死亡による逸失利益

1 死亡による逸失利益の算定方式

人身死亡事故による逸失利益の算定は以下の算式によって行われます。

収入額(年収)×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数)

2 年収の算出

(1)給与所得者の場合

死亡直近の1年間の収入が原則として上記逸失利益の算定の年収とされます。この収入にはボーナスや諸手当も含まれます。収入を証明する必要がありますが、源泉徴収票や給与明細で証明するのが一般的です。

裁判例では、収入が厚労省の定める賃金センサスの平均賃金よりも低い場合には、その平均賃金を取得できる可能性が高いと認定できる時には、賃金センサスによる平均賃金をもとに収入を算出することが認められています。

将来の昇給を死亡による逸失利益の算定に考慮できるかどうかですが、最高裁判所昭和43年8月27日判決は、将来の昇給が証拠に基づき相当の確かさで推定できる場合には将来の昇給を考慮して収入を算定できると判断しています。

定期昇給(ベースアップ)については、最高裁判所は、口頭弁論終結時点までのベースアップに限り収入の算出に織り込むことを認めていますが、口頭弁論終結後のベースアップについては、収入の算出に織り込むことを認めていません。

定年退職後の収入については、裁判例には、年齢別平均賃金を認めたものなどがあります。

(2)個人事業主・自営業者の場合

死亡直帰の確定申告書の所得を収入の算出の基準としています。

なお、節税をするなどして、実際の所得が確定申告での所得よりも多い場合には、実際の所得を帳簿などで証明できれば算出の基準とすることが認められますが、その証明は厳格な証明が求められるため、実際の所得が収入の算出の基準として認められることは多くはありません。

確定申告の申告所得について家族の貢献などがある場合には、申告所得に対する被害者本人の寄与度を考慮して、被害者本人の収入の算出の基準としています。

確定申告の申告所得が厚労省の賃金センサスの平均賃金を下回っている場合には、平均賃金を取得できる可能性が高い場合には、男女別平均賃金を収入の算出の基準としています。

(3)会社役員の場合

会社役員が被害者の場合には、会社役員の報酬には、利益配当部分と労務対価部分とに分けられることから、労務対価部分を収入の算出の基準とすることになります。利益配当部分と労務対価部分とをどのように分けるかですが、会社の規模、業務内容や役員の業務内容、年齢、従業員の給与などを総合的に考慮して労務対価部分を決定しることになります。

なお、会社が被害者である会社役員の個人会社で経済的に一体視できる場合には、その会社は自らの損害(企業損害)として、会社役員による会社の収入減少について損害賠償をすることができる場合があります。

(4)家事労働者の場合

専業主婦(主夫)の収入については、厚労省の賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計、女子労働者の全年齢平均の賃金を基礎としています。

兼業主婦については、実際の収入が女子労働者の全年齢平均の賃金よりも低い場合には平均賃金を収入の基礎としています。実際の収入が平均賃金よりも高い場合には実際の収入を収入の基礎としています。

(5)学生・生徒・幼児の場合

学生・生徒・幼児の収入については、厚労省の賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢労働者の平均の賃金を基礎としています。

(6)失業者の場合

失業者の場合には、死亡時に収入がなくとも、労働能力、労働意欲などから就労の可能性が高いと認められる場合には、失業前の収入を収入の算定の基礎としています。

なお、失業前の収入が賃金センサスの平均賃金よりも低い場合には、再就職して平均賃金を取得できる可能性が高いと認められるときには、平均賃金を収入の基礎とすることが認められます。

3 損益相殺

(1)生活費の控除

被害者が死亡した場合には収入が得られなくなると同時に、生活費もかからなくなるため、死亡による逸失利益の算定に当たって、被害者の家族構成、性別、年齢などをもとに収入の一定割合を生活費の支出とみなして、控除とします。赤い本2013年版上巻136頁によれば、一家の支柱で被扶養者が1人の場合には、生活費控除率を40%、被扶養者2人以上の場合には、生活費控除率を30%としています。

一家の支柱ではない場合には、女性(主婦、独身、幼児を含む)の場合には、生活費控除率を30%としています。

男性(独身、幼児を含む)の場合には、生活費控除率を30%としています。

なお、年金部分についての生活費控除率は、年金収入の場合には生活費も多額ではないことから、通常よりも生活費控除率を高くすることが多いと言えます。

(2)税金の控除

税金の控除は行いません。これは損害賠償額が非課税所得とされていることが理由です。

4 就労可能年数

裁判実務では、就労可能年数については、以下の通りとして取り扱っています。

就労可能年数は原則として67歳とし、67歳を超える場合には、簡易生命表の平均余命の2分の1としています。

67歳までの年数が平均余命の2分の1よりも短くなる者については、平均余命の2分の1としています。

未就労者の就労の始期については、原則18歳とするが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業予定時としています。

ただし、職種、地位、健康状態、能力等により上記と異なった判断がなされることもあります。

なお、年金の逸失利益を算出する場合は平均余命としています。

以上、「損害賠償額算定基準」(赤い本)2013年版上巻139頁によります。

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