横浜地方裁判所判決 平成12年1月21日

症状固定時8歳の女子小学生が植物状態(1級)の後遺障害を負った場合において、母に800万円の後遺障害慰謝料を認めた。

       主   文

 一 被告は、原告X1に対し、金一億六四七九万四七二九円、原告X2に対し、金八八〇万円及びこれらに対する平成五年四月二〇日から支払済みまで各年五分の割合による金員を支払え。
 二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 三 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告らの、その余を被告の各負担とする。
 四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

       事実及び理由

第一 請求
 一 被告は、原告X1に対し、金一億八八三四万六三四五円及びこれに対する平成五年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 二 被告は、原告X2に対し、金一一〇〇万円及びこれに対する平成五年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
   被告運転の自動二輪車により原告X1が傷害を負い、同人及びその母原告X2が損害を被ったとして、被告に対し損害賠償を求めた。
 一 争いのない事実
  1 事故の発生
    原告X1(以下「原告X1」という)は、次の交通事故(以下「本件事故」という)により脳挫傷、外傷性クモ膜下出血、頭蓋底骨折、肋骨骨折等の傷害を負った。
   (一) 発生年月日 平成五年四月二〇日 午前八時六分ころ
   (二) 発生場所 神奈川県鎌倉市材木座五丁目五番二七号先T字型交差点
   (三) 加害車両 自動二輪車(横浜む○○○○)
     所有者 被告
   (四) 被害者 原告X1
   (五) 事故態様 前記交差点(本件事故現場)は、九品寺(東)方面から海岸橋方面(西)に通じる直線道路と材木座海岸方面(南)へ垂直に延びる道路とが交差したT字型交差点であり、同交差点の東側には九品寺方面から海岸橋方面に通じる直線道路を横断するための横断歩道が設置されている。被告は、前記自動二輪車を運転し、九品寺方面(東)から海岸橋方面(西)に向かい本件交差点を通過しようとした際、前記横断歩道を歩行横断中の原告X1に自車を衝突させ、跳ね飛ばしてブロック壁に激突させた上、路上に転倒させ、傷害を負わせた。
  2 責任原因
   被告は、本件交差点を通過するにあたり、本件交差点手前には横断歩道が設置されていたのであるから、同横断歩道手前で減速し徐行の上、横断者の有無を確認して進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然進行した過失により、右横断歩道上を横断歩行中の原告X1の発見が遅れ、同女に加害車両前輪部を衝突させ、同女を付近のブロック壁に激突させた上、路上に転倒させて負傷させたものであるから、民法七〇九条不法行為に基づく損害賠償責任、および、右加害車両保有者として自賠法三条に基づく損害賠償責任がある。
  3 原告X1の受傷内容、入通院期間および後遺障害の内容・程度
   (一) 受傷内容
   脳挫傷、外傷性クモ膜下出血、頭蓋底骨折、肋骨骨折、肺挫傷、右鎖骨骨折、右第二枝胸骨骨折、右肩間接脱臼、血気胸、脳幹部損傷、呼吸不全、外傷性水頭症(平成五年五月一八日発症)等
   (二) 入通院期間
    (1) 国立横浜病院
      入院 平成五年四月二〇日から平成六年五月一二日まで(入院日数三八八日)
    (2) 横浜市総合リハビリテーションセンター
      通院 平成六年五月二五日(通院日数一日)
    (3) 神奈川リハビリテーション病院
      通院 平成六年六月二二日(通院日数一日)
    (4) 神奈川リハビリテーション病院
      入院 平成六年八月二二日から平成六年一二月二八日まで(入院日数一二九日)
    (5) 神奈川リハビリテーション病院
      入院 平成七年一月二三日から平成七年四月二日まで(入院日数七〇日)
    (6) 神奈川リハビリテーション病院
      通院 平成七年四月三日から平成七年一一月一〇日まで(平成七年八月二日から平成七年九月八日までの入院期間を除く。うち実通院日数三日)
    (7) 神奈川リハビリテーション病院
      入院 平成七年八月二日から平成七年九月八日まで(入院日数三八日)
   (三) 後遺障害
     原告X1の本件傷害は、平成七年九月八日症状固定し、重度意識障害の後遺障害が残存した(以下「本件後遺障害」という)。
     本件後遺障害は、自動車保険料率算定協会損害調査事務所により自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表第一級第三号に該当するとの認定を受けた。
二 争点
  本件の争点は大別して以下の三点である。
1 原告X1の推定余命
2 損害項目についての問題点
3 過失相殺
(争点1についての原告の主張)
 一 原告X1は、いわゆる植物状態にはなく、後遺障害の点を除けば、何ら健常人と変わるところはない。
   原告X1は、毎日、通学して授業を受け、体育の授業ではプールに入り、母親が同伴することなく修学旅行にも行くなど、後遺障害がある点を除けば、健常人と何ら変わることのない日常生活を送っている。
   原告X1は、自宅においては、座位保持装置に座って、テレビでアニメーションを見て笑い、食事をするときは、母親らが、乳幼児に対してするように食物を口元まで運べば、自ら食物を口に含み噛んで食べるのであり、メロンを食べさせようとすると顔を横にそむけ、ときには声を出して拒否するなど、食物を判別するだけでなく、動作によって「拒否」という自分の意思を表示して伝えることさえできる。
 二 このような状態の原告X1は、「赤ちゃんのよう」であり、日本脳神経外科学会における定義に即して言えば、自力摂食が可能で、目で物を追って認識することができ、声を出して意味のある発語ができ、簡単な命令に応じるばかりでなく、これを拒否することさえできる。
   したがって、原告X1は植物状態にはなく、後遺障害のために自力移動ができない等の点を除けば、何ら健常人と変わらないのであり、このことは「X1殿の件に関する医学的意見書」でも明らかである。
 三 このように原告X1が植物状態にない以上、その余命については、その症状固定時における平均余命七五年を用い、損害賠償額の算定基準とすべきである。
 四 この点、前記医学的意見書では、原告X1の余命を三五年から四〇年と推定する記述があり、その根拠として、1・危険回避が不能である、2・感染症に罹患しやすい、3・てんかん発作の危険、4・水頭症の悪化のおそれ、4・看護介護のレベル低下のおそれ、という事情をあげる。
   しかし、前記1・危険回避の点については、介助者が、介助者自身がその危険を回避できる程度の、健常人と何ら変わることのない程度の注意を払いさえすれば、原告X1が危険を回避することは可能である。そもそもX1は介助者がいない限り外出することはできず、この点、健常人の児童や老人が戸外で遭遇する危険に比べれば、むしろ、日常生活において何らかの危険に遭遇する場面は、かえって少ないのであり、健常人と区別する理由は全くない。
   前記2ないし4の感染症の罹患、てんかん発作、水頭症の悪化の危険についても、介護の充実、定期的な検査により、これら危険を回避することが可能である。前記5の看護介護のレベル低下についても、職業付添人を利用し、諸施設を利用するなど社会福祉制度の利用により回避することができる。
   本訴訟において、原告X1が、定期検査の費用、介護費用等を請求する趣旨は、まさにこれら費用が、感染症の罹患等の危険を回避するために必要な費用、言い換えれば、原告X1が健常人と同じように生活し、生きていくために必要な費用だからであって、被告が主張するように、これら費用の一部を賠償の範囲から除外し、その上さらに、感染症への罹患等の危険を理由に、原告X1の余命を短縮して推定することは、循環論法に陥るもので、適正な賠償とならない。
   すなわち、十分な定期検査の費用、介護費用が賠償されさえすれば、前記医学的意見書が指摘する様々な危険は回避することが可能で、原告X1は健常人と同じように余命を全うすることができるのだから、ことさらに原告X1の余命を平均余命より短縮して推定する理由はなくなるからである。
   前記医学的意見書を作成した医師も自ら認めるように、同意見書に記述された三五年から四〇年という原告X1の推定余命は、同医師の「個人的意見」に過ぎず、同医師の掲げる様々な危険ゆえに、なぜ推定余命が「三五年から四〇年」になるのかについて、何らの医学的根拠づけはなく、実証的説明は全くなされていない。むしろ、同意見書では、本訴訟により適正な賠償がなされれば、同医師の掲げる様々な危険が解消されることの考慮は全くなされていない。
   いかなる健常人といえども、生きている限り、何らかの病気に罹患する危険を有しており、不衛生にしていれば、かかる危険は増大するのであって、同意見書の掲げる原告X1の感染症の罹患等の危険は、こうした健常人が有する危険と何ら変わるところはないのである。
 五 したがって、原告X1について、ことさらにその余命を平均余命と区別して推定すべき理由は全くなく、賠償の範囲は、原告X1の症状固定時における平均余命七五年を基礎とすべきである。
   なお、原告X1が植物状態にない以上、植物状態であることを前提とする裁判例は、本件には参考とならない。
(1についての被告の主張)
 一 被告は、原告X1の推定余命を症状固定時から三五年ないし四〇年程度と解し、その理由は以下のとおりである。
 二 一般に症状固定以降の介護費については、被害者の症状により、これが植物状態の場合は将来の介護費についてその算定期間について従来の裁判例は、①一時金賠償方式を採用し、生存可能年数を推定してこれを限定的に考えるか(以下「限定説」という)、②平均余命全期間を認定するもの(以下「非限定説」という)、③定期金賠償方式を採用するものに分かれている。
   植物状態患者の医学上の定義については一九七二年日本脳神経外科学会で主張された定義が一般的に引用され、それによると次のとおりである。
   ①自力移動が不可能である。
   ②自力摂食が不可能である。
   ③排尿失禁状態にある。
   ④目で物を追うが認識はできない。
   ⑤声を出しても意味のある発語ができない。
   ⑥「眼を開け」「手を握れ」という簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通は不可能である。
   以上の六項目の症状を少なくとも三ヶ月以上呈した症例をいわゆる植物状態患者と定義されている。
   従来の裁判例も非限定説と限定説がある。植物状態患者もそれに近い重度障害者の場合も推定余命として健常者との間に差を設けられるかということであるから大差はないものと考えられ、本件の場合も、従来植物状態患者を中心に論ぜられてきたことが参考となり得る。
  1 従来の裁判例(交民集第二八巻解説・索引集四四八頁以下)
   (一) 限定説に立つ裁判例
   ① 札幌地裁昭五八、二、一五(交民集一六ー一ー一五九)
    介護料を口頭弁論終結時から一〇年間認めた。
   ② 松山地裁西条支判昭五九、三、二二(交民集一七ー二ー四二五)
    介護料を四〇才まで(口頭弁論終結時から二七年間)認めた。
   ③ 福岡地裁小倉支判昭六〇、三、二九(判例時報一一九〇ー七五)但し喧嘩による殴打事件
    介護料を平均余命(四二年)の三分の一の一四年間認めた。
   ④ 高松高裁昭六〇、四、一八《自保ジャーナル(乙五)。右②の控訴審》
    原審どおり
   ⑤ 佐賀地裁昭六〇、七、一六(交民集一八ー四ー九九三)介護料をほぼ確定できる五年間(不安定な将来分は慰謝料の斟酌事由)を認めた。
   ⑥ 東京高裁昭六三、二、二九(判例時報一二七三ー六二。非限定説採用の後掲⑫の控訴審)
    介護料を口頭弁論終結時から一〇年間認めた。
   ⑦ 最判昭六三、六、一七《自保ジャーナル(乙六)。右④の控訴審》
    介護料については原審の認定を是認。
   ⑧ 京都地裁昭六三、一〇、二八(交民集二一ー五ー一一二三)
    介護料を四〇才まで(症状固定から二一年間)認めた。
   ⑨ 東京地裁平六、九、二〇(交民集二七ー五ー一二五四)介護料を平均余命(一六年)の三分の二の一〇年間認めた。
   ⑩ 東京地裁平八、八、一三(自保ジャーナル一一四八)治療費等につき(介護料の請求なし)口頭弁論終結時(六五才、平均余命二〇・九七才)から平均余命の三分の一の七年間を認めた。
   (二) 非限定説に立つ裁判例
   ⑪ 東京地裁昭五八、九、二六(交民集一六ー五ー一二五八)
    介護料を平均余命の五五年間認めた。
   ⑫ 静岡地裁浜松支判昭六一、九、三〇(交民集一九ー五ー一三六六)
    介護料を少なくとも原告主張の四六年間認めた。
   ⑬ 神戸地裁平三、七、一〇(交民集二四ー四ー八〇三)介護料を平均余命の四三年間認めた。
   ⑭ 山口地裁平四、三、一九(交民集二五ー二ー三五五、判例タイムズ七九三ー二一七)
    介護料を平均余命の七五年間認めた。
   ⑮ 神戸地裁平五、五、一九(交民集二六ー三ー六四〇)介護料を平均余命の六四年間認めた。
   ⑯ 神戸地裁平六、六、二八(交民集二七ー三ー八四八)介護料を平均余命の五九年間認めた。
   ⑰ 岡山地裁平六、一二、一九(交民集二七ー六ー一五八〇)
    介護料を平均余命の二三年間認めた。
   ⑱ 大阪地裁平七、六、二二(交民集二八ー三ー九二六)介護料を平均余命の七七年間認めた。
   ⑲ 広島高裁岡山支判平七、一二、二一(自保ジャーナル。⑰の控訴審)介護料につき、自動車事故対策センター療養センター入院以降は否定し、自動車事故対策センターからの介護料の支給(日給四〇〇〇円)を損害填補として控除した。
   ⑳ 東京地裁平八、二、二〇(自保ジャーナル一一四八)介護料を平均余命の五八年間認めた。
  2 裁判例の傾向
    右裁判例のほか(21)静岡地判平五、六、二九《自保ジャーナル一〇九六号》が介護料を平均余命四四年間認めたのに対し、この控訴審である(22)東京高判平六、五、三〇《自保ジャーナル一〇九六号》が口頭弁論終結時から一〇年間に限定し、この上告審である(23)最判平六、一一、二四《自保ジャーナル一〇九六号。交民集二八巻解説・索引集四七〇頁以下参照》がこれを是認している判例がある。
    以上の裁判例から従来の裁判例の傾向を考えると、植物状態患者の将来の介護料算定の介護期間についての認定は、地裁段階ではその患者の余命の認定に苦しみながら、非限定説に立つものと、損害負担の公平の原則からその余命を推定して認定する限定説に立つものと、相中半しているものといえよう。しかし、高裁段階になると前記④の高松高判、⑥、(22)の東京高判は、いづれも限定説に立つもので数の上では限定説が圧倒的に多く、非限定説に分類されている⑲の広島高裁岡山支判も介護料については自動車事故対策センター療養センター入院以降は否定し、同センターからの支給介護費を損害填補として控除するなど極めて限定的に判断して、具体的妥当性を図っていることがうかがわれる。これらのことから、高裁段階の考えは限定説に立つものと考えられる。これが最高裁になると、前記⑦、(23)の判例からも明らかなとおり、限定説に立っていて、非限定説の最判は見当たらない。
    これらのことから従来の裁判例の傾向としては一審(地裁)段階では苦しみながら判断し、限定説と非限定説が相中半するが、二審、三審と上級審になるにつれて限定説に固まりつつあると考えられる。将来的には限定説が主流になって行くことが予測されるので、本件も限定説を採用して判断されるべきものと思料する。このことは、植物状態患者に近い場合も同様に考えるべきものと思料する。
  3 限定説の根拠
   (一) 自動車事故対策センターの統計資料自動車事故対策センターが昭和五四年八月にいわゆる植物状態患者に対する介護料の支給を開始して以来、平成二年三月末までの一七九四名の受給者につき、そのうち一四四名(八・〇%)が植物状態から脱却し、九二五名(五一・五%)が死亡し、五八六名が引き続き受給中であるところ、脱却者のうち半数以上の者が事故後四年以内に回復し、死亡者のうち、交通事故発生から死亡時までの経過年数が五年未満の者が六一四名(六六・三%)、五年以上一〇年未満の者が七七名(八・三%)、一五年以上二〇年未満の者が二八名(三・〇%)であった。また、受給中の者のうち交通事故発生からの経過年数が五年未満の者が二七一名(四六・二%)、一〇年以上一五年未満の者が八三名(一四・一%)、一五年以上二〇年未満の者が四三名(七・三%)、二〇年以上の者が九名(一・五%)である。
   (二) 日本脳神経外科学会報告等
     統計資料としてはやや古いが、東北大学脳神経外科の第三一回日本脳神経外科学会総会での報告によると、昭和四七年度末における脳神経外科学会認定医宛医師訓練病院一六〇施設に収容されている植物状態患者の調査では、三年以内の死亡率が五一・六%である(東京高判昭六三、二、二九の認定事実ー判例時報一二七三ー六四)。
     また、厚生省の特別研究植物状態患者研究班の東北地方における植物状態患者の実態調査記録によると、二年未満の死亡率は五四%、五年未満の死亡率は八八%である(前掲東京高判の認定事実ー判例時報一二七三ー六四)。
