名古屋地方裁判所判決 平成23年10月14日

症状固定時68歳の主婦が頸髄損傷による軽度の四肢麻痺(3級3号相当)の後遺障害を負った場合において、傷害分220万円の慰謝料、後遺障害分1990万円の慰謝料を認めた。

       主   文

 1(1) 被告ら及び参加人は,原告X1に対し,連帯して2055万2538円及びこれに対する平成19年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (2) 被告ら及び参加人は,原告X2株式会社に対し,連帯して2243万7463円及びこれに対する平成20年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3) 原告X1のその余の請求をいずれも棄却する。
 2(1) 参加人の原告らに対する請求にかかる訴えをいずれも却下する。
  (2) 参加人は,被告らに対し,別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務が原告X1に対しては2055万2538円及びこれに対する平成19年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を超えては存在しないこと,原告X2株式会社に対しては2243万7463円及びこれに対する平成20年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を超えては存在しないことをそれぞれ確認する。
  (3) 参加人の被告らに対するその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用及び参加費用は,原告X1に生じた分は,これを9分し,その5を同原告の負担とし,その余を被告ら及び参加人の負担とし,原告X2株式会社に生じた分はこれを被告ら及び参加人の負担とし,被告Y1に生じた分はこれを5分し,その3を同被告の負担とし,その余を原告X1及び参加人の負担とし,被告Y2に生じた分はこれを5分し,その3を同被告の負担とし,その余を原告X1及び参加人の負担とし,参加人に生じた費用はこれを5分し,その3を参加人の負担とし,その余を原告X1の負担とする。
 4 この判決は第1項(1),(2)に限り仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
 1 甲事件
  (1) 被告らは,原告X1に対し,連帯して4596万2531円及びこれに対する平成19年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (2) 被告らは,原告X2株式会社に対し,連帯して2243万7463円及びこれに対する平成20年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 乙事件
   参加人は,原告ら及び被告らに対し,別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務がないことを確認する。
 3 丙事件(参加人に対して,甲事件の請求と同額を,被告らと連帯して支払うことを求める。)
  (1) 参加人は,原告X1に対し,4596万2531円及びこれに対する平成19年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (2) 参加人は,原告X2株式会社に対し,2243万7463円及びこれに対する平成20年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   甲事件は,別紙事故目録記載の交通事故(以下「本件事故」という。)は,被告らがそれぞれ運行の用に供していた車両により発生させたものであり,これにより原告X1に人身損害が生じ,その一部について原告X2が原告X1との間で締結した自動車保険契約(以下「本件自動車保険契約」という。)に基づき保険金を支払い,原告X1の被告らに対する損害賠償請求権をその限度で代位取得したとして,原告X1が被告らに対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条の運行供用者責任に基づく損害賠償として連帯して4596万2531円及びこれに対する本件事故の日である平成19年9月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,原告X2が,被告らに対し,連帯して2243万7463円及びこれに対する保険金の最終支払日の翌日である平成20年10月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
   乙事件は,参加人が,原告ら及び被告らに対し,本件事故に基づく損害賠償債務がないことの確認を求める事案である。
   丙事件は,原告らが参加人に対し,参加人は被告Y1の使用者であり,本件事故は,被告Y1が参加人の業務中に起こしたものであるとして,民法715条1項の使用者責任に基づき,それぞれ甲事件と同額の請求をする事案(乙事件の債務不存在確認請求に対する反訴請求)である。
 1 前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
  (1) 本件事故の発生
    次のとおりの本件事故が発生した(甲1,2)。
   ア 発生日時 平成19年9月11日午後5時10分ころ
   イ 発生場所 愛知県豊田市北篠平町川向117番地先路線上(沢田御作線)
   ウ 第1車両(以下「Y1車」という。)
     被告Y1運転の自家用普通乗用自動車(岐阜○○す○○○○)
   エ Y1車の同乗者 原告X1
   オ 第2車両(以下「Y2車」という。)
     被告Y2運転の自家用大型貨物自動車(三河○○せ○○○○)
   カ 事故態様 正面衝突
  (2) 本件自動車保険契約の締結
    原告X2は,平成19年3月18日,原告X1との間で,原告X1を保険契約者兼被保険者とする本件自動車保険契約(保険期間平成19年3月18日から1年間,人身傷害特約付き,人身傷害保険金額6000万円)を締結した(甲6)。
  (3) 本件自動車保険契約の人身傷害補償条項の内容
