傷害慰謝料は341万円が相当である。
   サ 後遺傷害慰謝料
     後遺傷害慰謝料は2370万円が相当である。
   シ 損害の填補について
     損害の填補の事実及び充当方法は認めるが,その余は争う。
   ス 弁護士費用
     争う。裁判所による認定の1割の範囲内に限られる。
  (3) 原告近親者らの損害額
  (原告らの請求)
   ア 原告X2及び原告X3の損害
     原告X1の両親である原告X2及び原告X3は,本件事故により原告X1が生死をさまようほどの傷害を受け重大な後遺傷害が残ることとなった結果,生活能力,労働能力のほか,容貌も性格も別人のようになっており,原告X1が死亡した場合に比肩するほどの精神的衝撃を受けたものであり,慰謝料はそれぞれ300万円を下らず,その弁護士費用としては各30万円が相当である。
   イ 原告X4(以下「原告X4」という。),原告X5(以下「原告X5」という。)及び原告X6(以下「原告X6」という。)の損害
     原告X1の弟である原告X4,原告X5及び原告X6は,本件事故により兄である原告X1が別人のようになっており,原告X1が死亡した場合に比肩するほどの精神的衝撃を受けたものであり,慰謝料はそれぞれ150万円を下らず,その弁護士費用としては各15万円が相当である。
  (被告の主張)
    原告近親者ら固有の慰謝料は争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件事故の態様及び過失相殺)について
  (1) 証拠(甲12,17,34,乙1ないし4,原告X2,被告)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
   ア 本件交差点は,東西に走る幅5.2メートルの道路(さらに両端に各幅40センチメートルの有蓋側溝が設置されている。以下「本件直線道路」という。)に,南側からほぼ同程度の幅の道路(以下「本件交差道路」という。)がやや斜めにT字型に交差するものである。本件交差道路は,南側から本件交差点に向けてわずかであるが下りの傾斜があり,本件交差点手前には,インターロッキング(色付きのコンクリートブロックを交互に組んだもの)が施された部分が5ないし6メートルあり,本件直線道路と交差している(本件直線道路の有蓋側溝部分は網目状の金属板で覆われている(甲12,34,乙2)。
   イ 被告は,平成15年5月4日午前8時過ぎころ,交際相手を助手席に乗車させて,被告車両(ハイエース。長さ4.61メートル,高さ1.98メートル)を運転して知人宅に向かっていたが,道に迷って住宅地に入り込み,本件直接(ママ)道路を西方向から本件交差点に向けて走行していた。
     一方,原告X1は,原告自転車を運転して,自宅から学校に行くために,本件交差道路を北に向けて走行し,本件交差点に進入して左折しようとした。
     被告は,本件直線道路の前方左側路肩に駐車車両を発見したため,右側に寄って時速約15キロメートルで本件交差点に接近したが,当時,本件交差点の南西部分には,駐車スペースをはみ出して乗用自動車(キャラバン。被告車両と同様のバンタイプ)が停止しており,被告及び原告X1双方の進行方向からはお互いに相手が確認できない状況であった。
     被告は,本件交差点直前で,原告自転車が本件交差道路から進入してくるのを発見し,ブレーキをかけたが間に合わず,被告車両の前方左側のフロントガラスに原告X1の頭部が衝突し,原告自転車はそのまま東向き(被告車両の進行方向)に倒れた。
   ウ 被告は,本件事故直後,原告X1に駆け寄るとともに救急車を呼ぶなどし,付近住民とともに原告X2及び原告X3も現場に駆けつけて,X1が救急車で病院に搬送された。その後,本件事故の約30分経過後に実況見分が開始され,本件交差点の状況や被告車両や原告自転車の状況が記録されて,実況見分調書(乙2)が作成された。
     その後,被告の供述調書(乙3,4)が作成されて,同年11月14日,被告が道路交通法違反で起訴(略式請求)され,同月19日,罰金40万円の判決(略式命令)がなされた。
  (2) 上記認定事実によれば,被告は,被告車両を運転して本件交差点に進入するにあたり,本件交差点の状況等(特に,本件交差道路の見通しの悪さや周辺が住宅地であること等)から,被告は,道路左側に寄って減速徐行し,本件交差道路からの進行車両等安全を確認しながら進行すべき注意義務があるにもかかわらず,前方に駐車車両があるからといって本件交差点手前から安易に道路右側を進行しながら十分に減速徐行せず,本件交差道路の安全確認不十分なまま進行し,本件事故を起こしたというのであるから,本件事故の主な原因は,被告の過失にあったことは明らかである。