     その他具体的事件についての患者の推定余命につき数年から一〇年とする鑑定意見書がある。
 三 原告X1の状況について
  1 先ず、原告X1の治療経過と現況については以下に述べるとおりである。
    原告X1は、本件事故により外傷性クモ膜下出血、脳挫傷、肺挫傷、肝腎機能不全等の傷害を負い、治療の結果痙性四肢麻痺、側わん症、精神遅滞、てんかん、水頭症の障害の頭部外傷後遺症が残り、身体障害は重度で、自力での移動は不能、日常生活動作は全介助、精神遅滞は最重度であり、コミュニケーションはほとんどとれない。
    平成五年五月三一日にはオマヤ貯留槽の留置手術が、また、同年六月一四日には脳室腹腔短絡術が行われた。
    原告X1は、本件事故から約一〇ヶ月後の平成六年二月六日の時点では、自然開眼はあるが言語による命令に応ずることはできず、また言語や四肢の動きで他人とは意思の疎通ができない状態であった。
    原告X1は平成六年八月二二日神奈川リハビリテーション病院へ総合評価目的で入院し、入院時には神経症状として痙性四肢麻痺、失語症、仮性球麻痺、知的障害などがみられ、入院三ヶ月目ごろより周囲に対する反応がよくなり、発語(ハーイ、ウーン、イヤダ)がみられ、また左上肢で手を挙げる動作もみられるようになり、首を左右にゆっくり動かしたり、右上肢や左下肢をわずかながら自発的に動かすこともできるようになった。
    原告X1は、平成七年一月二三日リハビリ訓練と復学準備目的で、再び神奈川リハビリテーション病院へ入院した。
    この時は前回入院時より症状の改善がみられ、両上肢および右下肢にはわずかながら随意運動がみられ、呼名には反応し、機嫌の良い時は左手で返事することができ、追視および固視も可能、顔の表情がよくなり、大声で笑ったり、ハイという言葉が出るようになり、頭部を固定したり、頭部の左右の動きを意図的に行ったり、左肘の挙動作でゲームをすることができるようになった。
    視覚機能に関しては、周囲の動きで何が起こるかという因果関係をある程度理解できた。
    しかし、頚部の右方向への側屈と腰部の側弯があり、坐位保持装置が引き続き必要であり、日常生活の動作は全介助、食事は常食のきざみ食を摂取できた。
    原告X1は、平成七年八月二日神奈川リハビリテーション病院に三回目の入院をした。
    この時点では頚部の安定が以前より少しよくなった程度で、機能面では大きな変化は認められず、テレビゲームは肘スイッチで白、赤、青を区別している。口腔機能障害は依然存在し、特に右からの摂取は咀嚼、保持、送りのすべての過程に障害がみられる。
    右神奈川リハビリテーション病院への三回目の入院は、平成七年九月八日退院しているが、その後の原告X1の現状(平成一一年一〇月八日原告X2供述時点)では、右神奈川リハビリテーション病院よりは首がしっかりしたことと、笑い声が大きくなった程度の回復である。
  2 前記植物状態患者の要件の④「目で物を追うが認識はできない」との点につき、右総括所見では「触運動覚に対し、視覚、聴覚が優位であり、静かな場所では視覚により認知できれば動作が開始されることが観察された」こと、同⑤「声を出しても意味のある発語ができない」との点については、同所見では「ハイと言う言葉が聞かれるようになった」、しかし、発語としては「イヤダ、ウン、ハーイ」程度のようであること、同⑥「眼を開け」「手を握れ」というような簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通は不可能である」との点については、同所見では、そもそも「眼を開け」「手を握れ」と命令すればそれに応ずることができるのかは不明であるが、テレビゲームでは白、赤、青の区別はできる、同②「自力摂食が不可能である」との点については、同所見では「常食きざみ食を摂取」とのことである。
    そこで、原告X1は①と③に対しては右定義にほぼ該当するが、②、④、⑤、⑥、の状態よりはよいと考えられる。
    以上のことから、原告X1の場合植物状態患者には当たらないとはいえ、それに近い重度障害者と考えられる。右のような原告X1は健常人と同じだけの余命があるとも考えられない。
 四 原告X1の推定余命について
  1 以上に述べた原告X1は、将来の介護を考えた場合次に述べるリスクが存在する。
  ①危険回避が不能である。原告X1には言語障害、四肢麻痺があることから、自分の力で不意の危険を察知し、他人に知らせたり、自力で回避することができない。
  ②感染症に罹患しやすい。
    原告X1には前記のとおり嚥下障害があり、痰の排出が十分でなく、また誤嚥しやすい状態にある。従って無気肺や肺炎になりやすい。原告X1の治療経過をみても上気道炎と考えられる症状が頻回にみられている。
    また、四肢麻痺があることから、褥瘡ができやすい。糞尿失禁状態であることは尿路感染症や褥瘡の悪化がおきうる。
  ③原告X1の神奈川リハビリテーションの診療録によると、これまで何回となくてんかん発作を起こしている。平成九年一二月四日には全身が硬くなり、口唇がチアノーゼになるような発作がみられている。てんかん発作が重積した場合には呼吸が困難になり最悪の場合には死に至ることも考えられる。
  ④水頭症の問題
    水頭症とは頭蓋内における髄液の流通、生産、吸収障害を原因として髄液量が増加し、そのために頭蓋内圧が亢進し種々の症状の発現を伴った病態である。
    原告X1は水頭症に対して脳室腹腔短絡術(VーPシャント)を受けているので、脳から下腹までシャントの管が入っている。それにばい菌がついてシャント感染する危険が常に存在する。そうした場合、髄膜炎や腹膜炎がおきうる。将来何らかの原因でシャントの管が閉塞した場合、神経症状が悪化する原因となる。
  ⑤看護や介護のレベル低下の問題
    原告X1の看護については、母である原告X2が高齢になった場合や死亡した場合に、看護のレベルが低下することは現実の医療では避けられない。
  2 右に述べた原告X1の本件事故により受けた傷害の程度、治療経過、後遺障害の内容、今後のリスクを考えると、健常者と同じだけの余命があるとは考えられず、原告X1の推定余命は三五~四〇年と考えるのが妥当であり、これが医学常識と考えられるであろう。
  3 これに対し、原告らは右推定余命の考え方はA脳神経外科医個人の見解で、一般的な考えでないと主張するが、A医師は二〇年の医師としての経験、それまで数カ所の医療機関で植物状態患者も診察してきており、それにより軽い患者もいろいろ診断してきて専門的に考え、しかも原告X1の場合は余命を長く考えていること、二〇年程度の脳神経外科医の経験ある医師ならば同様に考えると思われること等から、原告X1の推定余命三五~四〇年と考えるのは脳神経外科医の平均的な判断と考えられる。
    右は脳神経外科医師の平均的な考えであるが、小児科医師としても身体障害、精神障害、合併症ともに余命を短縮する要素となり得ることを認めている。
(2についての原告の主張)
一 損害額
 1 傷害にかかる損害
   (一) 在宅付添看護費 金一七七万八四〇〇円
     原告X1は、本件交通事故により、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋底骨折等の重傷を負い、生死の境を彷徨った後、平成七年九月八日、症状固定とされたものであるが、後遺障害等級第一級の重度意識障害の後遺障害を残してしまった。
     右の治療過程において、入退院を繰り返し様々な治療が施されたが、その間、原告X2(以下「原告X2」という)は原告X1に付添い看護に当たっていた。
     入院付添費については、原告X2と三井海上火災保険株式会社(以下「三井海上火災」という)との合意により弁済されているので、在宅付添看護費につき請求する。
     親族による在宅付添看護費は、一日当たり金六〇〇〇円が相当であるが(赤本による)、原告X1の病状から二割増とすべきであり、入院待機、通院ないし在宅療養期間である平成六年五月一三日から同年八月二一日まで(一〇一日間)、同年一二月二九日から平成七年一月二二日まで(二五日間)、および、同年四月三日から同年八月一日まで(一二一日間)の合計二四七日につき、支払われるべきである。
     よって、
        二四七日×金六〇〇〇円×一・二
        =金一七七万八四〇〇円
    となる。
     なお、在宅付添看護費には、通院付添費を含むものとして請求する。
   (二) 在宅付添看護にかかる雑費 金三二万一一〇〇円
     原告X1は、その病状から入院待機、通院ないし在宅療養期間一日当たり金一三〇〇円相当の雑費を支出した。
    よって、
        二四七日×金一三〇〇円
        =金三二万一一〇〇円
    となる。
    なお、入院雑費については、三井海上火災から支払いがなされているが、一日平均金二〇〇〇円以上を要した。
   (三) 慰謝料 金四二四万円
     原告X1は、瀕死の重傷を負い合計六二五日間入院し、合計二四七日間入院待機、通院ないし自宅療養を余儀なくされたもので、その間の精神的苦痛を慰謝するには金四二四万円が相当である。
     なお、いわゆる赤本によれば、基本額として金三五三万六二〇〇円とされるが、原告X1は生死の危ぶまれる状態にあったのであり、その二割増が相当である。
  2 後遺障害にかかる損害
   (一) 逸失利益 金三九六〇万二九三三円
     原告X1は、平成七年九月八日、症状固定時八歳の小学生であったが、母である原告X2は××短期大学、祖母Bは△△女子短期大学を卒業しており、同人らは原告X1を将来四年制大学に入学させようと考えていた。原告X1の逸失利益を算定するには、賃金センサス平成七年第一巻第一表女子労働者新大卒全年齢平均賃金に、後遺障害等級第一級の労働能力喪失率一〇〇パーセントを乗じ、労働能力喪失期間四五年間に対するライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金四四一万一六〇〇円×一・〇〇×(一八・八七六ー九・八九九)
        =金四四一万一六〇〇円×一・〇〇×八・九七七
        =金三九六〇万二九三三円
    と算定される。
     因みに、女子労働者学歴計全年齢平均賃金額を基準とすると逸失利益は金三六七四万三五〇六円となる。
   (二) 原告X1の慰謝料 金三〇〇〇万円
     原告X1は、本件後遺障害による四肢麻痺状態のため寝たきりの状態にあり、自力での移動、体位変換、および、自力での食物摂取はできず、全て介護者による介護が必要な状態にある。また、屎尿失禁の状態にあるのでおしめを常時使用することが必要であり、眼球はかろうじて物を追うこともあるが認識はできず、声を出しても意味のある発言は全く不可能であって、言葉を理解することは殆どない。その他、てんかん発作の危険性がある。
     これらの障害は終生残り、時として寿命を縮めることすらあることを考えると、原告X1の慰謝料は、金三〇〇〇万円が相当である。
   (三) 原告X2の慰謝料 金一〇〇〇万円
     原告X1は、原告X2の一人娘であるところ、本件事故により長期間にわたり生死の境を彷徨ったばかりか、前記後遺障害により、生涯、他者の介護なくして生活できない状態に陥ったものであり、原告X2は、本件事故により、一人娘の死亡にも比肩するほどの重大な精神的苦痛を受け、生涯原告X1を介護し、絶えず不憫な娘の姿を見なければならなくなったのであるから、原告X2の慰謝料は金一〇〇〇万円を下ることはない。
  3 症状固定後の療養介護にかかる損害
   (一) 将来の検査、リハビリテーション費用 金一七九万二六二〇円
    (1) 検査費用 金三八万九七〇〇円
      原告X1は、前記後遺障害のため、六ヶ月に一回、病院での脳波検査を受ける必要がある。
      右検査費用は一回金一万円を要するので、これを平均余命七五年間につきライプニッツ係数(一九・四八五)で中間利息を控除すると
      金一万円×二回(年間)×一九・四八五
      =金三八万九七〇〇円
     となる。
      なお、右検査では入院は不要である。
      その他、てんかん発作防止のための薬の費用が別途かかる。
    (2) リハビリテーション費用 金一四〇万二九二〇円
      原告X1は、自力で運動することが全くできないので、他人が身体を動かす等して刺激を与えないと身体の筋肉の拘縮を来す。また、運動できず同じ姿勢を続けることになる結果、筋肉および骨の発達が阻害され、背骨の湾曲等の骨の障害が発生し始めている。そこで、身体の拘縮を防止し矯正等を行うために、定期的に病院において、医師等の専門家によるマッサージおよび機能回復訓練を行う必要がある。
      右マッサージ等は、二週間に一回以上必要であり、一回あたり金三〇〇〇円の費用を要する。これを平均余命七五年間につきライプニッツ係数(一九・四八五)で中間利息を控除すると
    金三〇〇〇円×二四回(年間)×一九・四八五
    =金一四〇万二九二〇円
    となる。
    (3) 以上合計金一七九万二六二〇円を要する。
   (二) 介護費用(自宅付添費) 金五六九四万二一九〇円
     原告X1は、本件後遺障害のため将来にわたって、飲食、着脱衣、入浴、おしめ交換、屋内外での移動、就寝中の体位変換、車椅子への乗降、学校への送迎等、日常生活のすべてにわたり、常時、介護が必要になった。
     右介護は主に原告X1の母親である原告X2により行われているが、同人が労働能力を喪失した後は、職業付添人の介護を受けるほかはない。その介護費用は近親者付添人一日あたり金六〇〇〇円、職業付添人一日あたり金一万五〇〇〇円とし、①症状固定後自宅療養を開始した平成七年九月九日から原告X1(昭和六一年○○月○○日生まれ)の平均余命七五年までを介護必要期間とし、原告X2(昭和三二年○月○○日生)の労働能力の終期(六七歳)である平成三六年までは同人が、②その後は、職業付添人が介護するものとして、右期間に相当するライプニッツ係数を乗じて中間利息を控除すると、
        ①金六〇〇〇円×三六五日×一五・一四一
        =金三三一五万八七九〇円
        ②金一万五〇〇〇円×三六五日×(一九・四八五ー一五・一四一)
        =金二三七八万三四〇〇円
        ①+②=金五六九四万二一九〇円
    となる。
     なお、原告X1は自力で動くことが全くできないので、付添人による全面介助を要する。従って、職業付添人の費用は、規定の最高金額を要し、日当の他、交通費を別途支払うことを要する。
     また、原告X2は、現在、勤務先の仕事を自宅で処理しているが、これは日曜祭日を返上した上、原告X1の就学時間および就寝時間を利用する他、夜間自らの睡眠時間を削って対処しているから可能であって、原告X2は、右過重労働のために衰弱してきており、勤務を辞めざるを得ないと考えている。また、原告X2は、原告X1にリハビリの訓練を受けさせることを望んでいるが、その送迎を行うためには、現在の仕事を辞めるほかない状況にある。原告X2が退職を余儀なくされた場合、近親者による在宅付添費は、少なくとも現在の収入を基準とされるべきであり、平成九年度の原告X2の年収は金三八三万九九九〇円であって、通常の就業日数で換算すると一日当たり金一万四七一二円と算定されるのである。
   (三) 在宅介護に要する雑費 金七一一万二〇二五円
     おむつ等消耗品代は一日当たり金一〇〇〇円相当を必要とするので、これを平均余命七五年間につきライプニッツ係数(一九・四八五)で中間利息を控除すると、
        金一〇〇〇円×三六五日×一九・四八五
        =金七一一万二〇二五円
    となる。
   (四) 住宅改築費用 金一七六〇万円
     原告X1を介護するため、住宅の改築が必要であり、そのために金一七六〇万円を支出した。なお、右改築費用には、ホームエレベーター(金三三三万五〇〇〇円)および天井走行リフト(金一六八万五〇〇〇円)の購入設置費用を含んでいる。
   (五) エレベーター買い替え費用 金一九一万〇九五五円
     エレベーターは一基金三三三万五〇〇〇円であり、その耐用年数は二〇年であり、原告X1の平均余命は七五歳であるから、今後三回の買い替えが必要である。
     そこで、二〇年毎に金三三三万五〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金三三三万五〇〇〇円×(〇・三七七+〇・一四二+〇・〇五四)
        =金三三三万五〇〇〇円×〇・五七三
        =金一九一万〇九五五円
    となる。
   (六) エレベーター点検費用 金一九二万九〇一五円
     エレベーター点検費用は年間金九万九〇〇〇円(年二回の点検費用および年一回の市役所への報告費用一式を含む)であり、原告X1の平均余命が七五年であるから、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金九万九〇〇〇円×一九・四八五
        =金一九二万九〇一五円
    となる。
   (七) 天井走行リフト買い替え等費用 金七一八万二三四〇円
     天井走行リフトの維持管理には、以下に述べる買い替え、および、管理費用を要する。
    (1) 天井走行リフト本体(ハンガー、スリングシートを含む)は、一基合計金九二万五〇〇〇円であり、その耐用年数は五年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一五回の買い替えが必要である。