    本件自動車保険契約の人身傷害補償条項は,日本国内における自動車の運行に起因する事故により被保険者が身体に傷害を負った場合,原告X2が原告X1に対して人身傷害補償条項及び一般条項に従って保険金(保険支払限度額6000万円)を支払うというのがその内容である(甲7)。
  (4) 保険金の支払
    原告X2は,原告X1に対し,本件自動車保険契約に基づき,平成20年10月20日までに合計5061万9629円の人身傷害保険金を支払った(甲7)。
  (5) 自賠責保険金の受領
    原告X2は,被告ら運転の各車両を被保険自動車とする自賠責保険会社に対し,合計2818万2166円を自賠責保険金として請求し,これを受領した。
    原告X2は,上記(4)により保険代位して取得した損害賠償請求権5061万9629円にこれを充当し,残額2243万7463円となった旨主張する。
  (6) 原告X1の受領した搭乗者傷害保険金
    原告X1は,AがB株式会社と締結していた保険契約に基づき,搭乗者傷害保険金として,平成20年2月19日に45万円,同年3月18日に93万円,同年3月31日に76万5000円,同年4月28日に55万5000円,同年11月10日に780万円,平成21年3月26日に490万円の合計1540万円を受領した(甲22,23)。
 2 争点
  (1) 本件事故について被告らが無過失であるか
   ア 被告Y2の主張
     本件では,被告Y2は,道路交通法の規定を遵守し,道路左側部分を走行していたところ,対向してきたY1車がスリップしてY2車の正面に逸走してきて衝突したものである。被告Y2としては,Y1車との衝突の前にこれを回避しようと左にハンドルを切るなどの措置を講じたものの,左側面のガードレールに阻まれてY1車との衝突を回避できなかったものである。
     したがって,本件事故は,被告Y1の一方的な過失によるものであり,被告Y2には過失はない。
   イ 被告Y1の主張
     本件事故の発生した道路(以下「本件道路」という。)の幅員は4mである。他方,Y2車の幅は2.49mである。すなわち,Y2車は道路中央より49cmもはみ出して大型貨物自動車を運転していたのであり,被告Y2がセンターオーバーしていたことは明らかであるから,被告Y2に100%の過失があったというべきである。少なくとも,幅員わずか4mの道路を幅2.49mもの大型貨物自動車を運転する被告Y2としては,徐行,すなわちブレーキをかければ直ちに停止する速度で運転する義務があったというべきであるが,徐行をしなかったために本件事故が発生したものである。
   ウ 原告らの主張
     被告らの主張はいずれも争う。本件事故は,被告ら双方の過失により生じたものである。すなわち,本件事故は,被告Y2が,Y2車の進行方向の道路が狭くなっていて,しかも右側にカーブして見通しが悪いにもかかわらず,速度を落とさず漫然とY2車を進行させ,他方,被告Y1が,Y1車の進行方向の道路が狭くなっていて,しかも左側にカーブして見通しが悪いにもかかわらず,速度を落とさず漫然とY1車を進行させ,Y2車の進路を塞ごうとした結果,被告Y2は,Y1車を発見するや慌ててY2車のハンドルを左に切り,Y2車を左側面ガードレールに接触させたが間に合わず,Y1車の右前方Y2車の右前方がほぼ正面から衝突したものである。
     被告らには,それぞれ車両運転者として前方注視義務,安全運転義務があり,特にカーブがあり見通しが悪く幅員の狭い道路では前方から進行してくる対向車の動向に十分注意し,減速しつつ対向車を避けようとする等の義務があるにもかかわらず,被告らは互いが運転する車両の対向車に十分注意することなく,互いの車両の進路を妨害する運行をして本件道路中央付近で互いの運転車両を正面衝突させたものであり,被告らには前方注視義務違反及び安全運転義務違反の過失がある。
  (2) 無償同乗減額
   ア 被告Y1の主張
     被告Y1との関係では,原告X1は好意同乗者であった。原告X1に対しては,Aが加入する任意保険会社(B株式会社)から搭乗者保険金が支払われている。したがって,被告Y1との関係では公平の原則又は信義則に基づき無償同乗減額がされるべきである。
   イ 原告らの主張
     被告Y1の主張は争う。
  (3) 参加人が被告Y1の本件不法行為につき損害賠償責任を負うか
   ア 原告らの主張
     本件事故は,参加人の被用者である被告Y1が参加人の業務中に起こしたものである。すなわち,本件事故当日,参加人の従業員が作業現場に来て具体的な指揮監督を行っており,除草作業の業務の使用者は参加人であるといえる。そして,作業現場への移動に自動車を利用することは必要不可欠の行為であり,また,参加人は被用者らが自動車で移動することを念頭に置いていた。そうであれば,被告Y1の本件事故当日における自動車の運転は,参加人の事業の範囲内の行為であり,かつ,被用者である被告Y1の職務の一部として行われていたといえる。そうすると,被告Y1の原告X1に対する不法行為は,参加人の事業の執行についてなされたものといえる。したがって,参加人は,本件事故による原告X1の損害について,使用者責任による賠償義務を負う。
   イ 被告Y2の主張
     参加人は,本件事故について自賠法3条の運行供用者責任,民法715条1項の使用者責任を負う。
     Aは,参加人が関連企業から除草作業を請け負う都度,参加人から電話ないしファックスで日時,場所,作業員の人数等の指定を受け,作業員を手配していた。Aは,各作業員に電話等で日時,場所,作業内容等を伝えるだけで,A自身が現場に赴くことはなく,現場での指揮監督はすべて参加人の従業員が行っていた。
     また,作業現場に赴くためには自動車を利用する必要があり,各作業員は各自の自動車を利用していたが,女性作業員の多くは自動車を運転することができなかったため,被告Y1は,原告X1らをY1車に乗車させ,現場と各自宅を往復していた。被告Y1としては,Cひいては参加人の業務の一環として原告X1らを送迎していたのであるから,運行支配,運行利益とも参加人に帰属していた。
     したがって,参加人は,使用者責任及び運行供用者責任を負う。
   ウ 参加人の主張
