横浜地方裁判所判決 平成13年9月14日

症状固定時31歳の女性大学講師が遷延性意識障害(1級3号)の後遺障害を負った場合において、父母各300万円、弟100万円の後遺障害慰謝料を認めた。

       主   文

 1 被告は原告X1に対し,金7425万6137円,原告X2に対し,金330万円,原告X3に対し,金330万円,原告X4に対し,金110万円及びこれらの金員に対する平成7年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告らのその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用はこれを6分し,その1を被告の,その余を原告らの各負担とする。
 4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

       事実及び理由

第1 請求
   被告は原告X1に対し,金4億7296万1268円,原告X2に対し,金1574万5924円,原告X3に対し,金1622万2543円,原告X4に対し,金550万円及びこれら金員に対する平成7年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   交通事故による損害賠償請求。
 1 争いのない事実
  (1) 本件事故の発生
   ① 日時 平成7年7月25日午後7時45分頃
   ② 場所 神奈川県伊勢原市(以下略)先路上(□□大学及び同大学医学部付属病院の構内)
   ③ 加害車両 被告運転,保有の普通乗用自動車(湘南○○さ○○○○)
   ④ 被害者 原告X1(昭和39年○○月○日生まれ)
   ⑤ 事故態様(争いのない限度)加害車両が横断中の原告X1に衝突し転倒させた。
  (2) 被告は加害車両を保有し,加害車両を自己のために運行の用に供していた。
  (3) 本件事故により,原告X1は,頭蓋骨骨折,右急性硬膜下血腫,右側頭葉脳挫傷等の傷害を負い,直ちに□□大学病院の救命救急センターに搬送され,直ちに緊急開頭血腫除去術が実施された。
    手術後も,原告X1は,同病院において,平成12年11月28日まで治療を受け,同日退院して茅ヶ崎新北稜病院に転院した。
    原告X1は遷延性意識障害,四肢麻痺の後遺障害があり,後遺障害等級表1級3号に該当する。
  (4) 原告X2及び原告X3は原告X1の両親,原告X4は弟である。
 2 争点
  (1) 事故態様及び過失相殺
  (原告らの主張)
    被告は加害車両を運転し,構内道路(幅員12メートル)を職員用駐車場方面(北方)から国道246号方面(南方)に向かい進行するにあたり,同現場は大学及び大学付属病院の構内であって横断歩行者の存在が多いのであるから,前方を十分注視のうえ速度を制御して進行すべき義務があるにもかかわらず,前方注視を怠った上,制限速度(時速20キロメートル)を遥に超える高速度で暴走した結果,自車前方を右方(西方)から左方(東方)に向かい横断歩行中の原告X1に全く気付くことなく同人に自車前部を衝突させ路上に転倒させた。
  (被告の主張)
    本件現場は,□□大学病院敷地内の南方国道246号方面から北方の職員用駐車場方面に通ずる歩車道の区別のある直線の道路と,この道路に交差する東方のバス待合所に通ずる道路とがT字に交差する交差点直近の場所である。
    被告は事故当時,帰宅すべく職員駐車場から国道246号方面に向かって進行してきて,本件事故現場手前にある救急救命センター方面と病院本館とに通ずる道路とが交差する,その中央に守衛ボックスの設置されていた交差点に差し掛かったところ,国道246号方面から対向車線を進行して来たタクシーが同交差点を右折すべく進行してきたので,同車の通過を待つため同交差点の中心部の守衛ボックスの左横側で一時停止した。そしてタクシーが右折通過後,再び発進し,すぐ左前のバス待合所方面との安全を確認して進行したところ,対向車線を横断して来た原告X1が,加害車両の前部バンパー右側に衝突しボンネットに乗り上げた。被告はこれに気付いて急制動をかけて停止したが,原告X1はボンネットから道路上に転落して転倒した。原告X1が加害車両右側面からボンネット上に乗り上げたことから考えると,原告X1は徒歩ではなく走って横断しようとしたものと判断される。
    被告が一旦停止した地点から衝突地点までは約24メートルである。原告X1が横断してきた対向車線は幅員6メートルである。被告は前照灯のほかにスモックランプも点灯していた。