      そこで、五年毎に金九二万五〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ計数で中間利息を控除すると、
        金九二万五〇〇〇円×(〇・七八四+〇・六一四+〇・四八一+〇・三七七+〇・二九五+〇・二三一+〇・一八一+〇・一四二+〇・一一一+〇・〇八七+〇・〇六八+〇・〇五四+〇・〇四二+〇・〇三三+〇・〇二六)
        =金九二万五〇〇〇円×三・五二六
        =金三二六万一五五〇円
     となる。
    (2) 天井走行リフトレールは、一式金一〇〇万円であり、その耐用年数は一〇年であるから、原告X1の平均余命七五年間に七回の買い替えが必要である。
      そこで、一〇年毎に金一〇〇万円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ計数で中間利息を控除すると、
        金一〇〇万円×(〇・六一四+〇・三七七+〇・二三一+〇・一四二+〇・〇八七+〇・〇五四+〇・〇三三)
        =金一〇〇万円×一・五三八
        =金一五三万八〇〇〇円
     となる。
    (3) 天井走行リフト用バッテリーは一個金一万四〇〇〇円であり、同ストラップは一本金一万二〇〇〇円である。これらの耐用年数はいずれも一年であるので毎年の支出が必要である。
      右合計金額は金二万六〇〇〇円のところ、原告X1の平均余命が七五年であるから、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金二万六〇〇〇円×一九・四八五
        =金五〇万六六一〇円
     となる。
    (4) 入浴用担架は一台金九万五〇〇〇円であり、その耐用年数は二年であるので、原告X1の平均余命七五年間に三七回の買い替えが必要である。
      そこで、二年毎に金九万五〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ計数で中間利息を控除すると、
        金九万五〇〇〇円×(〇・九〇七+〇・八二三+〇・七四六+〇・六七七+〇・六一四+〇・五五七+〇・五〇五+〇・四五八+〇・四一六+〇・三七七+〇・三四二+〇・三一〇+〇・二八一+〇・二五五+〇・二三一+〇・二一〇+〇・一九〇+〇・一七三+〇・一五七+〇・一四二+〇・一二九+〇・一一七+〇・一〇六+〇・〇九六+〇・〇八七+〇・〇七九+〇・〇七二+〇・〇六五+〇・〇五九+〇・〇五四+〇・〇四九+〇・〇四四+〇・〇四〇+〇・〇三六+〇・〇三三+〇・〇三〇+〇・〇二七)
        =金九万五〇〇〇円×九・四九四
        =金九〇万一九三〇円
     となる。
    (5) 天井走行リフト点検費用は、年間金五万円(年一回の点検)であり、原告X1の平均余命が七五年であるから、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金五万円×一九・四八五
        =九七万四二五〇円
     となる。
    (6) 以上天井走行リフト買い替え等費用の合計は金七一八万二三四〇円となる。
   (八) 介護用ベッド購入および買い替え費用 金一九三万三八〇九円
     介護用ベッドは一台金六三万七八〇〇円(付属テーブル、マットレス等を含む)であり、その耐用年数は八年であるから、原告X1の平均余命七五年間に九回の買い替えが必要になる。
     そこで、八年毎に六三万七八〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金六三万七八〇〇円×(一+〇・六七七+〇・四五八+〇・三一〇+〇・二一〇+〇・一四二+〇・〇九六+〇・〇六五+〇・〇四四+〇・〇三〇)
        =金六三万七八〇〇円×三・〇三二
        =金一九三万三八〇九円
    となる。
   (九) 車椅子等の購入および買い替え費用 金三三〇万一八〇〇円
     車椅子は、室内用、外出用の最低二台必要であり、また、座位保持装置一台が必要である。
     車椅子および座位保持装置は一台金二〇万円(本体一五万円、タイヤ交換等補修費用五万円として)以上であり、その耐用年数は四年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一八回の買い替えが必要になる。
     そこで、四年毎に金二〇万円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金二〇万円×(一+〇・八二三+〇・六七七+〇・五五七+〇・四五八+〇・三七七+〇・三一〇+〇・二五五+〇・二一〇+〇・一七三+〇・一四二+〇・一一七+〇・〇九六+〇・〇七九+〇・〇六五+〇・〇五四+〇・〇四四+〇・〇三六+〇・〇三〇)
        =金二〇万円×五・五〇三
        =金一一〇万〇六〇〇円
     これが最低三台分必要であるので、
        金一一〇万〇六〇〇円×三台
        =金三三〇万一八〇〇円
    となる。
     なお、原告X1は自力で姿勢を保持することが全くできないので、介助なしに座ることができない。従って、座った姿勢を保持するため座位保持装置を欠かせない。
     また、同様の理由から、車椅子も、体をしっかりと固定できる特製のものを要する。
   (一〇) キャリーシートの購入および買い替え費用 金九九万九二九六円
     キャリーシートとは、障害者を自動車の座席に座らせる際、障害者の姿勢を固定するために用いる補助椅子であり、自動車の座席の上に設置して用いる(いわゆる自動車用の「ベビーシート」に相当するもの)。
     キャリーシートは一台金二九万六〇〇〇円、その耐用年数は七年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一〇回の買い替えが必要になる。
     そこで、七年毎に金二九万六〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金二九万六〇〇〇円×(一+〇・七一一+〇・五〇五+〇・三五九+〇・二五五+〇・一八一+〇・一二九+〇・〇九二+〇・〇六五+〇・〇四六+〇・〇三三)
        =金二九万六〇〇〇円×三・三七六
        =金九九万九二九六円
    となる。
   (一一) アクティビティベースの購入および買い替え費用 金二九万三七三七円
     アクティビティベースとは、前記キャリーシートを乗せる台車であり、キャリーシートごと障害者を運ぶために用いる。
     アクティビティベースは一台金六万四九〇〇円、その耐用年数は五年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一五回の買い替えが必要になる。
     そこで、五年毎に金六万四九〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金六万四九〇〇円×(一+〇・七八四+〇・六一四+〇・四八一+〇・三七七+〇・二九五+〇・二三一+〇・一八一+〇・一四二+〇・一一一+〇・〇八七+〇・〇六八+〇・〇五四+〇・〇四二+〇・〇三三+〇・〇二六)
        =金六万四九〇〇円×四・五二六
        =金二九万三七三七円
    となる。
   (一二) トライスタンダー五八セットの購入および買い替え費用 金二四八万四七三六円
     トライスタンダー五八セットとは、障害者を寝たままの状態から立位の姿勢まで引き起こす器具であり、背骨の湾曲矯正および防止のため家庭内において日常的に用いるリハビリテーション用具である。
     トライスタンダー五八セットは一台金七三万六〇〇〇円、その耐用年数は七年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一〇回の買い替えが必要になる。
     そこで、七年毎に金七三万六〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金七三万六〇〇〇円×(一+〇・七一一+〇・五〇五+〇・三五九+〇・二五五+〇・一八一+〇・一二九+〇・〇九二+〇・〇六五+〇・〇四六+〇・〇三三)
        =金七三万六〇〇〇円×三・三七六
        =金二四八万四七三六円
    となる。
   (一三) 自動車購入および買い替え費用(各改造費用を含む) 金二一七九万八九九四円
     介護用自動車の購入費用(改造費用を含む)は一台金五六五万六二〇〇円(フォルクスワーゲン・ヴァナゴン)であり、自家用自動車の法定耐用年数は六年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一二回の買い換えが必要になる。
     そこで、六年毎に五六五万六二〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
        金五六五万六二〇〇円×(一+〇・七四六+〇・五五七+〇・四一六+〇・三一〇+〇・二三一+〇・一七三+〇・一二九+〇・〇九六+〇・〇七二+〇・〇五四+〇・〇四〇+〇・〇三〇)
        =金五六五万六二〇〇円×三・八五四
        =金二一七九万八九九四円
    となる。
  4 損害の填補 金三〇〇〇万円
    原告X1は、本件事故による損害の填補として、自賠責保険から後遺障害につき金三〇〇〇万円の支払いを受けた。
  5 弁護士費用
    被告が負担すべき原告らの弁護士費用は、その損害額の一割が相当であるから、原告X1の損害額は金一億七一二二万三九五〇円で、金一七一二万二三九五円、原告X2の損害額は金一〇〇〇万円で、金一〇〇万円となる。
  6 以上損害合計金額 金一億九九三四万六三四五円
    うち原告X1 金一億八八三四万六三四五円
    原告X2 金一一〇〇万円
 二 原告らの慰謝料について
  1 原告X1は、その後遺障害に関する慰謝料として金三〇〇〇万円を請求するのに対して、被告は、慰謝料体系が定着しており、原告らにはかかる体系を崩すほどの特殊性はないと主張する。
  2 しかし、個々の事故の状況を加味して慰謝料が増額されることは、多くの裁判例において認められるところである。
    原告X1の場合、脳に極めて重い障害を残した結果、自立した生活を送ることがおよそ不可能になったのであるから、同じ第一級の後遺障害のうちでも、身体の部分を失ったにとどまる場合に比して、その精神的損害は、より大きいと言わざるを得ない特殊性がある。
    裁判例の中にも、原告X1と同じように遷延性意識障害等で常時介護を要する後遺障害(一級)を残す被害者(二五歳、大企業勤務二年目、独身男子)につき、後遺障害慰謝料として金五〇〇〇万円を認めたもの(名古屋地判平七年一月二五日自保ジャーナル1097号)がある。
    かかる裁判例の比較からも、原告X1の請求金額は合理的である。
  3 また、原告X2にとって、原告X1は原告X2が生きて行く唯一の心の支えと言ってよい存在である。
    かかる原告X1が治癒する見込の全くない重度の後遺障害を残したまま生きて行かなければならない事態に陥ったことは、我が子が成長していく姿を見るという、親なら誰しもが当然に有する生きがいを原告X2から奪ったに等しい。
    かかる原告X2の精神的苦痛を考えたとき、これを慰謝するためには、裁判例において認められた慰謝料のうちでも、高額に属する慰謝料が相当である。
    裁判例の中には、両下肢完全麻痺の後遺障害(一級)を残す被害者(19歳・男・大学浪人中)の母親について六〇〇万円の慰謝料を認めた事例(横浜地判平成四年八月二〇日自保ジャーナル1004号)がある。
    しかし、前述のように、原告X1の後遺障害は、体の一部を失った場合に比してより重大なものであるから、原告X2の精神的損害は、右裁判例に比してより重大と言わざるを得ない。
 三 自宅付添看護費用について
  1 被告は、原告の自宅付添看護費について、原告X2は自宅で仕事をしながら介護できるとする。
  2 原告X2は、原告X1の全面介護をするために、自宅で仕事をすることをCに許可してもらっているが、原告X1の介護が必要な時間帯は介護を優先しなければならず、仕事は後回しにしている状態にある。
    原告X1を起床させてから就寝させるまでの食事、入浴、排泄処理等の介護は、毎日、決まった時間に必ずなすべきものであり、原告X1の後遺障害の状態からは、原告X1から目を離して長時間一人きりで放っておくことはできないから、原告X2は、原告X1が学校で過ごしている間や、夜、就寝した後等、介護の合間を縫って仕事をしている。
    このような状況は介護に専念している状況に等しく、とても仕事の片手間に介護することは不可能であり、在宅付添看護費を減額する理由はない。
  3 原告X1の介護内容は生活動作の全てにおいて介助を要する全面介護なので、原告X2は、その精神及び肉体を酷使しており、消耗は著しい。原告X2は、介護のみに専念できればまだしも、生活費を得るため仕事もしなければならないので、その負担は、介護に専念している者に比して、むしろ上回るものがある。原告X1を介護できる近親者は原告X2をおいて他になく、原告X1の生活費を得るために働ける近親者も原告X2において他にない。
    したがって、一日あたりの在宅付添看護費は、裁判において通常認められる基本額金六〇〇〇円をむしろ増額しなければならない。
 四 在宅介護に要する雑費について
  1 被告は、在宅介護に要する雑費として裁判例を引用して、月額金九〇〇〇円程度が相当であるという。
  2 雑費の主な内容は紙おむつであるが、一日あたり必要な紙おむつの数は六枚程度であり、一枚あたりの紙おむつの金額は金一八〇円程度である。したがって、一日あたりのおむつ代に限っても、少なくとも金一〇八〇円は必要である。
    雑費は現に支出することを要する費用であるから、支出を要する代金相当額の賠償がなされるべきである。この点、被告の主張には根拠がない。
 五 住宅改築費用について
  1 被告は、原告X1の他、家族構成員も利用する部分については他の家族が実質的利益を享受する限度で減額すべきであり、本件の場合、住宅改築費用のうちホームエレベーター設置にかかる費用を金一四六五万六五二八円として、このうち三〇パーセント程度を損害額から減額すべきであると主張する。
  2 しかし、原告X1の家には玄関があり、家族が玄関から出入りすることについて、本件ホームエレベーターの設置の前後で変わりはない。
    本件ホームエレベーターは、原告X1が家を出入りする専用として設置したものであって、他の家族にとっては、それがなくても何ら生活に支障のない物である。
    本件ホームエレベーターを利用することが他の家族にとって必要不可欠であるため共用するというのならまだしも、本件の場合、かかる必要性は全く存在しない以上、本件ホームエレベーターの設置費用の一部について、家族が利益を享受するからとの理由で原告X1の損害額から控除することは許されない。
  3 なお、住宅改築費用には、被告が指摘するホームエレベーター等の他、二階の浴室及びトイレの改築、これに伴う建物の内外の壁、建具等の改築工事が含まれているので、被告が主張するように本件ホームエレベーターの設置費用を、総改築費用から天井走行リフト等の代金を控除した残額とすることはできない。
 六 自動車購入費用について
  1 被告は、自動車の購入費用についても、原告X1の家族が実質的利益を享受する部分については購入価格から控除すべきとする。
  2 しかし、原告X1が請求する車両は身体障害者用の特殊車両でなければならず、原告X2は、その好むと好まないとに関わらず、原告X1のために特殊車両を所有し、使用せざるを得ない事態に陥ったものである。
    よって、自動車購入費用の全額について、本件事故による原告X1の損害と捉えなければならない。
 七 自動車、エレベーター等の買い替え費用について
  1 被告は、原告X1の推定余命の短さから、これらの買い換えの必要性はないと主張する。
  2 しかし、原告X1の余命を平均余命と区別する根拠は全くない。
    原告X1の平均余命や、原告X1にとって介護器具が必須であることを考えたとき、買い替え費用を考慮することは必要である。
  3 買い替えの必要期間を設定するにあたっては、社会で一般的に用いられている税法で定められた法定耐用年数を基準とすべきである。
    法定耐用年数は、税額の算定基準として用いられているものであるところ、それは、物の物理的機能的な資産価値の減少に基づいて決定されているものであって、そこには物理的観点からの使用可能期間が当然に考慮されているものとの点で、物の耐用年数を考えるときに一般的に妥当するものと言え、本件に適用することに合理性がある。
 八 公的援助費の控除について
  1 被告は、車椅子等について公的援助がなされている部分については、損害額から控除すべきと主張する。
  2 車椅子の購入及び買い替え費用等に対する公的給付は、身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする社会福祉立法(条例)に基づくものであり、障害の原因を問うことなく、障害者であれば援助の対象とされるのであり、交通事故による損害を填補するとの性質は有しない。