     原告らの主張は争う。本件事故当時,参加人は,関連企業の研修施設(D組合,Eセンター)の除草作業を請け負っていたため,Cという屋号で造園,草刈,剪定作業を業として行っていたAに対し,研修施設の除草作業を下請負として依頼していた。そして,Aが除草作業の臨時の作業員として原告X1及び被告Y1を雇い,同人らとF,G及びHが除草作業に従事していた。また,本件事故当時のY1車の所有者はI(Y1車を販売したディーラー)であり,使用者はJ(Aの夫)であった(丙1)。Y1車の実質的な所有者はCであり,その主な用途はCの業務用である。
     本件事故は,上記除草作業の終了後,被告Y1の帰宅途中に発生したものであり,参加人の業務の執行についての事故とはいえない。下請業者(C)の車両(Y1車)は,その管理が下請業者の下にあり,元請業者(参加人)の支配を離れて下請業者の業務のために運転されているのが通常であり,下請業者の車両の下請業者の業務のための運転は,元請業者の事業の執行についてなされたとはいえない。参加人は,下請業者の従業員が自家用車を使用して作業現場へ行くことを認めておらず,作業現場への送迎は下請業者の責任で行わせていた(丙6)。また,参加人は,除草作業中はCの従業員に対し作業内容の指示を行ったことはあったが,作業現場までの送迎はすべて下請業者に任せており,下請業者及びその従業員に別途交通費を支給することも一切なかった。したがって,元請業者である参加人がCが保有する車両を支配管理していた事実はなく,本件事故が参加人の支配領域内で発生したものでないことは明らかである。
     なお,仮に,被告Y1が参加人の従業員と同視し得る程度の使用関係があったとしても,従業員が自家用車で通勤途中に交通事故を惹起した場合,通勤中の従業員は業務を遂行しているわけではないから,事業の執行についてなされたとはいえない。
     したがって,参加人が使用者責任を負うことはない。
     また,参加人が運行供用者責任を負うには,参加人に運行支配と運行利益が存在することが必要であり,運行支配と運行利益は,基本的には従業員に対する指揮命令関係を通じて成立するものである。本件では,参加人にそのような指揮命令関係はなく,運行供用者責任もない。
  (4) 本件事故による原告X1の損害
   ア 原告らの主張
    (ア) 治療費 325万0740円
     a トヨタ記念病院 106万5020円
     b 東海記念病院 216万6020円
     c 東濃厚生病院 1万4450円
     d 後遺障害診断書料 5250円
    (イ) 入院雑費 32万1600円
      日額1600円の201日分
    (ウ) 通院交通費 1万8110円
     a トヨタ記念病院から東海記念病院への転院介護タクシー
       1万5710円
     b 東海記念病院退院時のガソリン代 1200円
       1km当たり15円で80km分
     c 東濃厚生病院通院のガソリン代 1200円
       1km当たり15円,1日当たり60kmの2日分
    (エ) 休業損害 209万2451円
      283万9200円(年齢別平均賃金)÷365日×269日
      原告X1は,本件事故当時,夫K(昭和16年○月○○日生まれ)と二人で生活し,家事(掃除,洗濯,食事等)の他に,家業の飲食店(寿司店)の手伝いをしていた(勤務時間は午前5時から午後10時)。
    (オ) 入通院慰謝料 220万円
    (カ) 後遺障害逸失利益 2018万1034円
      283万9200円×7.108(9年のライプニッツ係数。9年は平均余命18年の5割)
    (キ) 後遺障害慰謝料 2200万円(後遺障害等級3級3号)
    (ク) 将来の介護料 3626万8225円
      8500円/日×365日×11.690(平均余命18年のライプニッツ係数)
    (ケ) 家屋改造費用 525万円(甲8)
      原告X1の退院後の住宅改造については,入院先の東海記念病院の退院前訪問報告書(甲10の72)にあるように,退院時の日常生活動作に従って,実際に原告X1を診察した医師や同病院の理学療法士から屋内移動,食事,整容,更衣,トイレ,入浴等の日常生活動作に合わせて住宅改造が必要であると勧められ,改造の必要箇所について家屋図面により改造箇所を指摘されたとおりに住宅改造を行った(甲19)。原告X1は屋内での歩行は手摺りがあれば可能であるが,屋内にいる際に車椅子を利用することがあるから,床のバリアフリー工事は必要である。浴室については,既存のものでは,両足にしびれと痛みのある原告X1にとって浴槽が深く入ることができないため,改装の必要がある。トイレは洋式に改装する必要がある。トイレの位置の変更は,既存のトイレでは間口が狭く,車椅子での進入が不可能であったことや既存の玄関が飛び石になっており,原告X1がその場所を歩行することが困難であったため,医師の指示により脱衣室の横にいわゆる勝手口を新設する必要があったからである。したがって,トイレの改装も必要である。そして,トイレ,浴室等の改造が必要になるため,その改造に伴う付属工事も当然必要になる。
    (コ) 弁護士費用 500万円
    (サ) 以上の合計が9658万2160円である。
   イ 被告Y1の主張
     原告らの主張は争う。原告X1は,本件事故後1年半くらいが経過したころに被告Y1がAと同原告宅に見舞いに行った際,「ごめん下さい」というAに対し家の中から元気な声で「はーい」と答え,しっかりした足音を立てて被告Y1らを迎えている。そんな原告X1に将来の介護の必要性は認められないし,家屋改造の必要性も認められない。
   ウ 被告Y2の主張
    (ア) 原告ら主張(ア)の治療費は認める。
    (イ) 同(イ)の入院雑費は争う。
    (ウ) 同(ウ)の通院交通費は知らない。
    (エ) 同(エ)の休業損害は争う。
    (オ) 同(オ)の入通院慰謝料は争う。
    (カ) 同(カ)の後遺障害逸失利益は争う。
    (キ) 同(キ)の後遺障害慰謝料は争う。
    (ク) 同(ク)の将来の介護料は争う。