    事故時の加害車両の速度は時速20キロメートルを超えていない。
    原告X1にも前方不注視の過失があり,過失割合は,原告X1が40パーセント程度であり,同割合による過失相殺を主張する。
  (2) 原告の損害及び損益相殺
  (原告らの主張)
  ア 原告X1の損害
  ① □□大学病院入院費用 4815万8380円
    総額1億1158万6812円ー労災からの入金額6190万2352円ー原告X1既払額152万6080円
  ② 同入院雑費 586万2000円
    3000×1954(入院日数)
  ③ 同付添介護費 1387万円
    10000(単価)×(405(原告X2の付添日数)+793(同原告X3)+189(同原告X4))
  ④ 同付添介護交通費 365万3940円
     電車代 292万5700円
     バス代 2万9460円
     タクシー代 63万6650円
     ガソリン代 1万円
     高速道路代 5万2130円
  ⑤ 同医師・看護婦への謝礼 50万円
  ⑥ 転院のための費用 10万円
  ⑦ 茅ヶ崎新北稜病院入院費用(1年分) 360万円
  ⑧ 同入院雑費(1年分) 109万5000円
  ⑨ 同付添介護費(1年分。2日に1回) 182万円
  ⑩ 同付添介護交通費 29万8480円
  ⑪ 同医師・看護婦への謝礼 10万円
  ⑫ 帰宅のための費用 10万円
  ⑬ 帰宅後の付添介護費用 9951万0315円
     退院後10年間(原告X1満36歳から同46歳までの間)は原告X2ないし原告X3が,その後の38年間(原告X1満47歳から同84歳までの間)は職業付添人がそれぞれ行い,前者につき1日あたり1万円,後者につき1日あたり2万円
      365万円×7・7217+730万円×(18・0771-8・3064)
  ⑭ 検査費用 72万3084円
     1年に4回,1回あたり1万円
  ⑮ リハビリ費用 470万0046円
     1年に52回,1回あたり5000円
  ⑯ 在宅介護雑費 659万8141円
     1年あたり36万5000円
  ⑰ 自宅改造費用 528万円
     本体工事 378万円
     スロープ工事 150万円
  ⑱ 介護器具代 3100万0800円
     車椅子 268万8000円
      1台あたり28万円×平均余命48年/耐久年数5年
     痰吸引器 158万4000円
      1台あたり16万5000円×平均余命48年/耐久年数5年
     特殊ベッド 399万円
      1台あたり66万5000円×平均余命48年/耐久年数8年
     寝具・マットレス 286万0800円
      1台あたり29万8000円×平均余命48年/耐久年数5年
     介護用自動車 1000万円
     天井走行式リフト 774万円
      1台あたり129万円×平均余命48年/耐久年数8年
     介護用リフト 163万8000円
      1台あたり27万3000円×平均余命48年/耐久年数8年
     エアコン 50万円
  ⑲ 逸失利益 1億9369万9232円
     得べかりし給与及び賞与 1億6844万7095円
     (□□大学専任教職員給与表に従って計算する。)
     得べかりし退職金 905万9237円
     (満65歳の定年退職時に,□□大学から2743万1250円,□□大学互助会から1574万9100円の退職金支払いを受け得た。)
     副収入 1619万2900円
     (1年間に100万円の講演料,原稿料等)
  ⑳ 慰謝料 4500万円
     入院慰謝料 1000万円
     後遺症慰謝料 3500万円
  (21) 文書料 20万円
  (22) 弁護士費用 4000万円
  (23) 小計 5億0586万9418円
  (24) 損害の填補 3290万8150円
     自賠責保険からの保険金 3000万円
     学校法人□□大学からの退職金 290万8150円
  イ 原告X2及び原告X3の損害
  ① 慰謝料 各1000万円
  ② 休業損害
     原告X2につき 434万5924円
    6778900(H7大卒男子平均)/365×234(休業日数)
     原告X3につき482万2543円
    4411600(H7大卒女子平均)/365×399(休業日数)
  ③ 弁護士費用 各140万円