    したがって、条例等により公的給付がなされる場合でも、これを被害者の損害額から控除することは許されない(平成一〇年版民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)・一七二頁以下参照)。
  3 実質的にも、公的援助の条件、金額等は各地方公共団体ごとに異なる上、将来、何らかの理由により公的給付が停止され、費用の自己負担を強いられるようになる場合が有り得ることを考えれば、車椅子に要する費用を賠償額から控除してしまうことは妥当ではなかろう。
    車椅子は、障害者にとって(もちろん原告X1にとっても)必要不可欠な基本的補装具である。
    したがって、原告X1に対する損害賠償額においても、公的給付分を賠償額から控除すべきではなく、費用の全額が賠償されるべきである。
  4 なお、将来の車椅子等、補装具に関する公的給付分を賠償すべき損害から控除すべきではないとした裁判例として、東京地判平八年三月二七日(交民29・2・510)や、東京地判昭六三年一一月二四日(交民21・6・1210)等がある(前記平成一〇年版民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準・一七六頁以下参照)。
 九 遅延損害金の算定の基準時について
  1 被告は、個々の支出毎に遅延損害金の起算点を決すべきであると主張する。
  2 しかし、不法行為成立(事故当日)と同時に損害賠償義務は発生し、かつ、そのときが履行期であるとされている(最判昭和三七年九月四日・民集一六・九・一八三四・判タ一三九号五一頁、最判昭和五八年九月六日・民集三七・七・九〇・判時一〇九二号三四頁)。本件において原告X1が請求する家屋改造費、介護費用等は、すべて本件交通事故に起因するものである以上、被告には、本件事故日において、これらに対する損害賠償義務が発生し、かつ、履行期は到来したのであって、被告が主張するように各費用の支出毎に履行期を別異に解する理由はない。
(2についての被告の主張)
 一 原告X1の逸失利益について
    原告X1は本件事故前は小学生であったところ、原告らは原告X1の母原告X2が××短期大学を、祖母が△△女子短期大学をそれぞれ卒業していることから、原告X1は四年制の大学へ進学できると考えて、逸失利益の算定に当たっては大学卒全年令平均の賃金センサスを採用すべきであると主張する。しかし、小学生段階では、将来あらゆる可能性を秘めているとはいえ、同原告は本件事故前においてすでに大学まで併設されている私立□□小学校には入学できず、○○小学校に入学した(甲二八の一五頁)経緯などを考えると、本件事故がなかったとしても原告X1が四年生大学を卒業するとの蓋然性に乏しく、逸失利益の算定に当たっては控えめに算定すべきであるとの最高裁の判決のあることは周知のところであるので、この趣旨にそって原告X1の逸失利益の算定に際しては、賃金センサス女子労働者学歴計全年令平均を採用すべきものと思料する。
    また、原告らは逸失利益の算定に当たって全く生活費控除をしていない。しかし、前述したように、原告X1の推定余命は口頭弁論終結後三五~四〇年程度と考えられるので、同原告の推定余命年限後の逸失利益の算定に際しては、交通事故による死亡者一般の逸失利益の算定同様生活費分を控除して算定すべきである。
 二 原告の将来の介護費用
  1 争点1で検討してきた結果から考えると、原告X1の将来の看護期間は口頭弁論終結時から三五~四〇年と考えられるので、原告X2の介護費だけが問題となる事案である。
  2 介護費の日額について
    従来から将来の介護費の日額をいくらとして算定するかについて原告の要介護期間とも関連し、要介護期間を平均余命を採用する場合は日額を少なくして調整するのが前記裁判例の態度であった。
    この点はさておき、原告らは親族の介護費に一日金六〇〇〇円の二倍を請求しているが、その根拠はなく、①車椅子ごと乗れる自動車、②エレベーター、③天井走行リフト、④キャリーシート、⑤アクティビティベース等が認められれば、介護が容易になるのであるから一日の単価は原告ら主張とは逆に一日金五〇〇〇円程度に考えてよい事案である。
  3 在宅付添看護にかかる雑費について
    右雑費は紙おむつが中心と考えられるところ、介護用日常的消耗品(紙おむつ、タオル、手袋等)は月額九〇〇〇円程度が相当である(大阪地判平六、九、二九交民集二七ー五ー一三三九)。
  4 検査費用
    原告らは原告X1の将来の介護費用関係につき、てんかん治療のため、定期的な脳波検査が必要であるとして、この検査費用を請求している。
    原告X1の検査の必要性は認められるが、六ヶ月毎の必要性は不明で現在家族の希望で抗てんかん薬の投薬もなされていないこと、一回毎の検査費用も明きらかでないから、原告X1の将来の検査費用としては毎年一回として一回当り一万円程度であると考えられる。
 三 住宅改築費用
  1 原告主張の住宅改築費用が本件交通事故による損害として認められるためには、それと本件交通事故との間に相当因果関係が認められなければならないことはいうまでもなく、これが認められるための「判断基準」として従来の裁判例からは次のように考えることができよう。
    すなわち、傷害の部位、程度、後遺障害の内容・程度などから、被害者の日常生活上の影響の程度を考えて、先ず生活上の不便性を回避するために不可避的に必要な支出だったか否かという点につき、「必要性」とか、「蓋然性」というキーワードによって、その有無を判断し、次にその必要性を認めた上で、改造、改築部分やその要した費用などの点につき、「必要性の範囲」を限定していく、という判断基準である。
    右要件とならべて改造部分につき他の家族構成員も利用する部分については他の家族が実質的利益を享受する限度で減額されている(岩崎勝成「家屋改築費」交民集第二八巻索引・解説号四四三頁以下)。
  2 これを本件についてみるに、原告が家屋改築費として請求する内容をみると①ホームエレベーター設置費とホームエレベ(ママ)ター代金、②天井走行リフト設置費と天井走行リフト代金、③介護支援ベット代金が主たるものである。
    右①~③は原告X1の後遺障害の程度から考えてその必要性は否定できないと思われるが、右①については原告X1は二階に居住し、一階には原告X1の祖母が居住しているところ、ホームエレベーターが一階からも出入りできる構造になっているので原告X1の母、祖母も利益を享受することになる。そうすると、原告が家屋改築費として請求する一七六〇万円のうち、②の費用金二〇九万六〇〇〇円(甲一三)、③の費用金八四万七四八四円を除く金一四六五万六五一六円はホームエレベーター設置とその代金と考えられるので、その少なくとも三〇%程度は減額されるべきである。
 四 自動車購入費
   原告X2は、従来から普通乗用自動車を所有している。原告らはこの車には原告X1を車椅子ごと乗降させることができないから、フォルクスワーゲン・ヴァナゴン(一台金五六五万六二〇〇円。以下「ヴァナゴン車」という)が必要であると主張するが、そのカタログ等の提出がないので、そのイメージがはっきりしない。
   いづれにしても、原告らとしては車椅子ごと乗用できる車であれば目的を達成できるのであるから、右ヴァナゴン車でなければならないというものではない。ヴァナゴン車と同様の機能を有する「トヨタエスティマ・エミーナウエルキャブ・サイドリフトアップシート車」(以下「EMーNA車」という。)で必要にして十分であり、EMーNA車の購入費用は金二五四万七五七五円である。
   右EMーNA車は今日のモータリジェーションの社会では自動車は生活の必需品であり、原告X2も従来から前記普通乗用自動車を所有、使用していたものであるところ、これをEMーNA車に買い替えることになるから、EMーNA車は原告X2、原告X1の祖母も実質的利益を享受することになり、一日の利用回数としてはその方が多いとも考えられるのでその分は減額されるべきで、その金額はEMーNA車の購入価額の五〇%程度と考えられる。
 五 自動車、エレベーター等の買替費用
   原告らは、自動車、ホームエレベーター、天井走行リフト、介護用ベット、キャリーシート等の買替え費用を請求するが、原告X1の推定余命を前記のとおり三五~四〇年と考えれば、ホームエレベーター(D(株)の回答書)、天井走行リフトシステム((株)Eの回答書)等については買換えの必要性が生じないと考えることもできるのではあるまいか。
   原告らは、右各器具の減価償却の耐用年数を採用して、その年数を経過した場合は買替えが必要である旨主張する。
   右減価償却の耐用年数は、固定資産税の徴収上便宜的に定められているもので、自動車やエレベーター等その耐用年数以上に使用されていることが実態であり、このことは公知の事実であるので、原告X1の推定余命期間に買替えの必要を判断するに当たっては、右使用の現実の実態が考慮されるべきものと考える。
 六 公的援助費の控除について
   原告らは、車椅子等について鎌倉市から公的援助を受けていることについては、これは社会福祉立法(条例)に基づくもので、交通事故による損害の填補の性質はないから、これを控除することは許されないと主張する。
   しかし、車椅子代金に対する損害賠償金に対し、他から一部支払(援助)がなされていれば重複填補類似の実態を呈することは事実であるから、損害負担の公平の原則から、その分は本件損害賠償金から控除されてしかるべきである。特に鎌倉市の場合は福祉制度が完備していると考えられることも指摘しておきたい。
 七 慰藉料について
   原告らは慰藉料の請求額について、後遺障害一級の中でも原告X1の後遺障害は精神的損害が大きいから通常認められている金額より増額されるべきであると主張する。
   しかし、これまでの損害賠償制度としては後遺障害の程度に応じてランク付けされそれに応じた慰藉料額が認められ、これが定着しているのであるから、本件はその慰藉料体系を崩す程の特殊性は認められないので、原告らの慰藉料としては通常の金額が認められるべきである。
 八 遅延損害算定の基準時について
   遅延損害金の起算点については、不法行為と同時に履行期が到来し、催告を要しないで延滞におちいると解している(福永政彦「民事交通事件の処理に関する研究」法曹会三一頁)。
   この不法行為の時とは交通事故の発生の時とみるか、損害の発生の時とみるかの問題であるが後者の見解が正当である(福永政彦前掲書三一頁)。後者の見解の場合は実務上煩雑な区別、計算を必要とするが、本件のような高額事例においては正論通りに損害の算定がなされるべきである。
   これを本件についてみるに、治療費についてはその支出時の確定が煩雑であるので、この点はしばらくおくとして、家屋改造費については証拠上明白である金一〇〇〇万円は平成九年一二月九日、金八二一万九五〇〇円については平成一〇年五月一一日が起算点とされるべきであり、その他いまだ支出がなされていない損害、特に将来の介護費については本件口頭弁論終結日が起算日とされるべきである。従って原告X1の総損害につき、本件事故時からの遅延損害金の支払いを命ずる場合は、右起算点の明らかな損害について本件事故日から右起算点までの中間利息を控除すべきである。
   右の法理は最判昭六三、六、一七(自保ジャーナル七六二号。)においても確認されている。
 九 前記のとおり、本件の最大の争点は、原告X1の将来の介護費算定の根拠となる介護必要期間で、被告としては口頭弁論終結後三五~四〇年と考えるので、各損害項目の算定に当たってはそれを前提としてなされるべきであると思料する。
(3についての被告の主張)
 一 本件事故は原告X1が横断歩道(以下「本件横断歩道」という)を横断中の事故であり、同原告の飛び出しの事案である。
   被告は本件事故現場付近を高校へ通学途中自動二輪(横浜む○○○○。以下「被告車」という)を運転して時速約四〇キロメートルの速度で九品寺方面から海岸橋方面へ走行してきて本件事故現場にさしかかった。本件事故現場は材木座海岸方面からの道路と被告車が走行してきた道路とが交差するT字交差点で本件横断歩道は被告車の進行方向からみて右T字交差点の手前にあり右T字交差点の被告車進行方向左角は駐車場で道路に沿って高さ二~三メートルの生垣が植えられていて、歩行者用道路はなく、原告X1が被告車進行道路の有蓋側溝まで出ないと被告は原告X1を発見できず、同様に原告X1も被告車を発見できないお互いに見通しの悪いT字交差点である。
   被告は本件横断歩道の手前約三五・一五メートル手前の地点で本件横断歩道を認め進行してきたところ、本件横断歩道にさしかかった直前、原告X1が被告の方を見て飛び出してきた瞬間被告車と衝突した。
   一方原告X1は本件横断歩道を横断開始するに当って左右に首を振って見回しながら小走りで横断を開始した。
   そして原告X1が横断開始してから一・四五メートルないし一・九メートル歩行した地点で被告車に衝突された。
   右事実から明らかなように、右T字交差点は原告X1、被告双方にとって見通しの悪い交差点であるから、被告としては本件横断歩道左右に歩行者を認めなくても被告としては被告車が本件横断歩道を通過するまでは横断歩行者を予見して対処すべき義務があり、この義務を怠った被告の過失は大きい。しかし、原告X1も横断開始するに当っては、右方直前に被告車が進行してきていたのであるから僅かに注意すれば事故を回避できたところ、単に原告X1は右方を見ながらすでに小走り状態になっていたので立ち止まることができなかったのか、そのままの状態で被告車に衝突されたもので、この原告X1の飛び出しの事情は損害賠償額の算定に当って考慮されるべきでその割合は一〇%は下らない。
 二 また、実況見分調書によると、被告は本件横断歩道手前約一一・九メートルの地点で原告X1を認めたことになっている。これは、警察官の誘導によりその指示説明したことが記載されているにすぎず、被告が衝突直前になって原告X1を認めたのが事実である。
   被告車のスリップ痕も衝突後についている。もし、実況見分調書②地点で被告が原告X1を認めて急ブレーキを踏んだとすれば、②地点からスリップ痕が認められないと経験則に合わない。被告が逮捕、少年鑑別所送りともならず、刑事処分にもならないで、単に保護観察処分で刑事事件が終了していることは右の関係がその後の捜査において理解されたからであろう。
   本件が被告の一方的過失による事故であれば、当時被告は少年とはいえ刑事処分に付されていた筈である。
   現在問題になっている少年の刑事事件の捜査等の問題点が本件でも露呈したと云えよう。
 三 被告が本件事故当日被告車を運転した速度につき、刑事記録によると時速六〇キロメートルとされている。これについては被告は警察官から言われたもので、被告としては警察官や裁判官から聞かれるとそれを認めないと不利益な処分になると思ったから警察官の云うがままを認めたものである。右時速六〇キロメートルについては、警察官はスリップ痕等から判断したものと思われるが、鑑定した形跡はないから何の根拠もないものである。
   被告が当公判廷でいみじくも供述したように右時速六〇キロメートルについて、もし弁護士がついていれば争えたのであり、争えば四〇キロメートルと認定された可能性が高い。本件事故現場は意外と狭く、最高速度は三〇キロメートルに制限されているところであるから、時速六〇キロメートルではこわくてとても走行できないと考えられるところである。
   本件は捜査段階で検事の取調べもなく家庭裁判所へ送致され捜査は杜撰というほかない。現在問題になっている少年事件の付添人の必要性について、本件はそれが肯定される典型例といえる。
   もし家庭裁判所で本件事故が被告の一方的過失と認めたのであれば、保護観察処分は考えにくい。被告が保護観察処分となったのは、原告X1の飛び出し的要素が考えられ得ると判断したからではあるまいか。
 四 次に、少年事件において実況見分の際、被告が本件横断歩道手前約一一・九メートルのところ、「第三交通事故現場見取図」(以下「見取図」という)②地点において、同見取図(ア)地点にいる原告X1を認識したことになっている。刑事記録の被告供述調書も、被告は右事実を認めたことになっている。これについては、被告は被告代理人鈴木に本訴になって本件事故内容を説明することになってから、一貫として見取図②地点は警察官から一方的に押しつけられたものと話している。被告代理人としては、次の理由により被告の本訴においての主張が真実であるように考える。
   見取図②地点は、被告から最初に指示説明がないと分からないことである。被告が右②地点で原告X1を認めていないとして否定する根拠は「警察官が被告に②地点にブレーキ痕があったからその地点で(ア)地点のX1ちゃんを認めた筈だ」旨のことを云われて、警察官の云うことに従わなければならないと思って、捜査段階では②地点を認めたもので、このような理由は経験した者でしか答えられないことであるから、被告の本訴においての供述が正しいと考えられる。
 五 仮に刑事事件の認定どおりに見取図②地点で被告が原告X1を認めていたとした場合でも、被告の過失の程度は大きいが、原告X1としても本件横断歩道を横断するに当たり、左右の安全を確認したとすれば、右方直前に被告車が接近してきていることが確認できたのであるから、被告車の通過を待つ一寸の注意義務を果たしていれば本件交通事故は回避できたことを考えると一〇%程度の過失相殺はやむを得ないと思われる。
(3についての原告の主張)
 一 本件は、交通整理の行われていない横断歩道上の事故であり、歩行者の過失相殺率はゼロが基本である(平成一〇年版損害賠償額算定基準・東京三弁護士会交通事故処理委員会等編・「赤い本」六九頁)。