    (ケ) 同(ケ)の家屋改造費は争う。住宅改造の全体図(甲12)のうち,玄関の靴の脱着のための工夫,寝室への柵ないし手摺りの設置,浴槽内でのシャワーチェア使用や手摺りの設置,トイレの改造(和式から洋式への改造。ただし,便器を和式から洋式に変えるだけで十分である。)等は基本的に妥当である。しかし,浴室の設備そのものを変えたり,電動入浴リフトの設置は必要なく,洗面脱衣室と浴室との段差を解消するために6cmの浴室用スノコを敷くことで十分である。また,原告X1は,杖の使用により屋内歩行に支障がないから,車椅子での移動を視野に入れた改造は必要ない。住宅改造にかかる適正と判断される工事金額として,原告X1の専用部分については100%,同居家族との共用部分については50~70%,原告X1,同居家族が直接利用しない外壁,屋根,構造体等については30%を認めるのが相当であるとする。そうすると,家屋改造費として認められるのは約79万円(税込)である。
    (コ) 同(コ)の弁護士費用は争う。
   エ 参加人の主張
     原告ら主張の損害は知らない。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件事故について被告らが無過失であるか)について
  (1) 前記前提事実に加え,証拠(甲2,乙イ2,乙ロ6,被告Y1本人,被告Y2本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
   ア Y2車は,長さ7.74m,幅2.49m,高さ3.10mの大型貨物自動車であり,Y1車は,長さ4.37m,幅1.68m,高さ1.47mの普通乗用自動車である(甲2)。
   イ 本件事故現場及びその付近の状況はおおむね別紙交通事故現場見取図1(以下「別紙見取図1」という。)のとおりである。本件事故当時は小雨が降っており,本件道路のアスファルトの路面は湿潤していた(甲2,乙ロ6,原告X1本人18頁)。
   ウ Y2車は,本件道路を北から南に進行し,Y1車は,本件道路を南から北に進行して本件事故現場に至った(甲2)。
   エ 本件道路は,Y2車の進行方向からは本件事故現場付近において右にカーブし,Y1車の進行方向からは左にカーブしており,双方とも,前方の見通しは不良である(甲2)。本件道路の最高速度は時速40kmに規制されていた(乙ロ6)。
   オ 本件道路は,Y2車の進行していた部分は車道(ここでは外側線から外側線の間のことをいう。)の幅員が4.0mくらいであり,そこから徐々に幅員が広くなり,本件事故現場付近の幅員は4.4mくらいである。他方,Y1車の進行していた部分においては,車道の幅員が5.2mから4.8mと徐々に狭くなって本件事故現場に至る(甲2,乙ロ6)。
   カ 被告Y2は,本件事故現場で対向車があれば,どちらかの車両が停止しなければ通れないことを認識していた(被告Y2本人9頁)。
   キ 被告Y2は,別紙見取図1の①,②のあたりでは,本件道路のほぼ中央付近を走行し,それからやや左寄りに寄って走行した。Y2車は時速約30kmで走行していた。Y2は,別紙見取図1②の地点でY1車を27.3m先の同(ア)の地点に発見し,危険を感じ,左にハンドルを切り,急ブレーキを掛けたが,同③の地点で,同(イ)のY1車と同(×)1で衝突した(甲2,乙ロ6,被告Y2本人11頁)。
   ク 被告Y1は,時速40~50kmくらいでY1車を走行させていたが,別紙交通事故現場見取図2以下「別紙見取図2」という。)①の地点で27.4m先の同(ア)の地点のY2車を発見し,急ブレーキを掛けたが間に合わず,同②の地点で同(イ)のY2車と同(×)1で衝突した(甲2,乙ロ6,被告Y1本人3頁)。
   ケ 本件事故により,Y2車は,右前部バンパーが凹損するなどの中破が生じ,Y1車は,前部バンパー・ボンネットが凹損するなどの大破が生じた(甲2)。
  (2) これに対し,被告Y1は,本人尋問において,Y1車が停止しているところにY2車が衝突してきた旨の供述をする。しかし,被告Y1は,別紙見取図2の②の地点でY2車を発見し,そこでは時速30kmくらいで走行していた旨の供述をしたり(同②は衝突した時の位置である。)(被告Y1本人15頁),本件事故現場の10mから15mくらい手前までは結構速い速度で走行していた旨の供述をしたり(同14頁)もしている。本人尋問に至るまでは衝突時にY1車が停止していた旨の陳述や主張はないこと,本人尋問でも上記のように衝突地点で停止していることなどおよそ不可能であると考えられる内容の供述をしていることからして,衝突時にY1車が停止していたとの被告Y1の供述は採用できない。
  (3) 以上の事実を前提に被告らの過失について判断する。
    車両等の運転者は,当該車両等のハンドル,ブレーキその他の装置を確実に操作し,かつ,道路,交通及び当該車両等の状況に応じ,他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない(道路交通法70条)。
    本件では,本件道路は本件事故現場付近において,上記(1)のとおり,幅員が4.0mないし4.4mくらいと狭く,またカーブしていてY2車側からもY1車側からも見通しが悪かった上,小雨が降っていてアスファルト舗装された路面が湿潤していたので,車両の制動距離も長くなることが明らかであった。
    このような状況においては,車両の運転者には,道路交通法70条の安全運転義務として,見通しの悪い前方から突然近距離に対向車が現れても,衝突することがないように十分に減速して走行すべき注意義務があるというべきである。
    それにもかかわらず,Y2は時速約30km,Y1は時速40km以上で漫然と走行していたために,互いに対向車を約27m手前で発見した時には衝突を回避できなくなり,本件事故を発生させたのであるから,本件事故の発生について,Y2にもY1にも,安全運転義務違反の過失がある。
    したがって,被告らには,本件事故により原告X1に生じた損害について,連帯して賠償すべき義務がある。
 2 争点(2)(無償同乗減額)について
   原告X1は,Y1車に無償で同乗していた。しかし,無償同乗であるという理由だけでは,本件事故による原告X1の損害について被告Y1が賠償すべき額を減額する理由にはならない。そもそも,被告Y1が原告X1を同乗させていたのは,被告Y1及び原告X1の共通の使用者であるCことAの事業の執行のため(作業員である原告X1を自宅から作業現場まで送迎するため)であるから,なおさら,無償同乗であることをもって賠償額を減額すべき理由にはならない。