  ④ 小計 原告X2につき1574万5924円
     原告X3につき1622万2543円
  ウ 原告X4の損害
  ① 慰謝料 500万円
  ② 弁護士費用 50万円
  ③ 小計 550万円
  (被告の主張)
  ア 原告X1については,平成8年3月31日に症状固定の診断がなされている。したがって,同年4月1日以降については後遺障害に伴う損害の問題として解決すべきである。
  イ 入院費用の内訳が明らかではないが,個室料差額等が含まれているものと思われ,これは相当の損害ではない。
  ウ 入院雑費は,症状固定日までの250日間について日額1200円の範囲で認め,その余は争う。
    付添費及び介護交通費については,完全看護体制の病院であるため必要性がなく,否認ないし争う。
    医師・看護婦への謝礼は必要性はなく,争う。
    退院・帰宅費用は不知。
  エ 付添介護費用は争う。推定余命10年程度として算定すべきである。なお,原告X2,同X3らの介護につき各日額5000円,職業付添人による介護つき日額1万円程度を限度とすべきである。
    検査・リハビリ費用については争う。
    自宅改造費用については争う。本体工事及びスロープ工事の各工事についての必要性が明らかでない。
    介護器具代については個々の必要性が明らかでなく争う。
    天井走行式リフト及び介護用リフトの双方が必要になる理由が明らかでない。介護用自動車の具体的内容,必要性が不詳であり,価格の立証もない。エアコンはどこにどのように使われているのかなど具体性が明らかでない。中間利息は控除すべきである。
  オ 逸失利益については,原告X1が本件事故当時□□大学の専任講師の職についてわずか3か月余りであり,助教授,教授と昇進するかどうかは不確実であるので,平成8年大学卒の女子平均賃金442万6400円を基礎として算定すべきである。
    また,生活費として10パーセントを控除すべきである。
    さらに,原告X1は本件事故発生以来現在に至るまで高度意識障害が継続し,回復する見込みはなく,余命は症状固定から10年程度として算定すべきである。
  カ 既払金は,自賠責保険からの3000万円のほかに,以下の金額がある。
    入院室料差額(平成7年7月25日から平成8年3月31日までの分)145万7500円
    上記期間の雑費 6万8500円
    義肢製作費用 7万2023円
   労災保険からの給付 7332万9071円
    療養補償給付(H7・7・25~H12・2・29) 5522万7425円
    休業補償給付(H7・7・26~H9・3・31) 411万3252円
    休業特別支給金(H7・7・26~H9・3・31) 137万0880円
    傷病補償年金(H9・4月分~H12・3月分) 1067万1488円
    傷病特別年金(H9・4月分~H12・3月分) 80万6026円
    傷病特別一時金 114万円
   については,原告X1の損害額から控除すべきである。
    療養補償給付,傷病補償年金,傷病特別年金は,将来にわたって継続給付されることになり,損害額から控除すべきである。
第3 争点に対する判断
 1 事故態様及び過失相殺について
  (1) 争いのない事実,甲1ないし4,8,12,14ないし18,39,乙4,被告本人,原告X2本人によると,以下の事実が認められる。
    本件事故現場は,□□大学及び付属病院構内の,北側の職員用駐車場から南側の国道246号方面に通じる歩車道の区別のある直線のアスファルト舗装道路(以下「本件道路」という。)上であり,本件道路に交差する東方のバス待合所に通ずる道路との交差点(以下「本件交差点」という。)直近である。本件交差点北側約15メートルには,本件道路と東西方向に走る広い道路との交差点(以下「手前交差点」という。)があり,中央には,守衛ボックスがある。本件道路は,北方から南方に向かい,下り坂(下り勾配100分の5)になっている。本件道路中央は黄色ペイントで区分され,幅員は,手前交差点北側で8メートル,南側で12メートルである。最高速度は時速20キロメートルに規制されている。
    事故当時は,晴れていて街灯も設置され,人の顔が認識できる状態であった。被告は仕事帰りで,駐車場から加害車両を運転して本件道路を南に向かい,手前交差点内守衛ボックス横で,対向車線に右折しようとしているタクシーがいたので一時停止し,タクシーが発進しないのを確認して発進した。