 二 本件事故現場の見通しの状況について、被告本人の立ち会いに基づく実況見分調書の二項「現場の模様」2(六)「見とおし状況」によれば、
  1 本件事故現場である横断歩道から九品寺方面に一〇〇メートル行った地点から、海岸橋方面の見通し状況は、約一五〇メートルであり、この区間の歩行者について、男女の区別までできるほどに見通しはよかった。この旨、被告も「確認できる」と現認した。
  2 被告が本件横断歩道を確認した地点①からは、有蓋側溝の材木座海岸側の端から、交差道路を材木座海岸方面へ〇・三メートル寄った地点まで見通すことができた。
    なお、右①地点とは、本件衝突地点から三五・一五メートル九品寺方面に寄った位置である。
  3 原告X1は、有蓋側溝の上に立って左右に首を振って交通の安全を確認していたのであり、被告から原告X1の存在を確認するに際して、道路際の生け垣等は全く支障とならず、被告にとって原告X1の存在を確認するのに可能な最大距離は、前記1で述べた通り、約一五〇メートルであった。
 三 被告は、原告X1に飛び出しがあったのだから、過失相殺の割合は一割を下らないと主張するが、以下で述べる通り、原告X1と被告との位置関係からして、原告X1に過失があったということはできない。
  1 前述の通り、原告X1は、横断歩道脇の有蓋側溝の上に立ち、首を左右に振って左右の安全を確認する動作を行い、その後、横断を開始したことからすれば、原告X1が横断歩道脇に立ってから横断を開始するまでに要した時間として、少なくとも二秒は経過していたと考えるのが合理的である。
  2 そして、原告X1が横断を開始した地点から衝突地点までの距離は、一・四五メートルないし一・九メートルであり、子供の飛び出しの速度が秒速約二・二メートルであることからして、原告X1が横断を開始してから衝突するまでの時間は、約〇・六五秒ないし〇・八六秒であったと考えられる。
  3 したがって、原告X1が横断歩道脇の有蓋側溝(被告が原告X1の存在を確認することが可能な位置)に立ってから、横断を開始し、被告車両と衝突するまでに要した時間は、少なくとも二・六五秒ないし二・八六秒、あるいは、それ以上であったということができる。
 四 右の時間を前提にして、原告X1が横断歩道脇の有蓋側溝に立ったときにおける、被告車両の位置を求める。
  1 実況見分調書には、被告車両の速度についての記述はないが、実況見分調書添付の交通事故現場見取り図によれば、被告が急制動をかけたという②地点からスリップ痕が開始する位置(③地点のやや九品寺方面寄り)までの空走距離が約九・六メートルであること(図面上②の中心からスリップ痕の端までの距離四・八センチメートルを縮尺二〇〇分の一により換算)からして、被告車両の速度は、時速約四五キロメートル(秒速一二・五メートル)であったと考えられる。
  2 したがって、前述の通り、原告X1が横断歩道脇の有蓋側溝に立ってから、横断を開始し、被告車両と衝突するまでに要した時間が約二・六五秒ないし二・八六秒であったとして、原告X1が横断歩道脇の有蓋側溝に立ったとき、本件衝突地点からの被告車両の位置は、
    秒速一二・五メートル×二・六五秒(ないし二・八六秒)
    =約三三・一二五メートル(ないし三五・七五メートル)
   九品寺方面に寄った地点となる。
  3 右距離は、実況見分調書において、被告が、本件横断歩道を確認したという地点①(三五・一五メートル)にほぼ相当するものであり、被告は、横断歩道を確認するとほぼ同時に、原告X1が横断歩道脇に立っているのを確認することができた状況にあったこととなる。
  4 時速四五キロメートルにおける車両の停止距離は、二〇・七七メートルであるから、被告は、横断歩道付近を注視さえしてさえいれば、直ちに原告X1を発見し、減速徐行して本件衝突を回避することができた。
    なお、被告車両は自動二輪車であり、制動距離において、四輪自動車とに差異はない。
  5 以上の検討から明らかなように、本件事故では、被告が前方を注視さえしていれば停止できる距離の範囲で原告X1を発見することが可能で、本件事故の発生を回避できたのであって、原告X1には過失割合を問うべき飛び出し行為はなかった。被告が、原告X1を発見した地点を衝突地点から一一・三五メートル手前であった(②地点)とするのは、明らかに被告に前方注意義務違反(発見の遅れ)があったことの現れである。
    仮に、原告X1に、被告車両の停止距離の範囲内(時速四五キロメートルとして)での飛び出し行為があったとしても、約一五〇メートル見通せる本件現場付近においては、被告は、横断歩道を確認した時点で、横断する歩行者に備えて、歩行者を優先して横断させられる程度にまで減速し徐行すべき注意義務があったと言え、かかる運転操作により、本件事故は回避することができたのであり、そこに原告X1の過失を問う余地はない。
 五 そもそも、被告の注意義務違反は、道路交通法(以下「道交法」という)に著しく違反するもので、何ら弁解の余地がないものである。
  1 すなわち、道交法三八条一項前段は、「車両等は、横断歩道......に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者......がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。......。)で停止することができるような速度で進行しなければならない」とし、その後段において、「この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」として、車両等は、横断歩道を横断しようとする歩行者がいないとの確証がない限り横断歩道手前で徐行しなければならず、また、横断しようとする歩行者を発見したときは直ちに停止しなければならないと定めているのである。
  2 本件においては、原告X1が横断歩道脇の有蓋側溝に立ったとき、被告車両は、衝突地点から約三三・一二五メートル、九品寺方面に寄った地点を走行しており、原告X1の存在を十分に見通せる状況にあった(甲第三号証・実況見分調書)から、右の道交法三八条一項後段にいう「横断歩道により......その(車両等の)進路前方を横断しようとする歩行者があるとき」に該当し、被告は、「当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならな」かったのである。
  3 もし仮に、被告において、原告X1の存在の有無を確認できない状況にあったとすれば、道交法三八条一項前段の「その進路の前方を横断しようとする歩行者......がないことが明らかな場合」にあたらないから、被告は、「当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。......。)で停止することができるような速度で進行しなければならな」かったのである。
  4 本件事故現場は住宅街の中を走る通路であり、日昼であったことから常時歩行者の存在を予測し得る状況にあり、道交法三八条一項に照らし、被告は、本件横断歩道の直前に設けられた停止線の直前で一時停止し、又は、停止することができるような速度で進行すべきであった。
    それにもかかわらず、被告は、これを怠り、漫然、本件横断歩道を通過しようとしたのであるから、被告の過失は重大極まりなく、原告X1の過失を問題とする余地は全くない。
 六 以上述べたとおり、原告X1と被告との位置関係、被告の道交法違反の観点から、原告X1には、その過失割合の基本(ゼロ)を修正する要素はなく、無過失と言わざるを得ないのである。
第三 争点に対する判断
 一 原告X1の余命について
  1 原告X1の、事故後の治療経過と現況については以下のとおりである。
   (一) 原告X1は、本件事故により外傷性クモ膜下出血、脳挫傷、肺挫傷、肝腎機能不全等の傷害を負った。
     治療の結果痙性四肢麻痺、側わん症、精神遅滞、てんかん、水頭症の障害の頭部外傷後遺症が残り、身体障害は重度で、自力での移動は不能、日常生活動作は全介助、精神遅滞は最重度で、コミュニケーションはほとんどとれないが、感情の表出はみられ、yes、noの反応を示すこともある。
     てんかん発作は二、三か月に一回認められ、抗てんかん薬の服薬が望ましいが、家族の希望により投薬は行っていない。
     水頭症に対しては、国立横浜病院で、平成五年五月三一日にはオマヤ貯留槽の留置手術が、また、六月一四日には脳室腹腔短絡術が行われ、八月五日に再手術が行われ、夏頃からは容態が安定してきたが回復は緩慢であった。現在も右手術により挿入された脳室ー腹腔シャントチューブが挿入継続中である(以上甲二七、乙一二(特に一、一〇ないし一二、四六、六三、六四、九三、九四、一四四頁等)、乙一三の二(特に二八、六五、一六九頁等))。
   (二) 原告X1は平成六年五月一二日に国立横浜病院を退院して自宅で療養していたが、八月二二日に神奈川リハビリテーション病院へ総合評価目的で入院した。入院時には痙性四肢麻痺、失語症、仮性球麻痺、認知障害などがみられ、入院三ヶ月目ごろより周囲に対する反応がよくなり、発語(ハーイ、ウーン、イヤダ)がみられ、また左上肢で手を挙げる動作もみられるようになり、首を左右にゆっくり動かしたり、右上肢や左下肢をわずかながら自発的に動かすこともできるようになった(乙一四の一(六、七頁))。
   (三) 原告X1は、平成七年一月二三日リハビリ訓練と復学準備目的で、再び神奈川リハビリテーション病院へ入院した。
     この時は前回入院時より症状の改善がみられ、両上肢および右下肢にはわずかながら随意運動がみられ、呼名には反応し、機嫌の良い時は左手で返事することができ、追視および固視も可能、顔の表情がよくなり、大声で笑ったり、ハイという言葉が出るようになり、頭部を固定したり、頭部の左右の動きを意図的に行ったり、左肘の挙動作でゲームをすることができるようになった。
     視覚機能に関しては、周囲の動きで何が起こるかという因果関係をある程度理解できた。
     しかし、頚部の右方向への側屈と腰部の側弯があり、坐位保持装置が引き続き必要であり、日常生活の動作は全介助、食事は常食のきざみ食を摂取できた。
     右入院中の二月九日、原告X1は嘔吐後顔色不良が長く続き、脳波異常及び同様の症状が以前から見られたことから、けいれん発作と診断され、抗てんかん剤を処方され、五月ころまで服用した。
     右四月二日の退院後、原告X1は、事故前から通っていた市立○○小学校の三年普通学級に復学したがあまり登校できず、二学期からは市立○×小学校の肢体不自由学級に転校することとした(以上乙一四の一(一一ないし一四頁))。
   (四) 原告X1は、平成七年八月二日神奈川リハビリテーション病院に三回目の入院をした。
     この時点では頚部の安定が以前より少しよくなった程度で、機能面では大きな変化は認められず、テレビゲームは肘スイッチで白、赤、青を区別している。口腔機能障害は依然存在し、特に右からの摂取は咀嚼、保持、送りのすべての過程に障害がみられる(乙一四の四(二、三頁))。
   (五) 原告X1は、右神奈川リハビリテーション病院への三回目の入院から平成七年九月八日退院し、自宅で母の介護を受けながら学校に通い、神奈川リハビリテーション病院に通院することになった。
     その後原告X1は風邪をひいて喘息気味になったり、水分が欠乏して血尿が出たり、軽いてんかん発作を起こしたりはしたが、入院にいたるような著変はなかった(乙一四の一(一五ないし二二頁)、原告X2本人)。
     食欲はあり、平成七年五月に身長一一三センチメートル、体重二〇キログラム(乙一四の一の一〇頁)、同八年一一月に身長一二〇センチメートル、体重二三キログラム(乙一四の一の一八頁)、平成一〇年八月に身長約一三〇センチメートル、体重約三〇キログラム(甲二八)、平成一一年一〇月には身長一四〇センチメートル弱、体重三二、三キログラム(原告X2本人)と成長している。
   (六) 現在原告X1について、医療の必要性があるのは、てんかんの治療のため定期的な脳波検査と、場合により抗てんかん薬の投与、水頭症の管理の面から定期的な頭部CTスキャン検査、側わん症による内臓圧迫、骨そしょう症についての継続的観察である。リハビリテーションの必要性があるのは、側わん症及び関節拘縮の予防のための定期的理学療法、嚥下障害防止のため言語療法士による対応、発達検査及び母親支援のため臨床心理士によるアプローチである(甲二七)。
     原告X1は、平成一一年四月□×中学校の肢体不自由学級に進学した。小学校以来、学校では平均五、六時間原告X2と離れて教員等の介護を受けて生活している。自宅では原告X2の介助を受けて食事、入浴をする他好きなビデオを見る等して過ごし、入浴後原告X2からマッサージを受けている。原告X2が稼働しながら単独で介助していることもあって、リハビリ等を受ける機会がやや不足している(甲二八、原告X2本人。乙一四の一(二二、二三、二五頁等)及び乙一四の四参照)。中学校卒業後は養護学校への進学を考えている。原告X1の現状は、右神奈川リハビリテーション病院での状態よりは首がしっかりし、笑い声が大きくなり、表情が豊かになった程度で極めて緩慢な回復である(原告X2本人)。
  2 原告X1については、帝京大学脳神経外科の医師Aが医学的意見を述べている(乙一五、証人A)。これによると、同人は、原告X1の診療録を下に、診療経過について概ね右1で認定したのと同様の認識にある他、画像資料を下に、原告X1が高度の脳損傷を受けたこと、外傷後の水頭症の治療が必ずしもうまくいってなかったとの認識に至った。
    その上で、右医師は、原告X1は、一九七二年日本脳神経外科学会で主張された植物状態患者の医学上の定義(乙四)
    ①自力移動が不可能である。
    ②自力摂食が不可能である。
    ③排尿失禁状態にある。
    ④目で物を追うが認識はできない。
    ⑤声を出しても意味のある発語ができない。
    ⑥「眼を開け」「手を握れ」という簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通は不可能である。
   の①と③に対してはほぼ該当するが、②、④、⑤、⑥、の状態よりはよいと考えた。右医師は、したがって、原告X1は植物状態とは言い得ない。しかし、原告X1には、被告主張の余命を制限する五つの危険性、すなわち①危険回避不能、②感染症、③てんかん、④水頭症、⑤母の高齢化に伴う介護レベル低下があり、また原告X1の受傷から最近までの回復の速度から判断して(乙一四の一)今後の回復の程度も極めてわずかなものであろうと推定せざるを得ず、今後もほぼ日常生活動作に介護を要するものと考えられることから、原告X1の推定余命、要介護期間は三五年~四〇年であると推定されると結論づける。
  3 右A医師の推論について検討する。
    そもそも植物状態の患者について平均余命が短縮される旨の統計資料等(乙一、四、八)は、やや古く、実例数や経過観察期間に照らし、統計的正確さに疑問が残る。また、右資料中からも、若年の患者は比較的回復程度が良いし、回復しない患者の生存期間も長いことを認めることができる。ところで、原告X1はA医師も認めるとおり、植物状態にあるとは認められないので、右統計資料等を直接当てはめることはできない。
    その上で、確かに右医師の指摘する五つの危険性は余命短縮の抽象的な危険要素となることは認められる。しかし、前記認定のとおり、原告X1は、不十分かつ不正確とはいえ、意思表示や感情の表出を行えるものであるから、右①の危険回避不能はあたらない。また、②感染症及び⑤介護レベル低下については、正に介護レベルにより左右される問題であって原告X1の現状から当然に導き出されるものとは言い得ない。③のてんかんについては、初めて発作が見られてから約五年を経過し、その間何回か発作が起きて治療を受けたことはあったが、日常は抗てんかん剤を服用していないことからすると、生命に関わる発作の発生は、④のシャント感染と同様可能性として存在するに過ぎない。また、④については既に長年にわたりシャント手術の方法及び感染に対する治療法が研究、確立されている(乙一七)。以上のとおり、いずれも具体的な余命短縮を結論づけないと考える。
  4 したがって、原告X1の損害を検討するについては、同人が平均余命の間生存することを前提に損害額を算定することとし、症状固定日である平成七年九月八日現在満八歳であった原告X1の平均余命が七五歳であることは当裁判所に顕著であるので、これを採用する。
二 損害額について
  1 逸失利益 金三六七四万三五〇六円
    原告X1は、前記認定の症状により労働能力を一〇〇パーセント喪失したものと認められる。
    また、前記のとおり今後の余命について、特に短縮されるとは認められないので、一般的に労働可能と認められる満六七歳までこれを算定するのが相当であると考える。
    次に、基礎となる年収であるが、原告らはこれを大卒女子平均賃金を基準に算定すべきであると主張する。しかし、母や祖母が短期大学を卒業し、原告X1にも大学又は短期大学に進学させる希望を有していたとしても、原告X1の症状固定時の年齢では、多くの可能性があり、近年の価値観の多様化も視野に入れると大学又は短期大学を卒業するものと確実に予測できるとまでは言い得ないものと考えるので、学歴計平均賃金を基準にすべきものと考える。
    したがって、その計算式は、原告X1の症状が固定したのが平成七年九月八日で同人が満八歳であるので、平成七年の学歴計平均賃金を基準として、労働能力喪失期間(五九年)から労働の始期までの年数(一〇年)を減じて中間利息を控除すると、