    この点について,原告らは,被告車両が速度超過あるいは前方不注意によってかなりの速度のまま原告自転車と衝突した可能性を指摘するが,原告X1及び原告自転車の転倒位置,被告車両及び原告自転車の破損状況等を考えると,被告車両が,かなりの速度のまま原告自転車と衝突したとは考えがたく,むしろ,被告車両はかなり低速であったが,不幸にも原告X1の頭部と被告車両フロントガラスが衝突し,そのまま原告X1がアスファルト路面に転倒するなどした結果,重篤な傷害を負うに至ったことがうかがわれる。
    したがって,原告らの上記主張は採用できない(なお,本件直線道路の幅員及び形状等に照らせば,被告車両の走行がセンターラインオーバーと同視できないことは明らかである。)。
    一方,本件交差点の状況等(特に,T字交差点であることや本件交差道路の交差状況等)に照らせば,本件交差道路から本件直進道路に左折進入する際には,狭路から広路に左折進入する場合等と同様に,本件直進道路(あるいは広路)を直進する車両に比較してより高度な注意義務が課せられていると考えられる。そして,原告X1は,本件交差点手前で十分な減速をすることなく,左方道路の安全を十分に確認しないまま,徐行とはいえないある程度の速度で本件交差点に進入し,本件直進道路中央付近まで進んだ時点で本件事故に遭ったというのであるから,本件事故の発生について原告X1にも相応の過失があったことは否定できない。
    この点について,原告らは,原告X1が右側を走行してきた被告車両との衝突を避けるために,敢えて本件直進道路の中央付近まで進み出たかのような主張をする。しかし,本件事故の態様や衝突部位等に照らして,原告X1が被告車両を発見してから本件事故に遭うまでにそれ程の時間的余裕があったかは疑わしい上,仮に,原告X1が本件交差点手前で十分に減速した上で,ある程度の時間的余裕をもって被告車両を発見したのであれば,停止や待避をしたり,少なくとや(ママ)防御の姿勢を取るのが通常であって,敢えて直前の横断を強行しようとしたとは考えがたい。
    したがって,原告らの上記主張は採用できない。
    そして,本件事故の具体的態様,自動車対自転車の事故であること,被告車両の速度や右側通行,原告自転車の進入態様や速度,双方の安全確認の程度等の諸事情を総合考慮すると,本件事故発生について,被告の過失割合は8割,原告X1の過失割合は2割と認めるのが相当である。
 2 争点(2)(原告X1の損害額)について
  (1) 治療費
   ア 徳州会病院及び誠愛病院の治療費が本件事故による損害であり,その合計が533万7011円であることについては,当事者間に争いがない。
   イ ツジメディカル及び祐田歯科での費用について検討する。
    (ア) ツジメディカルは,リハビリテーションのためのトレーニング施設であって(甲11の1,2,甲33),医学的な治療を目的とする医療機関ではなく,原告X1が実際に受けたリハビリテーションの具体的内容,症状改善の経過やリハビリテーション内容との関連性等も一切明らかでない。原告X1の症状改善のためにリハビリテーションが必要なことは明らかであるが,済生会病院及び誠愛病院でも必要なリハビリテーションは実施されており,同病院の医師の指示や紹介等があったものでもない。
      原告らは,知人からツジメディカルの評判を聞いて,少しでも原告X1の回復に役立つならと,長崎県大村市という遠隔地にもかかわらず原告X1を連れて行ったものであり,原告X1の早期回復を心から願う原告らの心情は十分理解できるものの,上記のとおりであるから,ツジメティカルの費用を本件事故と相当因果関係のある治療費(あるいは治療関係費)と認めることはできない。
    (ウ)(ママ) 祐田歯科においては,右顎関節症及び歯周病の治療が行われているが,証拠(甲25の1及び2)によっても,右顎関節症と本件事故との因果関係は明らかでなく,また,歯周病については,ほとんど記載がなく,その具体的状況,治療の必要性,本件事故との因果関係は全く不明である(その治療を長崎県大村市の祐田歯科において行う必然性も明らかでない。)。
      したがって,祐田歯科の治療費は本件事故による治療費とは認められない。
  (2) 入院関係費用
   ア 入院付添費 198万9000円