    一方,原告X1は,被告進行方向(南向き)から見て右側(西側)の健康科学部3号館の北西角付近にある出口を出て,同館北側を東に歩き,同館前の歩道から,本件道路東側の,レストラン等の入っている望星会館及びその先のバス待合所方面に向かって,車道を横断しようとしたものと思われる。本件現場には本件道路を東西にわたる横断歩道はないが,横断歩道は,約30メートル北方の,手前交差点北側であり,これを利用するには,上記原告X1の進行方向を考えると,健康科学部3号館の北東角から,コの字型にこれを含めて3つの横断歩道を横断しなければならないので,同人は,横断歩道のない本件現場において横断したものと認められる。ところで,原告X1が横断を開始した地点及び衝突地点までの経路は特定できないが,同人から加害車両方向へは,本件道路が上り坂となり,手前交差点内に守衛ボックスがあることから,加害車両が手前交差点よりも北側にいるときは,やや見づらい位置関係になるものと認められる。
    上記被告の再発進後,被告側からは,下り坂で,本件道路の幅員も12メートルあり,見通しは良かった。被告は,通常の前照灯の他,黄色のフォグランプも点けていた。被告は,前方左側の歩行者や,前方交差点の青信号に気を取られて,前方右側に対する注意を欠き,再発進地点から24・0メートル走行した地点において,横断してきた原告X1が加害車両前部右側に衝突し,ボンネット上に,体が手と足を上にあげたV字状になって跳ね上げられた状態になるまで,横断してくる原告X1の存在を全く認識していなかった。加害車両は,衝突後8・8メートルで停止し,原告X1は,衝突地点から,進行方向前方やや右側10・5メートルの地点に落下した。
  (2) 上記事実関係に鑑みると,被告は横断してくる原告X1を容易に発見し得たものと認められ,前方不注視の過失があったものと認められる。
    また,被告は事故後,本件事故時には時速20キロメートル程度で運転していたと述べているが曖昧であり,加害車両の性能,現場が下り坂であること,被告が横断者である原告X1の存在を認識せず,前方の青信号に気を取られていたこと,本人尋問において制限速度は30キロメートルであると認識している旨述べ,従前速度違反等により免許停止になったことがある等速度に関する規範意識に緩みがあるものと認められることからすると,加害車両の速度は時速20キロメートルを超えていた可能性も考えられる。被告提出の反論書(乙1の1)では,加害車両のブレーキが正常に作動したと仮定すると,加害車両の速度は時速26キロメートルとなると算出している。
    なお,原告らは,衝突地点と原告X1の落下地点との距離から,加害車両の速度は34~40キロメートルであり,原告X1の落下地点が加害車両の進行方向右側であることから,原告X1は加害車両から逃げようとしていたところを衝突された,とする鑑定書(甲38)を提出するが,前者は上記認定の事故態様に照らすと,前提に誤りがあるものと認められるし,後者は,加害車両と原告X1の進行方向及び速度の他に,上記事故態様に加え,加害車両と原告X1の人体の重量差を検討に入れていないことから,採用できない。
  (3) 以上のとおり,原告X1においても,横断歩道の設置されていない場所で横断し,その際通行車両の動静に十分注意しなかった過失があるものと認められる。
    上記事故態様及び現場付近の状況に鑑みると,過失割合は,被告が8割,原告X1が2割であるものと認める。
 2 損害額について
   (1) 原告X1の損害
     原告X1は,本件事故により,急性硬膜下血腫,脳挫傷,頭蓋骨骨折の傷害を負い,平成7年7月25日の事故当日□□大学病院に入院し,直ちに緊急開頭血腫除去術の手術を受け,以後頭蓋内圧亢進に対し,集中治療室及び個室管理下治療を行った。その後も,意識障害と四肢麻痺が続き,理学療法を続けたが回復せず,関節拘縮も生じた。食事は気管を切開して経管栄養で,全面介助の状態である。平成8年3月31日には症状固定とされた。同年7月15日の段階では,「障害が高度で常に監視介助または個室隔離が必要」とされ,個室に入院を続けた。平成10年10月7日の段階で,症状固定後,合併症の発症はなく,在宅での療養も可能とされた。ただし,定期的な医師及び看護婦の訪問が必要であるとされた(以上,甲19~34)。
     原告らは,□□病院から転院の要請を受けたが転院先が見つからず□□病院での治療継続を頼んだ。しかし,積極的な治療はなく,リハビリとして関節拘縮を防ぐためマッサージをするのが中心であり,原告らがその主張のとおり交代で付き添ってこれを行う等身の回りの世話をしている(甲39,43,原告X2本人,弁論の全趣旨)。平成12年11月28日に,1年間との規則の下に茅ヶ崎新北稜病院に転院し,同病院退院後は,自宅療養となる(弁論の全趣旨)。