      金三二九万四二〇〇円×一・〇〇×(一八・八七六ー七・七二二)
        =金三二九万四二〇〇円×一・〇〇×一一・一五四
        =金三六七四万三五〇六円
    なお、被告は原告X1の症状に照らし生活費を控除すべきであると主張するが、重度の身体障害者もまた健常人と内容的に異なるにせよ生活費の支出は免れず、これは別途算出する雑費等で賄いきれないものと認めるので、右主張は採用できない。
  2 傷害にかかる損害 金六〇四万三一〇〇円
   (一) 在宅付添看護費 金一四八万二〇〇〇円
     本件の原告X1の症状は重篤であるので、症状固定時までの親族による在宅付添看護費は、一日当たり金六〇〇〇円が相当であると認めるが、入院待機、通院ないし在宅療養期間である平成六年五月一三日から同年八月二一日まで(一〇一日間)、同年一二月二九日から平成七年一月二二日まで(二五日間)、および、同年四月三日から同年八月一日まで(一二一日間)の合計二四七日につき、介護の必要性が認められる。
     よって、
        二四七日×金六〇〇〇円
        =金一四八万二〇〇〇円
    となる。
   (二) 在宅付添看護にかかる雑費 金三二万一一〇〇円
     原告X1は、その病状から入院待機、通院ないし在宅療養期間一日当たり金一三〇〇円相当の雑費を支出したものと認められる。
    よって、
        二四七日×金一三〇〇円
        =金三二万一一〇〇円
    となる。
   (三) 入通院慰謝料 金四二四万円
     原告X1は、前記認定のとおり、六二五日間入院し、二四七日間入院待機、通院ないし自宅療養をし、生死も危ぶまれる状況であり、手術を繰り返し回復は緩慢であったので、その間の精神的苦痛を慰謝するには金四二四万円が相当と認める。
  3 後遺症慰謝料 原告X1分 金二八〇〇万円
           原告X2分 金八〇〇万円
    原告X1は、小学校入学後間もなく本件事故による重篤な傷害を受けた結果一級の後遺障害を残し、将来の可能性も希望も奪われ、終生右後遺障害に苦しみ、他人の介護を受けて生活しなければならなくなったものであり、原告X2はいわゆる未婚の母として単身で原告X1を養育し、同人の成長を楽しみにしていたところ、同人の小学校入学の喜びも束の間で本件事故による障害の結果、同人の進学、就職や結婚といった夢を奪われたばかりか、老齢に至るまで単身で原告X1の介護にあたらなければならず、また原告X1の今後に不安を抱き続けなければならないこと(甲二八、原告X2本人、弁論の全趣旨)、等本件に現れた一切の事情を総合し、原告X1については金二八〇〇万円、原告X2については金八〇〇万円をもって相当と考える。
  4 症状固定後の療養介護にかかる損害 金一億一六〇〇万八一二三円
   (一) 将来の検査、リハビリテーション費用 金一五九万七七七〇円
    (1) 検査費用 金一九万四八五〇円
      原告X1は、てんかん症状があるので、定期的に病院での脳波検査を受ける必要があることは認められる(甲二七)が、これが六ヶ月に一回であることを認めるに足りる証拠はないので、弁論の全趣旨により一年に一回程度、検査費用は一回金一万円を要するものと認め、これを平均余命七五年間につきライプニッツ係数(一九・四八五)で中間利息を控除すると
      金一万円×一九・四八五
      =金一九万四八五〇円
     となる。
    (2) リハビリテーション費用 金一四〇万二九二〇円
      原告X1は、前記認定のとおり、身体の拘縮を防止し矯正等を行うために、定期的に病院において、医師等の専門家によるマッサージおよび機能回復訓練を行う必要は認められる。
      右マッサージ等は、二週間に一回以上必要であり、一回あたり金三〇〇〇円の費用を要する(甲二八、原告本人)。これを平均余命七五年間につきライプニッツ係数(一九・四八五)で中間利息を控除すると
    金三〇〇〇円×二四回(年間)×一九・四八五
    =金一四〇万二九二〇円
    となる。
   (二) 介護費用(自宅付添費) 金五六九四万二一九〇円
     原告X1は、本件後遺障害のため将来にわたって、飲食、着脱衣、入浴、おしめ交換、屋内外での移動、就寝中の体位変換、車椅子への乗降、学校への送迎等、日常生活のすべてにわたり、常時、介護が必要になった。
     今後は、現在主に原告X1の介護を行っている原告X1の母親である原告X2(昭和三二年○月○○日生)の労働能力の終期(六七歳)である平成三六年までは同人が、同人が労働能力を喪失した後は、介護必要期間である原告X1(昭和六一年○○月○○日生まれ)の平均余命七五年までは職業付添人が、介護を行う必要があるものと認められる。
     その介護費用は近親者付添人一日あたり金六〇〇〇円、職業付添人一日あたり金一万五〇〇〇円をもって相当とする(甲九参照)。
     したがって、右期間に相当するライプニッツ係数を乗じて中間利息を控除すると、
        ①金六〇〇〇円×三六五日×一五・一四一
        =金三三一五万八七九〇円
        ②金一万五〇〇〇円×三六五日×(一九・四八五ー一五・一四一)
        =金二三七八万三四〇〇円
        ①+②=金五六九四万二一九〇円
    となる。
   (三) 在宅介護に要する雑費 金七一一万二〇二五円
     おむつ等消耗品代は一日当たり金一〇〇〇円相当を必要とすることが認められる(甲二二の二、甲二八、原告X2本人)ので、これを平均余命七五年間につきライプニッツ係数(一九・四八五)で中間利息を控除すると、
        金一〇〇〇円×三六五日×一九・四八五
        =金七一一万二〇二五円
    となる。
   (四) 住宅改築費用 金一六六〇万円
     原告X1を介護するため、まず入浴について天井走行リフトを利用できるようにこれを設置し浴室を広げ、外出について車椅子のまま自宅二階の居室から地下の車庫まで移動できるようエレベーターを設置し、これらに伴い一部増築を行う等住宅の改築が必要であり、そのために金一七六〇万円を支出したものと認められる(甲一一の一ないし五、甲二三、二四、二八、原告X2本人)。
     ただし、右改築のうち、エレベーターの設置を始め家屋の改良にもなる工事は、家族の利便にもつながるので、右各証拠及び弁論の全趣旨により、右工事代金から金一〇〇万円を減ずるものとする。
   (五) 介護用品の購入、買い替え等 金三三七五万六一三八円
    (1) 介護用品購入の必要性
      原告X1の現在の症状からすると、日常動作が全介助であるので右天井走行リフトの本体、走行用レール、バッテリーとストラップ、リフトにつり下げて用いる入浴用担架、右エレベーター、介護用ベッド、介助なしに自力で座り姿勢を保持することができないので座った姿勢を保持するための座位保持装置及び車椅子(なお、後記キャリーシート及びアクティビティベースがあれば、さらに室内用の車椅子の必要性は認められない(甲二二、二八)。)座った姿勢を固定するために用いる補助椅子であるキャリーシート、キャリーシートを乗せる台車でありキャリーシートごと運ぶために用いるアクティビティベース、寝たままの状態から立位の姿勢まで引き起こす器具であり背骨の湾曲矯正および防止のため家庭内において日常的に用いるリハビリテーション用具(以下「立位保持用具」という。)、介護用自動車を購入する必要性が認められる。
    (2) 介護用品購入価格
      右各介助用具の価格は、天井走行リフトの本体(ハンガーとスリングシートを含む)は九二万五〇〇〇円、走行用レールは一〇〇万円、バッテリーとストラップは二万六〇〇〇円、入浴用担架は九万五〇〇〇円(甲一三、甲一一の一)、エレベーターは三〇六万五〇〇〇円(甲一一の一)(但し右リフト一式及びエレベーター購入費用は前記住宅改築費用に含まれている。)、介護用ベッドは付属テーブル、マットレス等を含み六三万七八〇〇円(甲二〇)、座位保持装置及び車椅子は各一六万円(甲二九の一ないし甲三一)、キャリーシートとアクティビティベースは二九万六〇〇〇円と六万四九〇〇円(甲一五、二二)、立位保持用具は七三万六〇〇〇円(甲一五、二二)(なお、原告らが請求している株式会社Eのトライスタンダー五八セットは製造中止であるとのことである(同社への調査嘱託の結果)ので、同種同品質の製品を購入するものと考える。)、介護用自動車は改造費用を含み金五六五万六二〇〇円(甲一六の二、甲二八、原告X2本人(フォルクスワーゲン・ヴァナゴン))であるが家族の利便にもなることを考慮し金四〇〇万円の限度で認める(なお、乙二、三の車両では原告らの必要性を満たすものかどうか判然としない)。
      以上介護用品購入代金は合計金六〇五万四七〇〇円となり、これを本件事故と因果関係を有する損害と認める(但し後記(4)合計金額に含まれる。)。
    (3) 介護用品買い換えの必要性
      右各介護用品の経年劣化は不可避であり一定年度毎に買い替える必要性があり、その耐用年数が問題となる。確かに被告の主張するように、一般的に税法上の耐用年数を超えても使用可能であり現実に使用されている機器が多く存在することは公知の事実である。しかし、全介助を要する重度身体障害を有する原告X1の身体の安全の見地から、安全確保が確実であると認められない限り、これを超えて使用するのは相当ではないと考える。
      そこで、右介護用品の耐用年数は、適切な(エレベータについては法定の)点検、修理をすることを前提に、エレベーターは二〇年(甲一二、二六、D株式会社に対する調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)、天井リフト本体は五年、レールは一〇年、バッテリー及びストラップは一年、入浴用担架は一年(甲一三)、キャリーシートは七年、アクティビティーベースは五年、立位保持装置は七年(甲一五、なお、株式会社Eは自社販売商品について、調査嘱託の結果において右甲一三及び一五で回答したよりも長期を回答しているが、前記のとおり介護用品としての安全性確保の見地から、後者は採用しない。)、自動車は六年、ベッドは八年、車椅子は四年(甲三二)と認められる。
   (4) 介護用品購入及び買い換え費用
     以上により、以下のとおり計算される。
   ① エレベーター買い替え費用 金一七五万六二四五円
     エレベーターは一基金三〇六万五〇〇〇円であり、その耐用年数は二〇年であり、原告X1の平均余命は七五歳であるから、今後三回の買い替えが必要である。
     そこで、二〇年毎に金三〇六万五〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金三〇六万五〇〇〇円×(〇・三七七+〇・一四二+〇・〇五四)
    =金三〇六万五〇〇〇円×〇・五七三
    =金一七五万六二四五円
     となる。
   ② エレベーター点検費用 金一九二万九〇一五円
     エレベーター点検費用は年間金九万九〇〇〇円(年二回の点検費用および年一回の市役所への報告費用一式を含む)であり(甲一九)、原告X1の平均余命が七五年であるから、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金九万九〇〇〇円×一九・四八五
   =金一九二万九〇一五円
    となる。
   ③ 天井走行リフト買い替え等費用 金七一八万二三四〇円
     天井走行リフトの維持管理には、以下に述べる買い替え及び管理費用を要する。
   a 天井走行リフト本体(ハンガー、スリングシートを含む)は、一基合計金九二万五〇〇〇円であり、その耐用年数は五年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一五回の買い替えが必要である。
     そこで、五年毎に金九二万五〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ計数で中間利息を控除すると、
    金九二万五〇〇〇円×(〇・七八四+〇・六一四+〇・四八一+〇・三七七+〇・二九五+〇・二三一+〇・一八一+〇・一四二+〇・一一一+〇・〇八七+〇・〇六八+〇・〇五四+〇・〇四二+〇・〇三三+〇・〇二六)
   =金九二万五〇〇〇円×三・五二六
   =金三二六万一五五〇円
    となる。
   b 天井走行リフトレールは、一式金一〇〇万円であり、その耐用年数は一〇年であるから、原告X1の平均余命七五年間に七回の買い替えが必要である。
     そこで、一〇年毎に金一〇〇万円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ計数で中間利息を控除すると、
    金一〇〇万円×(〇・六一四+〇・三七七+〇・二三一+〇・一四二+〇・〇八七+〇・〇五四+〇・〇三三)
   =金一〇〇万円×一・五三八
   =金一五三万八〇〇〇円
    となる。
   c 天井走行リフト用バッテリーは一個金一万四〇〇〇円であり、同ストラップは一本金一万二〇〇〇円である。これらの耐用年数はいずれも一年であるので毎年の支出が必要である。
     右合計金額は金二万六〇〇〇円のところ、原告X1の平均余命が七五年であるから、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金二万六〇〇〇円×一九・四八五
   =金五〇万六六一〇円
    となる。
   d 入浴用担架は一台金九万五〇〇〇円であり、その耐用年数は二年であるので、原告X1の平均余命七五年間に三七回の買い替えが必要である。
     そこで、二年毎に金九万五〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ計数で中間利息を控除すると、
    金九万五〇〇〇円×(〇・九〇七+〇・八二三+〇・七四六+〇・六七七+〇・六一四+〇・五五七+〇・五〇五+〇・四五八+〇・四一六+〇・三七七+〇・三四二+〇・三一〇+〇・二八一+〇・二五五+〇・二三一+〇・二一〇+〇・一九〇+〇・一七三+〇・一五七+〇・一四二+〇・一二九+〇・一一七+〇・一〇六+〇・〇九六+〇・〇八七+〇・〇七九+〇・〇七二+〇・〇六五+〇・〇五九+〇・〇五四+〇・〇四九+〇・〇四四+〇・〇四〇+〇・〇三六+〇・〇三三+〇・〇三〇+〇・〇二七)
   =金九万五〇〇〇円×九・四九四
   =金九〇万一九三〇円
    となる。
   e 天井走行リフト点検費用は、年間金五万円(年一回の点検)であり(甲一三)、原告X1の平均余命が七五年であるから、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金五万円×一九・四八五
   =九七万四二五〇円
    となる。
   f 以上天井走行リフト買い替え等費用の合計は金七一八万二三四〇円となる。
   ④ 介護用ベッド購入及び買い替え費用 金一九三万三八〇九円
     介護用ベッドは一台金六三万七八〇〇円であり、その耐用年数は八年であるから、原告X1の平均余命七五年間に九回の買い替えが必要になる。
     そこで、八年毎に六三万七八〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金六三万七八〇〇円×(一+〇・六七七+〇・四五八+〇・三一〇+〇・二一〇+〇・一四二+〇・〇九六+〇・〇六五+〇・〇四四+〇・〇三〇)
   =金六三万七八〇〇円×三・〇三二
   =金一九三万三八〇九円
    となる。
   ⑤ 車椅子等の購入及び買い替え費用 金一七六万〇九六〇円
     車椅子および座位保持装置は一台金一六万円以上であり、その耐用年数は四年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一八回の買い替えが必要になる。
     そこで、四年毎に金一六万円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金一六万円×(一+〇・八二三+〇・六七七+〇・五五七+〇・四五八+〇・三七七+〇・三一〇+〇・二五五+〇・二一〇+〇・一七三+〇・一四二+〇・一一七+〇・〇九六+〇・〇七九+〇・〇六五+〇・〇五四+〇・〇四四+〇・〇三六+〇・〇三〇)
   =金一六万円×五・五〇三
   =金八八万〇四八〇円
    これが二台分必要であるので、
    金八八万〇四八〇円×二台
   =金一七六万〇九六〇円
    となる。
   ⑥ キャリーシートの購入及び買い替え費用 金九九万九二九六円
     キャリーシートは一台金二九万六〇〇〇円、その耐用年数は七年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一〇回の買い替えが必要になる。
     そこで、七年毎に金二九万六〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金二九万六〇〇〇円×(一+〇・七一一+〇・五〇五+〇・三五九+〇・二五五+〇・一八一+〇・一二九+〇・〇九二+〇・〇六五+〇・〇四六+〇・〇三三)
   =金二九万六〇〇〇円×三・三七六
   =金九九万九二九六円
    となる。
   ⑦ アクティビティベースの購入及び買い替え費用 金二九万三七三七円
     アクティビティベースは一台金六万四九〇〇円、その耐用年数は五年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一五回の買い替えが必要になる。