   Aが加入する保険から搭乗者傷害保険金が原告X1に支払われたことも,被告Y1の賠償すべき金額を減額する理由にはならない。被告Y1の損害賠償債務については,被告Y1の使用者であるCことAも使用者責任を負うと考えられるところ,そのAが保険料を負担する保険により1540万円の搭乗者傷害保険が支払われている。しかし,そもそも,搭乗者傷害保険金は,損害の填補を目的とするものではないから,損益相殺の対象にならないのはもちろん,慰謝料算定などの事情として考慮するのも相当ではない。
   したがって,被告Y1の無償同乗減額の主張は採用できない。
 3 争点(3)(参加人が被告Y1の本件不法行為につき使用者責任を負うか)について
  (1) 証拠(乙イ2,丙6,証人L〔以下「証人L」という。〕,原告X1本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。
   ア 参加人は,Mの協力企業で,車の内外装部品の生産に従事しているN株式会社において,N株式会社や関連企業施設の造園・土木管理及び修繕等の建設業を営む会社である(乙イ2)。
   イ Cは,Aが夫に代わって事業を引き継いだ零細な個人事業主であり,岐阜県恵那市明智町に所在する。Cは,参加人からの電話等で除草作業の発注を受け,知人等に声を掛けていたのであり,被告Y1や原告X1もその知人の一人であった。Aは,除草作業の作業員を手配しているだけで,実際には作業現場に赴いていない(丙6,証人L11頁)。
   ウ 参加人は,除草作業について,直接Cに請負代金を支払っており,原告X1や被告Y1といった作業員に直接に支払をすることはない。原告X1や被告Y1らに対する賃金は,Cが行っていた。交通費の支給がある場合も同様で,Cが支払っていた(証人L5~6頁,被告Y1本人7頁)。
   エ 本件事故当日に原告X1らが除草作業を行っていた場所(以下「本件作業現場」という。)は,愛知県豊田市西広瀬町所在のEセンターの多目的グランド北側付近であった(丙4,5)。付近に利用できる公共交通機関はなく,最寄りのバス停は1kmくらい離れている(証人L20頁)。被告Y1や原告X1が公共交通機関等を利用して本件作業現場に赴くには,同現場は非常に不便な所にある。そこで,Aの指示で,被告Y1がCの社有車であるY1車を用いて原告X1らを送迎することとなった(証人L20頁,原告X1本人39頁)。
   オ Y1車は,Aの夫であるJが使用者となっており,実質的にCの社有車である(丙1,被告Y1本人8~9頁)。
   カ 参加人は,作業員が自家用車で通勤することを認めていたことはないが,特に交通手段を指定することはなく,自家用車での通勤を禁止まではしておらず,自家用車で通勤する作業員もいる可能性はあると考えていた。参加人としては,他社の駐車場を使用するので,一人一台ずつ自家用車で来られたら困ると考えており,下請業者もそのことを認識していたので,下請業者が車両を出して作業員を送迎することが多かった。参加人では,作業員が公共交通機関を利用するのではなく,下請業者が,それぞれ,その作業員を会社用の事業用車で送迎するのが普通であると認識していた。また,Cも自社の車両で作業員の送迎を行っていると参加人は認識していた。本件作業現場について,Cでは,被告Y1が運転をして女性作業員を送迎していたことを参加人は認識していた。また,他の現場でも,同じ車両をCでは使用していたことを参加人は認識していた(丙6,7,証人L8,16~22頁)。
   キ 本件作業現場では,被告Y1が,原告X1ら作業員のリーダー的存在として,仕事の指示をしていた(原告X1本人3,35頁)。また,作業現場には,参加人の従業員(O)が現場管理者として来ており,下請業者のリーダー的な立場の者と打ち合わせをしたり,作業内容の指示をし,また,自らも作業に従事していた。また,午後5時ころに作業が終了し,終了時間には作業員らは所定の集合場所に集合し,参加人の従業員が当日の作業内容の確認及び点呼をして解散となった(乙イ2,丙6,7,証人L4~8,21,22頁,被告Y1本人7頁)。
  (2) 以上の事実を前提に,参加人が使用者責任を負うかについて判断する。
    参加人が,被告Y1の不法行為について使用者責任を負うには,参加人と被告Y1との間に使用関係があり,上記不法行為が参加人の事業の執行につき行われたといえることを要する。
    そして,参加人と被告Y1との間に使用関係があるといえるためには,両者の間に雇用契約などの契約関係が存在する必要はなく,参加人が実質的に被告Y1を直接間接に指揮監督しているといえる関係があればよい。
    上記(1)のとおり,除草作業の作業員である原告X1や被告Y1に本件作業現場における除草作業を行うように直接依頼するのはCことAであった。しかし,本件作業現場にはAは赴くことはなく,本件事故現場における作業の指示をし,作業終了後に仕事の確認をしていたのは,Cに除草作業の発注をした参加人の従業員であった。
    したがって,上記除草作業については,参加人が原告X1や被告Y1を指揮監督する関係にあり,参加人と原告X1,被告Y1と間には,民法715条1項の使用者責任発生の要件である使用関係があるといえる。
    また,本件作業現場は,原告X1や被告Y1が公共交通機関等で赴くには不便な所にあったのであるから,原告X1や被告Y1が本件作業現場で作業をするには,自動車で現場に赴くことが事実上必要不可欠のことであったということができる。
    したがって,被告Y1が,原告X1らをその自宅から本件作業現場までY1車で送迎することも,参加人の事業である上記除草作業に必要不可欠の行為であるというべきであるから,参加人の事業の執行の一環としての送迎行為であるということができる。
    参加人は,作業員が自家用車で本件作業現場に来ることを禁じており,本件作業現場に来る方法については,下請業者であるCに任せていたから,上記送迎行為は参加人の事業の執行には該当しない旨主張する。