   ① □□大学病院入院費用 7574万5838円(労災既払分4366万5466円を含む)
     事故と相当因果関係の認められる治療費は,症状固定時までのものに限られるのが原則であるが,症状固定後であっても,当該症状に照らし,固定した状態を悪化させないために必要であると認められる範囲の治療費は,相当因果関係ある損害であるものと言いうる。
     したがって,本件において,まず,平成8年3月31日の症状固定日までの治療費は,相当因果関係あるものと認めることができる。
     なお,被告はこれを争い,労災支払分以外は個室使用料であり必要性が認められない旨主張するが,上記のとおり,症状固定後である平成8年7月15日の段階で,医師は個室使用の必要性を認め,その後自宅療養が可能であるとした平成10年10月7日まではこの判断を変更した事実は認められず,また原告X1の上記症状に鑑みると,感染症予防等の見地から個室利用の必要性を認めた医師の判断は妥当であったものと認められる。
     原告提出の診療費にかかる書証(甲52)は,確かにその内訳が不明であるものの,被告は個室使用料の他は積極的に反論反証をしていないので,平成8年3月分までの治療費については,全額についてこれを認めることとする。
     2617万6807円(入金額2038万1681円,未払額579万5126円)
     次に,平成8年4月以降平成10年9月まで(10月分については,日割の明細が出ていないので,認めることができない。)の入院費用についても,当時入院の必要性があるものと判断され,また,原告X1の状態を悪化させないために,個室使用料も含めて必要であったものと認めるので,これを損害として認めることとする。
     4956万9031円(入金額2480万9865円,未払額2475万9166円)
   ② 同入院雑費 152万2300円
     1300×1171(平成7年7月25日~平成10年10月7日)
   ③ 同付添介護費 702万6000円(弁論の全趣旨)
     6000(単価)×1171
   ④ 同付添介護交通費 0円(立証がない)
   ⑤ 同医師・看護婦への謝礼 0円(相当性がない)
     平成10年10月8日以降の入院の必要性は認められないので,入院費用は認められない。したがって茅ヶ崎新北稜病院への転院のための費用,同病院の入院費用,入院雑費,付添介護費,謝礼はいずれも相当性がない。
   ⑥ 転院のための費用 0円
   ⑦ 茅ヶ崎新北稜病院入院費用(1年分) 0円
   ⑧ 同入院雑費(1年分) 0円
   ⑨ 同付添介護費(1年分。2日に1回) 0円
   ⑩ 同付添介護交通費 0円
   ⑪ 同医師・看護婦への謝礼 0円
     原告X1が平成13年11月27日に茅ヶ崎新北稜病院を退院した後は,自宅での療養がなされるものと認められ,原告X1の状態を維持するために必要な医療である,検査費用,リハビリ費用については損害として認められる余地がある。しかしながら,本件においては立証がない。帰宅のための費用についても同様である。
     原告X1の退院後の付添介助は,10年間(原告X1満37歳から同46歳までの間)は原告X2ないし原告X3が,その後の38年間(原告X1満47歳から同84歳までの間)は職業付添人がそれぞれ行い,前者につき1日あたり6000円,後者につき1日あたり1万円を要するものと認められる(弁論の全趣旨)。
     ところで,いわゆる寝たきり状態である原告X1の平均余命について,被告は10年程度であるものと主張し,文献(乙2)を提出するが,同文献も,統計資料に基づいて平均余命を10年未満と推定しているものの,30歳台以下は長期生存者も存在し,脱却者(寝たきり状態からの)も存在することに留意する必要があるとされ,30歳代で合併症もなかった原告X1に,どの程度符合するのか疑問であって,採用できない。原告X1は固定時31歳であって,平均余命は84歳までの53年間である。
     219万×(10・8377ー5・0756)+365万×(18・5651ー10・8377)=12618999+28205010=40824009
     在宅介護雑費は,弁論の全趣旨により,年額36万5000円であるものと認められるので,
     365000×(18・5651ー5・0756)=4923668