     そこで、五年毎に金六万四九〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
   金六万四九〇〇円×(一+〇・七八四+〇・六一四+〇・四八一+〇・三七七+〇・二九五+〇・二三一+〇・一八一+〇・一四二+〇・一一一+〇・〇八七+〇・〇六八+〇・〇五四+〇・〇四二+〇・〇三三+〇・〇二六)
   =金六万四九〇〇円×四・五二六
   =金二九万三七三七円
    となる。
   ⑧ 立位保持装置の購入及び買い替え費用 金二四八万四七三六円
     立位保持装置は一台金七三万六〇〇〇円、その耐用年数は七年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一〇回の買い替えが必要になる。
     そこで、七年毎に金七三万六〇〇〇円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金七三万六〇〇〇円×(一+〇・七一一+〇・五〇五+〇・三五九+〇・二五五+〇・一八一+〇・一二九+〇・〇九二+〇・〇六五+〇・〇四六+〇・〇三三)
   =金七三万六〇〇〇円×三・三七六
   =金二四八万四七三六円
    となる。
   ⑨ 自動車購入及び買い替え費用(各改造費用を含む) 金一五四一万六〇〇〇円
     介護用自動車の購入費用(改造費用を含む)は一台金四〇〇万円であり、耐用年数は六年であるから、原告X1の平均余命七五年間に一二回の買い換えが必要になる。
     そこで、六年毎に四〇〇万円の損害が発生すると考えて、ライプニッツ係数で中間利息を控除すると、
    金四〇〇万円×(一+〇・七四六+〇・五五七+〇・四一六+〇・三一〇+〇・二三一+〇・一七三+〇・一二九+〇・〇九六+〇・〇七二+〇・〇五四+〇・〇四〇+〇・〇三〇)
   =金四〇〇万円×三・八五四
   =金一五四一万六〇〇〇円
    となる。
    以上合計は、原告X1分が金一億八六七九万四七二九円、原告X2分が金八〇〇万円となる。
  4(ママ) 損害の填補 金三〇〇〇万円
    原告X1は、本件事故による損害の填補として、自賠責保険から後遺障害につき金三〇〇〇万円の支払いを受けた(争いがない)ので、これは損害額から控除するのが相当である。
    しかしながら、被告主張の社会福祉による給付(乙二二、甲一一の一ないし甲一三)は、その制度趣旨目的を民事法上の不法行為による損害賠償とは異にし、また将来においても同様に給付を受けうるか確実ではないものであって、性質上損害の填補とは認められない。
    右控除の結果、原告X1分は金一億五六七九万四七二九円となる。
  5 弁護士費用
    被告が負担すべき原告らの弁護士費用は、事案の内容、難易度、認容額等諸般の事情を考慮して、原告X1については金八〇〇万円、原告X2については、金八〇万円と認めるのが相当である。
  6 以上損害合計金額 金一億七三五九万四七二九円
    うち原告X1 金一億六四七九万四七二九円
    原告X2 金八八〇万円
 三 過失割合について
  1 事故態様について
    事故態様のうち、現場付近の道路等の位置関係及び状況、事故前の原告X1と被告の進路、原告X1と被告との衝突地点、衝突後の原告X1と被告の停止場所については、争いのない事実、甲三及び弁論の全趣旨により、別紙交通事故現場見取図のとおりと認められ、現場は九品寺方面から海岸橋方面に通ずる歩車道の区別のない幅員六・一メートルの道路と材木座海岸方面から現場交差点に至る幅員三・二メートルの道路(いずれもアスファルト舗装された平坦な道)との横断歩道の設置された交差点であり、前記道路の最高速度は三〇キロメートルに制限されている。衝突地点は右横断歩道上である。
    そこで、被告の主張のうち、まず被告の事故前の速度について、検討する。
    右見取図によると、現場路上にスリップ痕に続いて擦過痕が残され、擦過痕は被告のオートバイが転倒した下まで続いていたというのであるから(甲三)、右痕跡は被告が原告X1を発見して急制動の措置をとったことによるスリップ痕及び被告が原告X1と衝突した後バランスを失って転倒し、転倒したバイクと路面との摩擦により生じた擦過痕であるものと認められる。
    ところで、右見取図には、②地点が記載され、被告が同地点で被告が原告X1を発見し危険を感じてブレーキをかけたという指示をした旨実況見分調書に記載されている(甲三)。これについて被告は、これは②地点においてスリップ痕が始まっているからここでブレーキをかけたはずであるとの警察官の誘導により記載された旨主張し、これに沿う供述をしている(乙二〇、被告本人)が、②地点においてスリップ痕が始まっているものではなく、②地点は被告本人が指示説明する他特定のしようがないものであると認められる(甲三)ことに照らし、被告の右各供述は採用しない結果、②地点において被告はブレーキをかけたものと認める。
    そして、②地点から、スリップ痕の開始地点までは、右見取図上約九・六メートルであると認められ、事故当時路面は乾燥していたこと(甲三)からすると、被告の時速は約四五キロメートルであったものと算出される(甲三四)。被告は捜査段階で一貫して事故現場近くまで時速約六〇キロメートルで走行したと供述し(これに反する乙二〇、被告本人の供述部分は採用しない。)、また横断歩道を認識したのでアクセルをゆるめたとも供述しているので(甲三七)、右算出された時速四五キロメートルと矛盾していないものと考えられる。
    次に、原告X1の事故前の行動は、横断歩道のところで首を左右に振って左右の確認をし、被告のオートバイが接近していることも認識したが、走って横断しようとしたところ被告のオートバイと衝突したものであると認められる(甲四、三六)。
  2 右認定事実から、原告X1の過失の有無及びその割合について検討する。
    被告には前方不注視の過失がある(争いがない)が、本件現場は前記のとおり横断歩道上であり、原告X1は歩行者、被告は車両(オートバイ)の運転者であり、原則的には原告X1の過失はないものと考えられる。その上で、原告X1が左右確認の結果被告車両の接近を認識したと考えられるにも関わらず走って横断を開始したことが過失として評価されるかが問題となる。
    しかし、前記認定のとおり、被告は制限速度を約三〇キロメートルも超過してオートバイを運転し、横断歩道を認め、また現場付近は通学のため日頃通行し小学生の通学路であることも良く知っていたと認められる(甲三六)にも関わらずなお制限速度を大幅に超過した約四五キロメートルで運転し、結果として、横断歩道手前でいつでも停止できる速度で進行し歩行者の安全を優先すべき注意義務に違反したものであるから、被告の過失は大きいものと言わざるを得ない。
    一方、原告X1は完全な飛び出しではなく、左右を確認した上で横断を開始したものであること、本来であれば被告のように横断歩道に接近している車両があっても歩行者が横断を開始しようとしている際にはこれを優先して停止すべきものであること、並びに被告が制限速度を超過していたこと及び原告X1がその年の四月に入学した新入生であって、最初の一週間余りは原告X2が途中まで同行して登校し、単独で登校を始めてからまだ数日のことであって、車両の速度の見積もりや横断方法に不慣れであったと考えられること(甲三六)その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告X1の側に過失があったとは認められない。
 四 結論
   よって、原告らの請求は、右認定の損害額の限度及びこれに対する不法行為日である平成五年四月二〇日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金(なお、不法行為における損害の発生は不法行為時であり、直ちに遅滞に陥るものと解すべきである。)の支払いを求める限度で理由があるがその余は理由がない。
   (口頭弁論終結日 平成一一年一一月一二日)
    横浜地方裁判所第六民事部
           裁判官  櫻井佐英

○横浜地方裁判所判決 平成13年9月14日
症状固定時31歳の女性大学講師が遷延性意識障害(1級3号)の後遺障害を負った場合において、父母各300万円、弟100万円の後遺障害慰謝料を認めた。

       主   文

 1 被告は原告X1に対し,金7425万6137円,原告X2に対し,金330万円,原告X3に対し,金330万円,原告X4に対し,金110万円及びこれらの金員に対する平成7年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告らのその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用はこれを6分し,その1を被告の,その余を原告らの各負担とする。
 4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
   被告は原告X1に対し,金4億7296万1268円,原告X2に対し,金1574万5924円,原告X3に対し,金1622万2543円,原告X4に対し,金550万円及びこれら金員に対する平成7年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   交通事故による損害賠償請求。
 1 争いのない事実
  (1) 本件事故の発生
   ① 日時 平成7年7月25日午後7時45分頃
   ② 場所 神奈川県伊勢原市(以下略)先路上(□□大学及び同大学医学部付属病院の構内)
   ③ 加害車両 被告運転,保有の普通乗用自動車(湘南○○さ○○○○)
   ④ 被害者 原告X1(昭和39年○○月○日生まれ)
   ⑤ 事故態様(争いのない限度)加害車両が横断中の原告X1に衝突し転倒させた。
  (2) 被告は加害車両を保有し,加害車両を自己のために運行の用に供していた。
  (3) 本件事故により,原告X1は,頭蓋骨骨折,右急性硬膜下血腫,右側頭葉脳挫傷等の傷害を負い,直ちに□□大学病院の救命救急センターに搬送され,直ちに緊急開頭血腫除去術が実施された。
    手術後も,原告X1は,同病院において,平成12年11月28日まで治療を受け,同日退院して茅ヶ崎新北稜病院に転院した。
    原告X1は遷延性意識障害,四肢麻痺の後遺障害があり,後遺障害等級表1級3号に該当する。
  (4) 原告X2及び原告X3は原告X1の両親,原告X4は弟である。
 2 争点
  (1) 事故態様及び過失相殺
  (原告らの主張)
    被告は加害車両を運転し,構内道路(幅員12メートル)を職員用駐車場方面(北方)から国道246号方面(南方)に向かい進行するにあたり,同現場は大学及び大学付属病院の構内であって横断歩行者の存在が多いのであるから,前方を十分注視のうえ速度を制御して進行すべき義務があるにもかかわらず,前方注視を怠った上,制限速度(時速20キロメートル)を遥に超える高速度で暴走した結果,自車前方を右方(西方)から左方(東方)に向かい横断歩行中の原告X1に全く気付くことなく同人に自車前部を衝突させ路上に転倒させた。
  (被告の主張)
    本件現場は,□□大学病院敷地内の南方国道246号方面から北方の職員用駐車場方面に通ずる歩車道の区別のある直線の道路と,この道路に交差する東方のバス待合所に通ずる道路とがT字に交差する交差点直近の場所である。
    被告は事故当時,帰宅すべく職員駐車場から国道246号方面に向かって進行してきて,本件事故現場手前にある救急救命センター方面と病院本館とに通ずる道路とが交差する,その中央に守衛ボックスの設置されていた交差点に差し掛かったところ,国道246号方面から対向車線を進行して来たタクシーが同交差点を右折すべく進行してきたので,同車の通過を待つため同交差点の中心部の守衛ボックスの左横側で一時停止した。そしてタクシーが右折通過後,再び発進し,すぐ左前のバス待合所方面との安全を確認して進行したところ,対向車線を横断して来た原告X1が,加害車両の前部バンパー右側に衝突しボンネットに乗り上げた。被告はこれに気付いて急制動をかけて停止したが,原告X1はボンネットから道路上に転落して転倒した。原告X1が加害車両右側面からボンネット上に乗り上げたことから考えると,原告X1は徒歩ではなく走って横断しようとしたものと判断される。
    被告が一旦停止した地点から衝突地点までは約24メートルである。原告X1が横断してきた対向車線は幅員6メートルである。被告は前照灯のほかにスモックランプも点灯していた。
    事故時の加害車両の速度は時速20キロメートルを超えていない。
    原告X1にも前方不注視の過失があり,過失割合は,原告X1が40パーセント程度であり,同割合による過失相殺を主張する。
  (2) 原告の損害及び損益相殺
  (原告らの主張)
  ア 原告X1の損害
  ① □□大学病院入院費用 4815万8380円
    総額1億1158万6812円ー労災からの入金額6190万2352円ー原告X1既払額152万6080円
  ② 同入院雑費 586万2000円
    3000×1954(入院日数)
  ③ 同付添介護費 1387万円
    10000(単価)×(405(原告X2の付添日数)+793(同原告X3)+189(同原告X4))
  ④ 同付添介護交通費 365万3940円
     電車代 292万5700円
     バス代 2万9460円
     タクシー代 63万6650円
     ガソリン代 1万円
     高速道路代 5万2130円
  ⑤ 同医師・看護婦への謝礼 50万円
  ⑥ 転院のための費用 10万円
  ⑦ 茅ヶ崎新北稜病院入院費用(1年分) 360万円
  ⑧ 同入院雑費(1年分) 109万5000円
  ⑨ 同付添介護費(1年分。2日に1回) 182万円
  ⑩ 同付添介護交通費 29万8480円
  ⑪ 同医師・看護婦への謝礼 10万円
  ⑫ 帰宅のための費用 10万円
  ⑬ 帰宅後の付添介護費用 9951万0315円
     退院後10年間(原告X1満36歳から同46歳までの間)は原告X2ないし原告X3が,その後の38年間(原告X1満47歳から同84歳までの間)は職業付添人がそれぞれ行い,前者につき1日あたり1万円,後者につき1日あたり2万円
      365万円×7・7217+730万円×(18・0771-8・3064)
  ⑭ 検査費用 72万3084円
     1年に4回,1回あたり1万円
  ⑮ リハビリ費用 470万0046円
     1年に52回,1回あたり5000円
  ⑯ 在宅介護雑費 659万8141円
     1年あたり36万5000円
  ⑰ 自宅改造費用 528万円
     本体工事 378万円
     スロープ工事 150万円
  ⑱ 介護器具代 3100万0800円
     車椅子 268万8000円
      1台あたり28万円×平均余命48年/耐久年数5年
     痰吸引器 158万4000円
      1台あたり16万5000円×平均余命48年/耐久年数5年
     特殊ベッド 399万円
      1台あたり66万5000円×平均余命48年/耐久年数8年
     寝具・マットレス 286万0800円
      1台あたり29万8000円×平均余命48年/耐久年数5年
     介護用自動車 1000万円
     天井走行式リフト 774万円
      1台あたり129万円×平均余命48年/耐久年数8年
     介護用リフト 163万8000円
      1台あたり27万3000円×平均余命48年/耐久年数8年
     エアコン 50万円
  ⑲ 逸失利益 1億9369万9232円
     得べかりし給与及び賞与 1億6844万7095円
     (□□大学専任教職員給与表に従って計算する。)
     得べかりし退職金 905万9237円
     (満65歳の定年退職時に,□□大学から2743万1250円,□□大学互助会から1574万9100円の退職金支払いを受け得た。)
     副収入 1619万2900円
     (1年間に100万円の講演料,原稿料等)
  ⑳ 慰謝料 4500万円
     入院慰謝料 1000万円
     後遺症慰謝料 3500万円
  (21) 文書料 20万円
  (22) 弁護士費用 4000万円
  (23) 小計 5億0586万9418円
  (24) 損害の填補 3290万8150円
     自賠責保険からの保険金 3000万円
     学校法人□□大学からの退職金 290万8150円
  イ 原告X2及び原告X3の損害
  ① 慰謝料 各1000万円
  ② 休業損害
     原告X2につき 434万5924円
    6778900(H7大卒男子平均)/365×234(休業日数)
     原告X3につき482万2543円
    4411600(H7大卒女子平均)/365×399(休業日数)
  ③ 弁護士費用 各140万円
  ④ 小計 原告X2につき1574万5924円
     原告X3につき1622万2543円
  ウ 原告X4の損害
  ① 慰謝料 500万円
  ② 弁護士費用 50万円
  ③ 小計 550万円
  (被告の主張)
  ア 原告X1については,平成8年3月31日に症状固定の診断がなされている。したがって,同年4月1日以降については後遺障害に伴う損害の問題として解決すべきである。