     証拠(甲2ないし4,甲9の2ないし5,甲10の2ないし4,甲13ないし17,原告X2)及び弁論の全趣旨により認められる原告X1の負傷状況及び程度,治療状況,入院中の原告X1の行動,病院の看護体制,原告X2及び原告X3の実際の付添状況等を考慮すると,入院中の付添のための一切の費用として,1日につき6500円を全入院期間である306日間について認めるのが相当である。
   イ 入院中交通費,入院中駐車場代 0円
     上記アのとおり,上記費用は入院付添費に含まれるから,別個の損害とは認められない。
   ウ 入院雑費 45万9000円
     原告X1の入院期間及び状況等に照らせば,1日について1500円を入院期間である306日について認めるのが相当である(当事者間に争いがない。)。
  (3) 通院関係費用
   ア 通院付添費 0円
     原告X1の退院時の状況,通院治療の経過及び状況等に照らすと,原告X1の通院時に付添の必要があったことは認められるが,後記(7)のとおり,原告X1の退院時から症状固定までについて1日あたり7000円の付添費が損害と認められているから,その期間中における通院付添費は上記付添費に含まれるというべきであり,通院付添費を別個の損害とは認めない。
   イ 通院交通費 4万1100円
    (ア) 誠愛病院についての通院交通費として,1日あたり300円(1キロメートル15円×20キロメートル)を,上記病院への実通院日数である137日分について,合計4万1100円を認めるのが相当である。
    (イ) ツジメディカル,祐田歯科関係の交通費は,上記(1)イのとおり,通院と本件事故との因果関係が認められず,特に,祐田歯科については,長崎県大村市まで通院する必然性も認められないから,損害としては認められない。
  (4) 文書料 1万8900円
    文書料の内容及び金額は明らかでないものの,被告は,原告X1の損害の填補のために文書料として徳州会病院及び誠愛病院に対して合計1万8900円を支払っていることが認められる(乙7)。
    しかし,これを超えて原告X1について文書料が支払われたことを認めるに足りる証拠はない。
  (5) 車椅子等装具購入費 34万4426円
    車椅子等装具購入費として,家屋改造費を含めて39万6611円が被告から支出されており(乙7),被告がそのうち34万4426円を車椅子等装具購入費であると認めているが,これを超える部分について車椅子等装具購入費が発生したことを認めるに足りる証拠はない。
  (6) 家屋改造費 300万円
    原告らは,床のバリアフリー,洗面脱衣室,浴室の改修,IHクッキングヒーター等の電化工事,屋内外の手摺工事等で,479万3922円が必要と主張し,これに沿う見積書(甲29)を提出する。
    現在までにいずれの工事も行わないまま原告X1の介護が行われていることを考えると,今後も同様の介護を行うのであれば家屋改造工事は不要といわざるをえないが,原告X1の将来の回復や生活行動への慣れなどによって,原告X1の単独での行動範囲が広がったり,介護体制が現在よりも軽減されることも十分に考えられることから,将来において一定程度の家屋の改造が必要であると認められる。
    しかし,原告らが原告X1の平均余命までの将来の介護費用を請求していることからも明らかなように,原告X1が単独で料理を行ったり,2階を含む自宅内の全ての場所を自由に動き回れるようになるまで回復する見込みは乏しいから,上記見積書記載の一部の工事の必要性については疑問がある。
    したがって,原告らが将来希望する工事の目的及び具体的内容,将来の原告X1の回復可能性及び想定される介護体制等を総合考慮すると,原告ら主張の金額のうち,将来の家屋改造費として300万円を認めるのが相当である。
  (7) 症状固定までの自宅付添費 275万1000円
    証拠(甲10の2ないし4,甲17,原告X3)及び弁論の全趣旨により認められる原告X1の退院時の状況及び症状固定時までの生活及び通院状況等を考慮すると,原告X1の退院から症状固定までの393日間について,自宅における介護が必要であったと認められ,その介護の内容及び状況等に照らせば,1日あたり7000円,合計275万1000円を認めるのが相当である。
  (8) 将来の介護費用 6016万6819円