   ⑫ 帰宅のための費用 0円
   ⑬ 帰宅後の付添介護費用 4082万4009円
   ⑭ 検査費用 0円
   ⑮ リハビリ費用 0円
   ⑯ 在宅介護雑費 492万3668円
     一般論として,原告X1の状況によれば,自宅での介護を行う場合,自宅を改造して介護をしやすいようにしたり,各種介護器具を購入することが必要になることは認められる。
     しかしながら,まず,自宅改造費用については,「本体工事」及び「スロープ工事」と主張されるのみであって,具体的内容が不明であるので,(なお,原告ら提出の見積書(甲49)及び原告X2本人も極めて概括的であり,内容は不明であると言わざるをえない。),その具体的必要性も不明であると言わざるを得ない。
     次に,介護器具については,弁論の全趣旨により少なくとも車椅子,吸引器,特殊ベッド,マットレスが必要となろうことは理解できるが,各器具について多数の類似製品がある中で,原告ら提出の甲44ないし47,甲48の1,2記載の当該製品を選択する理由についての主張立証がない。なお,耐用年数についても立証がない。
     そこで,弁論の全趣旨により,車椅子については10万円,吸引器については12万円,特殊ベッドについては30万円,マットレスについては10万円の限度で,これらを購入する費用を,損害と認めることとする。
   ⑰ 自宅改造費用 0円
   ⑱ 介護器具代 62万円
   ⑲ 逸失利益 6391万4316円
    原告X1が本件事故当時,□□大学健康科学部社会福祉学科の講師であったことは認められるが,同人の本件事故当時の収入については立証がないし,給与表(甲40)によっても,これがいくらであって,今後どのように昇給する蓋然性があるかということは認めるに足りない。
    そこで,症状固定時における平成8年センサス大卒女子全年齢450万6400円を基準として算定することとする。
    原告X1は固定時31歳であって,労働可能年数は36年間となる。
    しかし原告X1は,寝たきり状態である結果,娯楽教養費等の支出を要しないことは弁論の全趣旨により認められ,通常人が必要としないオムツ等の雑費が必要である(原告X3)としても,これは上記在宅介護雑費で考慮ずみであるから,算定された逸失利益から1割を控除するのが相当であるものと考える。
    4506400×(16・7112ー0・9523)×0・9=63914316
   ⑳ 慰謝料 2720万円
      入院慰謝料 120万円
      後遺症慰謝料 2600万円
   (21) 文書料 20万円(弁論の全趣旨)
   (22) 小計 2億2197万6131円
   (23) 過失相殺 1億7758万0905円
   (24) 既払金 1億1002万4768円
     自賠責保険 3000万円(争いがない)
     労災保険 8002万4768円(甲52,乙3の1,2)
     労災給付額を除く被告主張の既払金については立証がない。
   (25) 控除後 6755万6137円
   (26) 弁護士費用 670万円
   (27) 合計 7425万6137円
  (2) 原告X2及び原告X3の損害
   ① 慰謝料 各300万円
     同人らは,原告X1を2人姉弟の長女として慈しみ大学院修士課程まで教育を受けさせて研究者として独り立ちさせ,将来を楽しみにしていたところ,被告の惹起した本件事故により,重度の障害を負う身とされ,今後研究者としての更なる成長を見る希望も絶たれ,60歳代に達しているにも関わらず,介護を担う事態となったものであって(原告X2,同X3),同人らの苦痛を慰謝するには,上記金額をもって相当と考える。
   ② 休業損害 0円
     付添介護費用において考慮済みである。
   ③ 弁護士費用 各30万円
   ④ 小計 各330万円
  (3) 原告X4の損害
   ① 慰謝料 100万円
   ② 弁護士費用 10万円
   ③ 小計 110万円
 4 結論
   よって,原告の被告らに対する請求は,原告X1が7425万6137円,原告X2及び同X3が各330万円,原告X4が110万円(及び各遅延損害金)の限度で理由があるが,その余は理由がない。
    横浜地方裁判所第6民事部
  (口頭弁論終結日 平成13年7月27日)
           裁判官 櫻井佐英

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