    しかし,上記認定のとおり,本件作業現場が公共交通機関等により赴くのには不便な場所にあることからすれば,事実上,原告X1らを自動車で送迎するしかなかったというべきであり,参加人も,Cにおいて原告X1らを自動車で送迎していたことを承知していたのである上,参加人において,作業員が自家用車で来ることを禁じていたのなら,なおさら,作業員が本件作業現場に行く方法について参加人から任されていたCとしては,原告X1らを自動車で送迎するしかなかったというべきである。そうすると,本件作業現場への送迎に使用されていたのがCの社有車であり,参加人が自動車による送迎を指示したものではなかったとしても,事実上,参加人の意向により自動車による送迎が行われていたものであり,そのことによって,原告X1らが本件作業現場に赴くことができ,参加人の事業である除草作業をさせることができるようになっていたのであるから,Cの社有車であるY1車により被告Y1が原告X1らを送迎することも,参加人の事業の執行の一環としての行為であるといえる。
    したがって,本件事故は,参加人と使用関係にある被告Y1が,参加人の事業の執行について発生させたものであるといえるから,本件事故による原告X1の損害について,参加人には,民法715条1項の使用者責任による損害賠償義務がある。
 4 争点(3)(本件事故による原告X1の損害)について
  (1) 治療費 325万0740円
    証拠(甲3の1~17,甲4,5,乙ロ1の1・2,乙ロ2の1~17,乙ロ3の1~3)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は,本件事故により,第5頚椎前方脱臼,頚椎損傷の傷害を負い,トヨタ記念病院に平成19年9月11日から同年10月10日まで入院し(甲3の1・2),リハビリテーションのために東海記念病院に転院して同病院に同年10月10日から平成20年3月29日まで入院し(甲3の3)(入院期間は合計201日間),東濃厚生病院に平成20年4月8日と同年5月13日の2回通院し,同年6月5日,トヨタ記念病院において同年6月5日に症状固定と診断され(甲4),同年9月17日,損害保険料率算出機構岐阜自賠責損害調査事務所長により,第5頚髄損傷に伴う軽度の四肢麻痺が認められるとして,「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの」として後遺障害等級3級3号に該当すると認定された(甲5)こと,上記の入通院の治療費として,次のアないしエのとおり合計325万0740円の費用を要したことが認められる。
   ア トヨタ記念病院 106万5020円(甲3の2)
   イ 東海記念病院 216万6020円(甲3の4・6・8・10・12・14)
   ウ 東濃厚生病院 1万4450円(甲3の16・17)
   エ 後遺障害診断書料 5250円(甲3の17)
    以上によれば,本件事故による原告X1の治療費(文書料を含む。)分の損害は325万0740円であると認められる。
  (2) 入院雑費 26万1300円
    上記(1)のとおり,原告X1は,本件事故により傷害の治療のため,合計201日入院したことが認められる。
    入院雑費としては,1日当たり1300円の201日分である26万1300円を認めるのが相当である。
  (3) 通院交通費 1万8110円
   ア トヨタ記念病院から東海記念病院への転院介護タクシー
     1万5710円
     前記認定のとおり,原告X1は,トヨタ記念病院から東海記念病院に転院しているが,弁論の全趣旨によれば,その際,転院介護タクシーを利用し,1万5710円を要したことが認められ,これも本件事故による損害であると認められる。
   イ 東海記念病院退院時のガソリン代 1200円
     前記認定のとおり,原告X1は,東海記念病院に入院していたところ,弁論の全趣旨によれば,退院時に帰宅のために自動車で80kmくらいを走行したと認められるので,ガソリン代として1km当たり15円で80km分の1200円を本件事故による損害と認めるのが相当である。
   ウ 東濃厚生病院通院のガソリン代 1200円
     退院後の東濃厚生病院への2回の通院は,後記のとおり症状固定後の通院であると認められるが,原告X1の受傷内容からすれば,上記2回の通院も念のために必要なものと認められる。そして,弁論の全趣旨によれば,1回の通院の距離が約60kmであり,この2回の通院のために,自動車が利用され,ガソリン代として1200円を要したことが認められ,これも本件事故による損害であると認められる。
  (4) 休業損害 151万1300円
   ア 基礎収入 274万4400円
     証拠(甲1,18,原告X1本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は,昭和15年○月○日生まれで本件事故当時67歳の女性であり(甲1),本件事故当時は夫と二人暮らしで,主婦として家事(掃除,洗濯,炊事)をしたり,家業の飲食店である寿司屋の接客の手伝いをしたり,アルバイトをしたりしていたことが認められる。
     したがって,原告X1の休業損害の基礎収入は,賃金センサスの平成19年学歴計の65歳以上の女性の平均賃金である274万4400円とするのが相当である。
   イ 休業期間 201日間
     原告X1は,本件事故により,上記(1)認定のとおりの傷害を負い,入通院をし,平成20年6月5日に症状固定と診断され,後遺障害等級3級3号の後遺障害と認定された。
     しかし,原告X1の入院のうち,平成19年10月10日から平成20年3月29日まではリハビリテーションのための入院であったこと,平成20年3月29日に退院してから同年6月5日までに通院したのは同年4月8日,5月13日の2回と症状固定の診断を受けた同年6月5日の3回にすぎないこと,原告X1本人の供述によれば,退院後の通院は,何かあったときにいけないということで念のための通院にすぎなかったことが認められること(原告X1本人3頁),退院後6月5日までの間の治療により症状が良くなったことも特段うかがわれないことなどからすれば,症状固定日は平成20年3月29日の退院時であると認めるのが相当である。
     したがって,休業期間は,平成19年9月11日の事故日から平成20年3月29日までの201日であると認められる。
   ウ 休業損害
     以上によれば,本件事故による休業損害の額は,274万4400円÷365日×201日=151万1300円(小数点以下四捨五入)である。
  (5) 入通院慰謝料 220万円
    前記(1)のとおりの本件事故による原告の傷害の程度,入院期間,通院日数などからすれば,入通院慰謝料は220万円が相当である。