  イ 入院費用の内訳が明らかではないが,個室料差額等が含まれているものと思われ,これは相当の損害ではない。
  ウ 入院雑費は,症状固定日までの250日間について日額1200円の範囲で認め,その余は争う。
    付添費及び介護交通費については,完全看護体制の病院であるため必要性がなく,否認ないし争う。
    医師・看護婦への謝礼は必要性はなく,争う。
    退院・帰宅費用は不知。
  エ 付添介護費用は争う。推定余命10年程度として算定すべきである。なお,原告X2,同X3らの介護につき各日額5000円,職業付添人による介護つき日額1万円程度を限度とすべきである。
    検査・リハビリ費用については争う。
    自宅改造費用については争う。本体工事及びスロープ工事の各工事についての必要性が明らかでない。
    介護器具代については個々の必要性が明らかでなく争う。
    天井走行式リフト及び介護用リフトの双方が必要になる理由が明らかでない。介護用自動車の具体的内容,必要性が不詳であり,価格の立証もない。エアコンはどこにどのように使われているのかなど具体性が明らかでない。中間利息は控除すべきである。
  オ 逸失利益については,原告X1が本件事故当時□□大学の専任講師の職についてわずか3か月余りであり,助教授,教授と昇進するかどうかは不確実であるので,平成8年大学卒の女子平均賃金442万6400円を基礎として算定すべきである。
    また,生活費として10パーセントを控除すべきである。
    さらに,原告X1は本件事故発生以来現在に至るまで高度意識障害が継続し,回復する見込みはなく,余命は症状固定から10年程度として算定すべきである。
  カ 既払金は,自賠責保険からの3000万円のほかに,以下の金額がある。
    入院室料差額(平成7年7月25日から平成8年3月31日までの分)145万7500円
    上記期間の雑費 6万8500円
    義肢製作費用 7万2023円
   労災保険からの給付 7332万9071円
    療養補償給付(H7・7・25~H12・2・29) 5522万7425円
    休業補償給付(H7・7・26~H9・3・31) 411万3252円
    休業特別支給金(H7・7・26~H9・3・31) 137万0880円
    傷病補償年金(H9・4月分~H12・3月分) 1067万1488円
    傷病特別年金(H9・4月分~H12・3月分) 80万6026円
    傷病特別一時金 114万円
   については,原告X1の損害額から控除すべきである。
    療養補償給付,傷病補償年金,傷病特別年金は,将来にわたって継続給付されることになり,損害額から控除すべきである。
第3 争点に対する判断
 1 事故態様及び過失相殺について
  (1) 争いのない事実,甲1ないし4,8,12,14ないし18,39,乙4,被告本人,原告X2本人によると,以下の事実が認められる。
    本件事故現場は,□□大学及び付属病院構内の,北側の職員用駐車場から南側の国道246号方面に通じる歩車道の区別のある直線のアスファルト舗装道路(以下「本件道路」という。)上であり,本件道路に交差する東方のバス待合所に通ずる道路との交差点(以下「本件交差点」という。)直近である。本件交差点北側約15メートルには,本件道路と東西方向に走る広い道路との交差点(以下「手前交差点」という。)があり,中央には,守衛ボックスがある。本件道路は,北方から南方に向かい,下り坂(下り勾配100分の5)になっている。本件道路中央は黄色ペイントで区分され,幅員は,手前交差点北側で8メートル,南側で12メートルである。最高速度は時速20キロメートルに規制されている。
    事故当時は,晴れていて街灯も設置され,人の顔が認識できる状態であった。被告は仕事帰りで,駐車場から加害車両を運転して本件道路を南に向かい,手前交差点内守衛ボックス横で,対向車線に右折しようとしているタクシーがいたので一時停止し,タクシーが発進しないのを確認して発進した。
    一方,原告X1は,被告進行方向(南向き)から見て右側(西側)の健康科学部3号館の北西角付近にある出口を出て,同館北側を東に歩き,同館前の歩道から,本件道路東側の,レストラン等の入っている望星会館及びその先のバス待合所方面に向かって,車道を横断しようとしたものと思われる。本件現場には本件道路を東西にわたる横断歩道はないが,横断歩道は,約30メートル北方の,手前交差点北側であり,これを利用するには,上記原告X1の進行方向を考えると,健康科学部3号館の北東角から,コの字型にこれを含めて3つの横断歩道を横断しなければならないので,同人は,横断歩道のない本件現場において横断したものと認められる。ところで,原告X1が横断を開始した地点及び衝突地点までの経路は特定できないが,同人から加害車両方向へは,本件道路が上り坂となり,手前交差点内に守衛ボックスがあることから,加害車両が手前交差点よりも北側にいるときは,やや見づらい位置関係になるものと認められる。
    上記被告の再発進後,被告側からは,下り坂で,本件道路の幅員も12メートルあり,見通しは良かった。被告は,通常の前照灯の他,黄色のフォグランプも点けていた。被告は,前方左側の歩行者や,前方交差点の青信号に気を取られて,前方右側に対する注意を欠き,再発進地点から24・0メートル走行した地点において,横断してきた原告X1が加害車両前部右側に衝突し,ボンネット上に,体が手と足を上にあげたV字状になって跳ね上げられた状態になるまで,横断してくる原告X1の存在を全く認識していなかった。加害車両は,衝突後8・8メートルで停止し,原告X1は,衝突地点から,進行方向前方やや右側10・5メートルの地点に落下した。
  (2) 上記事実関係に鑑みると,被告は横断してくる原告X1を容易に発見し得たものと認められ,前方不注視の過失があったものと認められる。
    また,被告は事故後,本件事故時には時速20キロメートル程度で運転していたと述べているが曖昧であり,加害車両の性能,現場が下り坂であること,被告が横断者である原告X1の存在を認識せず,前方の青信号に気を取られていたこと,本人尋問において制限速度は30キロメートルであると認識している旨述べ,従前速度違反等により免許停止になったことがある等速度に関する規範意識に緩みがあるものと認められることからすると,加害車両の速度は時速20キロメートルを超えていた可能性も考えられる。被告提出の反論書(乙1の1)では,加害車両のブレーキが正常に作動したと仮定すると,加害車両の速度は時速26キロメートルとなると算出している。
    なお,原告らは,衝突地点と原告X1の落下地点との距離から,加害車両の速度は34~40キロメートルであり,原告X1の落下地点が加害車両の進行方向右側であることから,原告X1は加害車両から逃げようとしていたところを衝突された,とする鑑定書(甲38)を提出するが,前者は上記認定の事故態様に照らすと,前提に誤りがあるものと認められるし,後者は,加害車両と原告X1の進行方向及び速度の他に,上記事故態様に加え,加害車両と原告X1の人体の重量差を検討に入れていないことから,採用できない。
  (3) 以上のとおり,原告X1においても,横断歩道の設置されていない場所で横断し,その際通行車両の動静に十分注意しなかった過失があるものと認められる。
    上記事故態様及び現場付近の状況に鑑みると,過失割合は,被告が8割,原告X1が2割であるものと認める。
 2 損害額について
   (1) 原告X1の損害
     原告X1は,本件事故により,急性硬膜下血腫,脳挫傷,頭蓋骨骨折の傷害を負い,平成7年7月25日の事故当日□□大学病院に入院し,直ちに緊急開頭血腫除去術の手術を受け,以後頭蓋内圧亢進に対し,集中治療室及び個室管理下治療を行った。その後も,意識障害と四肢麻痺が続き,理学療法を続けたが回復せず,関節拘縮も生じた。食事は気管を切開して経管栄養で,全面介助の状態である。平成8年3月31日には症状固定とされた。同年7月15日の段階では,「障害が高度で常に監視介助または個室隔離が必要」とされ,個室に入院を続けた。平成10年10月7日の段階で,症状固定後,合併症の発症はなく,在宅での療養も可能とされた。ただし,定期的な医師及び看護婦の訪問が必要であるとされた(以上,甲19~34)。
     原告らは,□□病院から転院の要請を受けたが転院先が見つからず□□病院での治療継続を頼んだ。しかし,積極的な治療はなく,リハビリとして関節拘縮を防ぐためマッサージをするのが中心であり,原告らがその主張のとおり交代で付き添ってこれを行う等身の回りの世話をしている(甲39,43,原告X2本人,弁論の全趣旨)。平成12年11月28日に,1年間との規則の下に茅ヶ崎新北稜病院に転院し,同病院退院後は,自宅療養となる(弁論の全趣旨)。
   ① □□大学病院入院費用 7574万5838円(労災既払分4366万5466円を含む)
     事故と相当因果関係の認められる治療費は,症状固定時までのものに限られるのが原則であるが,症状固定後であっても,当該症状に照らし,固定した状態を悪化させないために必要であると認められる範囲の治療費は,相当因果関係ある損害であるものと言いうる。
     したがって,本件において,まず,平成8年3月31日の症状固定日までの治療費は,相当因果関係あるものと認めることができる。
     なお,被告はこれを争い,労災支払分以外は個室使用料であり必要性が認められない旨主張するが,上記のとおり,症状固定後である平成8年7月15日の段階で,医師は個室使用の必要性を認め,その後自宅療養が可能であるとした平成10年10月7日まではこの判断を変更した事実は認められず,また原告X1の上記症状に鑑みると,感染症予防等の見地から個室利用の必要性を認めた医師の判断は妥当であったものと認められる。
     原告提出の診療費にかかる書証(甲52)は,確かにその内訳が不明であるものの,被告は個室使用料の他は積極的に反論反証をしていないので,平成8年3月分までの治療費については,全額についてこれを認めることとする。
     2617万6807円(入金額2038万1681円,未払額579万5126円)
     次に,平成8年4月以降平成10年9月まで(10月分については,日割の明細が出ていないので,認めることができない。)の入院費用についても,当時入院の必要性があるものと判断され,また,原告X1の状態を悪化させないために,個室使用料も含めて必要であったものと認めるので,これを損害として認めることとする。
     4956万9031円(入金額2480万9865円,未払額2475万9166円)
   ② 同入院雑費 152万2300円
     1300×1171(平成7年7月25日~平成10年10月7日)
   ③ 同付添介護費 702万6000円(弁論の全趣旨)
     6000(単価)×1171
   ④ 同付添介護交通費 0円(立証がない)
   ⑤ 同医師・看護婦への謝礼 0円(相当性がない)
     平成10年10月8日以降の入院の必要性は認められないので,入院費用は認められない。したがって茅ヶ崎新北稜病院への転院のための費用,同病院の入院費用,入院雑費,付添介護費,謝礼はいずれも相当性がない。
   ⑥ 転院のための費用 0円
   ⑦ 茅ヶ崎新北稜病院入院費用(1年分) 0円
   ⑧ 同入院雑費(1年分) 0円
   ⑨ 同付添介護費(1年分。2日に1回) 0円
   ⑩ 同付添介護交通費 0円
   ⑪ 同医師・看護婦への謝礼 0円
     原告X1が平成13年11月27日に茅ヶ崎新北稜病院を退院した後は,自宅での療養がなされるものと認められ,原告X1の状態を維持するために必要な医療である,検査費用,リハビリ費用については損害として認められる余地がある。しかしながら,本件においては立証がない。帰宅のための費用についても同様である。
     原告X1の退院後の付添介助は,10年間(原告X1満37歳から同46歳までの間)は原告X2ないし原告X3が,その後の38年間(原告X1満47歳から同84歳までの間)は職業付添人がそれぞれ行い,前者につき1日あたり6000円,後者につき1日あたり1万円を要するものと認められる(弁論の全趣旨)。
     ところで,いわゆる寝たきり状態である原告X1の平均余命について,被告は10年程度であるものと主張し,文献(乙2)を提出するが,同文献も,統計資料に基づいて平均余命を10年未満と推定しているものの,30歳台以下は長期生存者も存在し,脱却者(寝たきり状態からの)も存在することに留意する必要があるとされ,30歳代で合併症もなかった原告X1に,どの程度符合するのか疑問であって,採用できない。原告X1は固定時31歳であって,平均余命は84歳までの53年間である。
     219万×(10・8377ー5・0756)+365万×(18・5651ー10・8377)=12618999+28205010=40824009
     在宅介護雑費は,弁論の全趣旨により,年額36万5000円であるものと認められるので,
     365000×(18・5651ー5・0756)=4923668
   ⑫ 帰宅のための費用 0円
   ⑬ 帰宅後の付添介護費用 4082万4009円
   ⑭ 検査費用 0円
   ⑮ リハビリ費用 0円
   ⑯ 在宅介護雑費 492万3668円
     一般論として,原告X1の状況によれば,自宅での介護を行う場合,自宅を改造して介護をしやすいようにしたり,各種介護器具を購入することが必要になることは認められる。
     しかしながら,まず,自宅改造費用については,「本体工事」及び「スロープ工事」と主張されるのみであって,具体的内容が不明であるので,(なお,原告ら提出の見積書(甲49)及び原告X2本人も極めて概括的であり,内容は不明であると言わざるをえない。),その具体的必要性も不明であると言わざるを得ない。
     次に,介護器具については,弁論の全趣旨により少なくとも車椅子,吸引器,特殊ベッド,マットレスが必要となろうことは理解できるが,各器具について多数の類似製品がある中で,原告ら提出の甲44ないし47,甲48の1,2記載の当該製品を選択する理由についての主張立証がない。なお,耐用年数についても立証がない。
     そこで,弁論の全趣旨により,車椅子については10万円,吸引器については12万円,特殊ベッドについては30万円,マットレスについては10万円の限度で,これらを購入する費用を,損害と認めることとする。
   ⑰ 自宅改造費用 0円
   ⑱ 介護器具代 62万円
   ⑲ 逸失利益 6391万4316円
    原告X1が本件事故当時,□□大学健康科学部社会福祉学科の講師であったことは認められるが,同人の本件事故当時の収入については立証がないし,給与表(甲40)によっても,これがいくらであって,今後どのように昇給する蓋然性があるかということは認めるに足りない。
    そこで,症状固定時における平成8年センサス大卒女子全年齢450万6400円を基準として算定することとする。
    原告X1は固定時31歳であって,労働可能年数は36年間となる。
    しかし原告X1は,寝たきり状態である結果,娯楽教養費等の支出を要しないことは弁論の全趣旨により認められ,通常人が必要としないオムツ等の雑費が必要である(原告X3)としても,これは上記在宅介護雑費で考慮ずみであるから,算定された逸失利益から1割を控除するのが相当であるものと考える。
    4506400×(16・7112ー0・9523)×0・9=63914316
   ⑳ 慰謝料 2720万円
      入院慰謝料 120万円
      後遺症慰謝料 2600万円
   (21) 文書料 20万円(弁論の全趣旨)
   (22) 小計 2億2197万6131円
   (23) 過失相殺 1億7758万0905円
   (24) 既払金 1億1002万4768円
     自賠責保険 3000万円(争いがない)
     労災保険 8002万4768円(甲52,乙3の1,2)
     労災給付額を除く被告主張の既払金については立証がない。
   (25) 控除後 6755万6137円
   (26) 弁護士費用 670万円
   (27) 合計 7425万6137円
  (2) 原告X2及び原告X3の損害
   ① 慰謝料 各300万円
     同人らは,原告X1を2人姉弟の長女として慈しみ大学院修士課程まで教育を受けさせて研究者として独り立ちさせ,将来を楽しみにしていたところ,被告の惹起した本件事故により,重度の障害を負う身とされ,今後研究者としての更なる成長を見る希望も絶たれ,60歳代に達しているにも関わらず,介護を担う事態となったものであって(原告X2,同X3),同人らの苦痛を慰謝するには,上記金額をもって相当と考える。
   ② 休業損害 0円
     付添介護費用において考慮済みである。
   ③ 弁護士費用 各30万円
   ④ 小計 各330万円
  (3) 原告X4の損害
   ① 慰謝料 100万円
   ② 弁護士費用 10万円
   ③ 小計 110万円
 4 結論
   よって,原告の被告らに対する請求は,原告X1が7425万6137円,原告X2及び同X3が各330万円,原告X4が110万円(及び各遅延損害金)の限度で理由があるが,その余は理由がない。
    横浜地方裁判所第6民事部
  (口頭弁論終結日 平成13年7月27日)
           裁判官 櫻井佐英

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