    原告X1の症状固定後の後遺障害の内容及び程度,治療過程における回復の経過等を考慮すると,原告X1については,将来にわたって食事や入浴等の随時の介護や外出時等の一定の行動時の監視や声かけが必要であることが認められる。原告X1の現状,原告X2及びX3の年齢は健康状態,将来介護の負担が軽減する可能性もあることなどを考えると,原告X1の症状固定後の平均余命の60年間のうち,20年間については近親者介護として1日7000円,その後の40年は職業付添人の介護1日1万2000円を認めるのが相当である。
    そこで,それぞれライプニッツ係数(20年間・12.4622,その後の40年は60年・18.9293から20年を控除した6.4671)により,1年365日としてこれを計算すると,将来の介護費用は,6016万6819円となる。
  (9) 逸失利益 1億0332万9349円
    原告X1の後遺障害の内容及び状況等を考慮すると,原告X1は本件事故により労働能力の100パーセントを喪失したものと認められ,原告X1が本件事故当時17歳の高校3年生であり,大学受験を予定していたこと,18歳から労働した場合に比較して必ずしも高額とはならないことなどを考えると,原告ら主張のとおり,大卒男性の賃金センサスを基準に22歳から67歳まで45年間の逸失利益を計算するのが相当である。
    そして,逸失利益の計算においても,賃金センサス(平成17年男性労働者大卒全年齢平均)672万9800円を基礎収入として,ライプニッツ係数(48年から3年を控除。15.354)で計算すると,逸失利益は1億0332万9349円(1円未満切捨。以下同じ)となる。
  (10) 傷害慰謝料 450万円
    原告X1の負傷部位及び程度,入通院期間,治療の内容等を考慮すると,原告X1の入通院慰謝料は,450万円と認められる。
  (11) 後遺障害慰謝料 2500万円
    原告X1の後遺障害の内容及び程度,治療及びその後における回復状況,原告近親者らにも固有の慰謝料を認めること等を考えると,後遺障害慰謝料は,2500万円と認めるのが相当である。
  (12) 小計
    以上の損害額を合計すると,2億0693万6605円となる。
  (13) 過失相殺
    前記1のとおり,2割の過失相殺を行うと,過失相殺後の損害額合計は,1億6554万9284円となる。
  (14) 損害の填補
    原告X1に対し,平成18年2月14日,自賠責保険から3000万円,同日までに自治労共済から582万5272円,平成20年8月19日,9056万3204円が支払われたことは争いがなく,原告ら主張のとおり,自治労共済からの582万5272円を当初から控除した上で,その支払時期に応じた遅延損害金から先に充当をすることとする。
    ただし,上記のうち,(8)将来の介護費用,(9)逸失利益,(11)後遺障害慰謝料は,症状固定時に判明したもので,その金額は症状固定時の現価であるから,損益計算においては,その過失相殺後の合計額である1億5079万6934円は,症状固定時である平成17年3月29日に発生したものとして扱うべきである。
    したがって,別紙損益相殺計算書のとおり,損益相殺後の損害額合計は,6433万1402円となる。
  (15) 弁護士費用
    本件事案の内容及び争点,訴訟の経過,訴訟代理人の立証活動,認容額等を考慮すると,被告が負担すべき原告X1の弁護士費用は,650万円と認めるのが相当である。
 3 争点(3)(原告近親者らの損害額)について
  (1) 原告X2及び原告X3について
    原告X1の負傷及び後遺障害の内容,現在の状況等を考えると,原告X1の両親である原告X2及び原告X3が受けた精神的苦痛は非常に大きく,被害者の死亡にも比肩するものと認められるから,同人らが原告X1の治療中あるいはその後の介護を献身的に行っており,今後も介護の中心を担っていくことなどを考えると,その固有の慰謝料は各200万円,その弁護士費用は各20万円と認めるのが相当である。
  (2) 原告X4,原告X5及び原告X6について
    同様に,原告X1の上記状況を考えると,原告X1の兄弟である原告X4,原告X5及び原告X6の精神的苦痛も大きく,それぞれ固有の慰謝料を認めるのが相当であり,その慰謝料額は各80万円,弁護士費用は各8万円と認めるのが相当である。
 4 結論
   以上によれば,原告らの請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があり,その余は理由がないから,主文のとおり判決する。
    福岡地方裁判所第5民事部
           裁判官  小田島靖人

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