  (6) 後遺障害逸失利益 1950万7195円
    証拠(甲4,5)によれば,原告X1は,本件事故による第5頚髄損傷により軽度の四肢麻痺の後遺障害が残り,これは後遺障害等級3級3号の「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの」に該当すると認められる。
    したがって,原告X1は,本件事故による後遺障害により労働労働能力を100%喪失したものと認められる。
    そして,症状固定時である平成20年3月29日には原告X1は67歳(68歳の誕生日の4日前)であるから,労働能力喪失期間は原告らが主張するとおり9年(ライプニッツ係数は7.108)とするのが相当である。
    また,基礎収入は,上記(4)の休業損害の基礎収入と同様に年収274万4400円とするのが相当である。
    したがって,後遺障害逸失利益は,274万4400円×7.108=1950万7195円(小数点以下四捨五入)と認められる。
  (7) 後遺障害慰謝料 1990万円
    前記(6)のとおりの後遺障害の内容からして,後遺障害慰謝料は1990万円が相当である。
  (8) 将来の介護料 2133万4250円
    原告X1は,上記のとおり,本件事故により後遺障害等級3級3号の後遺障害を負った。そして,証拠(甲14,原告X1本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
   ア 原告X1は,介護保険を利用し,デイサービス・入浴介助等の公的サービスを受けている(甲14)が,平成19年9月11日時点では要介護2(立ち上がりや歩行などが自力では困難。排泄・入浴などに一部または全介助が必要)と認定されていたものの,平成20年12月時点では要介護1(日常生活の一部に介護が必要だが,介護サービスを適応に利用すれば心身の機能の維持・改善が見込める)に変更されている(原告X1本人22~23頁)。
   イ 原告X1の介護老人施設ひまわりの利用は,平成20年4月から同年12月までは月11~12回の利用であったが,平成21年1月から平成22年1月は,月5~9回の利用になっている(甲14)。
   ウ 原告X1の日常生活動作は次のとおりである。
    (ア) ベッドからの起き上がりは自立している(原告X1本人23頁)。
    (イ) 衣服の脱着は,ボタンをはめたり外したりするときは夫の介助が必要であるが,ボタンのない衣服の脱着は完全に自立している(原告X1本人23~24頁)。なお,原告X1と夫の寝室は別々であり,原告X1はベッドで就寝し,夫は畳の上で寝ている。本件事故前は原告X1も畳の上で寝ていた(原告X1本人24頁)。
    (ウ) 食事は,ベッド上ではなく,食堂のテーブルで椅子に座って取っている。箸の利用は困難であるが,左手でフォークやスプーンを使って自立している。食事の準備や食器の片付けは夫が行っている(原告X1本人24~25頁)。
    (エ) 歯磨きは入れ歯なので行っていない(原告X1本人25頁)。
    (オ) デイサービスがない日は椅子に座ってテレビを見ていることが多いが,たまに友人の運転する自動車で外出することもある。外出先は,近所の友人宅やショッピングセンターである(原告X1本人26~27頁)。
    (カ) 自宅にいるときに来客があると,原告X1が自ら玄関まで出迎えることもある。玄関と居間は隣接していて,数歩歩行するだけでよい(原告X1本人27頁)。
    (キ) 風呂は一人で入ることができないので,介助が必要である。転倒防止のために手を引っ張ってもらったりする(原告X1本人27~28頁)。
    (ク) デイサービスがある日は,午前9時15分くらいにバスが自宅まで来て施設まで送迎してもらっている。朝食と昼食は施設でとり,風呂もデイサービスで入れてもらっている。デイサービスは午後4時に終了し,帰宅するのは午後4時30分ころである(原告X1本人28~30頁)。
    (ケ) P医師は,原告X1の日常生活動作に関して「寝返りをする,椅子に腰掛ける,洋式便所に座る,排泄の後始末をする,食事をする(自助具使用),コップで水を飲む,ブラシで歯を磨く(自助具使用),顔を洗いタオルで拭く(自助具使用),は自立,足を投げ出して座る,立つ(杖使用),家の中の移動(杖使用),シャツを着て脱ぐ,ズボンをはいて脱ぐ,屋外を移動するが半介助,タオルを絞る,背中を洗う,二階まで階段を上って下りる,公共の乗り物を利用するが全介助である」などとする平成20年3月21日作成の身体障害者診断書・意見書(肢体不自由障害用)をはじめ,平成20年3月21日診断,同年8月30日付けの同脊髄症状判定用,同年4月8日の東濃厚生病院診療録,同年5月29日作成の介護保険用の主治医意見書,平成21年4月15日作成の身体障害者診断書・意見書(肢体不自由障害用),などから,診断時期により多少の変動があるものの,四肢に感覚障害が残存し,運動麻痺は特に手指筋力の低下が顕著であり,右手は廃用の状態であること,下肢筋力もMMT3(抵抗が加わると関節が全く動かない状態)と著しい低下があること,日常生活動作の制限は,起立時の半介助,家の中の移動は左手による杖使用による自立あるいは半介助,衣類の脱着は自立あるいは半介助,入浴は全介助,階段昇降は全介助であること,食事は自助具を使用して左手にて自立となっているが,原告X1が右利きで,左手の手指運動も「食事動作はスプーン・フォークでやっと可能,大きいボタンを見ながらやっと掛ける」状態であり,自立とはいえ食事動作の大きな苦労がうかがわれること,排泄の後始末も同様に左手で時間をかけてかろうじて後始末をせざるを得ない状態であることが容易に想像されることなどを指摘している。そして,これらのことから,原告X1の状態は,労災保険の介護の要否判断における「生命維持に必要な身の回りの処理の動作」,すなわち,移動,食事,更衣,排尿・排便,整容などの各項目に照らして評価した場合,一部の項目は自立ではあるが,時間をかけ最大の努力によって得られるものであり,全体的には,随時介護を要する状態に近いと評価すべきと考えるとしている(甲16)。
     以上の事実によれば,原告X1は,本件事故による後遺障害のために,後記のとおりの住宅の改造をしてもなお,入浴については全介助が必要であり,衣類の脱着についてもボタンのあるものについては介助が必要であり,食事等一応自立とされる日常生活動作についても,不自由な左手で自助具を使用して何とか自立できるにとどまるから,随時介助が必要な状態に近いと認められる。
     これらの事情からすれば,現在週2回程度介護保険によりデイサービスを受け,入浴もさせてもらっていることを考慮しても,夫による原告X1の介助費用として,日額5000円を認めるのが相当である。
     また,介助の必要な期間は,原告X1の年齢からして,原告らの主張する18年(ライプニッツ係数11.690)を認めるのが相当である。
     したがって,将来の介護費用は,5000円/日×365日×11.690(18年のライプニッツ係数)=2133万4250円である。
  (9) 家屋改造費用 183万9272円
    前記(8)のとおりの原告X1の日常生活動作の状態からすれば,原告らの主張する住宅改造の内容(甲12)のうち,玄関の靴の脱着のための工夫,寝室への柵ないし手摺りの設置,トイレを洋式にし手摺りを設置すること,浴槽にシャワーチェアや手摺りを設置することなどが必要であると認められる(乙ロ7,8の意見書もこれらの必要性を認めている。)。
    他方,前記認定のとおり,原告X1が左手で杖を使用して,あるいは手摺りを使用して室内での歩行による移動が可能であること,原告X1本人の供述によれば室内で車椅子を利用することはたまにしかなく,寝室を畳からフローリングに変えたのはその方があたたかいことと,段差をなくすためであったことが認められる(原告X1本人15頁)こと,乙ロ第8号証によれば,段差をなくすには畳にカーペットを敷くなどすることによっても可能であると認められることからすれば,室内で車椅子による移動ができるようにするためにフローリングにしたり,車椅子で浴室に行けるように浴室の位置などを変えるような改造までは必要がなかったと認められる。
    そして,乙ロ第8号証によれば,以上のとおりの必要な改造のために要する費用は,おおむね111万2819円であると認められる。ただし,原告X1の身体の状況からすれば,浴槽を浅いものに変える必要が認められるところ,証拠(甲8,乙ロ8)によれば,その費用として合計69万1860円(税込みで72万6453円)を要すると認められる。
    したがって,家屋改造費用分の損害は111万2819円に72万6453円を加えた183万9272円であると認めるのが相当である。
    なお,乙ロ第8号証には,原告X1の家族(夫)の共用部分については,費用のうちの一部を損害と認め,全体としては78万7419円が本件事故による損害であるとする旨の記載がある。しかし,原告X1が本件事故により受傷していなければ,共用部分の工事も必要なかったこと,共用部分の工事もそれほど大規模でないことなどからすれば,全額を損害と認めるのが相当である。
  (10) 以上の(1)から(9)の合計が6982万2167円である。
  (11) 原告X2が原告X1に支払った人身傷害保険金合計5061万9629円を控除すると残額は1920万2538円である。
  (12) なお,原告X1は,前記前提事実(6)のとおり,AがB株式会社と締結した保険契約に基づき搭乗者傷害保険金として合計1540万円を受領しているが,前記2のとおり,搭乗者傷害保険金は損害の填補を目的としたものではないから,損益相殺の対象となるものではない。
  (13) 弁護士費用
    上記(11)の額や本件訴訟の経緯等からすれば,弁護士費用は135万円を認めるのが相当である。
  (14) 以上によれば,被告ら及び参加人が原告X1に賠償すべき額は2055万2538円,原告X2に支払うべき額は2243万7463円である。
 5 以上によれば,原告X1の請求は,被告ら及び参加入に連帯して2055万2538円及びこれに対する平成19年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度では理由があるからこれを認容することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとする。また,原告X2の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとする。参加人の原告らに対する請求に係る訴えは,原告らが丙事件において参加人に対する反訴請求の訴えを提起したことにより訴えの利益を失ったのでこれを却下することとする。参加人の被告らに対する請求は,別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務が原告X1に対しては2055万2538円及びこれに対する平成19年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を超えては存在しないこと,原告おいおいに対しては2243万7463円及びこれに対する平成20年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を超えては存在しないことを確認する限度では理由があるからこれを認容することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとする。よって,主文のとおり判決する。なお,仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととする。
    名古屋地方裁判所民事第3部
           裁判官  寺西和史

別紙 事故目録
1 発生日時 平成19年9月11日午後5時10分ころ
2 発生場所 愛知県豊田市北篠平町川向117番地先路線上(沢田御作線)
3 第1車両 自家用普通乗用自動車(岐阜○○す○○○○)
4 上記運転者 被告Y1
5 上記同乗者 原告X1
6 第2車両 自家用大型貨物自動車(三河○○せ○○○○)
7 上記運転者 被告Y2
8 事故態様 正面衝突

当事務所では、弁護士が毎日のように交通事故問題の相談に向き合っております。交通事故の損害賠償等でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

無料法律相談のご予約は24時間受付

ご予約専用フリーダイヤル:0120-778-123

フリーダイヤルが繋がらない場合は03-3436-5514まで